第三章 欺瞞の仮面(5)
「華蓉……。どういうことか説明してくれ」
当惑している煌の目の前に私は仮面を差し出し、陽の光が斜めに当たるように傾ける。
「え……。金の龍?」
目を細めながら確かめるように煌はつぶやいた。
「仮面の裏側は漆が塗られているけど、その下に金の塗料で龍が描かれているのよ。
漆の下に金細工が施されている場合、強い光を斜めから当てると浮き上がって見えるって聞いたことがあったの」
「普段、宝物庫から出されてなかったから、誰も気づかなかったのか……」
「すごい!」
そう言って煌の後ろから駆け寄ってきた花絲もピョンピョンと飛び跳ねながら、仮面を覗き込んだ。
「でも、結局どういう意味なんだろう?」
煌は花絲に仮面を渡すと、そう言って小さく唸った。
「まぁ、そんなに簡単に分からないものなのかもしれないわよ」
煌は不安そうに「え?」と聞き返す。
「この仮面の元の持ち主と現在の持ち主は面識があるのよね?」
現在の皇帝が皇帝として選ばれたのは、先帝が病床に就かれた時だった。
その段階で二人は養子縁組をしたわけだし、面識はあるに違いない。
「あることは、ある……」
「ならさ、本当に言いたいことならば面と向かって言うと思わない?
それをあえて陽の光を当てて、絵が浮かび出るような仮面に意味を込めるなんて回りくどいことをするのは、それにも意味があるはずよ」
まだ納得のいかない様子の煌の肩を私は、慰めるように軽くたたいた。
「大丈夫。きっと仮面の持ち主が見たら、ちゃんと意味が分かるようになっているはずだから」
おそらく私達は分からないが、皇帝が見たら金色の龍の意味が分かるに違いない。
「そうだといいんだけど……」
結局、その日は煌の顔が明るくなることはなかった。
話の切れがいいので、第三章 欺瞞の仮面(5)は、ここまでです。
えらい短いので本日、もう1話公開します。




