聖女召喚してみたけど
私の人生は真っ暗だった
私より出来の悪い奴らに足を引っ張られ
何をしてもうまくいかない
たまにうまくいきそうでも、必ず誰かが足を引っ張りに来る
そんな人生
クソクソクソクソクソクソクソ
クソ共のせいでうまくいかない
私のほうがなんでもうまくやれるのだから
クソクソクソクソクソクソクソ
クソばっかり
そんなある日、足元から青い光が立ち上る
酷い目眩がして思わずしゃがんでしまったが、ふと気づけば目の前には豪奢にな椅子に座った金髪のイケメン
周りを見れば、白いローブを着た男たち
その後ろには、足元の青い光を反射して輝く鎧を着た、いかにも騎士な男たち
これは
あれか
まさか
異世界召喚!!
しかもイケメン付き!!!
やった!クソみたいな今までの人生さようなら!イケメンハーレムこんにちはだだだだ!!!!
そんな言葉が頭の中で激しくフラッシュしていた
イケメンがおもむろに口を開いた
「チェンジで」
イケメンが言った瞬間、ひどい目眩がしたと思ったら
家に居た
あー
そうだよね
そんなうまい話があるわけない
また地味でクソな人生を歩むだけだ
「チェンジってなんだーーーーークソがーーーー!!!!」
その頃アリエンティー王国では
「王子今日何回目だと思っているのですか!我々の魔力だって無限ではないのですぞ!!」
白いローブを着た神官長が叫んでいるが、私にどうしろというのだ?
「は〜。神官長。お前の言いたいこともわかるが、だからと言ってどうしろというのだ?
父王からは『ドレス代で国が傾くなど我慢できん、地味なやつを選べ』
母からは『沢山子供を産んでもらいますから、丈夫そうな娘以外認めません』
兄王太子からは『あんまりみっともない娘だと、国の品位が下がる。わかるな』
宰相からは『真面目に働かないのはいけません。真面目に働きそうなのでお願いします』
大神官からは『即物的なのはいけません。聖女は神秘的でなくては』
こんな条件を出されているのだぞ。
見た目からそんなに細かくわかるものか?おまけに内面なんてわかるわけがない。しかも10秒で。
今言った条件に当てはまりそうな者を召喚できない、お前たち自身のせいでもあるのだぞ」
「とととと兎も角今日は次で最後にしますからね!」
「はいはい。さっさとやってくれ」
ここアリエンティー王国のある世界では、定期的に異世界から聖女を召喚しないと、瘴気で世界が滅ぶと言われている。
そのための召喚術式は神様が作り出し、現在教会で管理されていて、教会にしか使えない。
そして瘴気が濃くなってきたら、この世界の各国が順番に教会にお金を払って、聖女召喚の儀式を行う。
本来一度聖女が召喚され瘴気の浄化が済めば、数十年は安泰のはずだったのだが、近年召喚される聖女は問題だらけだった。
そもそも召喚と言っているが、聖女にしてみれば誘拐と何ら変わらず、協力的な聖女に当たる可能性は低いのだが、近年召喚される聖女は瘴気をちょっとづつしか浄化せず、やれドレスがやれ食事がと文句ばかり言って一向に浄化を進めず、イケメン?のハーレムを作ってやりたい放題だ。
かといって、横暴な聖女を害すれば天罰が下るため、こちらは下手に出ざるをえず、あまりの酷さに聖女を召喚したため没落する国が出始め、教会に文句を言ったところ、新しい術式では見極める余裕が設けられた。
余裕というのは、聖女召喚の主導者(今回の場合はアリエンティー王国第2王子の俺)が、10秒のうちに見極め、ダメそうなら『チェンジ』と言えば、召喚された聖女は元の世界へ帰るというもの。
なのに来るのは、なんかキラキラした服装の女、腰の曲がった老女、男か女かわからないほど太った女・・・・どうしろと?
