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ゲームプランナーなので無理ゲーな異世界を大型アップデートします  作者: 浦和篤樹
第三章 アップデート『天より来る魔狂星』
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83 求める人材は?

 ティオルの指導が終わって、ララルマと共に戻ってくる。


「お疲れ様。どうだった?」

「剣術の型と立ち回りは一応教えました。でも、一回教えただけじゃ、角穴兎(アルミラージ)を相手にするのも厳しいです」

「まあ、そこは仕方ないよな」

 俺も、もう何週間もティオルから教わっているのに、ソロで角穴兎を相手するのはまだきついからな。


「また今度ぉ、時間があるときお願いしますぅ、って言ってたからぁ、これからも何度か教えることになると思いますよぉ」

「うん、いいんじゃないかな。どうせしばらく仕事はやれそうにないんだし、その調子で今の内に、いっぱい教えて剣術を普及しよう」

「はい!」

 ティオルが力強く頷く。

 俺に言われるまでもなく、そのつもりだったみたいだ。


「こうやってティオルが教えた新人や、俺達の噂を聞いた人の中から、パーティーに入りたいって人が出てきてくれないかな」

「おおぉ、アタシの後輩になる人ですねぇ」

「ミネハルさんは、新しい人が欲しいんですか?」

「そうだな。この前雷刀山猫ライトニングサーベルワイルドキャットの群れとやり合って実感したと思うけど、もうちょっと人数がいないと、複数の魔物を相手取るには手が足りないだろう?」


 俺達はいま四人パーティーで、一見すると適正人数に見える。

 ゲームやアニメなら、キャラが多すぎるのは作るのも描くのも操作するのも出番やキャラの掘り下げのバランスを取るのも色々と面倒なんで、これで十分なんだろうけど。


 でも現実世界で魔物と戦うとなると、それじゃあ人数が少なすぎる。

 特に十数匹なんて群れを相手にするときは、MMORPGのレイド戦のように、複数パーティーで同盟(アライアンス)を組んで対処しないと、とてもじゃないけど手に負えない。

 俺達だけでまともに正面からやり合えるのは、新たに創造した角穴兎を除けば、単独行動している毒鉄砲蜥蜴ベノムショットリザードだけだ。


「そうですね、雷刀山猫の群れと戦うなら、あと十人……ううん、二十人くらいパーティーメンバーが必要ですよね」

「いや、まあ、そこまで多くなくていいけど……」

 真面目に検討してくれるのはいいけど、そこは合同で依頼を受ければ済むからな?


「じゃあぁ、ミネハルさんとしてはぁ、あと何人くらい欲しいんですかぁ?」

「そうだな……取りあえず、最低でもあと二人は欲しいかな」

「……どうせまたお前は不遇武器の使い手を増やすつもりでしょう」

 はいそこ、嫌そうな顔をしない。


「その二人って、どんな人がいいんですか?」

「まあ、希望は色々あるけど……」


 ざっくり言うなら、前衛と後衛が一人ずつだ。


 前衛は、今度は純粋にDD(ダメージディーラー)が欲しい。

 盾を除いて最も不遇な両手剣がベストだ。

 もっとも、両手剣を使える筋力があるならみんな両手斧を使っているだろうからかなり望み薄なんで、せめて両手槍か片手槍、まあ両手斧や片手斧でも不可ではないってところで。

 盾役(タンク)は現在ティオルとララルマがすでにいるから、これ以上増えてもあまり意味がない。一応、俺もするし。

 だから、純粋に火力を出せる仲間が欲しいわけだ。


「だったらぁ、盾役を入れてぇ、アタシが両手斧を使ってもぉ、同じじゃないですかぁ?」

 ララルマが、文句は言わないけどちょっと納得がいかないって感じに、小さく唇を尖らせる。

 ララルマの時のパーティー加入条件は、両手斧も使っていいけど、メイスと盾を使うこと、だったからな。


「ララルマは敵や状況に合わせて武器を変えられるのが強みだ。俺がもっと盾を上手く扱えるようになれば、俺とティオルのツートップで盾役をして、ララルマが両手斧で新人前衛と一緒に火力を出していくって出来るようになるわけだ」

 こうなると、かなり対処の幅が広がる。


「盾役とDDのセットが二組なら二匹同時に倒しにかかれるし、盾役とDDのセットを一組にして一匹を倒しながら、残りの盾役二人で二匹をキープすれば、三匹同時に相手取れる。そこで一匹倒して余裕が出れば、ララルマがメイスと盾から両手斧に持ち替えて、盾役とDDのセットを二組に変更も出来る」

