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最強は私じゃなくて障害持ちの息子です  作者: Beo9
十二章 もう一人の日本人 ウェイルース編
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蘇る記憶

 その時、第4部隊の一人が二人に声をかけた。

「将軍に副将軍!怯えの欠片もねえ奴等が向かって来てますぜ!たぶんエリート集団だ!」

「わかった。『読心』のエブル、この戦場でよく聞き取った、褒めてやる」

「ふっへへへ!目立つんですよぉ、そういう奴等は!ああ、あれがそのうち、命乞いの悲鳴に変わるんだなあ、楽しみだぁ、ひっへへへへ!」」

「さぁすが、悲鳴を聞きたいから軍に来た男だなぁ……良い趣味をお持ちで」

「軍にとっては、実に有益な男だ。殺しを好むところも有用だ、拒む理由が無い」

 ジャレッドはこの立場に就いて以降、犯罪者なども含めて少しでも有益なスキルや嗜好を持つ者を、積極的に軍に採用していた。おかげで半数以上は平民出身の軍となったが、自身の強さと戦争の結果によって反対する者全てを黙らせ、堂々とこの軍を率いている。

 巨大な攻城兵器の連射で先手を取り、近づけば自身が斬り込み、敵陣に穴を空け、そこから魔剣を持った味方が殺到する。この戦い方で、ウェイルースはこの二年常勝無敗を誇っているのだった。

 再び、ジャレッドとバイドは敵陣へと切り込んでいく。そしていつものようにフォチャードで斬り付けると、それを巨大な盾で防がれた。

「む」

「貴様が竜鱗将軍だな!?これ以上仲間を傷つけさせんぞ!」

「クリエイトウェポン」

 ジャレッドの左手に、刃渡り30センチほどの、凝った装飾を施された短剣が現れる。巨大な盾を持った敵に対し、ジャレッドはその短剣で斬り付けた。

「なっ……ぐぶ!」

 鉄の盾をまるで紙のように斬り裂き、その後ろの体までもを無抵抗に斬り裂く。敵兵は驚いた表情のまま、物言わぬ死体と化した。

「出た、俺の15歳の闘技大会優勝を阻んだ反則武器!総オリハルコン刀身とか、闘技大会に出していい武器じゃねえですよね!?王の懐刀ですよねそれ!?」

「スキル使用は許可されていた。それにこれは、12歳の闘技大会の褒美に触らせてもらったものだ。文句を言うなら王に言え」

「言えるわけねえでしょ!?」

 それまで使っていた槍を消し、左手にオリハルコンの短剣、右手にロングソードを作り出し、ジャレッドは一人ずつを相手にする戦い方へと切り替えた。

 先程の兵士が話していた通り、増援として来た敵は誰も彼もかなりの技量を持っており、力押しで薙ぎ倒せる相手ではなくなっていた。それでも、ジャレッドとバイドの技量はそれをも上回っており、多少進行が遅くはなったものの、何の問題もなく戦えている。

 ジャレッドが首筋目掛け、剣を突き出す。すると相手は驚いた表情ながら、神業ともいえる反応速度でそれを打ち払い、ジャレッドに反撃を仕掛けた。

「む……なるほどな」

 危なげなく反撃をかわすと、ジャレッドは軽く後ろに飛びのき、ロングソードを消した。

「クリエイトウェポン」

 その手に、やや大きめのクロスボウが現れた。それに相手が反応する隙を与えず、即座に発射する。

「あがっ!?ぐ……がぁ……」

 今度の攻撃には反応できず、敵兵はあっさり胸を貫かれて死亡する。

「あれ、あいつって『オートカウンター』じゃなかったんです?」

「あのスキルは、反撃できる攻撃にしか反応しない。飛び道具では反撃のしようもなかろうよ」

「うっわー、将軍卑怯くせー」

「この程度も想定できず、自身のスキルも把握し切れていない相手が悪い」

 言いながら、ジャレッドは次の相手に作り出した剣を振るうが、相手は即座に盾で受ける構えを見せる。

「クリエイトウェ――」

 剣が盾に当たると思った瞬間、その剣がフッと掻き消える。

「ポン!」

 そしてスキルが発動し、盾と首の間に新たな剣が現れ、直後、敵兵の首が宙を舞った。

「出た出た、16歳の闘技大会優勝を阻んだ反則技!マジで死んだと思いましたからねあれ!」

「練習でも何度か父上を殺しかけた。本番でも成功してホッとした」

「マジで俺死にかけてたんですかあれ!?」

 まったく緊張感のない会話をする二人だが、戦っている相手はファギア皇国の精鋭達である。それでも、軍事国家ウェイルースの中でも一、二を争う技量を持つ二人では、相手にもなっていない。

 そしてまた一人、ジャレッド達に向かってくるファギア兵がいた。その姿は二足歩行する猫であり、いわゆる獣人と呼ばれる者だった。

 それを見た瞬間、ジャレッドは不快そうな表情を浮かべた。

「獣風情が、人間の真似事か。分を弁えろ!」

 神速の剣が、その胸を貫く。即座に剣を抜き、次の相手へ視線を向けようとした瞬間、獣人の目に一瞬光が戻るのが見えた。

「っ!?こいつが『セブンスライフ』のっ……!?」

 ジャレッドが防御するよりも早く、息を吹き返した敵がメイスを振りかぶり、殴りかかった。防御は間に合わないと判断し、ジャレッドは当たる瞬間に首を傾け、自身も横に飛ぶ。

