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天使の国のシャイニー  作者: 悠月かな(ゆづきかな)
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帰還

ーーーコンコンコンーーー


「琴ちゃん、起きてる?」


祖母が声を掛けると、すぐに返事が返ってきた。


「うん。起きてるよ。」

「入るわね。」


祖父母が琴の部屋に入ると、琴は目を丸くして2人を見た。


「あれ?2人揃ってパジャマのままでどうしたの?」

「あのね。琴ちゃん、これを見てほしいの。」


祖母が空色のリボンと羽を手の平に乗せ、琴の前にソッと出した。


「え!空色のリボンとシャイニーの羽…どうして、ばぁばが持ってるの?」


琴は驚き、祖母の顔と手の平に乗せられたリボンと羽を交互に見た。


「そう!天使はシャイニーと名乗っていたわ。琴ちゃん…じいじとばぁばは不思議な夢を見たの。」


祖母の夢の話しを、琴はジッとリボンと羽を見つめながら聞いていた。


「そっか…シャイニーは、ママとパパを2人に会わせてくれたんだね…」

「その〜なんだ…そのシャイニーという天使は、琴ちゃんの夢にも現れたのか?」


祖父が困惑顔で尋ねると、琴は勉強机の引き出しから、空色のリボンを出してきた。


「シャイニーが夢に現れたのは2回。見て、空色のリボン…琴もママから貰ったよ。シャイニーがママとパパに会わせてくれたんだ。シャイニーは、琴の側にいて見守ってくれてるんだよ。もうすぐ天使の国に帰っちゃうけど…」

