その①
誰だって、どこにでもいるようで、でもたった一人の特別です。初めましての読者の方、この作品との出会いもまた特別です。ありがとう。
毎週日曜日に投稿します。よろしくお願いします。
人生で、自らに刻み込める文字の数は、きっと数え切れないほど莫大で膨大で甚大なんだろうけど、蓋を開けてみればそうでもなかったりするのかもしれない。
ただ、数えようと思いたくないほどと答えるのが最もだとは思うが。
人ってさ、大事なことは忘れないってよく言うけど、ありゃおれにとってはとんだ嘘っぱちなんだよ。
賢い生き物が故に、多くのことを覚えるのには長けていても、結局記憶に残るのはいつも引き出しの中のものだけ。
隅っこに放り出された思い出は、たとえどれだけ大切で貴重で宝物だったとしても、いずれは少しずつ、時間が経つにつれて忘却の彼方だ。
大切ならずっと頭の中にあるから大丈夫だって?
ちっちっちっ……残念。そりゃとんだ慢心だ。
過去と今じゃ、なにもかも違う。関係も、付き合いも、時間の使い方も。
だから、パズルのピースが一つずつ気付けばどこかに消え去るように……思い出もだんだんと曖昧模糊の歯痒いものになってしまう。
だがまぁ、もう一度言うが、これはおれにとっての話なわけで、万人に値するわけではない。
しかし、その中で、もし少しでもおれのこの経験談に心当たりがあるようならば、一つ、忠告というかアドバイスをしておこう。
なぁに、そんなに難しいことではない。
しっかりとメモをとることだ。
誰にだってできる、初歩的な記憶術だ。
でも、この癖が抜けると、またど忘れの連発をするかもしれないから、そこは気を付けた方がいい。
さて、と。じゃあこっからがいよいよ本題にいくとしよう。
だってそうだろ? このままじゃまだおれの説得力が足りない。ただの生意気な命令になっちまう。
だから、ちょっとだけ語るとするよ。だから、ちょっとだけ付き合ってほしい。
おれが、なぜ今になってそんな些細な後悔をしたのか。
その原因となる一つの物語を。いや、そんな大層なもんじゃない。
誰にでもあるような、でもおれだけかもしれない。
この、失敗談を。
時はありふれた日常の中の、秋の紅葉がほんのり暖色を彩る季節の昼頃のこと。
「やぁ、少年! 今日も清々しいくらい目が死んでいるね!」
「いやこれ生まれつきなんで……ふわぁ、先輩こそ今日も忌々しいくらい目が輝いてますね」
「こらこらそんなんじゃお母さんが悲しむぞぉ? さては昨日は読書に耽って徹夜したとかでしょ! あと忌々しいって言うのやめて……しょぼんってしちゃう」
「おれ、そんな優等生に見えます? ただゲームに勤しんでたら夜が明けただけの平凡な徹夜ですよ。あとしょぼんって自分で言う人初めて見ちゃいました」
「おぉ、ゲーム! 少年だね! わたし、初めて奪っちゃったね!」
「支離滅裂だな……先輩、相変わらず絶好調っすね」
「むふん! そうなのだよ少年!」
「てかその少年ってなんですか。今の流行りなんですかそれ。むしろ死語に近くないですか?」
「んぁ? そんなの決まってるじゃん。君が! わたしを名前で呼んでくれないからだよ!」
「…………あぁ、なるほど」
「だよだよ! だーかーら! 君がわたしを名前で呼んでくれるのなら、わたしにも考えがあるわけだよ!」
「考えって?」
「わたしも君を名前で呼ぶ!」
「いや普通かよ……」
「はよはよ! はやく呼んじゃいなよ! はよ!」
「はぁ……分かりましたよ、美菜先輩」
「ふふふ……ありがとう、少年!」
「いや呼べや」
「よぉし! じゃあ今からカフェにでも行ってしゃれこもうじゃないか!」
「まじか……」
「早く来ないと置いていくよ少年!」
「…………まじか」
と、まぁこういった感じで、絡みが激しく傍若無人だが、とんでもなく容姿端麗な、佐伯美菜という年上の女性との日常がおれの人生に変化を与えることとなる。そんな話。
どこか単純じゃなくて、かといって難関だらけということでもない。むしろ灯台下暗しや棚からぼた餅って感じ。絵に描いた餅は羊にでも食わせるし、机上の空論は中二病で間に合うレベル。
だから、これはつまらなく冗長な物語かもしれない。語り手がおれの時点でかなり役不足だしな。
でももしかしたら多少は面白くなるかもしれないから、もし暇があれば続きを聞いてほしい。
一つ言えることは、おれにとっては重要で必要な時間がそこにはあったということ。
じゃあ早速その先を…………って、え、なに?
あ、おれの名前? そっか、結局一回も言ってなかったな……すまん。
柳沢碧人っていうんだ。
なんていうか……そうだな。よろしくってことで。
どうも初めまして雨水雄です。
もしかしたら前作に触れてくださった方もいるやもしれませんね。お久しぶりです!
……なに書こうかと悩んだんですけど、伝えたいことは作品に詰め込んでいきます!もう一切合切好きなことを注ぎ込んだ雨水ワールド全開で送っていく所存です!ですです!
そういえば今年も桜綺麗ですよねぇ……外で見たいです。雨水は桜が一番好きです。なんならピンクも好きです。
最後になりますが、どうか体調に気をつけて体をお大事にお過ごし下さい。なんなら雨水の作品を暇つぶしに読んで下さっても結構ですよ?
それでは、今後ともよろしくお願いします!では!