子供達の部屋づくり
「まずは…自分達の部屋にもう一度行ってごらん。この部屋を好きなようにアレンジしていいよ。今はまだ、単なる箱の状態の部屋を、思うように作り上げてごらん。君達が願えば、どんなアレンジも可能だ。部屋を仕切り個人部屋にする事もできるし、狭いと感じたら広くする事もできる。必要な家具を置き快適な部屋を作るんだ。出来上がったら僕を呼んでね。一部屋一部屋見に行くからね。」
「あの〜ラフィ先生がどこにいるか分からないのに、どうやって呼べば良いですか?」
メガネをかけた天使が尋ねた。
「その場で僕に呼びかけてくれれば大丈夫だよ。すぐに行くから。」
「でも、みんなが一斉にラフィ先生を呼んでしまったらどうするんですか?」
「心配いらないよ。僕達天使は大人になると、一度に何ヶ所もの違う場所に行けるんだ。」
ラフィの説明を聞いた子供達は、意味が分からずキョトンとしていた。
「分かりにくいよね。え〜と…例えば君達が別の場所で一斉に僕を呼んだとしよう。僕はその時に全ての場所に行く事ができる。だから、部屋が出来上がったら気にせず呼んで大丈夫だよ。」
ニコニコしながらラフィは答えた。
「さて、君達が部屋を作っている間、僕は一休みさせてもらうよ。部屋作り頑張ってね。どんな部屋かできるか楽しみにしてるよ。」
ラフィは、そう言うと両手を高く上げ、う〜んと伸びをすると一瞬で消えた。
「あ!ラフィ先生が消えた。」
「と、とにかく部屋を作るか。」
子供達も部屋を作る為に、1人また1人ホールから消えていった。
「シャイニー、俺達も行くぞ。」
「うん!」
シャイニーとフレームも自分達の部屋へと向かった。
「相変わらず殺風景な部屋だな…さて、どうするか…」
「フレーム、この部屋を仕切ってニ部屋に分けようよ。それで、お互い好きな部屋を作った方が良いと思うんだ。」
「うん。それもそうだな。ニ部屋にするにはちょっと狭いから広げてみるか。」
フレームは、そう言うと軽く目を閉じた。
その瞬間、部屋が歪みミシミシと音を立て始めた。
「フレーム、凄い音だけど大丈夫かな…」
シャイニーは心配になってフレームを見た。
「ま、まぁ…大丈夫だろう…多分…」
そう答えたフレームの顔は、明らかに引きつっていた。
部屋は暫くの間、ミシミシと鳴り続けた。
2人は、いよいよ心配になりラフィを呼ぼうと決めた時、突然ピタッと音は鳴り止み静かになった。
2人はホッとして、改めて部屋を見回すと最初よりだいぶ広くなっている事に気付いた。
「フレーム、かなり広くなったよ。」
「これなら快適に過ごせそうだな。」
フレームはシャイニーを見てニッと笑った。
「うん!部屋の仕切りは僕がやってみるね。」
シャイニーが目を閉じ胸に手を当てると、部屋の中心に仕切りが現れニ部屋に分かれた。
仕切りには木製の扉が付いている。
「うん!シャイニー上出来だ。」
2人は満足気に手を上げ、お互いの手をタッチした。
「それじゃ、シャイニー部屋を作ろうぜ。」
「うん!出来上がったらお互い見せ合おうよ。」
2人はそれぞれ別れて部屋を作り始めた。
(まずは…壁紙からにしよう。何色にしようかな…白かな…)
シャイニーが考えていると、壁紙の色が真っ白に変わった。
(う〜ん…さすがに真っ白は味気ないや。僕は虹が好きだから虹色?)
