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青い星赤い星~光を繋ぐ者~  作者: さいとう みさき
第三章:ゆずれないモノ
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第25話:ゴースト

火星で生まれ育ったミシャオナ。

彼女にはネットで知り合った友人レーメルがいた。

しかしある日レーメルから緊急の連絡が入りそこから少女ミシャオナの人生は一変する。

火星を地球を、いや全人類を巻き込むこの事態に二人の少女はどう立ち向かうのだろうか……



「何がおこっていると言うのだ……」



 彼は自分の目の前に広がる光景に驚きと絶望、そして自分の不運を呪った。

 司令官席から見えるそれは友軍のボトムが次々とゴーストのボトムに落とされる光景だった。

 自軍のボトムに比べゴーストたちのボトムは考えられない動きをしていたからだ。

 どんなにエースパイロットでもあんな動きは出来ない、いや、それをしてしまったら中に乗っている人間が持たない。

 いきなりの軌道変更は勿論、急停止や急発進、アクロバット的すぎる動きはもはや人が耐えられる動きでは無かった。


 そしてそれを戦艦で迎撃させようとするもいきなりブリッジのスタッフが騒ぎ出し何が起こったのか聞くと目の前のモニターがいきなり変わりそこにゼアスが映し出された。



『無駄な事をしたものだな、しかし君たちには全世界に我々ゴーストの力を示す為の礎になってもらおう』



 画面に映るゼアスはそう言って口元をニヤリと釣り上げる。

 それを見て総司令はただ叫ぶことしか出来なかった。 



「貴様ッ! おのれ! おのれぇっ!!」



 ゼアスの映っていたモニターから彼の姿が消え、総司令官がそう叫んだ瞬間ブリッジの各操作パネルがいきなり発熱を初めて光を放つ。



「し、指令っ!!」


「うわっ!」


「な、何だこれっ!!」



 乗組員は悲鳴を上げるがそのコントロールパネルはますます輝きを増しそしてブリッジ自体が光に包まれる。


 そして彼らはこの暗礁区の宇宙ゴミの仲間となるのだった。



 * * *



 貨物船のハンガーで大人しく脱出の機会を見ていたアールゲイツはその光景をボトムのモニターから見て思わず唸ってしまった。

 映し出されたそれはこの暗礁区の宇宙空間に飛び回る数々のボトムが残すバーニアの光の軌跡。

 それはのろのろと動く宇宙軍のボトムの周りに飛び交い、宇宙軍のボトムを次々と仕留めて行く。

 まるで練習用のターゲットかの如く仕留められてゆく宇宙軍のボトムは全くと言って良いほど歯が立っていなかった。



「こんな事があるのかよ…… あのUS経済圏の宇宙軍が何もできずじまいで……」



 彼がそうつぶやくと画面向こうの廃棄コロニーが光って動き出す。

 それは核パルスによる移動が始まった事を物語っていた。


 そして画面端にいた宇宙軍の戦艦がいきなり爆発する。

 それも次々と。



『これがゼアスたちの答えよ。本気で全人類をゴーストにするつもりなのよ…… 廃棄コロニーの移動も始まってしまった。このままでは人類は……』


 アールゲイツのつぶやきにレーメルがそう答えるとアールゲイツはボトムの操作パネルを叩く。



「これじゃぁ、俺の逃げる先がねえじゃねぇかっ! いくら何でもUS経済圏の宇宙軍が全滅とかありえないだろうがっ!!」



 総数約百二十機の軍用ボトムに四十隻からなる宇宙軍。

 それらが無残にもゴミへと化していくのをボトムのモニターが映し出すのをアールゲイツはただ見る事しか出来なかった。。

 

 しかしレーメルはアールゲイツに言う。


『このままでは本当に人類が滅ぶ、ボトムを動かして。このコロニーの居住区にある私のラボへ向かいましょう。多分本体がもう着いているだろうけど今はそこへ行くしかないわ』


「それで何とかなるのかよ?」


 画面向こうのレーメルに向かってアールゲイツは不安そうな顔をしながら聞く。

 しかしレーメルは頷きながら言う。


『本体の私なら多分ゴーストのシステムを乗っ取り、動き出した廃棄コロニーの核パルスのコントロールを乗っ取るでしょうね。それしか今は手がないはず。うまく地球や月への落下が回避できれば何とかなるはず。そしてこれが失敗すればゼアスたちに次の手は無い。それにはミシャオナだけでは荷が重すぎるわ。お願いアールゲイツ、手を貸して!』


