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最強は私じゃなくて障害持ちの息子です  作者: Beo9
十二章 もう一人の日本人 ウェイルース編
54/65

ウェイルースの怪物

ここからしばらくリョウジ親子はお休みです

次回ぐらいまで戦争描写が続きます

 小国家が点在するこの国の中で、最も勢いのある国がウェイルース王国である。

 この二年の間に、5つの国を滅ぼし、7つの国を属国として従え、そして今なお更なる領地拡大を狙っている。

 元々が軍事国家ではあったが、それまではこれほどの勢いのある国ではなかった。ただ幾分か他の国より強いかというところで、以前リョウジが訪れたフォーヘイロ王国と戦ってどちらが勝つか、という程度だった。

 しかし今では、確実にウェイルース王国が勝つと言える。それほどに力と勢いのある国なのだ。そして、その力と勢いをもたらしているのは、たった二人の兵士の力によるものだった。

 この日も、ウェイルース王国は侵略戦争真っ只中であり、ファギア皇国との国境において、両軍は睨み合っていた。

 ファギア皇国軍は一万を超える軍勢だが、一方のウェイルース王国軍は僅か三千。それでも、士気はウェイルース王国軍の方がはるかに上回っている。

 こちらを包み込むかのような陣形を取るファギア皇国軍に対し、ウェイルース王国軍は一列の横隊。その先頭には、馬に乗った軽装備の二人の兵士がいた。

「ええとー、二の四の……ま、一万前後ですね。問題、面白み、共になし!」

 戦場だというのに、おちゃらけた態度で報告する男に、先頭に立つ男が低い声で返す。

「面白みなどいらん。距離は」

「へいへい、ジャレッド将軍はお硬いことで。んじゃ、測量開始」

 言いながら、二番手の兵士は万歳をするように、両手を斜めに上げて両手を開いた。

 ぎょろりと、その腕に目玉が現れる。そして腕全体、掌、指に至るまで大小様々な目が現れ、一斉に正面を見つめた。

「……距離は2キロ。射程ギリですね。ま、そこはジャレッド将軍の頑張り次第ですね?あー、やっこさん達怯えてますねぇ。こーりゃ一方的になりそうですなぁ」

 いつの間にか、目は額や頬にも現れており、それら全ての目を使って全体を把握していく。

「ふん。怯えるぐらいなら、我等が王にひれ伏せばいいものを」

「背負ってるもんがあるんでしょう、先祖代々のうんたらとか、騎士としての何たらとか」

「くだらん。命と民を賭けるのに、全く値しないものだ。もっとも、奴等は亜人を優遇する国だからな……ドワーフの有用性は認めるが、出来れば皆殺しにしたいところだ」

 ジャレッドと呼ばれる男は、不快そうにそう吐き捨てる。それに伴い、着込んだスケイルメイルがジャランと音を立てる。

「まあいい。バイド、お前は動きを見張れ。俺は武器を作る」

「了~解!さあ、将軍の発声練習の時間ですよ~」

「やかましい」

 バイドをその場に残し、ジャレッドは横隊の端まで馬を駆けさせる。

 それを見ていたファギア皇国軍は、いよいよ恐れていた事態が始まると恐慌状態に陥った。

「お、おい!来るぞ!ついに来ちまうぞ!」

「おいどうすんだよ!?逃げんのか!?それとも突っ込むのか!?」

「早くしろよ!どう動くんだよ!?」

 そんな状況に構うことなく、ジャレッドは横隊の端まで来ると、味方の方へ片手を伸ばし、大きく息を吸った。

「全員、準備は良いな!?」

 その声は凄まじく大きく、自軍の端から端まで余裕をもって届くほどだった。

「おう!」

 それに対し、自軍の兵士達も声を上げて応える。

「全員構えろ、クリエイトウェポン!」

 ジャレッドが言い終えた瞬間、味方の前に驚くほど巨大なバリスタが現れた。その矢はもはや丸太と表現するほど巨大な物であり、弦ももはや縄である。再装填の事など一切考えられていない、一発のみの攻城兵器である。

 同時に、ジャレッドは馬を全力疾走させ、次々にバリスタを作り出す。

「クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!」

 走りながら次々にスキルを発動し、味方にバリスタを作っていく。そのままバイドの横を通り抜けると、彼は前方を監視しつつもジャレッドに声をかけた。

「将軍頑張ってくださーい!」

「クリエイトウェポン!クリエイトウェポンやかましい!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!」

 そうして、大量のバリスタを作り終えると、ジャレッドは再び軍の中心へ戻り、そこで馬を下りた。

「ふー……バイド、そろそろ来るか?」

「ですね。たぶん、こっちの射撃に合わせて、でしょうね」

「そうか。なら、全軍、射撃用意!」

 ウェイルース兵は一糸乱れぬ動作で、同時にバリスタに取りつき、狙いを定めた。そして、号令が下される。

「左より、撃てぇ!」

 左から順に、順次バリスタが発射されていく。同時にファギア兵達が突撃を開始したが、同時発射ではないため、後半のバリスタは当然角度を変えて撃ち出されていく。

 その様は、まさに地獄絵図だった。盾など何の意味もなく、鉄だろうが何だろうが構わず貫通し、吹き飛ばされた兵士に当たって死ぬ兵士すら存在する。さらに巨大な矢は人の身体を貫くどころではなく、当たれば爆ぜるように千切れ飛んでしまう。