シャイニーの心に反応にするように、壁紙が虹色に変わった。
(うわっ!ハデ過ぎる…これじゃ、落ち着かない。う〜ん…ベースの色は白だけど虹色に輝くような感じが良いな。)
その瞬間、虹色の壁紙が消え、純白だが見る角度を変えると虹色に淡く輝く壁紙が現れた。
「わぁ…僕の翼の色に似てる…うん!この壁紙にしよう。」
(次は、家具だな…ベッドやテーブルに椅子も必要だ。ベッドは雲みたいにフワフワが良いな。テーブルや椅子は木製かな。)
イメージすると、シャイニーの目の前に四角い雲の塊りと木製のゴツゴツとした硬く頑丈そうなテーブルと椅子が現れた。
「う〜ん…こんな感じじゃなくて…もっと具体的にイメージしないといけないんだ…)
シャイニーは、目の前の雲の塊りとゴツゴツしたテーブルと椅子を消した。
(え〜と…ベッドのイメージは雲に包まれる感じ。土台は、マレンジュリの木にしよう。あの木は実と同じ香りを放つから、ほのかな甘い香りの中で眠れる…それから…そうだ!星空を眺めながら寝たいな。それには…え〜と…)
シャイニーが具体的にイメージすると、とても寝心地が良さそうなベッドが現れた。
「わぁ〜!」
目の前に現れたベッドを見て、シャイニーは思わず声を上げた。
そのベッドは雲のように柔らかで、ほのかに甘い香りを放ち天蓋も付いていた。
シャイニーは試しに寝てみると、天蓋に満天の星空が映し出された。
良く見ると星は動いており、時折、流れ星も見られるのだった。
マットレスはフワフワで温かく、マレンジュリのほのかな香りが鼻をくすぐる。
あまりにも心地が良くシャイニーはウトウトし始めてしまった。
「いけない!寝てる場合じゃないや!」
シャイニーは慌てて飛び起きた。
「さて、続き、続き…このベッドは、あそこの角に置こう。」
考えた瞬間、ベッドが角に移動した。
「うん!コツをつかんできた。次はテーブルと椅子。それから、勉強机も必要かな…あ!本棚も欲しいし…絨毯も敷きたい。」
シャイニーは、どんどん必要な物を出し部屋を作り上げていった。
「うん!これで良い。」
シャイニーは、満足そうに頷くと部屋を見渡した。
殺風景だった部屋ほ、見違えるように様変わりしていた。
テーブルや椅子、勉強机に本棚と全てがマレンジュリの木製で、椅子には雲で作られたクッションが置かれている。
絨毯は、クリーム色で光の加減で淡く虹色に輝き、小さな天使の姿があちこちに描かれていた。
……トン、トン、トン…
「シャイニー、上手く出来たか?入るぞ。」
シャイニーが自分の部屋に満足していると、フレームが扉をノックし入ってきた。
「シャイニー、良く出来たじゃないか。ん?何か良い香りがするぞ。」
「それは、マレンジュリの木製の家具が放っている香りだよ。」
「へぇ〜凄いな…シャイニーらしい光と温かさを感じる部屋だよ。」
「ありがとう。フレームの部屋も見て良い?」
「もちろん!」
フレームは、シャイニーの手を取り自分の部屋へと引っ張っていった。
「どうだ!俺の部屋だ。」
フレームは、誇らし気に胸を張った。
その姿がおかしくて、シャイニーはクスクス笑いながらフレームが作った部屋を見た。
「わぁ…凄くフレームらしい部屋だね。炎の力強さと温かさが伝わってくるよ。」
フレームの部屋は、オレンジ色や黄色でまとめられていた。
家具には、フレームを表すような炎をイメージした絵や彫り物などが装飾されていた。
特にベッドの土台は炎の形そのものだった。
「このベッドの土台に苦労したんだよ。俺の一番の傑作なんだ。」
フレームは、嬉しさのあまりベッドを撫で続けている。
放っておいたら、ずっとベッドを撫で続けているに違いないフレームの様子がおかしくて、シャイニーは吹き出しそうになった。
「それじゃ、そろそろラフィ先生を呼んでみる?」
「あ!そうだった。ラフィ先生を呼ばなきゃいけないんだった。あまりにも夢中になり過ぎて忘れていたよ。」
「フレームは、相変わらず夢中になると周りが見えなくなるよね。その集中力は凄いと思うよ。」
「そうか?」
フレームは、ニカッと笑いシャイニーを見た。
「それじゃ、ラフィ先生を呼ぶね。ラフィ先生!」
シャイニーが呼びかけると、目の前にラフィがスッと現れた。
「やぁ、シャイニーとフレーム。部屋は出来上がったかい?」
ラフィは、ニコニコしながら2人に尋ねた。
「はい。先生。出来上がりました。」
シャイニーが答えると、ラフィはゆっくりと部屋を見渡した。
「どうやら、二部屋に分けたようだね。この部屋はフレーム…君の部屋だね。」
ラフィがフレームに話しかけると、フレームは目を丸くして答えた。