「……是も非も無いか、ちくしょう、完全に貧乏くじだ!! その研究所の場所を表示しろ、抜け出すぞ!!」


 そう言ってアールゲイツはこのボトムを起動させる。

 貨物区とは違いここにはゴーストの操る搬送用のロボットはいない。

 貨物船のハンガーをこじ開け、逃げ出すアールゲイツ。


 彼のボトムは他のゴーストたちが動き出す前に居住区へと向かうのだった。



 * * * * *



 居住区にはこのコロニーを治めていた政府の建物がある。


 ここはコロニーの管理も任されたコントロールシステムもあり、その運営を一手に任されていた。

 無人の今でもその役割を続けている。

 そして当時使用され始めたメグライトを使った記憶媒体やコンピューターもいち早く導入されていた場所だった。


 そんな場所で真っ白な仮想空間に二人の男性が裸の状態で足の無い椅子に座っていた。



『なに? 貨物船からボトムが一機逃げ出しただと?? アールゲイツは始末できたのではないのか?』


『どうやら偽情報が流されていたようだな。あの後アクセスで分かったが船のAIはサブAIのようだった。メインコードを持つのは別のAIだったらしい。まったく、狡いことするぜ』


 ゼアスたちゴーストは基本同じ記憶媒体の中にいるが個々のデーター領域は分けられているので同じになる事は無い。

 なので意思疎通はこうして仮想空間で対面して会話する。


 真っ白な空間に足の無い椅子に座り、肘をひじ掛けに付けながら裸のゼアスは面白そうに聞く。


『それで奴は何処へ向かった?』


『憶測だが、レーメルがいた研究所を目指している様だ』


『レーメルのラボか…… 確かあそこにはレーメルのコピーが残っていたはずだが……』


 そう言うゼアスは見えない仮面の下で一瞬眉をひそめる。

 そんな彼に気付かず話を続ける。


『本体は何処行ったかしらねぇが、まさかレーメルが加担しているのか!? そういや、あのミシャオナとか言う火星人と仲良かったみてぇだが……』


『空港の襲撃の時に君はその少女を逃がしていたんだっけ?』


『あ、あれは何処の誰かが俺の邪魔を…… って、ちょっと待て。それってまさかレーメルか!?』


『……可能性はあるかもな。彼女は人類をゴーストにすることに反対だった。初期ゴーストの有力者で在りながら我々オリビヤの高尚なる思想を理解してくれなかった。もしかすると今回の件に深く関与しているかもしれないな』


『ちっ! ゼアス、あんたが何と言おうとこんな腐った世界は破滅させる。人類はゴーストになる事により身分の格差も貧富もなくなる。肉の身体を捨て更なる高みへと行くんだろう!?』


『ああ、そのとおりだ。だから私は全ての業を背負い歴史にその悪名を残す。しかしそれによって人類は新たなステージに立つのだ、もう止められはしない』


 ゼアスはそう言って同じく裸で足の無い椅子に座っているその男に言う。


『アゴザ、頼めるかい? そのボトムはラボのレーメルを回収してここへ来るだろう。私たちを止める為に』


『良いのか? 下手したらレーメルのデーターも……』


『言っただろう、私は全てのエゴを飲み込む覚悟があると。たとえ彼女を失ってでもな!』


 それだけ言ってゼアスは立ち上がりこの仮想空間から消える。


 残されたアゴザは大きくため息をついて一人言う。



『あんたがそれでいいなら俺は自分の理想の為に動くだけさ。たとえあんたの昔の恋人を殺してでもな……』



 アゴザはそう言って同じく立ち上がりゼアス同様この仮想空間から消えるのだった。




 * * * * *



「レーメル、あそこだよね!?」


『そうよ、あれがこのコロニーの管理システムがある政府の建物。既にゴーストのネットにはアクセスできているから門を開くわ。そのまま一番高い建物に行って!』



 ミシャオナが運転するエレキカーは限界値のスピードまで出してそのまま門を潜り抜ける。

 そして施設の中で一番高い建物の前まで行く。

 何かしらの妨害が有るかと気が舞えていた割には何も無い。



「な、なにも無かったね?」


『そりゃそうよ、私がここのセキュリティーをもう押さえたもの。それよりミシャオナ急いで。流石に他のゴーストたちも気付き始めるわよ!!』


「う、うん。分かった!」




 ミシャオナそう答えて重い体を何とか動かしながら重いレーメルのアタッシュケースを引きずり建物に入って行くのだった。



面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。


*申し訳ございませんが、私生活がまだまだ忙しくなっておりまして更新はしばらく不定期とさせていただきます。

読んでいただいている方にはご理解いただけますようお願い申し上げます。


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