 しかし、本当の地獄はここからだった。全員が射撃を終えると、バリスタはフッと掻き消えた。同時に、ジャレッドの両側にいる兵士が軽く腰を落とすと、そこにジャレッドが両手をかざした。

「クリエイトウェポン!」

 ジャレッドの左右に、先程のバリスタが現れた。両翼の兵士が即座にそれを発射すると、途端にバリスタは掻き消える。そしてまた、ジャレッドがスキルによってバリスタを生成する。

「クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!はぁ、クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!クリエイトウェポン!!」

 若干息切れしつつも、何度も左右に手をかざしながらスキルを連発する姿は多少滑稽ですらあるものの、それによって作り出される光景は滑稽さの欠片もない。

 およそ0.5秒に一回、二発の巨大バリスタが敵陣に撃ち込まれる。犠牲者数は多くないものの、当たれば凄惨な死体と成り果てるこの武器は、相手の士気を著しく下げている。

 しかも、射程が弓とは段違いであるため、ファギア兵達は最低でも弓の射程に入るまでは、ただ削られるしかないのだ。自分が標的にされないことを祈りながら、敵陣に突っ込むしかないファギア兵の士気はひどく低い。

 この戦法が、ウェイルース王国躍進の理由の一つだった。本来であれば防衛か、あるいは運搬や組み立てに多大な労力を費やして、それでもなお数分に一度しか使えないはずの攻城兵器が、毎秒襲い掛かる。しかも、攻め手側であるにもかかわらず、この戦法が使えるのだ。そのため、守勢に回った相手は無為に削られるしか道が無いため、防衛側の兵士をこちらに引きずり出すことができるのだ。

「将軍、距離1キロを切ります!」

「クリエイトウェポン!よぅし、武器を変えるぞ!クリエイトウェポン!」

 次に作り出されたのは、それまでよりは幾分か小型化したバリスタだった。その代わり、二連射式となっており、手数は倍になった。当然、犠牲者数も倍になる。

 それでも、まさに味方の死体を踏み越えてウェイルース側に近づき、ファギア兵達が弓を射かけつつ、いよいよ白兵戦と武器を構えだした。それを見て、ジャレッドは水を一口飲むと、自らも武器を抜く。

「ふう、全員、構えろ!愚かなファギア兵に、ウェイルース王国の力を見せてやれ!」

「おおお!」

 地鳴りのような歓声と共に、全員が一斉に剣を抜く。長物を持つ兵士は少なく、しかも騎兵は一人もいない。ともすれば、距離を取って戦えば容易に勝てそうにすら見えるが、彼等に限ってそれはあり得ない。

「バイド、行くぞ」

「了解!頼りにしてますよ将軍!」

「俺もだ。支援は任せる」

 誰よりも早く、ジャレッドとバイドが敵へと突っ込む。それを見たファギア兵の誰かが、恐怖に染まった声で叫んだ。

「き、来たぞぉ!竜鱗将軍ジャレッドと百目のバイドだぁ!」

 その言葉が、彼の最後の言葉となった。開いた口の中に剣を突き刺され、ファギア兵は息絶えた。

「殺せ!そいつさえ殺せば俺達は勝てる!」

「全員でかかれぇ!」

 殺意と白刃が降り注ぐ中、ジャレッドは表情一つ変えずに立ち回る。

 上から襲い掛かる剣を横にいなし、使い手の喉を突く。右から突き出された槍を体捌きでかわし、胸を突く。一瞬遅れて左から来た槍を剣で受け流し、相手の両腕を切り落とす。

「クリエイトウェポン!」

 一瞬の隙を突いてスキルを発動すると、その手にハルバードが現れた。それを振り回し、雑草でも薙ぎ払うかのように敵兵の群れに突っ込むジャレッド。それを追うバイドは、ジャレッドが仕留めきれなかった敵兵のとどめを刺しつつ、反対側の敵を相手している。

 その後ろから、一人のファギア兵が声もなく襲い掛かる。完全に不意を突いたと思った瞬間、バイドの首筋に巨大な目が現れた。

「えっ……?」

 直後、そのファギア兵の胸にバイドの剣が突き刺さっていた。

「百目のバイドってのは、まんまの意味だぜ?後ろも上も下も、俺には死角なんてねえからな」

 振り返りもせずに言って、バイドは再びジャレッドの支援に戻る。そのジャレッドは、敵兵をまるで作業のように殺し続ける。

 ハルバードで斬り裂き、剣で突き刺し、槍を投げる。バトルアックスで薙ぎ払い、メイスで吹き飛ばし、バトルハンマーで叩き潰す。ジャレッドはありとあらゆる武器を作りつつ、その全ての扱いが一流以上の腕前であり、どの武器を使っていても全く隙というものが無かった。

