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天使の国のシャイニー  作者: 悠月かな(ゆづきかな)
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学びと癒しの天使ラフィ

……カラーン、カラーン……


翌日、神殿の鐘が天使の国に鳴り響いた。

その鐘の音は、澄み渡りとても美しい。


シャイニーやフレームをはじめ、鐘の音を聞いた慧眼けいがんの部屋へと向かう天使達が広場の噴水へと集まり、夢と希望で胸を膨らませ、これからの学びについて話していた。

どのような学びなのかは、子供達には全く知らされていない。

その為に、皆が様々な学びを想像し思い思いに話していた。


「どんな学びなのかしら?」

「きっと、ペガサスに乗って空を飛ぶ方法を学ぶんだよ。」

「ペガサスに乗らなくても、私達飛べるでしょ。」

「そうだよね…あ!きっとドラゴンを探しに行ったりするんだよ。」

「ドラゴンを探してどうするの?」

「う〜ん…ドラゴンと遊ぶ。」


黒髪の男女双子の天使が話していると、近くで聞いていたフレームが会話に割って入った。


「バカだなぁ。そんな学びじゃないよ。俺のように雲の粘土で作った物を動かす学びさ。」


フレームはどこからともなく粘土を取り出すと、あっという間に小さなウサギを作り、フーッと息を吹きかけた。

ウサギは、伸びを一つすると耳をフルフルと動かした。


「わ〜!可愛い!やっぱりフレームは凄いわね。」

「うん。フレームは凄い。」


双子の天使の言葉にフレームは嬉しそうに笑った。


(やっぱり、フレームは器用だし凄いな。僕は、フレームみたいに器用じゃないし力もないからな…慧眼けいがんの部屋で本当にやっていけるのかな…)


シャイニーは、フレームの手のひらでピョンピョン跳ねるウサギを見ながら考えていた。


「フレーム!また調子に乗って!大きな騒ぎを起こしたばかりでしょ。」


シャイニーとフレームが振り返ると、ハーニーが腰に手を当て立っていた。


「ハーニー!」

「見送りに来たら、フレームが何か作っている姿が見えたのよ。フレーム、私との約束を覚えているわよね?」

「覚えてるよ…ハーニーごめん。」


フレームがウサギを消そうとした時に、頭上から声が聞こえてきた。


「やぁ!これは、君が作ったウサギかい?良く出来てるね。」


シャイニーとフレームが見上げると、1人の男性の天使が笑顔で立っていた。

肩まで届く髪は黄金色に輝き、緩やかなウェーブを描いている。

翼は左右合わせ6枚。

力の強い天使であると思われるが、親しみやすく優しい雰囲気の美しい天使である。


「そうだよ。俺が作ったんだ。こんな事もできるよ。」


フレームが、ウサギに再び息を吹きかけるとフルフルと体を震わせた。

その瞬間、背中に小さな可愛らしい翼が生えた。

ウサギは、後ろ足でフレームの手のひらを一蹴りし、翼を羽ばたかせ宙へと舞い上がり頭上を円を描くようにクルクルと飛んだのだった。


「フレーム!だから…」


ハーニーが注意しようとした時、その美しい男性の天使がハーニーの唇に人差し指を当て言葉を遮った。


「フレーム。君の事は知っているよ。神殿で起こした騒ぎは、僕の耳にも入ってる。君は子供だけど、力はなかなかのものだと思うよ。この力を、他の天使達を元気付けたり喜ばせたりする事に使うと良いんじゃないかな?そう…以前に、君が泣いてるシャイニーを元気付けたようにね。」


その天使はシャイニーとフレームを交互に見ると、笑顔でウィンクをした。


「それから、ハーニー。話しを遮り悪かったね。君も心配だとは思うけど…少しの間、僕に任せてくれないかな?もちろん、ハーニーにはこれからも2人の心の支えになってもらいたいと思ってるよ。でもね、君の心の中は2人を心配する気持ちで一杯なんだ。この子達を信じる気持ちも大切だよ。君の "心配" を僕に預けてくれないかな?」


その天使はニッコリと笑いハーニーを見つめた。


「ラフィ様…はい…分かりました。お願いします。」


ハーニーは、不安が入り混じった複雑な笑顔で頷いた。


「あ!」


2人のやり取りを見ていたシャイニーは、ラフィという名前を聞き、先日のサビィとの会話を思い出した。


(この天使…ラフィ先生だ。慧眼けいがんの部屋の先生…)


「おやおや、ハーニーはまだ心配のようだね。凄く複雑な顔で笑ってるよ。まるで、マレンジュリティーを試飲させられているマロンのような表情だよ。」


ラフィは、楽しそうにニコニコと笑いながらハーニーの顔を覗き込んだ。


「ラフィ様!」


ハーニーは、楽しそうに笑っているラフィを上目使いで軽く睨んだ。


「あはは!ごめん、ごめん。冗談はこれくらいにして、ハーニーの '心配" を預かろう。」


そう言い終えた瞬間、ラフィの顔から笑顔がスッと消えた。


「さぁ…ハーニー、気持ちを楽にして目を閉じて。」


ラフィは、ハーニーの額にてをかざした。すると、額から灰色のモヤモヤした霧のようなものが現れ、ラフィの手のひらに吸い込まれていった。


「さぁ…君の抱える "心配” は預かった。君はここ最近この "心配" に囚われ、心休まる日はなかったようだね。続いて、君の心が休まるように癒しを送ろう。」


すると、今度はラフィの手のひらから緑色の霧が現れた。その霧は、どんどん広がり気が付くと広場が美しい森林へと様変わりし、清々しい風が木々の間を抜け、広場にいる天使達1人1人を包みながら吹き抜けていった。