せめて条件のうち、2つくらいは当てはまってくれれば、何とかごまかせるのだが・・・
一応召喚された聖女は、元の世界に戻ることが出来ないため、若い王族の男子が娶り、幸せに暮らさせる事が神様との約束なのだが・・・
私としても贅沢を言う気はないし、出来れば幸せになって欲しい。
だが、国のトップの意見を無視すれば、私がどう思おうともどうにもならない事がある。
それがさっき言った条件なのだが・・・
お。そんなことを考えていたら、今日最後の召喚が成功したらしい
さてどんなのが来るやら
地面に設置されている魔法陣が青い光を放つ
魔法陣の中央から徐々に人がせり上がってきた
黒髪ロング
「お」
整った顔に憂いを帯びた瞳
「おお」
白い半袖シャツ
「おおお」
スラリとしていながら、健康そうな肢体
「おおおお!」
召喚部屋に居た一同の心が、今一つになった。『これは当たりだ!』
女性に対して、当たりだ外れだなんて思うのは失礼だし、してはいけない事だとはわかっているが、朝から数十回行った召喚のせいだと言っておこう。
私は素早く頭の中で条件を復唱した。
父王の要望『ドレス代で国が傾くなど我慢できん、地味なやつを選べ』はシンプルな服装から問題なし。
母からの要望『沢山子供を産んでもらいますから、丈夫そうな娘以外認めません』は健康そうだからオッケー。
兄王太子の『あんまりみっともない娘だと、国の品位が下がる。わかるな』は、整った顔をしているし、スラッとした体はどんなドレスにも合いそうだから◯。
宰相からの『真面目に働かないのはいけません。真面目に働きそうなのでお願いします』は、そもそも分かるわけないからパス。
大神官からは『即物的なのはいけません。聖女は神秘的でなくては』憂いを帯びた瞳でクリアーでしょう。
周りも私と召喚された聖女を交互に見つつ黙ったままだが、これ以上の聖女は今後来ないかも知れない。
10秒が嫌に長く感じる
一言でも漏らせば、帰ってしまうのではないか?そんな不安も
誰一人声を出さず、ただじっと見つめる時間が過ぎていく
「あ あの これは 一体何なのでしょうか?」
あぁ声も美しい
それから一つ一つ状況を丁寧に、かつわかりやすいように説明していったのだが、突然聖女はおかしなことを言い出した
「あの私 お・と・こ なのですが?大丈夫ですか?」
何を言っているのか全くわからない
「神官長!!聖女の召喚条件は?」
「はい第2王子様。召喚条件は『聖女の資格を持つ者』です」
「聖女の資格とは?」
「代々『聖女の資格を持つ者』としか・・・」
それから色々と聞いてみた。
まず彼は(念の為確認したが男だった。何だったら私よりも男だった)武道をたしなむ家の5男だそうだ。
4人連続男だったため、母親は次は絶対女の子と言って聞かなかったそうだが、生まれたのは男の子。
なので(何が?)女の子として育てられたそうだ。
だからなんだというのだ?
私は彼を娶らなければいけないのか?
私が混乱しているうちに、状況はどんどん進展していた
数年後
アリエンティー王国の召喚した聖女(♂)によって、随分ぶりに瘴気が完全に払われた。
聖女(♂)は、確かに『聖女の資格を持つ者』だった。
ただ、聖女(♂)は、私よりも男だった
女の子として育てられたものの、その生い立ちを気にせず、どちらでもいけたそうだ。
どちらでもと言うのは、色んな意味でどちらでもだ。
アリエンティー王国には現在、聖女(♂)の子供が沢山生まれているそうだ。
第2王子の私はどうしても聖女(♂)の伴侶にはなれなかった。(試しはした)
私は王籍を剥奪され平民になったが、聖女(♂)にも王国にも恨みはない。
これはどうしようもない事だったと、理解しているし諦めている。
まぁ皆幸せなら大したことでは無かったのだろう。
某掲示板
【聖女】聖女召喚されたけどなんか質問ある?【召喚】
1:スレ主
聖女召喚されたけどなんか質問ある?
2:名無し
召喚されたのになんでPCの前にいるの
嘘乙
3:スレ主
召喚されて数秒で、なんかイケメンに「チェンジ」って言われたら、家に居た
4:名無し
草生える
5:名無し
おさん乙
6:名無し
私もチェンジされますた
7:スレ主
嘘じゃないよ。足元から青い光が出て。目眩がして。気付いたらイケメンの前。
周りは白いローブ着た人
その後ろに鎧の人
イケメン「チェンジ」
イマココ
8:名無し
数秒で「チェンジ」って一体どんな格好だったのやら
おっさん
9:スレ主
中学の芋ジャージ
髪ボサボサ
せめて何か話しさせろよ
聖女でなくても向こうにいれば、知識チート出来たのに
ぴえん
世界はなんとなく平和なのだった。