「え!確かにそうだけど…どうして俺の部屋だと分かったんだ?」
「どうしてって…一目で分かったよ。いかにもフレームらしい部屋じゃないか。炎をテーマにオレンジ色と黄色でまとめてある。それに、あのベッドはフレームそのものだよ。」
ラフィは、ニコニコしながら言った。
「実は、最初は赤で統一したんだ。でも、落ち着かなくて…この色に変えたんだ。」
「おやおや…でも、それは正解だったね。赤で統一したら心が休まる時がなく、常に刺激を受ける事になる。この配色は、君の特徴を良く表しているね。炎が持つ力強さと温かさ…とても良い部屋になっているよ。」
「そうか?」
フレームは胸を張りニカッと笑った。
「あはは。フレーム…君が自分に自信を持つ事は良い事だけど…調子に乗ってはいけないよ。その事は何度もハーニーに注意されてきたよね?」
「え!どうして知ってるんだ?」
フレームは驚いてラフィを見た。
「僕は、君達の事をほとんど把握しているよ。君達だけではなく、ここに学びに来ている全ての子供達の事もね。」
そう答えるとラフィは、フレームにウィンクをした。
「さて、次はシャイニーの部屋を見せてもらおう。この扉の向こうだね?」
「あ、はい。そうです。」
ラフィが扉を開け、シャイニーの部屋に入った。
シャイニーとフレームも後に続いた。
部屋に足を踏み入れた途端、マレンジュリの甘い香りが3人を包み込んだ。
「これは…マレンジュリの香り…シャイニー、この香りはどこから放たれているんだい?」
優しい甘い香りにラフィは驚き、シャイニーに尋ねた。
「はい。この香りは全ての家具から放たれています。この家具は、マレンジュリの木から出来ているんです。」
「なるほど…これは、サビィが泣いて喜びそうな部屋だ。このベッドも良く出来ているね。」
「ありがとうございます。このベッドに寝ると、天蓋の内側に星空が映し出されます。ラフィ先生、良かったら寝てみて下さい。」
「へぇ〜なかなか凝ってるね。では、お言葉に甘えて横にならせてもらうよ。」
ラフィがシャイニーのベッドに横たわると、天蓋に満天の星空が映し出された。
「シャイニー、これは素晴らしいね。ずっとこの星空見ていたいよ。よく思いついたね。」
「何となく星空を眺めながら眠りたいと思ったんです。」
「うん!君はイメージする能力と、そのイメージした物を形にする能力に優れているようだね。このベッドが物語っているよ。これは、君の能力の一つだ。」
ラフィは、シャイニーに優しく微笑みながら言った。
「僕にも能力があったんだ…」
「シャイニー。いいかい、良く聞いて。天使には皆、何かしら能力があるんだ。天使の能力は、温かさや優しさ…そして、愛に満ちている。様々な存在を幸せにする素晴らしい能力なんだ。どのように使うかは、いずれ分かる時がくるよ。そう…時期が来たらね。」
ラフィは、そう言うとシャイニーの頭を優しく撫でた。
シャイニーは、ラフィの言葉に心が温かくなり希望で溢れた。
(僕にも能力がある…僕には、他にどんな能力があるんだろう。)
シャイニーは、両手の手のひらを広げ眺めた。
(もし、他にも能力があるなら…どんな能力なのか知りたい!)
シャイニーは、まだ未知である自分の能力を知りたくてウズウズした。
「シャイニー、君の能力については、これからの学びや修業で徐々にハッキリしてくるよ。これは、フレームや他の子供達も同じだよ。君達が自分の能力を知りたい気持ちは分かるけど、焦ってはいけないよ。全て最善のタイミングで能力が目覚めていく。目覚める為には、学びと経験…そして気付きが重要なんだ。」
「学びと経験…そして気付き…」
シャイニーは、自分に言い聞かせるように呟いた。
「まぁ…まだ理解するには難しいよ。徐々に分かるさ。」
ラフィは、そう言うとシャイニーの頭に優しく手を置いた。
「さて、他の部屋でトラブルが発生したようだ。僕を必死に呼んでいる。様子を見に行くとしよう。良かったら、君達も来るかい?」
ラフィは、2人を優しく見た。
「一緒に行っても邪魔になりませんか?」
「俺、行きたい!」
シャイニーとフレームは、ラフィの問いかけに同時に答えた。
「本当に君達は、正反対の性格だよね。でも、答えるタイミングは一緒なんだ。面白いよね。」
ラフィは、クスクス笑っていたが呼吸を整え2人を見た。
「シャイニー、一緒に来ても大丈夫だよ。2人とも付いておいで。」
ラフィは、2人の前に両手を差し出し、手を繋ぐように促した。
シャイニーとフレームがラフィの手を握ると、3人は部屋からフッと消えた。
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