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天使の国のシャイニー  作者: 悠月かな(ゆづきかな)
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ハーニーの葛藤と決心

シャイニーとフレームは、急いで成長の部屋へと向かった。

もう少しで成長の部屋という所で、先を走っていたフレームが突然ピタリと足を止めたので、シャイニーは背中にぶつかってしまった。


「いたた…フレーム、急に止まってどうしたの?」


シャイニーは、ぶつけた鼻を押さえながらフレームの視線の先を見ると、成長の部屋の扉の横壁に腕を組み寄り掛かっているハーニーの姿が目に飛び込んできた。


「フレーム…ハーニー、怒ってるよね?」

「あぁ、あれは相当怒ってるな。」


ハーニーが、コソコソと話しているシャイニーとフレームに気付くと、大きな瞳を更に大きくして2人を見た。


「シャイニー!フレーム!」


ハーニーは、ツカツカと歩み寄ると腰に手を当て2人を見下ろした。


「ハーニー…ごめんなさい…」

「ハーニー…ごめん…」


2人は、身を縮こませながら謝った。


「もう!2人とも、こんな大きな騒ぎを起こして…」

「ハーニー、シャイニーを叱らないでくれ。俺が全部悪いんだ。」

「ハーニー、僕がフレームを止めなかったから悪いんだ。」


2人はお互いを庇うように身を乗り出しながら言うと、ハーニーは見開いていた瞳を和らげ、フッと笑いしゃがんで2人に目線を合わせた。


「もう良いわ。本当は、シッカリ叱るつもりだったけど…庇い合う2人を見てたら叱れなくなっちゃった。同じ間違いを繰り返さないようにね。フレームは、自分の力を過信しちゃダメよ。あなたは、すぐに周りが見えなくなるから注意して。」

「はい…」

「シャイニー、あなたが褒めると褒められた天使は、不思議とパワーが増すの。そして、今まで以上にやる気が出て自信がつくのよ。それは、とても良い事だけど…時と場合を見極めて褒める事が大切よ。」

「はい…ハーニー…」


そこまで言うと、ハーニーはニッコリ笑って2人を抱き締めた。


「あなた達は本当に良い子よ。お互いを支え合い、時には庇い合う…まだ子供の天使だけど、一番大切な事を理解してるわ。」

「ハーニー…」


シャイニーとフレームはハーニーの温かさを全身に感じていた。


「ハーニー、本当にごめんなさい。もうハーニーに心配かけないようにするね」

「俺も、絶対にハーニーに心配かけない。約束するよ。」


2人は、ハーニーの腕の中から顔を上げ言った。


「う〜ん…私は、いつでもどんな時でも、あなた達を心配してしまうの。困った時は助けたいとも思ってるわ。だから、あなた達が心配かけまいと頑張っても、やっぱり心配しちゃうのよ。」


シャイニーとフレームは、ハーニーの言っている事が理解ができずキョトンとしていた。


「ウフフ…ちょっと難しかったかしら?そのうち、私の言った事が分かる日が来るわ。」


ハーニーは2人にウィンクすると、何かを思い出しハッとした表情を見せた。


「そうそう。それから2人にもう一つ大切な話しがあるの。実は、慧眼けいがんの部屋に行く事が正式に決定したわ。」


慧眼けいがんの部屋!」

「いつ行くの?」


シャイニーとフレームは、ハーニーの瞳を覗き込みながら尋ねた。


「明日、神殿の鐘が鳴った時よ。鐘が鳴ったら成長の部屋の子供達は、広場の噴水の前に集まるのよ。」


ハーニーは、言い終わるや否や、2人の視線から目を逸らすようにスッと立ち上がると背を向けてしまった。


(あれ?いつものハーニーと違う…)


シャイニーは、ハーニーの様子に違和感を覚えていた。


(そう言えば…さっきハーニーの瞳の奥に何か見えたような気がする…)