 ゴッ!と鈍い音が響いた。直後、戦場全体に戸惑いの声が上がった。

「剣が!?ぐうっ!?」

「将軍がやられたのか!?」

 全員の持つ魔剣が、フッと掻き消えた。それに驚き、あるいは攻撃を受けようとしたところで消えてしまい、討ち取られた兵士もいた。

 ほんの一瞬、ファギア兵達は好機かと士気が上がりかけたが、ウェイルース王国の兵士達の動きは素早かった。

「全員、自身の武器を使え!訓練通りだ!」

「おう!」

 隙を晒したのは本当に一瞬で、ウェイルース兵達は即座に本来の武器を使い始めたのだ。これまでは剣の使い手が大半だったが、今度は長物使いも数多くおり、状況は好転したとは言い難かった。

 そして再び、戦況は五分どころかウェイルース側へと傾いていったが、最前線だけは危機的状況だった。

「ジャレッド将軍ー!!」

 頭をメイスで殴り飛ばされたジャレッドは、白目をむいてガクガクと痙攣していた。辛うじて死んではいないようだったが、このままでは即座に討ち取られるだろう。

 そこにバイドが駆け付け、まず獣人兵を切り刻み、他の兵士からの攻撃も盾を使って防いでいく。出来ればポーションを使いたいところだったが、ここで竜鱗将軍を仕留めようと猛攻を仕掛けてくる敵兵にたった一人では、さすがにそこまでの余裕はなかった。

「将軍、起きてくれ!あんたはこんなところで死ぬような奴じゃねえだろ!?だから起きてくれぇ!」

 そんなバイドの叫びを、ジャレッドはぐわんぐわんする頭でぼんやり聞いていた。

 とにかく、凄まじい衝撃だった。あそこまでの衝撃は初めて受けるもので、ひどく――。

 そこまで考えて、いや、と思い直す。

 かつて、似たような衝撃を受けたことがあった。あれは……そう、自動車に跳ね飛ばされた時だった。

 全身がバラバラになったような衝撃と激痛。傍らに落ちた学生鞄の中から、母が作ってくれた弁当箱がこぼれ、大好物のとんかつがアスファルトに落ちていた。激しくひしゃげた自転車の後輪がチキチキと音を立て、ゆっくり回っていた。

「おい頼むよ、早く起きてくれぇ!」

 自分を呼ぶ声がする。何とか焦点を合わせると、自分の親友が戦っているのが見えた。

「やす……ひろ……?」

 ジャレッドの声に、バイドはぎょっとしてそちらに視線を向ける。

「や、ヤスヒロ?おいどうした将軍、マジで大丈夫かよ!?」

 こちらに気を取られたせいだろう。後ろから敵兵が斬りかかろうとしているのが見えた。しかし、身体がほとんど動かない。どうにかしようと考え、そして思いつく。

「危……ねえ、ぞ……」

 かつて自衛隊の駐屯地の記念行事で、展示されていた武器。あれを使えば、助けることができる。

「クリエイト、ウェポン……!」

 ジャレッドの手に、黒く角ばった拳銃が現れる。震える手で狙いをつけ、そして引き金を引く。

 パン!と乾いた音が戦場に鳴り響き、敵兵の一人が倒れる。ジャレッドはそのまま、次の敵兵に狙いをつけ、次々に引き金を引いていく。

 パン!パン!パン!と乾いた音が響く度、離れた場所にいる敵兵が血を吹きあげて倒れていく。そして9人の敵兵を倒し、スライドがロックされたところで、ジャレッドはゆらりと立ち上がる。

「な、なんだ今の武器は!?飛び道具みたいだぞ!?」

「ウェイルースの新兵器か!?あんなの見たことねえ!」

「引け!引けぇ!」

 戦場を眺めると、遠くに一際豪華な鎧を着た男が見えた。恐らく、あれが敵の将軍だろう。

「逃がさ、ねえ、ぞ……クリエイト、ウェポン……!」

 拳銃を消し、再びスキルを使って武器を作り出す。今度は先程の銃よりずっと大きく長く、銃床部分が木製の自動小銃であった。

「引いて、回して……タでいいか……手はV字、肩に引き付けて……」

 ジャレッドはぶつぶつ呟きつつ、誰も見たことのない武器を慣れた手つきで構えた。

「撃つ」

 ダァン!と、先程より大きな音が響いたかと思うと、数百メートル先にいた敵の将軍が血を吹いて落馬するのが見えた。

「な、なんだあの武器はぁ!?あんな距離で、一瞬で殺されたぞ!?」

「とにかく逃げろ!あんなの敵うかぁ!」

 見たこともない、異様な力を持つ新兵器に恐れを為し、逃げ出していくファギア兵達。そして、同じく異様な力を持つ新兵器を目の当たりにし、唖然として将軍を見つめるウェイルース兵達。

「しょ、将軍……さっきのは、一体……!?」

 そして、ようやく正気に戻ったジャレッドはただ一人、ダラダラと大量の冷や汗を流すのだった。

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