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ゲームプランナーなので無理ゲーな異世界を大型アップデートします  作者: 浦和篤樹
第二章 アップデート『新たな試練と恩寵』
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69 新生ララルマのリベンジ戦 1



 最寄りの村からしばらく離れた平原で、勝ち(どき)と歓声が上がった。

 それを上げたのは『ゲイルノート』の面々だ。


「どうだ見たか、遂に無傷で仕留めてやったぜ!」

 角穴兎(アルミラージ)を掴んで高々と掲げてエンブルーが大はしゃぎする。


 直接仕留めようとするばかりじゃなく、前衛が動くためのスペースを作るための牽制射撃が目に見えて上達してきたリュシアンも、胸を撫で下ろしながら控え目に微笑んだ。

 みんなそれぞれに、初めての完全勝利に沸き立っている。


「みんなかなり戦い方が上手くなってきたな。役割分担と連携が様になってきたと思う。端から見ていて安心できたよ」

「ありがとうございます。それもこれも、ミネハルさんが僕達の相談に乗ってくれたおかげです」

 代表してリーダーのローレッドが握手を求めてきたんで、その手を握り返す。


「ま、オレにかかればざっとこんなもんよ。この調子なら、ティオルなんてすぐ追い抜いて、オレの方が強くなっちまうかもな」

 幾度も受け止め受け流したことでボコボコにへこみガリガリ削られた盾を、ラングリンが得意満面でティオルに見せつけた。

 すぐにって言うのはノリででかい口を叩いただけにしても、怯まず前に出るその姿勢は、多分いい盾役(タンク)になってくれると思う。


「? うん、ラングリンは思い切りがいいし、魔物の目を自分に向けさせるのが上手だから、きっと強くなれると思う」

 小首を傾げた後、頷くティオル。


 最近では『ゲイルノート』のメンバーともすっかり打ち解けて、同年代だからこその気安さか、俺と話すときとは違う砕けた口調で話すようになっていた。

 リセナ村では孤立していたようだから、いい友達が出来たみたいで俺も一安心だ。


「あ~ダメダメそれじゃ。大事なのはそこじゃないのよ、そこじゃ」

「うっせぇよ」

 パプルが肩を竦めると、他の『ゲイルノート』のメンバーがクスクス苦笑して、一転してラングリンが拗ねる。


「チッ、負けねぇからな」


 で、何故か俺が睨まれてしまった。

 ティオルとどっちが盾を上手く使いこなせるか競ってる話じゃなかったのか?


 ティオルもそう思ったのか、またも小首を傾げて、その後ろでララルマが笑いを堪えている。


「なんだかよく分からないけど、ともかくこれで『ゲイルノート』と合同で依頼を受けるのも一区切りかな」

「そうですね。角穴兎程度ならもう僕達が後れを取ることはないですし、後は経験を積んで自分達なりにパーティー戦術を磨いていこうと思います」

「ああ、それでいいと思う」


 もっと強い魔物に挑むには、まだ盾に持ち替えて半月かそこらだから不安だけど、本来は格下の角穴兎が相手なら、もう俺達がフォローのために同行する必要もないだろう。

 朝の合同稽古はまだしばらく続けた方がいいだろうから、上達ぶりはその時に確認すればいい。


「な、ならよ、一緒にもっと強い魔物を狩るってのはどうだ?」

 ラングリンが、ティオルをチラチラ意識しながら、ローレッドに提案する。

 まだティオルに盾を扱う技術を実戦で学びたいのかも知れないけど……。


「ラングリン、気持ちは分かるけど、僕達とミネハルさん達とではパーティーを結成した目的が違うんだ。ミネハルさんの志に賛同してパーティーに加入するならまだしも、これ以上はミネハルさん達の活動の妨げになってしまう」

