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5.ラブ&ピース

「ソルティ長くないか」

「京介もいつまでそうしてるつもり」


拓実さんとリリアナの声が聞こえ我に返って慌てて離れた。顔が熱い。


「すいません。つい」


二人がジト目でこっちをみてくる。


そんな目で見るな。


俺には下心はなかった。それは本当だ!

ただ、柔らかくていい匂いはしたな・・・


思い出してまた顔が熱くなる。


「京介!何をおもいだしたの!」


何かが飛んできたのでよけた。


ドン。


後ろを見ると壁が壊れている。

えっ!?


リリアナを見ると紫の炎が手の上に乗っている。それ投げたの?


目が怒っている。

俺なんかした???


「リリアナ、なんで怒ってるんだ?」


聞いてみるとますます怒りだし炎を投げてきた。なんとか逃げながらよける。


「まあまあリリアナ、京介も男なんだからしかたないさ」


拓実さんがフォローにならないフォローをしてくれた。


「うるさい!」


そして今度は拓実さんにも炎が投げられる。華麗によけて、挑発する拓実さんの方に夢中で俺のことは忘れたようだ。二人で追いかけっこをしだした。


「なんです?この騒がしいのは」


扉からストレートのブロンドヘアで赤い瞳をした美少女が入ってきた。その時、ちょうどリリアナが放った炎がそっちにいってしまう。


ドーン


直撃だった。大丈夫!?


「なんですか!これは!」


煙の中から緑の結界の中にいる美少女が拳を握って怒っている。大丈夫そうだが怖い。リリアナも拓実さんも顔が青ざめている。

何者なんだ?


「拓実とリリアナですか。覚悟は出来ていますよね」


王様と魔王を呼び捨てして、怒りながら笑っている。手に光の玉を出して二人に向かってなげた。


今度はリリアナが追いかけられている。

拓実さんはうまく逃げてこちらにやってきた。


「誰なんですか?」


「この国の聖女でアイドルのティナだ」


ティナ・・・この前の当番の時の放送の人だ。


聖女でアイドル。魔王でアイドル。

すごい掛け持ちだ。見た目も正反対だよな。性格は似てるような気がするが。


俺の聖女はどこにいるんだろ。


リリアナがカイトの後ろにかくれた。


「カ、カイト様・・・」


顔を真っ赤にさせてティナは急に潮らしくなった。


「カイト笑え」


リリアナが小声で言うとカイトは笑顔をティナに向けた。笑うことに衝撃をうける。


もじもじしていたティナはそのスマイルに撃沈した。分かるくらい見惚れてる。


「ティナはカイトにほれてるんだ」


レオが俺に教えてくれた。


「ただのストーカーだ」


「違います!」


そこ声にリリアナとティナが反応する。

仲良いな。


改めてティナに紹介された。


「聖教事務所のティナよ。よろしく京介。リリアナのことが嫌になったら私のところきてもいいわよ」


ツンデレな人かな。顔は優しそうだもんな。


「京介を勧誘するな。ストーカー女」


「ストーカーじゃないっていってるでしょ!この性悪女」


口は悪い。俺の聖女はどこに・・・


いいのかカイトが見てるぞっと拓実さんにいわれ拳を握って唸っている。


二人がにらみ合う。お互いにプイッと横をみた。なんだかかわいい。


「こら二人ともやめろ。ティナ何か用事できたんだろ?」


「はい。この間のリリアナの報酬をもってきたのよ」


アイテムが入った袋をティナが拓実さんに渡す。

魔獣を倒すとシューちゃん軍団から回収したアイテムからその分の報酬がもらえるらしい。


「リリアナ、これで京介の武器でもつくってやれ」


そう言って袋をリリアナに渡した。

うんと嬉しそうに頷くリリアナを見て、俺何もしてないけどいいのかな。


断ろうとしたが、拓実さんが話を変えたので断るタイミングを失ってしまった。


「ちょうどいい。今日のライブはこの三組だったな。ついでに打ち合わせにしよう」


拓実は思いついたように話し出す。


この国では毎週三組の歌い手がステージで歌うことになってる。


あのステージは歌い手が魔力を込めてつくっている。歌い手によってステージが変わる。あれだけの魔力を使いつつ、踊って歌っているのも凄い。さすがSS級。


「歌う順番はわかってるな」


「「「はい」」」


「では、理事長の挨拶です」


それで打ち合わせ終わりなの。ソルティ王妃が前にでた。


「みなさん、今宵も全力でパフォーマンスをお願いしますね。歌で世界はラブ&ピースです!」


「「「おーー」」」


なんだこの挨拶?

これで打ち合わせ終わりみたいだ。


その後、みんなでお茶をしてこの国について話をしてもらった。


この国でアイドル活動を始めたのはソルティ王妃らしい。


拓実さんの里帰りに付いていった時アイドルを見て感銘を受け、これこそがこの国を変えることができると天啓をうけたらしい。


そのころのシトラシア国は多種族を受け入れる体制をとっていたが、種族同士のいさかいが後をたたなかった。

いつもは表面上は平気なふりをしていたようだが、思うところがあってピリピリしている感じだったとか。


ソルティ王妃は幼い頃からそれをどうにかしたかった。


アイドル体制を整えて歌を披露する国民同士のいさかいが少なくなったという。やっとここまできたのよって嬉しそうにソルティ王妃は笑った。


なぜSS級限定なのか聞くと、種族のなかで多種族と絡むのを嫌がる人もいて争うこともあるらしい。

そこで対抗できるように考えれたのがSS級アイドル制。


でもそのアイドル制には問題もあるらしい。強い魔力に魔獣が吸い寄せられてくるのよね、とソルティは苦笑いして言う。


SS級の極上の魔力は、強力な魔獣たちを引き寄せる。強い人に国を守ってもらうことになった。

SS級アイドルが一番強いから、できたのが当番制。そう、あの魔獣討伐。


あの初めてみた看板の意味がやっとわかった。


【世界一危険で世界一安全な国】


本当にそのままだな。


拓実さんに一つ気になって聞いてみた。

ここにはアイドルしかいないのかと、拓実さんは向うの世界で芸能活動をしている人をこっちではアイドルとひとくくりにしたらしい。


だってめんどくさいだろ。って拓実さんは笑って言った。


確かに俺も歌手とアイドルの違いも今一つわかんないしな。


この世界には元いた世界の常識が通じないことが多々ある。最近それを受け入れることになれてきた。


そういえばじいちゃんが、1度なんでも受け入れてみろと言っていたことを思い出した。


『京介、自分の中に生まれた感情とか出来事はそのまま受け入れろ。受け入れてからどうしたいのか自分に問うんじゃ。その先には違う世界が見えてくる、その方が楽しいぞ』


あの頃は何言ってるかわかんなかったけど、今はなんとなく分かる気がする。


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