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釦
叫ぶことさえ忘れた喉から 涙が溢れて止まらないのを
傍観する烏のような無邪気さで彩られた身体で
朽ちることなく描き続ける心で
見えない明日に飾り付ける
浅薄な絶望がこぼれ落ち 狂詩が心をすり抜ける
横溢な希望は捨てた 花園の蛆虫の夢
銀嶺の朝を視よう どうせ掴めない
靄のような現実が 絞首台のように迫る
病人紛いが息づき 光の中を蠢く
怜悧な人々の青白いため息と 熱を帯びた指先に追い立てられて
鉄血の壁に刻まれた落書き
押し潰された錆の羅列
詠嘆の剥落した箴言のような刃物と
黴まみれの絶壁のような麻縄が
圧倒する世界の構造が孵ろうとする都市の人の動脈の心の夢の痕で
言葉が螺旋となり 救われない再帰の中に還るのか
(2022/01/10)