「本当に不思議…天使が実在するなんて…信じられないわ…」


祖母は、空色のリボンと羽をまじまじと見ながら呟いた。


「でもね、シャイニーは本当にいるんだよ。ね!小麦。」


ーーーチチチッ!ーーー


小麦はケージに前足を掛け、琴と祖父母を見ながら返事をした。


「ほらね。小麦も "いるよ" って言ってる。」


祖父母は複雑な表情でお互いの顔を見た。


「やっぱり信じられないか…シャイニー、近くにいるかな?」


琴が呼び掛けると、シャイニーがスッと現れた。


「琴ちゃん、僕は近くにいるよ。」


琴は頷くと祖父母を見た。


「今、琴の隣にシャイニーが立ってるよ。見える?」

「琴ちゃん…私には何も見えないわ…」

「俺も見えない…」


祖父母は首を左右に振りながら答えると、突然どこからともなく声が聞こえてきた。


「お父さん、お母さん…信じられないのは分かるけど…心を開いて、もう一度見て見て…」

「この声…ママだ!じいじ、ばぁば!ね!ママも言ってるよ。もう一度見てみて。」


祖父母は琴の隣に目を向けジッと見た。


暫くジッと見つめていると、琴の隣に白いモヤのようなものが立っているのが見え、そのモヤは少しずつ天使の姿へと形を変えていった。


「ハッキリは見えないけど…見えるわ…白いモヤが天使の形になってる…じいじ見える?」

「あ、ああ…白いモヤは見える。」

「シャイニー、良かったね。見えるって。」


琴はニコニコしながらシャイニーを見た。


「うん。おじいさんもおばあさんも僕が見えるなんて凄いよ。そもそも人間は、天使の姿が見えないんだ。」


シャイニーは驚きながらも、嬉しくなり思わず祖父母に話し掛けた。


「おじいさん、おばあさん、僕達天使の事を信じてくれてありがとうございます。お二人には僕の声が聞こえないと思うので…」


シャイニーが目を閉じ、上方に向かって手をかざすと天井一面に虹が現れた。


「わぁ〜虹だ…じいじ、ばぁば、天井を見て。」


琴の言葉に祖父母が天井を見上げると、美しい虹の姿が目に飛び込んできた。


「室内に虹…?どうして?」

「こんなにハッキリと綺麗に現れた虹を始めて見たよ…」


突然、室内に現れた虹に祖父母は驚き、あんぐりと口を開けたまま天井を凝視し微動だにしなかった。


「あのね、シャイニーが僕の声は聞こえないだろうからって、虹を見せてくれたんだよ。」

「いや…これもまた、不思議な事あるもんだな…」

「本当ね〜でも、本当に天使はいるのかもしれないわね…」

「だから、天使は本当にいるんだってば。」


琴は、ちょっと不満そうに頬を膨らませながら言った。


「そうね…琴ちゃん。でも…突然、不思議な事が続いたから、私もじいじも混乱してるのよ。」

「そうなんだ…」


琴がそんな祖父母の態度に唇を尖らせていると、シャイニーは優しく言った。


「あのね…琴ちゃん。急に天使を信じる事は難しいと思うよ。でも、2人は僕達天使を信じようとしてくれている。それは凄いし、僕達天使にとって嬉しい事なんだよ。」

「そっか〜簡単には信じられないんだね。大人って複雑なんだね。」

「でも…僕は地球の人達が、天使を信じてくれるようになるって信じてるよ。その為に僕も頑張らないと。」

「うん。琴、シャイニーを応援してるからね。」

「ありがとう。琴ちゃん。」


シャイニーは優しく琴の頭を撫でると、祖父母に向き合った。


「おじいさん、おばあさん、僕は天使の国に帰る時が来たようです。琴ちゃんやお二人の幸せを、ずっと願っています。天使の国から見守り、時には会いに来ますね。」


シャイニーは両手を広げ優しく2人を抱き締めた。

その瞬間、祖父母の心がジンワリと温かくなり優しさに包まれていった。


「何だか心が温かいわ…」

「このジンワリとした感覚は何だ?」


2人は不思議な感覚に驚き、お互い顔を見合わせた。


「シャイニーが、じいじとばぁばを抱き締めてるんだよ。そして、これから天使の国に帰るけど、琴やじいじ、ばぁばの幸せを願ってる…たまに会いに来てくれるって言ってるよ。」


琴は笑顔でシャイニーの言葉を伝えていたが、その瞳には寂しさが宿っていた。


「琴ちゃん…僕は琴ちゃんのおかげで成長できたんだ。本当にありがとう。僕は天使の国に帰るけど…また会いに来るからね。」


シャイニーは琴をギュッと抱き締めると、琴はそれに答えるかのようにシャイニーの背中に手を回し抱き付いた。


「うん。琴も頑張るから、シャイニーも頑張って立派な天使になってね。」


シャイニーを見上げた琴の瞳には、薄らと涙が滲んでいた。


(琴ちゃん…)


「シャイニー!琴ちゃんの事は僕に任せてよ。」


小麦がケージに前足を掛け、ピョンピョン跳ねながら話しかけてきた。

シャイニーは琴からソッと離れ、小麦の側に行きしゃがみ込んだ。


「小麦、琴ちゃんをよろしくね。」

「任せて!僕が琴ちゃんをシッカリ守るからね。シャイニーは大船に乗ったつもりでいてよ。」


小麦は胸を張り、小さな手でドンッと叩いた。


「うん。小麦がいるから安心だよ。」


ケージに優しく手を伸ばすと、小麦はシャイニーの指に手を掛けた。


「約束の握手だよ。小麦に二言はないぜ。」


握手をしながら小麦はウィンクをして見せた。


「あはは、それは頼もしいな。安心して天使の国に帰れるよ。」


シャイニーが小麦と握手を交わしていると、爽やかな風が吹き、つむじ風と共にラフィが現れた。


「やぁ、シャイニー。そろそろ天使の国に帰るよ。」

「ラフィ先生!」


シャイニーは立ち上がりラフィを見た。

ラフィは琴や祖父母、小麦を見ると笑顔で頷いた。


「どうやら、皆さんに挨拶を終えたようだね。」

「はい。今皆さんに挨拶をしたところです。」

「それじゃ…行こうか。ハーニーも帰るよ。フルルはシャイニーの髪の中かい?」


ラフィの声を聞き、フルルがシャイニーの髪の中から飛び出し、ハーニーはシャイニーの翼の中からフワッと現れた。


「おや、ハーニーはシャイニーの翼の中に隠れていたのかい?」

「はい。ラフィ様、シャイニーの翼の中が心地良くて寛いでいました。」


ハーニーは、シャイニーの周りをフワフワと漂いながら答えた。

ラフィは温かい眼差しでハーニーを見ると、表情をスッと引き締め、琴や祖父母を見た。


「琴ちゃん、おじいさん、おばあさん。シャイニーがここまで成長できたのは、あなた方のおかげです。ありがとうございました。シャイニーは天使の国に帰りますが、今後もあなた方の事を見守り続けます。僕も皆さんの幸せを願っています。」


