古代エジプトの王名表は正しいのか? ⑥
アビドスの王名表に多くの抜け番があり、それを補うのがトリノの王名表。
ということは、トリノの王名表が正しいのか?
イエス。
と言いたいところなのだが、残念ながらそうとも言えない。
実を言えば、トリノの王名表には非常に困った部分がある。
現在知られていない王が記されているのだ。
たとえば、それがいるかいないかもわからない初期の王たちのなかに紛れているというのはまだいい。
だが、それがピラミッド世代の王だと言ったらどうだろう。
たとえば、ギザのピラミッド群をつくった第4王朝にいるとなったら。
このトリノ王名表は王名と治世年数など記されているのだが、保存状態が悪く多くの部分が欠落している。
そこで、王名が残っている王と治世年数をヒントに他の王を探り当てていくとやり方が採られるわけなのだが、第4王朝の王を探る場合、第3王朝の最後の王とされるフニの名からそれを探る。
そして、ここはアビドスの王名表を参考に進めていけば、スネフル、クフ、ジェドエフラー、カフラー、メンカウラー、シェプスセスカフとなり、第5王朝の初代ウセルカフとなる。
だが、トリノの王名表ではさらにふたり王がエジプトを治めていたことになる。
もちろんその存在を大々的に示す建造物はない。
そのため、アビドスの王名表に名がある王だけが認定されているのだが、少なくても、ひとりについてはそれを匂わすものはある。
ザウィエト・エル・アリヤンにある建造初期段階である石棺を納める深い地下ピット以外は完成しないまま工事が止まった巨大未完成ピラミッド。
それでも、もうひとりについてはその香りをない。
この部分だけでもトリノの王名表の正しさを疑うには十分なものといえる。