10話 プロポーズとプニプニされました
もう1話(全11話)で完結します。
「ここは?」
グレイによって、練習場から突然見慣れぬ部屋へと運ばれてしまったアナベル。
お姫様だっこで連れてこられた場所は、消毒薬の香りが漂う小さな部屋だった。
「騎士団の医務室だ。ちょうど誰も居なくて助かったな」
何故私を医務室に?
「私、具合悪くないですよ?」
泣いてたから、勘違いをさせてしまったのでしょうか。
「そりゃあわかってる。周りの奴らに注目されてたからな。逃げてきた。アナベルの泣き顔を他のヤツには見せたくないしな」
見られていましたか! それは恥ずかしいです。
「すみません。お気遣いをありがとうございます」
「いや、それはいい。それよりも、さっきは俺にもう会えないと思って泣いてたんだよな?」
「はい……」
確かに言いました。 なんだか子供みたいですよね。 でも今の私には、グレイ様と会えなくなる生活なんてもう考えられないのです。
グレイは何か考えているようだったが、医務室の入り口辺りをキョロキョロと振り返り、何かを確認すると真面目な口調で話し出した。
「アナベル、前から言おうと思っていたことがある」
「はい、なんでしょう?」
アナベルにも緊張感が伝わり、グレイが何か大切なことを伝えようとしているのだとわかった。
グレイは息を大きく吸うと、一気に言った。
「お前が好きだ。俺と結婚して欲しい」
「ほえ?」
アナベルは咄嗟に意味が通じず、変な声が出てしまった。
好き? グレイ様が私の事を? 結婚って……。
「ひやぁぁぁぁぁ、結婚?グレイ様が私と!?」
「なんだ、その反応は!傷付くぞ。嫌なのか?筋肉だけの男じゃ嫌か?」
「いえいえ、そんな!グレイ様は筋肉以外も素敵な男性ですし……」
「じゃあいいのか?俺と結婚するか?」
「は、はい!お願いします!!」
アナベルは突然のプロポーズに驚きすぎて、勢いで返事をしてしまった。 しかし、グレイに想われていたことが素直に嬉しかった。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶと同時に、グレイが大きな体で強くアナベルを抱き締める。アナベルの体はグレイにすっぽりと覆われてしまった。
「ぶふっ。グレイ様、ちょっと苦しいです……でも筋肉に包まれて幸せぇ……」
「ああ、悪い……って、アナベルは相変わらず筋肉が好きだな」
「好きです。でもグレイ様の筋肉だから好きなのです。私、グレイ様が好きなんです」
告白しながら、アナベルもギュッとグレイを抱き締め返した。 アナベルの腕では広い背中には回しきれない。
「なっ!いきなり可愛いことを言うな!手を出したくなるだろーが!!」
手を出す? それって触られるってことよね?つまり……。
「あーーーーーっ!!」
アナベルがグレイの胸で叫んだ。
「うぉっ!なんだなんだ、どうした?」
「グレイ様、申し訳ありません……。私、鍛えたことがないので、筋肉がないのです。グレイ様が触っても、プニプニで全然面白くないと思うのです……」
失敗しました。 私も少しは鍛えておくべきでした……。
項垂れるアナベルに、頭上から呆れたような声がかかった。
「あのな、間違っても鍛えたりするなよ?俺はプニプニがいいんだ。カチカチはごめんだからな?」
「え?プニプニでいいんですか?」
「当たり前だ。アナベルならまぁカチカチでも許せるが、ほら、この柔らかさが最高だ」
アナベルの二の腕をプニプニしている。
プニプニ プニプニ
なんでしょう…… 猛烈に恥ずかしいです。
「あの、グレイ様。散々私から触っておいてあれなのですが、触られるのって恥ずかしいですね」
グレイに赤い顔をして、上目遣いで訴えるアナベル。
「くっ、俺の忍耐力に感謝するんだな!今日は腕だけで勘弁してやる」
アナベルはグレイが満足するまで、ひたすら羞恥に耐えながら二の腕をプニプニされ続けたのだった。
 




