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天使の国のシャイニー  作者: 悠月かな(ゆづきかな)
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ブランカ城

「さて、慧眼けいがんの部屋について説明するよ。」


ラフィは、子供達を見渡しながら笑顔で話しかけた。

シャイニーは、そんなラフィの言葉を一言一句聞き逃さないように耳を傾ける。


慧眼けいがんの部屋は、"城" の中にあるんだ。君達は、これから "城" で生活し学んでいく事になるんだ。」


( "城" ?城ってなんだろう?)


シャイニーは、初めて聞く言葉に首を傾げた。


「おい、シャイニー、城って何か知ってるか?」

「ううん。フレーム、僕も初めて聞いたよ。」


他の子供達も初めて聞く言葉にざわめいていた。


「城は、君達のすぐ近くにある。さて、どこにあると思う?」


ラフィは、ざわめく子供達の反応を楽しむかのように、いたずらっぽい笑みを浮かべながら尋ねた。

子供達は、全く分からないといった表情で首を横に振ると、ラフィはクスクス笑いながら、子供達の頭上を指差した。皆が、ラフィの指し示したほうに目をやると、頭上に浮かんでいた大きな雲が左右に分かれ、その間から純白の城が現れた。


「わぁ…凄く綺麗…」

「あれが城…あそこで、これから生活するんだ…」


雲の間から現れた城を見た瞬間、子供達の瞳がキラキラと輝いた。シャイニーやフレームも純白で美しく輝く城に見とれていた。


(今日から、あの城で生活し学んでいくんだ…何だかワクワクしてきた!)


シャイニーの心から不安はすっかり消え去り、これからの学びに胸を弾ませていた。

フレームも城を見つめ力強く頷いている。

彼の瞳は更に強さを増し、学びへの意欲に燃えているようだった。


「それじゃ、そろそろ城に向かう事にしよう。」


ラフィは、クルクルと表情を変える子供達に声をかけた。


「みんな、僕について来てね。」


ラフィは、その言葉と共に6枚の翼を羽ばたかせ舞い上がり城を目指し飛んだ。

子供達も翼を羽ばたかせ、後に続き飛んで行く。

その様子を見ていた、シャイニーとフレームにハーニーが優しく語りかけた、


「シャイニー、フレーム、今までのように会えなくなるけど…しっかり学ぶのよ。ラフィ様についていけば大丈夫。必ず大人の天使になって独り立ちできるわ。」

「ハーニー、ありがとう。僕頑張るよ。」

「ハーニー、俺も頑張る。」


ハーニーは、2人をギュッと抱き締めた。


「さぁ、もう行きなさい。私は、あなた達を応援してるし、いつも見守ってるからね。」


「うん…ハーニー…行ってくるね。」

「ハーニー…行ってくる。」


2人は飛び立つと、名残惜しそうに何度も何度も振り返りながら城へと向かった。

ハーニーは、そんな2人の姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けるのだった。




城は、近くで見ると更に輝きを増し、まるで宝石のようである。

入り口の扉は、銀色でとても大きい。

その扉には、凛とした美しい女性の天使の姿が彫られていた。

ラフィと子供達は、城の扉の前に集まっていた。


「この城は、ブランカ城と名付けられている。ブランカとは、以前天使長だった女性の天使の名前なんだ。ブランカはとても美しく気高く、そして優しい天使だった。その昔…この天使の国に存続の危機が訪れた。ブランカは自分の命と引き換えに、この国を守ったんだ。このブランカ城は、そんな彼女を忘れないように建てられた。この扉に彫られている天使がブランカだ。」


ラフィは、扉に彫られたブランカをジッと見つめていた。その表情は明るい笑顔とは違い、暗く悲しみを宿したものであった。


(ラフィ先生…どうしたんだろう?)


シャイニーは、ラフィの表情の変化に戸惑っていた。


「ねぇ、フレーム…ラフィ先生、どこか変じゃない?」

「ん?どこが変なんだ?」

「う〜ん…何ていうか…暗い表情してると言うか…元気がないと言うか…」

「そうか?昔の事を思い出してるだけじゃないのか?」

「そうかな〜?」


シャイニーとフレームがコソコソと話していると、ラフィが振り返り子供達を見た。その表情は、すでに明るい笑顔に戻っていた。


「この話しをする度に、昔の事を思い出すんだ。あの時は、大変だったからね。それじゃ、中に入るよ。」


ラフィがブランカ城の扉を開けて中に入り、その後を子供達が続いていく。

城の中は、とても広いホールになっていた。

窓にはステンドグラスが施されホールをぐるりと囲んでいる。

ステンドグラスを眺めていたシャイニーは、ある事に気付いた。


「あれ?このステンドグラス…物語になってるみたいだ…」


ステンドグラスには、1人の天使が誕生する場面から始まり、成長を経て天使長となり息絶えるところまで描かれていた。


「シャイニー、よく気付いたね。このステンドグラスは、ブランカの物語になっているんだ。」


ラフィは笑顔で答えたが、シャイニーはその笑顔に不自然さを感じていた。

その不自然さを心に留めたまま、シャイニーはもう一度ステンドグラスを見た。


「あ!」


シャイニーは、思わず声を上げた。


「突然どうした?シャイニー。」


その声に驚いたフレームが怪訝そうにシャイニーを見た。


「あ…ごめん、クレーム。何でもないんだ。」


シャイニーは、ブランカが息絶える場面をジッと見つめた。

そこには、ブランカを抱き抱える男性の天使の姿も描かれていた。

その男性がラフィそっくりだったのだ。


(ラフィ先生そっくりだ…もしかすると、ラフィ先生の表情の変化は、この天使ブランカのせいなのかも…)


