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5話 保護者付きのダンジョン

「え? あんた、ダンジョンに行くの?」


「ああ、明後日行ってくる」


「本当に行くの!? 本当に本当!?」


「だから本当だって」


「ママー! ちょっと聞いて!!」


 どうしてウチはいつも朝っぱらから煩いんだ。たまには、叫び声もドタバタする音も聞かずに、静かな朝を迎えて、落ち着いて朝食を食べたいんだが?


 俺が前世を思い出してから、もう2週間がたった。まず最初の1週間は、姉さんに邪魔されながらも、前世の記憶と現代についていろいろと考えたよ。でも、何が正しくて、これから自分はどうしたら良いのか、結局答えは出ず。


 おそらく、このまま考え続けても、すぐには答えが出ないだろうと思い、とりあえず今後のことを優先して考えることにした。

 もちろん、考えること自体をやめたわけじゃない。ただ、今の俺にも生活があるからな。だから、少しずつ考えながら、前に進むことにしたんだ。


 そして次の1週間は、ある違和感について考えることにした。でも、その違和感を確かめるには、実際にダンジョンに行く必要があったから、俺はダンジョンに行くことを決めたんだけど。


 そうして母さんに俺のことを知らせに行った姉さんは、すぐに母さんと一緒に戻ってきて。母さんが同じ質問をぶつけてきた。


「和希、あなた本当にダンジョンに入るつもりなの!?」


「ああ、本当だよ。ほら」


 俺は通信端末を取り出し、ダンジョンに入るための許可証をホログラムで映し出す。その許可証を間近でジロジロと確認する母さんと姉さん。そうして5分ほど、ああだこうだと言いながら確認し、ようやく俺の許可証が本物だと認めた。


「嫌だわ、本当に許可証じゃない! 急にどうしたのよ。それに、まさかあなた1人でダンジョンに入るなんて!」


「大丈夫だよ。入るのは最低ランクのダンジョンだから」


「まさか、それも本気なの!?」


「いやいや、さっき許可証を確認したじゃないか。入場者数1名って表示されてただろう?」


「ダメよ! いくらFランクのダンジョンだからって、あんた弱い火魔法と水魔法しか使えないじゃない。それに、あれも……あれは使えないし」


 現代のダンジョンには階級が設定されている。最も危険とされるのがSS級ダンジョンで、その次がS級、さらにA級と続き、最下位のF級が最も危険度の低い、新人向けのダンジョンだ。


 また、他にも階級が決められているものが。ダンジョンに入る人々の事を、プレイヤーと言うんだけど。プレイヤー達にも階級があって、最もレベルが低いのがF級プレイヤーで、最高レベルはSSS級プレイヤーだ。


 このSSS級に認定されているのは、世界でたったの5人しか認められていない、本当に凄い人達だ。


 それからダンジョンは階級が上がるにつれて、出現する魔獣達がどんどん強くなっていき、仕掛けられている罠も巧妙化していく。そのため、プレイヤーは自身の階級に応じて、入れるダンジョンが決まるんだ。弱いのに無理して上の階級のダンジョンに入れば死ぬだけだしな。


 当然、ダンジョンに生息する魔獣にも階級があるぞ。人やダンジョンと同じようにSSS級からF級までランク付けされている。


 ちなみに俺が入ろうとしているF級ダンジョンには、見れば子供でもすぐに分かるような、単純な罠に、ほぼF級魔獣しか出ない。


「だから大丈夫だって。今までだってF級ダンジョンには行ってたんだから」


「それでも1人はダメよ」


「本当よ!! ……でも、和希が自らダンジョンに行くなんて、こんな珍しいこともないわよママ。前回は1年も前よ」


「そうなのようねぇ。……和希、あなた、やけになっていて、ダンジョンに行こうなんて思ったんじゃないでしょうね」


「まさか!? 違うよ!!」


「本当に?」

 

「ちょっと確かめたいことがあって行くんだよ」


「確かめたいことって……、アレのこと?」


「……まぁ」


「はぁ、あなたの気持ちは分かるけど。いつまでもそれについて考えているより、他のスキルのレベルを上げた方が……」


「ママ、待って。せっかく和希がやる気になったんだから。ここは和希のやりたいようにやらせてあげたらどう?」


「でも、ママ心配よ」


「大丈夫!! 私も付いて行くから!!」


 は?


「ちょうど和希がダンジョンに入る日、私、優也とデートの約束をしていたの。それでね、優也も和希のことを心配してくれてるから、この話しをすれば、きっと付いてて来てくれるはずよ。私達2人がいれば、どんなことがあっても大丈夫だもの!!」


「まぁまぁ、それが良いわね!! お姉ちゃんと優也君がいてくれれば、F級ダンジョンなんて何も問題はないわ!!」


 いやいや、ちょっと待て! 母さんと姉さんが、俺の事を心配なのはよく分かる。俺はプレイヤーとしていろいろ問題があるからな。


 でも本当に1人で大丈夫だから! 俺、どうしても1人で確かめたいことがあるんだよ! 周りに誰かいたら、っていうか、姉さんがいたら、大騒ぎになる可能性が……。頼むから1人で行かせてくれ!!


 そう必死に止めようとした俺を、完全に無視する母さんと姉さん。姉さんはすぐさま優也さんに連絡を取り、優也さんも話を聞いた途端に、分かった、と即答。

 そしてその後、姉さんは協会に連絡を入れて、俺の許可証の更新を勝手に済ませてしまった。


 まぁ、これに関しては姉さんだからできることだけど。他の人が姉さんと同じことをしても、すぐに更新はできない。


 ちなみに協会とは、ダンジョン関係の全てをまとめている管理機関のことで。ダンジョンの入場許可はもちろん、プレイヤーの登録や、いろいろな物のランクの管理、ダンジョン情報の公開などなど、いろいろ管理している。


 その協会に姉さんが直接連絡して、俺の予約をあっという間に変更してしまったんだ。


「さぁ、これでもう大丈夫ね。よし、和希、これからダンジョンに入るための準備をしましょう!! 怪我をしないように、しっかり準備するわよ!!」


 俺の意思は? 俺は小学生じゃないんだぞ?

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