 どうだ名案だろうって、ティオルとララルマを見る。


「あたしとミネハルさんのツートップで盾役ですか……」

 ティオルが、わずかに視線を泳がせた。

 それを見て、ララルマが小さく溜息を吐く。

「先は長そうですねぇ……」

「ぐっ……頑張るよ、練習」


 後衛は、出来れば魔術師が欲しい。

 可能なら上級魔術師(ソーサラー)がいいけど、この際下級魔術師(メイジ)でも構わない。

 かといって、弓が駄目なわけじゃないんで、弓でも大歓迎だ。


「ようは、後衛から状況に合わせて支援と攻撃を行える人材が欲しいわけだ」

「ああぁ、ユーリシス様はぁ、支援ばっかりで攻撃はないですもんねぇ」

「ユーリシスが魔物に攻撃魔法を使ってくれるんなら、後衛で魔術師の加入は必要なくなるんだけど……」

「しません。理由は説明したはずです」

「うん、だよな」

「そこはユーリシス様のこだわりどころなんですね」

「その通りです」


 何故か、ユーリシスが魔物を攻撃しないことを納得するティオルとララルマ。

 しかも、理由を知っているのは俺だけなのに、その理由を追及しようとしない。

 これまでもそうだったから、多分ユーリシスが神の権能で何かしているんだろう。


「いま俺も魔法書を読んで勉強してる最中だけど、魔法が使えるかどうかは確実じゃないからな」

「もしミネハルさんが魔法を使えるようになったら、盾は止めて後ろに下がっちゃうんですか?」

 それはそれで寂しいって顔をするティオル。

「いや、俺も状況に合わせて変えられたらって思ってる」


 さっきも説明した通り、盾役とDDのセットが二組で二匹同時に相手取るのなら、敢えて俺が前衛で立ち回る必要はないから、一組は俺が後衛のDDになって魔法で支援や攻撃をしていい。

 また、盾役三人で一匹ずつキープするなら、俺も前で盾を持つし、上級魔術師くらいまで腕を上げられたら詠唱時間も短くて済むようになるから、魔法剣士みたいに魔法を組み合わせて盾役をやればいい。

 最大限の希望を言うなら、剣と盾で盾役をしながら、魔法で削るDDも兼ねるって感じだ。これで一匹、キープしながら削ることが出来る。


「それ、すっごく格好いいです」

「そうだろう? どうせやるからには、そのくらいこなせるようになりたいよな」

「あたしも一緒に魔法のお勉強してみようかな……」

 ティオルが半分本気、半分冗談の顔で呟くけど……。


「ティオルはその前に、文字の読み書きと算数の勉強が先かな?」

「あぅ……」

 俺の苦笑に、がっくり肩を落とすティオル。

 それを見てララルマがクスクス笑っているけど、ララルマももうちょっと読み書きの勉強が必要だと思うぞ?


「正直言えば、さらにもう一人増やして、盾役と前衛DDと後衛DDの三人セットを二組と、ユーリシスが両方の支援とその他の牽制でキープって感じが理想かな」

 ただ現状、前衛火力や人手が足りてないから、後衛火力ばかり増やしても前衛を突破されたら意味がないんで、まずは前衛後衛一人ずつって感じだな。


「誰か来てくれるといいですね」

「ああ。クルファにも話を通してるし、この先、今日みたいに新人が教えて欲しいって訪ねてくることもあるだろうから、有望そうな新人がいたら二人も声をかけてみてくれ」

「はい、分かりました」

「はいぃ、できるだけぇ、男の人を選んで声をかけてみますねぇ」


 ん、男の人を選んで?


「別に女の人が駄目なんて条件、出してないぞ?」

「その女の子までぇ、ミネハルさんのこと好きになっちゃったらぁ、どうするんですかぁ」

「あ……それは駄目です、すごくすごくすごく駄目です」

 なんか二人とも目が本気だ……。


「パーティー崩壊は時間の問題のようですね。お前がハッキリしないからですよ」

「ちょ、ユーリシスまで。パーティー崩壊してないし、させてないからな!?」

「ちゃんとどっちか選んでくれてればぁ、別に女の人を誘ってもいいんですよぉ?」

「ララルマさんの言う通りです」

「うぐ……善処します」



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