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最強は私じゃなくて障害持ちの息子です  作者: Beo9
十三章 もう一人の日本人 邂逅編
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魔獣VS近代兵器

 ウェイルースの王都では、兵士達が絶望の表情で地平を眺めていた。既にクリムゾンバッファローの群れは視認できるところまで迫っており、あと数分で王都に到着するだろう。

 よりにもよって、群れは先日ジャレッドが破壊した西門から迫っており、完全に素通しになってしまう状態であった。もっとも、他の門であっても、数秒もてば御の字という状況ではあっただろうが。

 何に狂乱したのかは不明だが、暴走状態になったクリムゾンバッファローは、進路にあるものを全て破壊して進む。あの群れが王都に飛び込めば、あとはもう破壊し尽されるだけである。

 頼みの守備隊は功を焦った愚か者によって壊滅し、解放騎士団は遠征中であり、衛兵と近衛兵だけでは進路を逸らすこともできない。

 いよいよ、クリムゾンバッファローの群れは、その顔が判別できるほどの距離まで迫りつつあった。兵士達は滅びが迫っているのを感じつつも、それでもなお抗おうと悲壮な決意を固め、それぞれに武器を抜いた。

 その時、遠くから妙な音が聞こえてきた。シュウー、と何かが噴き出るような音が聞こえたかと思うと、その音は瞬く間に大きくなり、そして群れの先頭に何かが飛び込んだ。

 ボォン!と爆発音が響き、戦闘の数頭が吹き飛んだ。続いて、ダダダダダ!と連続した破裂音が聞こえたと思うと、光の玉が空から襲い掛かり、それを受けたクリムゾンバッファローは次々に倒れていった。

「な、何事だ!?何が起きている!?」

 指揮を執っていた近衛兵長が、驚きの声を上げた。しかし、それに誰かが答えるよりも早く、何やらバラバラと変わった音が聞こえてきた。

「あれは何だ!?」

「そ、空飛ぶ……魚!?いや、何かが回っている!?」

「な、なんだあれは!?魔物!?何が起きてるんだ!?」

 その正体不明の飛行物体、攻撃ヘリコプターAH-1は、王都の上を悠々と通過し、西門前に滞空した。

「あいつは……なんだ!?俺達を守ってくれるのか!?」

「そんな馬鹿なことがあるか!あいつをさっさと叩き落して……!」

「け、けどさっきの攻撃はあいつじゃないのか!?」

「それより、下に誰か括り付けられてないか?」

 そんな外の混乱など露知らず、搭乗員の良治と伸行は大変に楽しんでいた。

『初弾、命中!西門にて防衛戦闘に入る!』

『ラジャー!ガンナーよりパイロット、特殊兵装の使用許可を!』

『よし、許可する!しっかり当てろ!』

『では、ハイドラロケット砲!フォックス、トゥー!フォックス、トゥー!』

『いぃへーぇい!』

 二人とも、もはや少年である。日本でも異世界でも、決して乗れないであろう戦闘ヘリに、二人とも大興奮であり、洸太も空飛ぶ乗り物に大はしゃぎであった。

 バスバスバス!と景気よくロケット砲が発射され、クリムゾンバッファローの群れに飛び込んで行く。直後、激しい爆発が連続で起こり、クリムゾンバッファローが何頭も吹き飛ばされた。

『しかし、なんでフォックストゥーなんスかね?』

『ああ、それは発射、つまりファイアーの意味です。ファイアーの頭文字でF、それのフォネティックコードがフォックストロット、それを略してフォックスなんですよ。他にもターゲットを略してタンゴとか、スナイパーを略してシエラとかも言いますよ』

『はえー、そういうことだったんスね。しっかし、やっぱ宮田さんも詳しいッスね』

『伊達にサバゲーマーやってないですよ。おっと、逃がすか!』

 ロケット砲の攻撃を生き残ったクリムゾンバッファローが、西門へ突撃する。それを見た良治が首を巡らせると、それに連動して機関砲も向きを変えた。直後、20ミリ機関砲が咆哮を上げ、クリムゾンバッファローはあっという間に肉塊にされた。