やがて、森林は少しずつ消えていき、元の緑色の霧に戻り、ハーニーの額へと吸い込まれていった。

彼女の顔色は徐々に明るくなっていき、霧が全て吸い込まれる頃には、すっかり笑顔になっていった。


「ラフィ様、ありがとうございます。確かに私は、心配しすぎていました。2人を笑顔で送り出し、立派な天使に成長する日を楽しみに待つ事にします。」


この一部始終を見ていた子供達はどよめいた。


「す…凄い…今のは何?」

「一体、何が起こったんだ?」

「この天使は誰なの?」

「凄い力…ビックリだ…」


皆は驚き、広場が一気に騒がしくなった。


「フレーム…今の見た?」

「あぁ…凄い力だったな。」

「フレーム…あの先生がラフィ先生みたいだね。僕達は、あの先生から学ぶんだ。」

「うん。どんな事を学ぶのか楽しみになってきたぞ。」


ラフィは、思い思いに話しざわめいている子供達をニコニコと見ていた。

やがて、子供達全員が徐々に静かになり、笑顔のラフィに注目すると、彼はゆっくりと話し始めた。


「やぁ!君達とは初めて会うね。いきなり驚かせしまってごめんね。僕はラフィ。これから君達が向かう慧眼けいがんの部屋の教師であり世話係だよ。君達は、慧眼けいがんの部屋について何も聞かされてないから、ワクワクする反面、不安もあるかと思うけど…僕がサポートするから大丈夫だよ。皆全員揃って独り立ちできるように一緒に頑張ろう。」


ラフィがゆっくりと一礼すると、広場に集まっていた子供達ばかりではなく、見送りに来ていた大人達も、ラフィの優雅な所作にウットリと見惚れていた。


(明るくて気さくな天使かと思えば、凄い力を持ち優雅でもある…サビィ様が言っていた通り不思議な天使だなぁ…そんなラフィ先生から、どんな事を学ぶのか楽しみになってきた!)


シャイニーの心を占めていた不安は、いつの間にか消え去り希望で満たされていた。

ラフィの癒しの力は、ハーニーだけではなく、広場に集まっている全ての天使に効果を表していたのだ。

シャイニーが、周りに目を向けると子供達は尊敬の眼差しでラフィを見つめ、女性はウットリした表情でラフィを見つめていた。


(凄い、広場に集まっている天使全員の心を掴んだ…本当に不思議な天使だ…もっとラフィ先生を知りたい!色々な事を学びたい!)


寂しがり屋で消極的なシャイニーの心の中に初めて生まれた希望の光だった。その光は、どんどん大きくなりシャイニーの心を満たしていった。


「あれ?シャイニー…背が伸びたんじゃないのか?おかしいな〜さっきまでは、俺の肩くらいまでだったのに…身長変わらなくなってるぞ。」


フレームは驚きを隠せない表情でシャイニーを見つめた。


「え!そんな訳ないよ。フレームの方が大きいって…」


シャイニーは、フレームの横に並び自分の成長と比べてみた。


「ん?あれ…本当だ…フレームと身長が変わらない…」

「それに…お前…顔も少し変わってる…何だか少し逞しくなってるぞ。ハーニー、ちょっと見て!」


フレームは、ハーニーの手をグッと掴み引き寄せた。ハーニーは、シャイニーとフレームを交互に見比べると頷いた。


「本当だわ…シャイニーの背が伸びてる…それに、少し逞しくなってるわ。シャイニー、あなた…何か心境の変化でもあった?」

「うん…ラフィ先生の癒しの力や心を掴む力を見て、ラフィ先生をもっと知りたい…色々と学びたいって強く思ったんだ。こんな風に思ったのは初めてだよ。」

「シャイニー、それは、あなたの心に初めて生まれた希望のせいね。今までは、寂しがり屋で小さな事でも不安になっていたけど…今、初めて前へ進もうと思った事で心に光が生まれたの。この光はとても大切よ。どんどん大きくもなるけど些細な事で小さくなってしまうのよ。今の気持ちを忘れないで。辛くても悲しくても、その生まれた光を決して消さないでね。この光が大きくなればなるほど、天使も同じように成長していくの。」


ハーニーは、シャイニーの瞳をジッと見つめながら言った。


「分かったよ。辛い事や悲しい事の意味が良く分からないけど、光を消さないように、そして大きくなるように頑張るよ。」


シャイニーは、少しだけ自分が大人の天使に近づけたような気がしていた。

そして、そのきっかけを与えてくれたラフィを見つめながら思った。


(まだ不安はあるけど…頑張ろう。ラフィ先生についていけば、きっと大丈夫。なぜか分からないけど、そんな気がする。)


シャイニーは、今後ラフィが自分にとって大きな影響を与える事を感じていた。



お読み下さりありがとうございます。


ご感想やレビューなど頂けると嬉しいです。


長編小説となりますが、よろしくお願いします。


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