「ハーニー、ごめん!」


シャイニーは、パタパタと飛び上がりハーニーの前に回ると瞳の奥を覗き込んだ。

瞳には、シャイニーの姿が映し出されていたが、その姿は徐々にハーニー自身へと変わっていった。


「シャイニー…いきなりどうしたの?」


ハーニーは、自分を見つめたままパタパタ飛び続けるシャイニーの事が心配になり手を伸ばした。


「僕は大丈夫だよ。ちょっとだけ黙っててくれる?」


シャイニーは、伸ばされたハーニーの手を優しく握ると、更にハーニーの瞳を覗き込んだ。


瞳の中のハーニーを見ていると、シャイニーは自分の体が、瞳に吸い込まれるような不思議な感覚に陥った。


(瞳に吸い込まれる!)


シャイニーは、思わずギュッと目を瞑った。


(何が起こったの…?)


恐る恐る目を開けると、薄暗い部屋にシャイニーはいた。


(ここは、どこだろう…)


キョロキョロしながら、部屋の中を慎重に一歩、また一歩と足を踏み出してみる。

すると、少し先に白くぼんやりとしたものが見えてきた。

注意深くその白いものに向かって行くと、徐々に白いものは椅子に座った天使の姿だと分かってきた。

その天使は溜め息をつき、一点を見つめている。


(え!あれはハーニー?)


天使はハーニーだった。

ハーニーは、再び深く溜め息をつくと寂しそうに呟いた。


慧眼けいがんの部屋に、あの2人が行ってしまったら、もうあまり会えなくなるわ…修業が始まれば尚更…でも、2人が立派に成長するように応援しなきゃ…」


(そうか…ここはハーニーの心の中だ…そして、呟いた言葉が本心…)


シャイニーが、ハーニーの本心に気付いた瞬間、体がもの凄い力で引っ張られた。


「ウワーッ!」


あまりの力に驚き、再びギュッと目を瞑った。

そして、目を開けるとシャイニーは、パタパタと羽ばたきながらハーニーの瞳を覗き込んでいた。


(あれ?元に戻ってる…?)


思わず周りをキョロキョロと見回す。


(やっぱり、元に戻ってるんだ!)


「シャイニー、突然黙ったかと思ったらキョロキョロして…大丈夫?」


ハーニーが心配そうにシャイニーを見つめている。


「ハーニー…慧眼けいがんの部屋には必ず行かないとダメなの?ハーニーに寂しい思いをさせてまで慧眼けいがんの部屋に行きたくないよ…」

「シャイニー、突然どうしたの?」


ハーニーは、シャイニーの言葉が理解できず首を傾げた。


「僕…ハーニーの心の中を見たんだ…ハーニー言ってたよ。僕とフレームと会えなくなるって…凄く寂しそうな表情だった…」

「シャイニー、私の心の中を見たのね?もう、そんな事ができるようになったのね…あのね、シャイニー…相手の心の中を勝手に見てはいけないわ。知られて欲しくない事もあるのよ。それから、私は確かにあなた達とあまり会えなくなるのは寂しいわ。でもね、それ以上に成長も楽しみなの。だから、私の事は気にしないで慧眼けいがんの部屋に行きなさい。」


ハーニーは、目の前でパタパタ飛んでいるシャイニーを抱き止め、ソッと床に下ろした。


「あなた達の力は未知数よ。天使は、それぞれに力を持っているの。そして、その力を役立てる時が必ずやって来るわ。慧眼けいがんの部屋で学ぶ事は、誰もが通る道。最初は自分の力について何も分からないけど…慧眼けいがんの部屋で学び、修業する事によって徐々に理解する事になるのよ。私達天使によって慧眼けいがんの部屋で学ぶ事も修業する事も、とても重要で避けて通れない道なの。シャイニー分かった?」