『良い感じッスね!このまま、群れをある程度殲滅してください!そうすりゃこっちはダメだって判断して、進路を変えるはずッス!』

『了解です!』

『あ、けど、殺しとか抵抗ないッスか?』

『人じゃなければ割と平気です!何ならゲームっぽくて楽しいくらいですよ!』

『な、ならいいんスけどね』

 機関砲を薙ぎ払うように発射し、良治は次々にクリムゾンバッファローを撃ち殺していく。しかし、ある程度撃ったところで、射撃が止まってしまう。

『あれ!?弾が出な……あっ、弾切れです!』

『あ、あ~、そりゃそうッスよね。んじゃあバイドも死んでないか確認したいし、一旦降りてから消します!』

『了解です!はい洸太、ちゃんとお父さんの上にいてね』

 攻撃ヘリはゆっくりと地面に近づき、接地直前にフッとその姿を消した。伸行は華麗に着地し、良治は洸太を抱えて辛うじて着地し、何の話もできなかったバイドはべしゃっと地面に落ちた。

「バ、バイドさん大丈夫ですか?」

 良治が声をかけると、バイドは耳に詰めていた布を外しつつ答える。

「と、とんでもない体験だった……あ、マントありがとうございました……寒いし、うるさいし、熱いし、本気で、何度死んだと思ったか……」

 命は助かったが、目は既に死んでいる。戦闘ヘリの下部に括り付けられてそのまま戦闘に入られるなど、今まで誰も経験したことのない地獄だっただろう。

 一方の王都側は、巨大な物体が突然消えたことと、そこから姿を現した者達に気付き、大騒ぎとなっていた。

「あ、あれを見ろ!ジャレッド将軍とバイド副将軍だぞ!?」

「でも、ジャレッド将軍は裏切り者だって……!けど、確かに将軍だ……!」

「まさか、本当は裏切ってなんかいなかったんじゃ……!?」

「あそこのもう一人、あれは『子連れ狼』のリョウジじゃないのか!?なんであんな大物まで!?」

 騒ぎに気付くと、伸行は少しバツの悪そうな顔になった。

「まあ、バレるッスよね……」

「割と近いからしょうがないですね。で、あとの群れはどうします?」

 良治の質問に、伸行とバイドは正面を見つめる。クリムゾンバッファローの群れはまだまだおり、かなりの数を倒したはずだが進路を変える気配はない。

「だったら、次はこいつだ!クリエイトウェポン!」

 伸行が手をかざして叫ぶと、今度はT字型の主砲を持った戦車が現れた。

「うわ!?将軍、何ですかこれ!?」

「うおおお!?61式かあ!またマニアックですね!」

「あ~、74式とか触る機会無くって……こっちは展示してたの、ペタペタ触ってたんスよ。ま、それはそうと、さっさと乗り込みましょう!バイド、今度はお前も乗れるぞ!」

「はっ!正直、ホッとしました!また外に括り付けられたらどうしようかと……!」

「タンクデサントは死亡率高いからやめとけ」

「た、たんく……?」

「気にすんな!とにかく乗るぞ!」

 伸行がまず飛び上がり、洸太を受け取りつつ良治を引き上げ、最後にバイドが上がると、上部ハッチから順番に乗り込んでいく。大人三人と子供一人が入るとさすがに狭いが、動けないほどではない。

「で、どうします?このまま固定砲台として戦いますか?」

「そッスね。バイド、お前は車長席で機銃担当してくれ!主砲はこっちで使う!」

「ええと、しゃちょうせき……?」

 訳の分からない指示に、バイドは半分固まってしまう。それに気づいた良治が、苦笑いしつつ声をかける。

「そこ、ガラスが嵌まってて前後左右見渡せるところありますよね?そこが車長席です。機銃……例の、ズダダダダって連射できる飛び道具が、そこから操作できるはずなので、それを担当してください」