「このブランカの物語はいずれ君達に話そう。僕達天使にとって忘れではいけない事だから…」


ステンドグラスを見つめながら、独り言のように呟くラフィの瞳には悲しみが彩られている。


(ラフィ先生と天使ブランカの事は、いずれ分かるかもしれない。今は自分の胸にしまっておこう。)


今はまだ触れる時ではないと、敏感に感じ取ったシャイニーは、悲しげなラフィをジッと見つめるのだった。


「それでは、この城について説明しよう。」


子供達を見渡すラフィの表情には、もう悲しみは見られず明るい笑顔に戻っていた。


「この城は、君達のような子供達が自分の能力に気付けるように造られている。僕達大人の天使は、いつでも行きたい所に一瞬で行く事ができるし、必要な物を何でも手に入れる事もできる。そして、天使には1人1人に能力が備わり、それぞれ役目がある。君達は、まだ子供だからこのような能力にも目覚めていない。もちろん、まだ行きたい所に一瞬で行ったり、必要な物を手に入れる事もできないんだ。このブランカ城は、そんな君達をサポートしてくれる。この城内なら一瞬で移動もできるし、必要な物も手に入る。そして、学びながら自分の能力を見つけていこうとする君達を助けてくれる。まぁ…説明では分かりにくいだろうから、早速やってみよう。」


子供達は、これから何をするのか見当もつかず、お互いの顔を見合わせた。

そんな子供達を見て、ラフィはニコニコしながら説明を続けた。


「いいかい。君達は今日からここで生活する。その為の部屋が必要となるけど…まずは、その生活する部屋に行ってみよう。この部屋は2〜3人部屋だよ。誰と一緒に生活するか決めてごらん。」


ラフィの説明を聞いて子供達は、それぞれに話し合い一緒に生活する相手を決めた。


「シャイニー、俺と一緒に生活しようぜ。」

「もちろんだよ、フレーム。」


子供達の話し合いが終わると、ラフィは更に説明を続けた。


「全員決まったみたいだね。では、次に生活する部屋に移動するよ。移動手段は君達の " 心 " だ。」


ラフィは自分の胸に手を当てた。


「自分達の部屋に行きたいと願ってごらん。次の瞬間には、君達の部屋に移動してるよ。うまくできたら、このホールに戻ってきてごらん。ホールに戻る方法も同じ。ホールに戻りたい…そう心に願えば戻れるよ。さぁ、始めて。」


ラフィは優しい笑顔で子供達を見回した。

子供達は胸に手を当て、自分の部屋に行きたい…と願い始めた。


「シャイニー、やってみるぞ。」

「うん!」


(フレームと僕が生活する部屋に行きたい…)


シャイニーが願った瞬間、ステンドグラスに囲まれたホールは跡形もなく消え去り、その代わり見知らぬ部屋に立っていた。

隣に目をやるとフレームも立っている。


「フレーム…ここが、僕達の部屋なのかな?」

「多分…そうだろうな。」


部屋はガランとしていて家具などは一切なかった。

まるで大きな箱のようだ。


「と、とりあえず、ホールに戻ろうぜ。」

「そ、そうだね…フレーム。」


2人がホールに戻りたいと願うと、先ほどまでいたステンドグラスに囲まれたホールに戻っていた。


「ねぇ、フレーム…あの何もない部屋でどうやって生活していくんだろう?」

「…俺もサッパリ分からない。」


2人がそんな話しをしていると、部屋に行った子供達が続々とホールに戻ってきた。

皆、シャイニー達と同じように不思議そうな表情で首を傾げながら話している。


「やぁ、全員成功したようだね。部屋はどうだったかな?」


子供達が全員戻った事を確認すると、ラフィは皆に尋ねた。


「えーと…部屋には何もなかったし…あれでは生活できません。」


メガネをかけた男の子の天使が不安そうに答えた。


「うん。今、見に行った部屋には何もないよ。家具や、他に必要な物は君達が揃えるんだ。」


ラフィが答えると、子供達はざわつき始めた。


「揃えるって…?」

「一体どうしたらいいの?」

「そんな事できるの?」


シャイニーとフレームも顔を見合わせ首を傾げた。


「大丈夫だよ。そう難しい事じゃない。必要な物を揃えるのも心で願えば良い。そう、こんな感じで…」


ラフィが瞳を閉じた瞬間、フッとソファが現れた。


「このソファは今の僕に必要な物。ずっと立ってたから座らせてもらうよ。そうそう、君達も座ったほうがいいね。」


ラフィが再び瞳を閉じると、子供達用のソファが現れた。


「さぁ、みんな座って。このように、必要な物は何でも揃える事ができるんだ。もし仮に間違った物を出してしまっても、同じように消す事もできる。やってみるね。」


ラフィは、立ち上がると瞳を閉じて、先程まで座っていたソファを消した。


「コツさえつかめば簡単だよ。君達の部屋も必要な物や好きな物を出して自由に作ってごらん。それが、君達の1番最初の学びだよ。」


ラフィは子供達を見渡すと、ニッコリと笑い、ウィンクをした。




お読み下さりありがとうございます。


ご感想やレビューなど頂けると嬉しいです。


長編小説となりますが、よろしくお願いします。

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