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【電子書籍化】文官貴族令嬢は、マッチョな騎士に首ったけ。  作者: 櫻野くるみ


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10/12

10話 プロポーズとプニプニされました

もう1話(全11話)で完結します。

「ここは?」


 グレイによって、練習場から突然見慣れぬ部屋へと運ばれてしまったアナベル。

 お姫様だっこで連れてこられた場所は、消毒薬の香りが漂う小さな部屋だった。


「騎士団の医務室だ。ちょうど誰も居なくて助かったな」


 何故私を医務室に?


「私、具合悪くないですよ?」


 泣いてたから、勘違いをさせてしまったのでしょうか。


「そりゃあわかってる。周りの奴らに注目されてたからな。逃げてきた。アナベルの泣き顔を他のヤツには見せたくないしな」


 見られていましたか! それは恥ずかしいです。


「すみません。お気遣いをありがとうございます」

「いや、それはいい。それよりも、さっきは俺にもう会えないと思って泣いてたんだよな?」

「はい……」


 確かに言いました。 なんだか子供みたいですよね。 でも今の私には、グレイ様と会えなくなる生活なんてもう考えられないのです。


 グレイは何か考えているようだったが、医務室の入り口辺りをキョロキョロと振り返り、何かを確認すると真面目な口調で話し出した。


「アナベル、前から言おうと思っていたことがある」

「はい、なんでしょう?」


 アナベルにも緊張感が伝わり、グレイが何か大切なことを伝えようとしているのだとわかった。

 グレイは息を大きく吸うと、一気に言った。


「お前が好きだ。俺と結婚して欲しい」

「ほえ?」

  

 アナベルは咄嗟に意味が通じず、変な声が出てしまった。


 好き? グレイ様が私の事を? 結婚って……。


「ひやぁぁぁぁぁ、結婚?グレイ様が私と!?」

「なんだ、その反応は!傷付くぞ。嫌なのか?筋肉だけの男じゃ嫌か?」

「いえいえ、そんな!グレイ様は筋肉以外も素敵な男性ですし……」

「じゃあいいのか?俺と結婚するか?」

「は、はい!お願いします!!」


 アナベルは突然のプロポーズに驚きすぎて、勢いで返事をしてしまった。 しかし、グレイに想われていたことが素直に嬉しかった。


「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」


 叫ぶと同時に、グレイが大きな体で強くアナベルを抱き締める。アナベルの体はグレイにすっぽりと覆われてしまった。


「ぶふっ。グレイ様、ちょっと苦しいです……でも筋肉に包まれて幸せぇ……」

「ああ、悪い……って、アナベルは相変わらず筋肉が好きだな」

「好きです。でもグレイ様の筋肉だから好きなのです。私、グレイ様が好きなんです」


 告白しながら、アナベルもギュッとグレイを抱き締め返した。 アナベルの腕では広い背中には回しきれない。


「なっ!いきなり可愛いことを言うな!手を出したくなるだろーが!!」


 手を出す? それって触られるってことよね?つまり……。


「あーーーーーっ!!」


 アナベルがグレイの胸で叫んだ。


「うぉっ!なんだなんだ、どうした?」

「グレイ様、申し訳ありません……。私、鍛えたことがないので、筋肉がないのです。グレイ様が触っても、プニプニで全然面白くないと思うのです……」


 失敗しました。 私も少しは鍛えておくべきでした……。


 項垂れるアナベルに、頭上から呆れたような声がかかった。


「あのな、間違っても鍛えたりするなよ?俺はプニプニがいいんだ。カチカチはごめんだからな?」

「え?プニプニでいいんですか?」

「当たり前だ。アナベルならまぁカチカチでも許せるが、ほら、この柔らかさが最高だ」


 アナベルの二の腕をプニプニしている。


 プニプニ プニプニ


 なんでしょう…… 猛烈に恥ずかしいです。


「あの、グレイ様。散々私から触っておいてあれなのですが、触られるのって恥ずかしいですね」


 グレイに赤い顔をして、上目遣いで訴えるアナベル。


「くっ、俺の忍耐力に感謝するんだな!今日は腕だけで勘弁してやる」


 アナベルはグレイが満足するまで、ひたすら羞恥に耐えながら二の腕をプニプニされ続けたのだった。





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