「わ、わかった。しかし……本当に、異世界の武器なんですね、これ……」

「私も乗るのは初めてですけどね」

 言いながら、良治は砲弾が入っているラックを確認している。

「ええと、APとHEかな?HEATも使うんだっけな?」

「弾の種類ッスか?その辺俺はあまり詳しくないんで……あ、装填手やってくれるんスか?」

「私も初めてなので、うまくできるかわかりませんが。ま、女子高生が乙女の嗜みとしてやれるくらいだから、やれると信じましょう」

 その言葉に、伸行はぎょっとして振り返る。

「え、今日本ってそんなことになってるんスか?」

「ああ、いえいえ。好きなアニメのネタで……女子高生達が戦車でスポーツの様に戦うアニメがあるんですよ」

「何それ!?めっちゃ見てぇー!」

「面白いですよ。実際、結構人気もありますしね」

 話している内容こそ楽しげであるが、実際は訳の分からないレバーやらボタンやらが何をするものなのか、まったくもって何一つわからない状況であるため、全員奮闘中である。唯一、洸太は奇妙な乗り物に大興奮している。

「ええと、これは……うわ、動いた!?」

「ああ、それはキューポラ全体動かすレバーだな。どこかボタンとかないか?」

「ボタン……?これ、か?うお!?」

 ダッダッダッダ!と激しい音を立て、車体上部の12.7ミリ機銃が火を噴いた。さすがに威力は高く、銃弾を浴びたクリムゾンバッファローは即死している。

 それなりにしぶとい相手であるはずのクリムゾンバッファローが、あっという間に倒されていく姿に、バイドは薄らと青ざめている。

「な……何なんですか、この威力は……」

「すごかろ?これ対人用なんだぜ」

「お、恐ろしい世界ですね……でも、今はありがたい!」

 完全に機銃の操作を覚え、バイドは機銃を掃射してクリムゾンバッファローを薙ぎ倒す。その間に、伸行もあちこち触って確かめ、凡その操作を把握しつつあった。

「よし、たぶんこれだな!同軸機銃、発射ぁ!」

 バババババ!と7.62ミリ機銃が火を噴く。12,7ミリ機銃よりは威力が低いものの、それでも連射される銃弾はクリムゾンバッファローの命を容易く奪っていく。そしてさらに、伸行はもう一つの引き金に手をかけた。

「全員、耳塞げぇ!主砲、発射ぁ!」

 ドォン!と天地を揺るがす轟音が鳴り、超高速の弾が何匹ものクリムゾンバッファローを貫いた。巨大バリスタが可愛く見えるほどの威力に、もはやバイドは反応することもできない。

「け……結構、うるさいですね……」

 洸太の耳を塞いでやっていたせいで、自身の耳を塞げなかった良治はキィンと鳴る耳を今更ながらに抑える。

「あ、なんか、すんません……耳、大丈夫です?」

「一応は。まあ、楽しくもあるので全然構いません!ガンガン撃ちましょう!」

 良治は砲から空の薬莢を取り出し、近くの丸窓から車外に捨てると、次の砲弾を装填する。まったく気にしていないその姿に、伸行も改めて構え直す。

 機銃二丁に主砲一門での攻撃は、迫りくるクリムゾンバッファローを全く寄せ付けなかった。近づけば機銃のどちらかで蜂の巣にされ、遠くとも十秒に一発程度の主砲で粉々にされる。

「すみません、これでHE弾切れです!」

「将軍、こっちも撃てなくなりました!」

「はいはい、そんじゃあ……クリエイトウェポン!これで補給完了だな」

「そんな一瞬で作り変えられるんですか……このスキルも、十分反則ですね」

 スキルによって作り出されているため、弾切れすることはあっても補給は容易い。そのため、本来は回数制限のある強力な攻撃が、無制限で使い放題である。

 しかしそれでも、クリムゾンバッファローの進路が変わる気配はない。飛び道具での攻撃が危機意識に結びついていないのか、仲間の死体を踏み越えてどんどんこちらに向かってきている。

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