シャイニーは、暫く考えていたが決心したように強く頷いてハーニーを見上げた。


「分かったよ、ハーニー。僕にどんな力があるのか、その力をどのように役立てるかは思いもつかないけど…必ず成長して立派な天使になるよ。だから慧眼けいがんの部屋に行く。ちょっと不安だけど…ハーニーも寂しいかもしれないけど、必ず帰って来るから待ってて。」

「ええ!シャイニー待ってるわね。フレームはどう?不安な事はない?」

「俺は全く不安なんてないさ。むしろワクワクする。自分がどんな力を持っているのか分かるなんて、こんなに嬉しい事はないよ。ハーニーが驚くような力を持っているかもしれないし。」


フレームの瞳は希望で満ち溢れ、その瞳の奥にメラメラと激しく燃え上がる炎が映っていた。ハーニーは、その炎を見た瞬間、全身に鳥肌が立った。


「フ、フレーム!!」


ハーニーは、自分でも驚くような大声を出していた。


「ど、どうしたのハーニー?」


フレームは、突然のハーニーの大声に驚き、呆気にとられている。

シャイニーも初めて見るハーニーの姿に呆然としている。

そんな2人を見てハッとしたハーニーは、慌てて後ろを向き深呼吸をして気持ちを落ち着けた。


「ごめんなさい。私、やっぱり寂しいのかしら…こんな大声を出しちゃって…どうかしてるわね。」


ハーニーは笑顔で振り返り、もう一度フレームの瞳を見た。

フレームの瞳の奥にはもう炎は見えず、いつもの力強い瞳に戻っていた。

ハーニーはホッとすると2人に言った。


「さぁ、今日は成長の部屋で過ごす最後の日よ。エイミー達もあなた達と離れるのは寂しいはず。早く部屋に戻ってエイミー達と過ごしなさい。」

「ハーニーは、僕達と過ごさなくて良いの?」


シャイニーは、寂しそうな表情でハーニーに聞いた。


「私は、今までたくさんあなた達と楽しく、素敵な時間を過ごして来たわ。それに、もう会えないわけじゃないもの。以前のように頻繁には会えないけど…近いうちにまた会えるわよ。明日は私も見送るわ。」

「うん…分かったよ。ハーニー。」


フレームは、寂しそうにしているシャイニーの手を取ると、半ば引きずるようにして成長の部屋へ連れて行った。

フレームの表情は非常に晴れ晴れとしていて、新しい学びが楽しみで仕方がないという様子であった。

フレームは成長の部屋の扉を開けると、ハーニーに力強く手を振った。

シャイニーは、名残惜しそうにハーニーを見つめていたが、フレームがシャイニーの襟を掴みズルズルと引きずりながら中へ入って行った。

引きずられていくシャイニーの姿が完全に見えなくなるとバタンと扉は閉まった。

ハーニーはフーと溜め息をつくと、フレームの瞳の奥の炎の事を考えた。


(あの炎は、見間違いじゃない…ハッキリ見えた…この胸騒ぎと関係があるのかもしれない。あの炎を見た瞬間…ゾッとしたわ。サビィ様に報告した方が良いのかしら…でも、あの炎が原因で、万が一フレームが慧眼けいがんの部屋へ行けなくなるとしたら…それはダメ。フレームは、学ぶ事をとても楽しみにしているわ…)


ハーニーは腕を組み、一点を見据え暫く考えていたが、意を決した表情で顔を上げシッカリと頷いた。


(今回の事は、私の心にしまっておくわ。そして、2人を見守り、素晴らしい天使へと成長するように祈り支えるの。あの子達はとても良い子。お互いを支え合いながら立派に成長するはず。私は、これからも2人を見守り続けよう。)


ハーニーは、心に押し寄せる寂しさや不安を追い払い、2人の成長を見守り支えようと固く決心したのだった。



お読み下さりありがとうございます。


ご感想やレビューなど頂けると嬉しいです。


長編小説となりますが、よろしくお願いします。


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