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天使の国のシャイニー  作者: 悠月かな(ゆづきかな)
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不思議な時計とフレームの攻防

シャイニーとフレームは部屋に戻ると、さっそく掛け時計に明日のスケジュールを聞いてみる事にした。

掛け時計は、シャイニーとフレームの部屋それぞれに1台ずつ掛けられていた。

その掛け時計は、円形で文字盤には数字ではなく絵が描かれている。

例えば、起床時間にはシャイニーと思われる天使がベッドから起き上がり大きく伸びをしている。

そして、その下には食事をする絵や、机に座り勉強をする姿などが順番に描かれていた。


「この絵…僕だよね…あ!フレーム見て。このベッド、僕が作ったベッドだよ。」


フレームが時計に目を向けると、シャイニーが作ったベッドが描かれ、時計の針はそのベッドを指していた。

時計の針は1本だけで、クネクネと曲がった不思議な形をしている。


「本当だ…これ、シャイニーが作ったベッドだよな…この天使もシャイニー自身みたいだ…ん?それなら、俺の部屋の時計はどうなってるんだ?」


フレームは、自分の掛け時計を確認する為に部屋に向かった。


「おい!シャイニー、ちょっと来てくれ。」


シャイニーがフレームの部屋に行くと、時計を指差し手招きをしているフレームの姿が目に入った。

シャイニーが時計に目を向けると、炎のベッドに眠るフレームらしき天使が描かれ、針はその絵を指していた。


「やっぱり…この時計は、持ち主の姿が描かれているんだね。」

「そうみたいだな…それじゃ、俺の時計に明日のスケジュールを聞いてみるか。おい!時計、明日のスケジュールを教えろ。」


フレームが話しかけたが、時計はうんともすんとも答えない。


「フレーム、何も言わないね。どうしたのかな?」

「う〜ん…壊れているのか?おい!時計、何とか言ってみろ。」


フレームが、時計に向かって手を伸ばした時、細い鞭のような物がフレームの下を叩いた。


ーーーバチッ!ーーー


「痛って〜!今のは何だ?!


フレームが目を向けると、時計から鞭が伸びヒュンヒュンと音を立てしならせていた。


「え!フレーム…時計から鞭が…」

「あ、ああ…鞭が出てるな…」


2人が呆然と時計を見ていると、突然時計が話し始めた。


「フレーム!!その言葉使いは何ですか!それに、黙って聞いていれば…時計、時計と失礼なっ!!」


突然、まくしたてるように時計が喋りだした。


「はぁ?だって、お前は時計だろ?時計に時計と言って何が悪い!」


カチンと来たフレームは、時計を睨み付けた。


「フレーム、やめた方が良いよ?また鞭で叩かれるよ。」


シャイニーは、オロオロしながらフレームの腕を引っ張った。


「まぁ!また時計と呼びましたね!私にはクルックという立派な名前があるのです!」

「シャイニー、危ないから下がってろ!クルックだか何だか知らないが、時計は時計だろ!いいから明日のスケジュールを教えろ!」

「キーッ!また時計と呼びましたね!フレーム、あなたには少々お仕置きが必要です!」


クルックはガタガタと激しく震えると、壁から外れ鞭をしならせながらフレームに体当たりした。


「痛って〜!何だよ、お前いきなり!」

「何だよではありません。あなたは態度が悪過ぎます。そもそも、私にスケジュールを尋ねる態度もなっていません!良いですか、スケジュールを尋ねる時は… "クルックさん、明日のスケジュールはどのようになっておりますでしょうか?教えて頂けませんか?" このように尋ねるのです。」