ラフィが優雅に一礼すると、その姿を見た琴が溜め息を吐いた。


「ラフィさんも、とっても綺麗な天使なのね…」

「ありがとう、琴ちゃん。」


ラフィは思わず呟いた琴の頭を優しく撫でながら、耳元に唇を寄せソッと囁いた。


「琴ちゃん、おじいさんとおばあさんが不思議そうに君を見てるよ。何が起こっているのか分からないんじゃないかな?」

「あ!本当だ。あのね…じいじ、ばぁば、シャイニーの先生が来ててね…」


キョトンとしている祖父母に、琴が説明すると2人は笑顔になり頷いた。


「琴ちゃんが、さっきから1人で喋ってるから心配しちゃったわ。」

「他にも天使が来ていたのか…それはまたビックリだな〜」


そんな3人を笑顔で見ていたラフィは、シャイニーに目を向けた。


「さぁ、シャイニー…行こうか。」

「はい、ラフィ先生。琴ちゃん…それじゃ、僕達は帰るね。」

「うん。シャイニー…また来てね。」


シャイニーが頷き窓からラフィと共に外に出ると、ハーニーとフルルが後を追い、シャイニーの翼の中と髪の中にそれぞれ潜り込んだ。

琴は急いでケージから小麦を出し抱き上げると、窓辺に立ち祖父母を振り返った。


「じいじ、ばぁば、シャイニー達が帰るの。こっちに来て。」


祖父母が窓辺に立つと、シャイニーは振り返り琴達を見た。


「琴ちゃん、小麦、おじいさん、おばあさん…また会いに来ます。」


シャイニーはペコリと頭を下げると翼を羽ばたかせ、ラフィと共に大空に舞い上がった。


「シャイニー!バイバ〜イ!」


琴が大きく手を振ると、大空に大きな美しい虹がかかった。


「え…こんなに天気が良いのに虹?」

「雨上がりでもないのにな〜」


祖父母があんぐりと口を開け空を見上げていると、琴が隣でポツリと呟いた。


「シャイニーはね、虹の天使なんだ。きっと、シャイニーが綺麗な虹をかけたんだよ。」

「あら?虹に向かって飛んでいく人の姿が見えるわ…ぼんやりだけど…じいじ、見える?あそこよ。」


祖母が指を指すと祖父が目を細めて虹を見た。


「ああ…あれか…見える、見える。」

「凄い!2人とも天使が見えるんだね!」


琴は嬉しくなり、虹に向かって飛んでいくシャイニー達に大きく手を振った。


「シャイニー!琴の所に来てくれてありがとう!またね〜」


シャイニーは振り返ると何度も手を振り、感慨深く琴達を見つめていたが、寂しさを断ち切る為に深く息を吐くとラフィを見た。


「ラフィ先生、一緒に虹をかけて下さりありがとうございます。」

「どういたしまして。最後に皆さんに大きくて綺麗な虹を見せたいなんて、シャイニーらしいね。」


ラフィは笑顔でウィンクすると、まじまじとシャイニーを見つめた。


「本当にシャイニーは成長したね。こんなに背も伸びて…きっと、みんな驚くよ。」

「ラフィ先生、修業に旅立ったみんなは戻って来てますか?」

「うん。少しずつ戻って来てるよ。」

「そっか…フレームは戻ってますか?」

「フレームか…彼も間もなく戻って来る頃だよ。」

「そうなんですね。フレーム元気かな〜きっと大きく成長してるだろうな…早く会いたいな〜」


もうすぐフレームに会える事が嬉しく笑顔で話すシャイニーを、ラフィは複雑な表情で見つめていた。


「ラフィ先生?」


そんは彼の表情にシャイニーは違和感を覚え、思わず呼び掛けると、ラフィはニコッと笑った。


「フレームとは近いうちに会えるよ。」


(ラフィ先生、笑顔だけど…いつもと違う感じがする…)


シャイニーが首を傾げていると、ラフィは何かを思い出しハッとした表情を見せた。


「そうそう。君を襲ったイガレスだけど…どうして彼女が、子供の君を襲ったのか今調べているところなんだ。でも…今のところ手掛かりはまだ掴めていない状況だよ。」

「そうなんですね…」


シャイニーはイガレスと闘った時の事を思い出し、ブルっと体を震わせた。


(あの時は、とにかく必死だったけど…イガレスは、どうして僕を襲ったんだろう…)


「引き続きイガレスの事は調べるから、心配しなくても大丈夫だからね。」


考え込んでいたシャイニーを安心させるように、ラフィは優しい笑顔を見せた。


「はい。ラフィ先生。」


(確かにイガレスの事は気になるけど…天使の国に帰ったら、僕もリュシエルについて調べなきゃ。ハーニーを元に戻すんだ。)


「シャイニー.戻ったら色々と忙しくなるよ。」


改めて固く決心をしたシャイニーは、ラフィの言葉に顔を上げた。


「まずは…学びの部屋で修業の成果の報告をするよ。」

「はい。みんながどのような修業をしてきたのか僕も聞きたいです。」

「うん。ほら、天使の国が見えてきたよ。」


シャイニーが見上げると、美しく大きな虹の向こうに、天使の国が小さく見えていた。


(ただいま…天使の国。ハーニーの事も心配だし、イガレスの事も不安だけど…頑張って乗り越えていこう。そして、天使としての経験や学びも積み重ねていこう…)


シャイニーは期待と不安を抱きながら心に誓うと、少しずつ近くなる天使の国に向かってシッカリと顔を上げ、力強く翼を羽ばたかせた。

シャイニーの手首には、琴が作ったブレスレットの小さな花が風に吹かれ優しく揺れていた。




終わり



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