 武器の届く範囲に入れば、たちまち命が失われる。間合いの内であれば、次の瞬間には殺されている。たとえ間合いの外であろうと、即座に詰めて殺される。

 その強さは、およそ人とは思えないようなものだった。彼の竜鱗将軍という呼び名は、スケイルメイルを好んで着ることと同時に、実はそれは自前の鱗で、竜が人間の姿を取っているのではないかという噂から付けられたものである。

「おい、こいつおかしいだろ!?なんで剣術持ちの俺より……ぐっ、あ」

「力いくつあるんだよ!?俺だって150はがばっ!」

 そして、敵の中央をたった二人で突破しかねない彼等以外の兵士も、無視できる存在ではない。

 戦場のあちこちから、落雷の音が響き始める。それと同時に、ファギア兵の叫びもこだまする。

「おい、こいつらの剣受けるな!こいつらが持ってるのはトールソードだ!」

「イフリートハンドの奴等もいるぞ!くそっ、こんなの反則だろ!?伝説の魔剣を大量生産してんじゃねえよ!」

 斬った相手に雷撃を加えるトールソードに、振った瞬間鉄をも溶かす熱を発するイフリートハンド。それはウェイルース王国が持つ、宝物庫に収められた魔剣なのだが、ジャレッドのスキルはそれすらも作り出すことができる。そのため、部隊のほぼ全員が魔剣持ちになっており、相手が倍の数いたとしても、容易く勝てるほどの驚くべき集団と化していた。

 ジャレッドに槍が突き出される。それを紙一重でかわすと、ジャレッドは腰を落とした。瞬間、スケイルメイルの鱗が逆立ち、槍を絡め取る。体勢を崩した相手を生成した槍で突き殺したとき、バイドが声を上げた。

「将軍、第4部隊!」

「わかった、支援に向かう。クリエイトウェポン!」

 戦場のど真ん中に、巨大なバリスタが二台現れた。思わずファギア兵達が足を止めた瞬間、ジャレッドとバイドは同時にバリスタに取り付いた。

 バスン!と大きな音を立て、バリスタが発射される。密集地帯で放った分、その被害は大きく、合わせて二十人近くが吹き飛んだ。

 そのままバリスタは消さず、二人は左へ走る。敵兵は慌ててその後を追おうとするも、バリスタが邪魔をしてすぐには近寄れない。

 ジャレッドは苦戦している味方の近くに来ると、一際大きな声を上げた。

「クリエイトウェポン!」

 その手に、グレイブの上部に鉤のついたフォチャードという武器が現れ、ジャレッドはそれを一閃し、敵と味方の間に躍り込んだ。

「な、ジャレッド将軍!?」

「休め、俺が相手してやる」

 言いながら、ジャレッドは敵兵の攻撃を一手に受け、猛然と戦い始める。さすがに全軍をまとめる将軍にそんな真似はさせられないと、仲間の一人は慌てて戦列に加わろうとするが、別の仲間に引き留められた。

「大丈夫だ新人、言われた通り休め。呼吸を整えろ」

「で、でも将軍が……!」

「だからこそだ。余計な手間と心配をかけさせるな。あの二人は、こんな奴等にやられるほど弱くねえよ」

 彼の言葉通り、たった二人の兵士はその十倍ほどの数をまとめて相手にしても、全く引く気配すらなく、それどころか押し返しすらしていた。

 十秒ほど呼吸を整えると、部隊長が声をかけた。

「将軍、ありがとうございます!第4部隊、いけます!」

「わかった、任せるぞ」

「第4は新人多めだからね、やばい時は隣に助け求めなよ!」

「了解しました、バイド副将軍!」

 そこで、バイドは全身に目を作り出すと、ジャレッドに負けないほどの大声で叫んだ。

「第5部隊!第4部隊の支援しつつ前線を上げろ!第7部隊、そこで防御戦闘に入れ!第8部隊は第9部隊の援護に入れ!」

 その号令に合わせ、戦場のあちこちから太鼓の音が響き渡った。それを確認すると、ジャレッドは槍を振り回しつつ声をかける。

「助かるぞ、バイド」

「同期の誼ですよ。それに将軍のおかげで、俺もこんな大役得られたんですしね」

 ウェイルースの躍進の理由の二つ目が、このバイドのスキルと能力である。前線で無類の強さを発揮するジャレッドではあるが、その分視野が狭くなる。それを、文字通りの百の目で全体を見ることができ、指揮を一手に引き受けるバイドが補佐するおかげで、ジャレッドは伸び伸びと力を振るうことができるのだ。

「ふん、お前自身の力だろう?他人のせいにするな」

 顔には薄ら笑みを浮かべつつ、しかし戦う腕は苛烈な攻撃を続けている。長物を使うジャレッドには誰も近寄ることすらできず、ただ倒されるばかりである。

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