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9話 人間みたいな動きをするファインドモルル

 じっと俺を見てくる、ファインドモルルのたぶん代表。そんなファインドモルルを黙って見返す俺。し~んとなるその場。だが最初にその沈黙を破ったのは、やはりいつも、わぁわぁドタバタと、言動が煩い俺の姉さんだった。


「ねぇねぇ、どう見ても、その小さいのはあんたを見てるし、他に集まってるのもあんたを見てるんだから、あんたに用があるんじゃないの? 話しかけてみなさいよ」


 まぁ、ニヤニヤ、ニヤニヤしながら、俺に話しかけて来たよ。これはもう完全に、ファインドモルル達を敵とし見ておらず、何か面白いことが起きたって、楽しんでいる感じだ。


「瞳、あんまり刺激しない方が良いんじゃないか? まぁ、攻撃の意思は感じないけど、これだけ集まってるわけだからね」


「大丈夫よ。どう考えても、私達を攻撃するために集まったんじゃないでしょう。あっちのファインドモルル達なんて、木の実や花を運んできてるし。あれ、たぶん和希に持って来たのよ」


「何でそんな事が分かるんだ?」


「それはなんとなくよ!!」


 ガクッとする優也さんの。俺も、たぶんかよ!! と心の中で突っ込んでしまった。


「でも、前にも何度もあったじゃない。まぁ、物を持って来たのは初めてだし、これだけ集まって来たのは初めてだけど。数匹で和希の所に来て、テイムして欲しそうにしてたの。優也も見てるでしょ」


「それはそうだけど。瞳も今言ったじゃないか。これだけ集まってのは初めてだけどって。もしかしたら別の事で集まった可能性も……」


「いいえ、これは和希に用があるのよ!!」


 食い込み気味で言う姉さん。だから何でそこまで自信満々に言えるんだよ。確かに俺に会いに来たんだろうけどさ。


 ……この感じ、やっぱり今までと明らかに違う。今目の前にいるファインドモルルから、何か絆のような物を、ひしひしと感じるんだ。今までにこんな事は1度もなかった。これがテイマー達が、テイム前に感じる感覚なのか?


「ほら、和希。何黙ってるのよ! 早く話しかけてあげなさいよ。……また失敗したって良いじゃい! それでもあんたは何度も立ち上がってきた。今更1回2回、まぁそれ以上失敗するかもしれないけど、今更関係ないでしょう!!」


 応援しているのか、傷を抉ってきているのか、よく分からない姉さんの言葉。優也さんが姉さんを止めたよ。まったく、今更関係ないって関係あるよ。これで案外魔獣と契約できなくて、寂しく思っていたんだから。


 だけど、うん。姉さんの言う通りだ。今日はここへはテイムをしに来たんだ。姉さんに言いたくなくて黙っていたけど、さっきそれについて話そうとしていた所だし。やってみるしかない。


「あー、お前達は俺に会いに来たのか? それとも姉さん……、じゃなくて、こっちの人間に会いに来たのか?」


 まずは一応確認しないとな。まぁ、これだけ俺を見てきて、姉さんか優也さんに会いに来たって反応されたら、それはもう笑うしかない。


『チュッチュ、チュチュチュ!!』


 すぐに反応を示した代表のファインドモルル。俺の足元まで移動して来て、俺の靴を小さな手でパシパシ叩いて来た。うん、間違いではないようで良かった良かった。


『そうか。じゃあどうして俺に会いに来たんだ?』


 するとチュチュッと鳴き、少し離れた代表ファインドモルル。その後色々な動きをした。別のファインドモルルと共に。


 最初に他のファインドモルル達が持って来た木の実を、数個自分達の前に置いた代表ファインドモルル。そうしてその木の実を囲んで、食事をしている真似をして。どうやたら今までの事を教えてくれるらしい。


「ご飯を食べていたのか?」


『チュッ!!』


 当たりらしい。というか、この代表ファインドモルル、人の言葉が分かるのか? テイムすればその魔獣と会話できるようになるし、レベルが高い魔獣なら、テイムしなくても、時々言葉を理解できる魔獣はいるが。

 この代表ファインドモルルは、レベルは高くないだろうし、そもそもまだテイムしていないからな。


 次に、何かに反応したように、次々に持っていた木の実を置いて、周りの音を聞く仕草をした、代表ファインドモルル達。耳に手を当てている奴までいる。


「何か聞こえたのか? 感じたのか?」


『チュッ!!』


 これも当たりのようだ。もしかして俺達の声が聞こえたか、俺の何かを感じたのかもしれない。


「それで俺に気づいたってことか?」


『チュウゥゥゥ!!』


 手を上げる代表ファインド……、もう代表で良いだろう。手を思い切り上げる代表。やはり俺に気づいたようだ。


 その後、その他の木の実も使って、木の実を集めたり、花を集めたりしている所を見せて来た代表達。それが終わると全員が綺麗に並んで、俺達の周りを1周ぐるっと歩いた。


「木の実を集めて、花を集めて、みんなで並んで俺達の所へ来た、か?」


『チュチュチュチュウゥゥゥッ!!』


 一気に全員が大きな声で鳴いた。うむ、俺の回答は完璧だったらしい。そうしてあの姉さん達の反応だった。


「アッハッハッハッ!! 何よこれ!! こんなの見た事ないわよ!! アハハハハハハッ!! 可愛いぃぃぃ!!」


「こ、これは、俺も初めて見たな。くくっ」


 可愛いのか面白がっているのか、どっちだよ。まぁ、俺もここまで人間ぽく? 動くファインドモルル達は初めて見たけど。


「それで、俺に気づいて、何で木の実と花を持って俺の所へ来たんだ?」


 俺の質問に、今までニコニコ、正解!! と喜んでいた代表が、真面目な顔をして、俺の事を見てきた。

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