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おっさんの徒然エッセイ

受刑者の高齢化問題について

私のエッセイに頂いたレビューにとても鋭いご指摘がありましたので、そちらのアンサーとなるエッセイです。



 受刑者が高齢化していることで、多くの問題があると思いますが、この解決は大変難しいです。

 今日はこのあたりのお話をしていきます。


 まず、何故受刑者が高齢化しているのでしょうか。

 これにはいくつかの要因がありますが、まず我が国の刑事罰で最も多いのは何かというお話で、実は懲役などの自由刑ではなく、財産刑の一つ「罰金」が最も多く、刑罰全体の8割を占めています。

 例えば傷害罪などでも、被告が反省していて相手との示談が出来ているなどの場合は傷害罪の50万以下の罰金刑になることが多いようです。

 まあ、初犯の場合は自由刑になることが少ないと考えられる訳です。

 反対に言えば、初犯でも重大犯罪や犯罪行為を重複している、または反省していないなどであれば自由刑になる訳で、その場合はかなり長い懲役になる可能性が高いですよね。

 執行猶予がつくのが懲役4年までなので確実に実刑を食らうのは5年からになります。

 初犯の場合は執行猶予がつくことが多いと思いますから、これを踏まえても初犯で懲役になる場合はかなり長い罰になりそうです。

 となれば、服役を開始した時はまだ中年くらいの人が出所するときにはおじいちゃん一歩手前とかおじいちゃんなんて可能性が高そうですよね。

 また、罰金刑でも前科は当然つきますから、それが元で就職が困難になり、老後の資産を十分に貯められないなんてこともあるかもしれません。

 そして、再犯ですね。

 一定以上の年齢まで刑務所で過ごしてしまうと、社会復帰が困難になる方もいますから、刑務所に戻りたくて犯罪をする方もいますし、前科があることで十分な生活が困難で再犯する方もいると思います。

 再犯の場合は刑罰が重くなるので懲役などになりやすい、結果として、受刑者に高齢者が多くなる傾向があるのかと思います。


 我が国では刑罰は加算されず、同時に複数の犯罪行為がある場合、刑法に照らして最も量刑の重いものが選択されます。

 海外では加算するところもありますね。

 強盗傷害殺人のような場合、加算するなら、暴行、窃盗、傷害、殺人とそれぞれの罰を足していくので、懲役50年なんて判決が出ることもありますが、我が国では最も量刑の重い殺人罪が適用され、それ以外の犯罪行為を加味して量刑を重いものにするという形ですから、懲役20年あたりになるか、場合によって、無期懲役になるかでしょうか、まあ、あまりにも犯罪行為を重ねていて悪質であれば死刑もあるかもしれません。

 ですが、こうした服役に関して「服役中に死んだら刑罰を課した意味ないんじゃ」と思うことがあると思います。

 70代の人物に懲役15年といった判決が出た場合、刑期を終えるのと、当該人物が鬼籍に入るのか、どちらが先かという事態が発生しますよね。

 また、高齢受刑者になれば、当然のように介護も必要になります。全国の刑務所がキャパオーバーになる中で、なるべく受刑者を増やしたくないという問題もあるでしょう。

 では高齢の犯罪者には拘束することを目的とした自由刑ではなく、「罰金」「科料」「没収」といった財産刑にするべきでしょうか。

 しかし、財産刑の上限は個人では不正競争防止法、貸金業法違反、銃刀法違反などの3000万が最高で、傷害、暴行、窃盗などでは50万が上限です。

 この場合も刑罰が加算されることはないので、傷害と窃盗で逮捕され起訴されても最高で50万の罰金にしかならないんですね。

 そして、罰金を払えない場合は差し押さえなどがありますが、差し押さる資産や給与がなければ、労役場への収監になります。これは言い換えてますが、ようするに刑務所です。

 この場合は5000円で1日と計算するそうですから、50万ならば100日、3ヶ月と10日ほどです。

 懲役刑なら最大で5年くらいになるはずが、罰金刑に限定すると、現状の法制度のままだと実質3ヶ月ちょいの懲役ですんでしまう。

 それでは刑罰の意味がないですよね。

 なら、罰金を高くすればいいのかと言えば、それでは払えない人が増えますし、過去の犯罪者との公平性が損なわれてしまう。

 だいたいに労役場収監は最長で2年までしか認められていません。

 つまり360万を超える罰金の場合は超過分が支払われないままに刑を履行したことになってしまう。

 だからといって労役場収監の上限撤廃では初めから懲役刑にすればいいになってしまいます。


 現状では刑罰は「生命刑」である死刑、「財産刑」である罰金、科料、没収、「自由刑」である禁固、懲役、勾留な訳でして、この枠組みとは異なる新たな刑罰を「残虐」な「暴力」にならないように制定する必要があることになりますが、更正を促しながら、適切な刑罰として機能させることを考えると、本当に難しい。


 さて、年間の特殊詐欺被害は200億から300億と言われています。老後の資産を騙しとられて自棄になり犯罪者になる老人もいるかも知れません。

 ここまで大規模な詐欺行為が横行することも社会の尊法意識の低下を意味しているのかも知れません。


 社会全体でもう一度、犯罪を抑止するとともに、格差を是正して、皆が住みよい社会を作ることが必要なのかもしれません。

 それも難しい課題ですが(-_-;)






 

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― 新着の感想 ―
[一言] 小学生並みの感想しか書けませんが……参考になります。 高齢者のために刑罰を変えるのは難しいし、社会保障が機能不全なので、犯罪の抑止もできていない、ということですよね。 そもそも社会全体が高…
[良い点] エッセイを読み、考えれば考えるほど、 どうすれば解決するんだこれ…?と思ってしまいますね。 悪循環になってしまってるといいますか。 締め付ければいいものではなく、 かといって救済するシステ…
[一言] 格差を是正する、本当にそれに尽きると思いますね。 どこから是正するか? と言えばかなり根が深いと私は思っていて、高齢の収容者の罪状は常習累犯窃盗がとても多い、これは犯罪全体に占める割合から…
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