「そうよね。ティオルもララルマさんも、もっと強い魔物にも挑んでいくんでしょう? わたし達にはちょっと無理ね。明日のご飯の方が大事だわ」

 パプルが肩を竦めると、ローレッドもリュシアンも頷く。


 残念ながら、そういうことだ。


「またいつか一緒に魔物退治すればいいじゃん」

 エンブルーが気楽そうに言うと、十分納得したって顔じゃないけど、ラングリンがティオルを、続けて俺をビシッと指さした。

「すぐに同じ魔物を狩れるように強くなってやるからな。それまで下手を打つんじゃねぇぞ」


 よく分からないけど、対抗心が強いってことは成長してくれるってことだろうし、いいことだ。


「ああ、楽しみにしてるよ」

 せっかく、男と男の約束だ、っぽい感じで格好良く頷いてみせたのに、ラングリンには悔しそうな顔をされるし、他のメンバーには爆笑されてしまった……。


 何がなんだかさっぱりだ。



「ミネハルさん~、リベンジがしたいですぅ」

 最後の合同依頼を終えてドルタードの宿屋に戻ったら、突然、ララルマがそんなことを言い出した。


「リベンジ? 何に?」

毒鉄砲蜥蜴ベノムショットリザードですよぉ。あと一息で倒せたのにぃ、アタシのミスでぇ、決定的なチャンスを逃しちゃったじゃないですかぁ。ずっと悔しかったんですよぉ」

「なるほど、あの時のリベンジか」


「ですぅ。ミネハルさんのおかげでぇ、スポブラと胸当てとぉ、色んなスキルも覚えてぇ、かなり強くなれたと思うんですよぉ。角穴兎相手に練習してぇ、動きもかなり慣れてきましたしぃ、今なら絶対に負けません~」

 確かに、かなり強くなったからな。

 前回は痛み分けで終わったけど、今なら勝てるかも知れない。


「ティオルは――」

「やります!」

「――うん、やる気十分みたいだな」

「はい、あたしも悔しかったです。角穴兎といっぱい戦って跳んでくる攻撃を捌くのも慣れましたから、毒液だってもう怖くありません」

 確かにティオルも、以前は咄嗟のことだと癖で『シールドガード』ばかり使っていたけど、最近は『リフレクトアームズ』との使い分けの判断が上達してきたからな。


 ホロタブを起動して、映し出されたティオルのステータスを改めて確認する。


 ティオルはレベル十二に成長していた。

 これは、リセナ村で雷刀山猫を倒すというこれまでにない経験をして、爆発的に経験値を積み上げたおかげだ。

 その後も順調に経験を積んできて、経験値ゲージはもう少しでレベル十三に届きそうな所にまで来ている。


 もし毒鉄砲蜥蜴を倒せたら、レベル十三になれるかも知れない。

 それでまた爆発的に強くなれるわけでもないだろうけど、戦い方次第では毒鉄砲蜥蜴をしばらく相手にして、そこで安定して倒せるようになったら、さらに強い魔物に挑戦するのも視野に入れられそうだ。


「ユーリシスはどうだ?」

 途端にユーリシスが渋い顔をする。

 また魔法で水を出して、毒液を洗い流す衛生兵の立ち回りが面倒なんだろう。

 だけど……。


「やりましょうユーリシス様!」

「次はぁ、あの時みたいにぃ、毒液何度も浴びたりしないですよぉ」

 珍しく積極的に二人が頼むもんだから、ユーリシスは迷う素振りを見せて、最後には仕方なさそうに溜息を吐いた。


「いいでしょう。次はもっと上手く避けて、私の手を煩わせないようにしなさい」

「はい、ありがとうございます!」

「はいぃ!」

 約一名を除いて、みんな気合いが入ってるな。


「じゃあぁ、準備のためにぃ、早速装備を買いに行きましょぉ」

「装備? 薬じゃなくて?」



「ど、どうでしょう……似合いますか?」

「どうですかぁ?」

 とある武具屋にて。


「うっ……」

 二人の肌色率の高さに、コメントに困ってしまう。


「すっかり忘れてた……そうだよな、服を着ていくわけにはいかないよな……」

 正確には服を着てないわけじゃなくて、布地が少ない服に着替えただけだけど……。


 二人の格好はまさに一般的な女性冒険者がする蛮族スタイルで、革鎧のビキニアーマー状態だ。

 唯一の救いは、ララルマの胸当てとスポブラが特注品だから、そこだけはビキニのブラっぽい防具になっていないことか。


 腰に巻いた申し訳程度の布……つまりはスカートだけど、その下はさすがに直接下着じゃない。

 知らなかったけど、アンダースコートのような、厚手の布製や革製のパンツだ。

 デザインは、文字通りアンダースコートみたいなのや、ビキニのパンツみたいなの、さらにボクサーパンツみたいなのと、色々あるみたいだけど。


 ララルマはそのスタイルのエロさから、ティオルは年齢と立場から、直視するにはちょっと罪悪感がある。

 おへそとか太股とか、普段は服で隠れて見えない部分が見えてしまっているから、余計にだ。


 でも、こういうスタイルじゃないと、いざ毒液を浴びたとき服に毒液が染み込んで、その部分の肌がさらにひどい炎症を起こすし、即座に水で洗い流せないから、毒液が染み込んだ部分を切り裂いて取り除く手間が掛かるし、仕方ないと言えば仕方ない。


「ミネハルさんに見られるのはちょっと恥ずかしいですけど…………えへへ、すごく冒険者っぽいですよね♪」

「ねぇ♪」


 やっぱり、一般的な女性冒険者がそういう格好をしてるから、二人ともこのスタイルに憧れがあった、と。

 リベンジに燃えるのとは別の理由でテンションが高い。


 諸々の理由を勘案すると、どうやらこれでいくしかないようだ。



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