第三章 女装男子襲来でなぜか俺がメイド喫茶で働くことに!? その2
乙姫が経営しているメイド喫茶は、自宅から少し離れたところにあるため、翼と翔星は電車とバスを乗り継ぎ向かった。
メイド喫茶へと着いた翼と翔星は勝手に入るわけにもいかず裏口のドアをトントンと叩いた。すると中から「はーいっ!!」と従業員であろう女性の可愛いらしい声がし、ドアが開いた。
「いらっしゃいっ!! 貴方達が店長が言っていた助っ人の女の子二人ね」
助っ人の女の子? 母さんのことだ男とか云々言わないで可愛い子達が来るとか言ったんだろうな、そうなるとここで男声を出すと色々面倒になるな。止むを得ん、翔星に死ぬほど特訓させられた女声を出すか。
「「はいっ!! 今日はよろしくお願いしますっ!!」」
久々に出すときついな~、翔星は常に女声だし心配ないだろ、俺は男声出ないように気を付けないとな。
「よろしくねっ!! ほんとは私が色々説明したいんだけど忙しくて仕事については店長に聞いてもらってもいい?」
「はいっ!! 分かりました。店長どこにいますか?」
「多分キッチンにいると思うから行ってみて」
翼と翔星は従業員に言われた通り、キッチンに行くと乙姫が他の従業員と話していて丁度終わったらしく二人に気付き近づいてきた。
「つーちゃん、かーくん、いらっしゃいっ!! 半ば無理矢理お願いしてごめんね、今日従業員が足りなくて~」
「母さんには乃愛ちゃんの事でも助かってるからこのぐらい」 「いえ女装してメイド喫茶で働くとか普通できないのでむしろこんな機会があって私は嬉しいです」
「それは良かった~。どう私のメイド喫茶は」
西洋のお城を彷彿とさせるデザインの店内に落ち着いたBGM、一般的なメイド喫茶は内装がもっとラブリーだったり賑やかだが、逆に落ち着いた雰囲気にする事でご主人様あるいわお嬢様とメイドさんのリアルな関係を演出していた。またメイド喫茶は入りにくい人もいる中デザインが落ち着いているため誰でも入りやすくなっていた。
「母さんことだから凄くラブリーなのかと思ったら落ち着いたデザインに驚いてる」
「店内が落ち着いていて誰でも気軽に入れるようになっていていいと思います」
「ありがとうっ!! 自慢のメイド喫茶なんだっ!!」
乙姫は嬉しそうに言った。
「ところで母さん、乃愛ちゃんと一緒に来たんじゃないの?」
「なーちゃんなら、そろそろ休憩時間だからフロアから戻ってくるよ~」
乙姫の言う通り休憩時間になった乃愛がフロアから戻ってきた。
可愛い、可愛すぎる。
ギャルゲーから出てきたと言えば、誰もが信じる程の可愛さの乃愛とメイド服の相性は絶妙で、老若男女誰でも見たら「可愛い」と口から勝手に漏れてしまうほどだった。
「なーちゃん、お疲れ~。お客さんみんな可愛いって好評だったよ!!」
「乙姫さん、お疲れさまです。かわいいなんてそんな、私はご主人様に楽しんで貰えたらいいだけだから」
「なーちゃん、なんていい子なの!! これからもうちでたまにお手伝いしてみない」
「是非!! メイド喫茶で働くのが意外と楽しくて。ところで乙姫さん、横にいる人達は?」
「ここにいるのはつー」
翼は乙姫の口を咄嗟に口を塞いだ。
あっぶね、流石に乃愛ちゃんに女装しているのがバレるのは普通に死ぬレベル、後で母さんに釘をささなきゃ。
「私は空、よろしくねっ!!」 「そらの友達で天です、よろしくお願いしますっ!!」
「空ちゃん、天ちゃん、よろしくね!! お仕事大変だけど頑張ろ!!」
「「はい!! 頑張りましょう!!」」
乃愛は翼と翔星との話を終え、休憩スペースに行った。
翼は行ったのを見計らって自分が女装している事をバレないように釘をさした。
「早速だけど天ちゃんは、メイド喫茶で従業員がどうしたらいいのか分かると思うから、フロアお願いしてもいい?」
「はいっ!! お任せ下さいお嬢様」
翔星は、まるでメイドの様な口調で返事をして、フロアに向かった。
「じゃあ、つーじゃなかった、空ちゃんは色々分からない事あると思うから説明してくね!!」
「頼むよ、母さん。やる以上俺も戦力になりたいから」
「じゃあまずうちのメイド喫茶で意識すること、ご主人様あるいはお嬢様と本物のメイドさんのリアルな関係を意識目指しているからそれを1番意識してほしいだけど、それだけじゃなくてあまりリアルな関係を出してしまうと堅苦しくなってしまうから、お客さんを楽しませる事も少なからず意識してほしい」
「初めての私に出来るか分からないけど頑張ります」
「次はメイドが覚えるべきことを説明するね」
そう言うと乙姫は、メイドとしての言葉遣い、立ち振る舞い、歩き方、注文を承る時の姿勢、メイドターン、おまじないの仕方、オムライスに綺麗に描くためのレクチャーなどなど小一時間ほど説明した。
「色々説明しちゃったけど大丈夫? 空ちゃん」
「色々ありすぎて頭おかしくなりそうです~。でも後はフロアでやって覚えます」
「そのいきいいね!! 初めてのフロア大変だろうけどバックで見てるから気にせずやってみて!!」
「じゃあ、行ってきます!!」
翼は不安な面持ちを持ちながらも初めての戦場に向かった。