21話 いつも以上の扱い、疑われた俺
「これ、本当ですか?」
「は?」
「ですから何か不正して、記録を改ざんしていませんか?」
「……これはそんな簡単に改ざんできる物なのか? 協会が作ったアプリだろう。何だ、お前は協会が作った物を疑っているのか?」
「疑っているのはあなたの事であって、協会ではありません!!」
「だがら、そちらの言い分だと、俺が不正をした、改ざんをしたって事なんだろう? ということは、協会のアプリは俺が改ざん出来るほど、粗末なアプリだと言ってい事になるだろう」
「ですから!! 私はあなたが……!!」
この受付の女は何なんだ? 確かに俺は今まで何もできないFランクのプレイヤーだったさ。だから協会の受付の奴らにも、馬鹿にされることが多かったが。それでも一応最低限、マニュアル通りには対応してきた。
が、この女は何だ? 初めて見る顔だが、向こうは俺を知っていたらしく。女の前に立った途端、凄く嫌そうな顔をされて、あんたが相手なんてと言った。前のプレイヤーには愛想良くしていたのに、明らかに嫌そうに俺の対応を始めた。
面倒な受付に当たったかと思いながらも、まぁ、いつもの事かと。そのままさっさと、アーチーの登録を済ませようとしたが。
しかしテイムの事を話した途端、不正をしたわね!! と大きな声で言い、俺の事を不正行為をしたと責め立ててきたんだ。
そのため他の受付が、何度もオレの携帯端末を確認する事に。が、俺が不正をしたという事実は見つからず。
こんな俺の相手をしているのは、時間の無駄とばかりに。女にさっさと俺から話を聞いて、不正使用した事実確認をし。後で協会から今回の事についての、俺に対する処罰について、連絡をすると言って帰させろと。さっさと自分の席に戻って行ってしまった。
そして今、問題の受付の女が、俺にさっさと、不正した、と言わせようとしているところだ。
まったくこの女が騒いだせいで、周りから罵倒されるわ、コソコソ陰口を叩かれるわ。それを味方だとでも思っているのか、受付女はニヤニヤしながら、勝ち誇ったように。何度も何度も不正だと連呼して、もう俺の不正が確定したかのように振る舞っている。
『オレは、カズキと家族になったっチュ!! 何で嘘って言うっチュウッ!!』
「嫌だ、何よこの魔獣!! 威嚇してきて!! やっぱりテイムできていないんじゃない!! もしも私が怪我したらどうするのよ!! 警備員を呼んで!!」
女の態度に怒ったアーチーが、女に威嚇すると、女は後退り警備員を呼ぶように言う。
「アーチー、危ないからポケットに入っていろ」
『ダメっチュ!! 一緒に怒るっチュ!! 家族だから一緒っチュ!!』
「ありがとう。でも、ここはもしかしたら危なくなるかもしれないから、ポケットに入っていてくれ。俺はお前が傷つくかもしれないって、そっちが心配で、こいつらの相手ができないといけないからな。このまま登録できずに、傷ついて離れ離れになるのは嫌だろう?」
『……分かったっチュ』
スススっとアーチーがカウンターから移動して、ポケットの中に入った。
「何の騒ぎだ?」
その時警備員よりも先に、俺達に声をかけてきた人物がいた。そしてその人物を見た俺は。はぁ、また面倒なのが現れたと思ったよ。
現れたのは、低ランクプレイヤーを見下す事で有名な、Bランクプレイヤーの雷牙だったからだ。
「雷牙さん、聞いてください!! このF級が、魔獣をテイムしたと、アプリまで不正して、申請に来たんです。もう不正はバレているのに、認めようとしないんですよ!!」
「はぁ? 万年F級で、これまで1度もテイムできなかったお前がか!? ガハハハハッ!! ついに不正までしたのかよ!! お前がテイムなんて、できるわけないんだからな。それですぐにバレるようなことしたのかよ!! ガハハハハッ!!」
「もう、笑い事じゃありませんよ。まったく、F級なんて、何の役にも立たないんだから、何もさせないようにしちゃえば良いのに」
「まったくだな! ガハハハハッ!!」
お前も言ったってB級だろうよ。この前A級に吹っ飛ばされてたし。
「おい、さっさと認めて、罰を受けな。そうだな、そのポケットの魔獣は、俺の腹の足しにでもしてやるからさ」
アーチーが急いで、完璧にポケットの中に潜る。俺は雷牙を睨みつけた。
「……何だ、その顔はよう。俺に文句でもあんのか。F級の才能なしやろうが」
雷牙が魔法を使おうと構える。さすがにそのまま魔法を受けるわけにはいかないからな。それに俺の魔法じゃ、こいつに対抗できないのは事実だし。俺は後ろ手でカバンから防御のポーションを取り出そうとした。
と、その時、また俺達の間に入る声が。
「そこまで!!」
「チッ!!」
すぐに雷牙が攻撃の姿勢を止めた。止めに入ったのが、協会で力を持っている人間だったからだ。
「これは何の騒ぎだ!! 雷牙、今魔法を使おうとしていたな!! 協会内では魔法の使用は禁止だぞ!!」
「分かってますよ。だが、不正を働いたこいつが、それを認めずに。しかも俺に、反抗的な目を向けてきたんでね」
「理由は何であろうと、魔法を使うのは禁止だ! お前が罰を受けるか!?」
「それよりも、さっさとこいつの不正を罰しろよ!! 俺なんかより大問題だろう!!」
「当事者は私について来い!! 他の者達はそれぞれの仕事に戻れ!! プレイヤー達も、まだ事実確認が取れてもいないのに、騒ぎを大きくするような行動は慎め!! もし事実がこのF級プレイヤーの言う通りならば、監視カメラを確認し、このプレイヤーを罵倒した、全てのプレイヤーに罰を与えても良いんだぞ!!」
その言葉に、皆がすぐに散らばっていく。雷牙もこれ以上逆らうのは不味いと思ったのか、俺を睨みつけながら横を通り過ぎ、協会から出て行った。
「行くぞ」
俺と受付の女は、後から来た人達に囲まれながら、別の場所へと移動した。




