11話 成功したテイム、久しぶりの喜び
全ての光が消えて、辺りが元通りになる。そうして周りを確認すれば、姉さんも優也さんも、そしてファインドモルル達も全員、目を瞑ったり、手で目を隠したりしていて。俺と代表を包んでいた光は、全員に見える光だったんだろう。
俺と代表は、その強い光の中でお互い認識できていたが、姉さん達はどうだったんだろうか?
まぁ、それは後で聞くとして、今は俺と代表のことだ。光が消えたばかりで、みんな状況についていけていないが、こちらは進めさせてもらおう。俺は自分の携帯端末を取り出すと、ステータスアプリを立ち上げ、指紋認識の場所に親指を当てる。
事細かなステータスを確認する場合は、協会へ行って確認しなければいけないけれど。ちょっとした確認、どんなステータスを持っているか、自分が今どんな状態か、そしてテイムしている魔獣はいるのか。
そういった基本的な事は、携帯端末に入っているステータスアプリを使えば、調べることが出来る。俺の物だけではなく、購入する前から携帯端末に組み込まれているため、全員が使うことが出来るぞ。
「今、確認するから待ってくれ」
『確認? 何を確認するっチュ?』
「……」
『……』
お互いを見る俺と代表。これは確認しなくても大丈夫みたいだな。が、一応、一応確認しておかないと。……魔獣とこんなにしっかり言葉を交わせるなんて。あの頃の感覚に心が弾む。
『どうしてニヤニヤしてるっチュ?』
代表にそう言われ、俺は頬をさする。どうやら気づかないうちに笑っていたようだ。
「お前は今、俺の言葉がはっきり分かっているんじゃないか?」
『分かる? オレ、人間の言葉はなんとなく分かるっチュ』
「なんとなくじゃなくて、今はしっかり分かるだろう?」
『だから今までも……、およ? っチュ?』
「俺もお前と同じだ。お前の言葉がしっかり分かるようになった。俺が今しようとしているのは、俺がお前をしっかりテイムできているかの確認作業だ。これだけしっかりお互い言葉が分かるのなら、ちゃんとテイムできているだろうが、一応の確認だな」
『テイムできたっチュ? やったぁーチュウゥゥゥ!!』
代表が俺の手のひらから腕をつたい、後ろ頭の方から頭の1番上に上がると、俺の頭の上でジャンプする。
「だから、これから確認するところだ。まだテイムできたかは……」
『やったぁーチュウ!! やったぁーチュウ!!』
「……」
これで出来てなかったら困るぞ。こんなに喜んでるのに。俺はドキドキしながら、話していて離してしまった親指を、再び携帯端末の指紋認識箇所に当てる。
この辺になって、姉さん達が復活してきた。目を擦りながら、全員が俺と代表の周りに集まってくる。そうして俺の頭の上でジャンプしている代表を見て、ファインドモルル達は万歳をし大喜び。姉さんと優也さんは、俺の端末を覗き込んできた。
「和希、どうなの!? あんなに頭の上で跳ねてるって事は、テイムできたって事よね! ね!!」
「和希君、確認は!?」
「はぁ、まだ確認前だよ。ただ話しは出来るようになったから、テイム出来てるとは思う」
「思うってなによ!! こんなにジャンプして、もう確認終わってるんじゃないの!?」
「……今姉さんが、俺に体当たりして来たから、指が離れて確認のし直しだよ」
「早くやりなさい!!」
誰のせいで確認をし直しになってると思ってるんだ。俺は3度目の確認作業をする事に。しっかりと親指を指紋認識箇所に付け、認識中の表示が消えるのを待つ。そうしてその認識中の線と文字が消えれば。ホログラムで俺のステータスが表示され。
みんなが俺の手元を覗き込んできた。代表なんて俺の顔に張り付いて来たよ。
「おい、前が見えないから離れろ」
『これ何でチュ? 時々人間が見てるっチュ』
「早く動かしなさい!」
「だから、顔から離れろ! 姉さんも押すなよ!」
まったくただ確認するだけなのに、どれだけ時間がかかるのか。俺は2人を離し、スクロールして下の項目を見ていく。
そして……。最後の箇所に、その表示はあった。【テイム魔獣:ファインドモルル】という表示が。俺が初めてテイムを成功させたという証だった。
その表示を見た瞬間、姉さんが俺に抱きついて来て、そのままバシバシッと俺の背中を叩いてきた。それからぎゅうぎゅうと抱きしめてきて。俺は思わず呻き声を上げる。
優也さん、うんうん頷いていないで、姉さんを離してくれないか? このままだとせっかく初テイムに成功したのに、窒息死するんだが。
そしてそんな俺達を見ていたファインドモルル達は、何故か俺と姉さんの真似をして、それぞれが誰かと抱き合い。
他の何も知らない人が、今のこの瞬間を見たら、変な集団に見えるだろうな。人間だけじゃなく魔獣達まで抱き合って、歓声を上げているんだから。
「ね、姉さん、頼む、離れて……」
「和希!! 良かったわね!! お姉ちゃん信じてたぞ!! あんたならやれるって!! 絶対にいつか、テイムに成功するって!! 今までよく頑張ったわね!! ……良かった、良かった!!」
……姉さん、泣いてるのか? 俺はそっと姉さんの肩に手をかける。これまでどれほど、姉さんに心配をかけてきたのか。もちろん両親にも。俺が不甲斐ないばかりに、家族に迷惑をかけっぱなしだった。俺のせいで馬鹿にされた事もあったし。
まぁ、その場合、家族はみんな、その場で相手に分からせていたし、それで協会の人達に注意されもしたけど。
最後まで俺の事を信じていてくれた家族。俺はみんなの家族で幸せだよ。
『なーなー、何で抱き合ってるっチュ? みんな分かんないけど抱き合ってて、何でって言ってるっチュ』
「ああ、これは今、テイムできていると確認できたから、姉さんが喜んでくれているんだよ」
『もうテイムできて、オレ、喜んでたっチュ。みんなも喜んでたっチュ。どうしてまた遅れて喜んでるっチュ?』
「だからさっきはまだ、確認はできていなくて……。はぁ、まぁ良い。姉さんは嬉しいがいっぱいだから、何度も喜んでるんだよ。嬉しい時は何度だって、喜んで良いんだ」
『オレ、木の実いっぱいだと、いっぱい喜ぶっチュ!! それと同じだっチュ? オレ、テイムとっても嬉しいから、オレもいっぱい喜ぶっチュ!!』
また俺の頭に戻った代表。木の実と同じかよ、と思ったが、それでも今は俺も、みんなと喜びを分かち合おう。




