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不思議な旅編 第6話 史上初、神前演奏会?

不思議な旅編 第6話 史上初、神前演奏会?


三浦たちはその先を進むと、かなり大きな広場に出た。奥には広さの割りに小さな祠がポツンとある少し寂しいところだ。

「ここは?」

三浦は狭野尊に尋ねる。

「うむ、ここは毎年神無月に皆が集まるところだ。」

「ここが・・・ですか?」

それを聞いた沙希は思わず周りを眺める。そう、伝承に基づくのであればここは全国から八百万の神々が集まり神議する場所となるのである。しかし、そこは本当に寂しいところだ。華やかさの『は』の字も無い。しかし・・・

「うっ、眩しっ!」

南川が思わず目をしかめる。皆も同じだ。輝かしい光が祠から発せられたのである。

「よく参ったな、御主達。」

そこには恰幅の良い優しそうな男がいた。そして周りには数多くの人たちが居る。

威厳に満ちた者、優しく見つめる者等さまざまな人たちだ。勿論、見たことのある様な人物も居た。有名な七福神である。恵比寿・大黒天・毘沙門天・弁才天・福禄寿・寿老人・布袋の7神。さすがに神無月ではない為、八百万の神々はいないが、その数1000以上は居そうである。

そして先ほどの恰幅の良い優しそうな男が言う。

「ワシが大国主大神じゃ。遥々ご苦労であった。」

「あ、貴方が?」

三浦は思わず聞き返す。そう、イメージした人物とはかなり違っていたからである。本当に慈愛に満ちた優しい感じの人である。

「うむ、そうじゃ。というわけで、早速御主達の演奏が聞きたいのだが、いけるか?」

「ええ、勿論。」

陽乃は大きな声で言った。この1週間みっちり練習したのだ。自信に満ち溢れている。

「あっ、そういえばパーカッションはどこに・・・」

恭一は音楽室にあったパーカッションがここに無いことに気付く。

「ああ、あれか。ここじゃよ。」

大国主大神はそういうと軽く手を振る。するとそこには何事も無かったかのようにティンパニーやベードラなどが出現した。

それを恭一が確認するとさっそく皆は準備に取り掛かる。


「では、曲は『吹奏楽のための神話(天の岩屋戸の物語による)』です。伝承にある『天の岩屋戸の物語』を元に作られた作品です。」

朝倉は大きな声で曲目を言う。すると大変美しい女性が前に出てきた。

「あら~、私の話が題材なのね。何か嬉しいわ~。でも、あれ物語としては面白いけど・・・ちょっと違うのよね~」※1

その女性は姿こそは美しいが、とってもおっとりとした雰囲気だ。どこか犬井を連想させる。

「なぁ、あの人が天照大御神(あまてらすおおみかみ)か?」

「なんか、イメージが違いますね・・・もしかして、岩屋戸の話って実は出てこないんじゃなくて、寝てて出てこれなかったとか?」

島岡と三浦はこそこそと耳打ちする。

「あらやだ、そこの子中々いい感してるわね~。でも、実際はこんなもんよ~神様って。」

その声が聞こえたのか天照大御神が三浦たちに言う。

「「マジかよ!!」」

島岡と三浦は思わず突っ込んだのであった。


三浦達は合奏の隊形をとった。ちなみに、椅子は大国主大神が用意してくれた。

既にチューニングが終わっており、指揮台には柏原が立っていた。

(ええか?)

一人づつに目を合わせる。勿論、その返答は自信に満ち溢れる目線だ。

そして、ゆっくりと柏原が指揮を振り始めた。


木管によるいきなりの音。それに続く中低音の響き。不気味さの中に威厳がある。そんな響きだ。チューバの寺嶋を中心として、拓真・智志が底を支える。ユーフォニウムは、平田・春樹の2枚看板に愛実が加わる。トロンボーンのミュート音が更に気分を盛りたてる。中嶋を中心としたこのパートは、鈴木・慎也・亜紀・徹と中々粒が揃っている。

そしてホルンが周りを巻き込んでの旋律を奏でる。このホルンパート、七海側は雪子が居ないが、最強のホルン奏者島岡を筆頭として、石村・松島・三浦・大原という今高側の全国最強編成に加えて経験者の順平もいる。その音は鳥肌が立つくらい神々しい。クラリネットの高い音が更に雰囲気を盛りたてる。

そして徐々に柏原がアチェレをかける。それが最高潮に達したとき、トライアングルの目を覚ますような音と共に、トランペットのミュート音が鳴り響く。南川を筆頭に、陽乃・彩香・勇・沢木・丸谷・小路が吹く。フルートも共に入る。大倉はもとより、沙希・由美子・佳菜と実力者揃いである。

その後は恭一によるティンパニーが鳴り響く。徐々に小さくしていく。それに答えるように美里のコンガの音が鳴る。

が、リズムが徐々に変わる。そう、宴の開幕である。激しいコンガの音が周りに鳴り響く。テンポはかなり速い。柏原が初めイメージしていたテンポだ。それに答えるかの様に金管・木管が鳴る。

不意にトロンボーンの旋律が鳴る。そして、木管を中心とした狂ったような旋律が始まる。

パーカッションの強弱が綺麗に付いたアンサンブルの後、トランペットの音が頭に刺さる。パーカッションは全員七海の部員で占めている。恭一を中心として、美里・洋之・優・恵梨・あずさである。

そして中低音による新たな打ち込みの後、クラリネットによる狂宴が始まる。先ほどとは違い軽快だ。こちらの中心も主に七海側だ。絵美を頭に梨子・光瑠・みゆき・優輝・岩本・辻本・犬山・駿が演奏する。ホルン・サックスの完璧な後打ちのリズムに乗る。勿論、サックスパートの中心は翔だ。三田嶋はあえてテナーサックスを吹いている。佳代子・麻綾・さゆり・はるかがそれに続く。

途中にはバスーンなどの2枚リードの楽器が合いの手を打つ。オーボエの神崎、そして健之佑。バスーンは誠だ。

チューバの下降系の吹き伸ばしに移りそして・・・全楽器による演奏が始まる。

力強いトロンボーン、ホルンのゲシュトップ、オーボエから始まりトランペット・フルートへと引き継がれる旋律。最後はベルトーンへ。再び、曲の様相が変わる。

クラリネットがまるでへびを操っているかのような旋律を吹く。それに対してあらゆる楽器がその後に交互に入る。そしてそれが入り混じり混沌へと変化する。ここが一番難しい。下手をすると曲が分解するからだ。最後は銅鑼の音が鳴り響き、混沌が終わる。威厳のある音がそこを支配する。締めくくりがホルンによる吹き伸ばし。こうして中間部に入るのである。

クラリネットのトリルやフルートの木管アンサンブルが始まる。大倉の美しくも妖艶なソロ、クラリネットによる不思議なアンサンブル。そして、絵美のソロで短い中間部は幕を下ろしたのである。

再現部は、バスーンによるリズム打ちから始まり、ホルンとトランペットのどこか悲しげな旋律が辺りを響かせる。そしてさまざまな楽器が入り、パーカッションが鳴り響く。狂宴の再開である。独特なリズムがその場を支配する。そして最後は、再び混沌へ。銅鑼が最後に響き渡る。

静かな中、トランペットの音が響き渡る。そしてチューバ、中低音、ホルンと入り銅鑼と共に最後の壮大なシンフォニーが鳴り響き、最後の和音と共に曲が終わった・・・


※1 天照大御神には色々な説がありますが、ここでは女神としています。


無事、演奏が終わりました。さて、次話でこのへんてこな話も終わりを迎えます。

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