クルックは、胸を張るように体を反らせた。


「はぁ?そんなまどろっこしいこと聞けるか!いいから教えろ!」


フレームは、得意げに胸を張るクルックに掴みかかった。


「キーッ!あなたは、まだ分からないのですか!」


クルックは、フレームの手から素早く逃れると、鞭をしならせ再びフレームの手を叩いた。


「痛って!さっきから何度も何度も…もう頭に来た!」

「フレーム!やめてってば!」


シャイニーは必死に止めたが、フレームにその声は届かない。

フレームはクルックを捕まえようとし、クルックは素早く逃れながら鞭で叩き体当たりする。


ーーーヒュンヒュン、バチッ!ーーー

ーーーヒュンヒュン、バチッ!ーーー


どう見てもクルックが優勢だった。


「フレーム!もうどうしたらいいんだろ…あ!そうだ…ラフィ先生!助けて!!」


シャイニーはいてもたってもいられず、ラフィを呼んだ。

すると、どこからともなく優しい風がソヨソヨと吹き、ラフィがスーッと現れた。


「おやおや、これは一体何の騒ぎだい?」


ラフィの視線の先には、クルックの鞭にグルグル巻きにされたフレームの姿があった。


「これは…随分と派手にやったようだね。」


フレームの姿に、一瞬呆気にとられたラフィだが、すぐに笑い出した。


「あはは!クルック…いい加減離しておやり。フレームには悪気はないのだから。」

「でも、ラフィ様!フレームの態度はなってませんわ!私を時計、時計と呼んだ上…スケジュールの尋ね方も酷過ぎます!」

「クルック。フレームは、初めてブランカ城に来たんだ。何も分からなくて当たり前だと思わないかい?確かに、君にとってフレームの態度は悪かったかもしれない。しかし、フレームは、まさか君に感情がある上に礼儀に厳しいとは知らなかった。僕も説明しなかったしね。だから、フレームばかりが悪いわけではないよ。元はと言えば、説明不足の僕が悪いんだ。だから、フレームを離しておくれ。」


クルックは、溜め息をつくとソッとフレームを離した。


「ありがとう、クルック。さて、フレーム。次は君の番だよ。クルックを相当怒らせたようだね。まずは、君の怪我を治そう。」


ラフィは、フレームの手にできた傷に手をかざした。

すると傷がスッと消えていった。


「フレーム。君は、ちょっとした事で熱くなってしまうね。それは、フレームの長所であり短所でもあるんだ。時にそれは高い集中力を生み出す。そして、大きなパワーを引き出す事もできる。でも、君の心が怒りでいっぱいになると自分でも止められなくなる。違うかい?」


フレームは、ガックリと肩を落としながら頷いた。


「今回の感情は、君の心で芽生えた初めての感情だったんじゃないかな?」

「はい。こんな感情は初めてだった。俺の中で何かが大きくなって止められなくなったんだ…」


ラフィは、フレームの言葉を聞き一瞬、眉をひそめた。

しかし、すぐにいつもの笑顔に戻っていた。


「フレーム。それは、君の心に広がった怒りの感情なんだ。最初、君の心の中に小さな炎が灯ったね。この炎には様々な種類がある。炎は周りを照らし心を温める事ができる。しかし、この炎は怒りや憎しみへと転換する事がある。今のフレームには難しくて分からないと思うけど…さっき、君の心に生まれた怒り…これが、また生まれたら小さいうちに消すんだ。」

「ラフィ先生…どうしたら消せるんだ?」

「深呼吸をするんだ。繰り返すうちに、気持ちは落ち着いてくるよ。」

「分かった。ラフィ先生…ごめん。クルックもごめん。これからは、言葉使いに気を付けるよ。」


フレームは、ラフィとクルックに頭を下げた。


「私も大人げがありませんでしたわ。」


クルックは、頭を下げるように体を前に倒した。


「それからシャイニー。巻き込んでごめん。」

「ううん。僕は大丈夫だよ。気にしないで。」


シャイニーは、ホッとし笑顔で答えた。


「フレーム、クルックと仲直りするんだ。さぁ、握手して。」


ラフィがフレームの手とクルックの鞭を取ると、握手をさせた。


「では、今日は休みなさい。クルックもフレームに明日のスケジュールを教えてあげるんだ。シャイニーは、自分の部屋の時計にスケジュールを聞くんだよ。」


シャイニーは、ラフィの言葉にビクッと肩を震わせた。


「シャイニーの部屋の時計の名はチック。大人しい性格だから安心して良いよ。」


シャイニーは、ホッと胸を撫で下ろした。


「さぁ、シャイニーは部屋に戻るんだ。フレームとクルックは、くれぐれもケンカしないように。僕も休むからね。」

「はい、ラフィ先生。」

「ラフィ先生、お騒がせしてごめんなさい。」


フレームは深く頭を下げ、クルックは静かに壁へと戻っていった。

ラフィは優し気に微笑むとスッと消えた。


「フレーム、僕も寝るね。おやすみ。」

「ああ。シャイニー、また明日な。おやすみ。」


いつになく元気のないフレームを横目にシャイニーは部屋に戻った。

時計のチックにスケジュールを聞くと優しく教えてくれた。


(クルックは、時計の中でも厳しいのかも…)


シャイニーは、長かった今日1日を思い返しながらベッドに入ると、髪の中で眠る音符を思い出した。


「そうだ!音符くん、起きてる?」


「スーッ、スーッ…」


シャイニーは耳を澄ましたが、聞こえてくるのは音符の寝息だけだった。


(あの騒ぎの中で、良く寝てられるな…今日は、色々あり過ぎて疲れたな…ラフィ先生、フレームの話しを聞いている時、表情が一瞬変わっていつもの先生じゃなかったみたい…気になるけど…もう眠いから、後で考えよう…音符くん、おやすみ…)


シャイニーは、あっという間に深い眠りに落ちていったのだった。



お読み下さりありがとうございます。


ご感想やレビューなど頂けると嬉しいです。


長編小説となりますが、よろしくお願いします。


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