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ゲームプランナーなので無理ゲーな異世界を大型アップデートします  作者: 浦和篤樹
第二章 アップデート『新たな試練と恩寵』
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67 『駄肉』から『巨乳』へ 1

「こっ、これはぁ!? すごいぃ、すごいですよぉ! 全然揺れません~!」


 跳んで回って身体を揺すって腕を振り回して、目を驚愕に見開いて自分の胸を見下ろすララルマ。

 その大きな大きな規格外サイズの胸は、この世界に新たに誕生したスポブラに包まれて、しっかりと保持されていた。


 さすがに、サイズがサイズだけに、きっちりかっきり微動だにしないというわけにはいかないけど、これまでの、ぶるんぶるん、だぷんだぷん、と派手に跳ねて揺れ動いていたのに比べれば、全然揺れないと言っても過言じゃない。


「ほらほらぁ、ミネハルさん見てくださいよぉ、全然揺れないですよぉ! こんなに動いてもぉ、痛くならないんですよぉ!」

「あ、ああ、そうだな」

 嬉しくてはしゃぎたいのは分かるけど、上はスポブラ一枚の格好で、その巨乳と下着姿を誇らしげに見せつけられると、とても目のやり場に困る。


「どうだ? 初めての代物だから、かなり手間取っちまったが、注文通りの一品に仕上がったと思う」

 実に得意げに言うシャルス。

 『ゲイルノート』と合同で稽古を始めて数日。今日ようやくシャルスから宿に『注文のブツが仕上がった』って連絡が入って、稽古の後、取り急ぎやってきたというわけだ。


「ああ、まさに注文通りだ。感謝するよ」


 ユーリシスとホロタブでシミュレーションした結果、元の世界のスポブラと遜色のない品が出来たわけだけど、それを実際に再現できるかは賭けの部分もあった。

 正直、機能は少々見劣りしても全くないよりマシ、実戦で使える及第点の出来栄えであれば御の字、そう考えていたくらいだ。


 ところが、蓋を開けてみればこの出来栄えだ。

 機能が最優先で、デザインは二の次のシンプルなものだけど、ちゃんと着用に耐えられる見栄えに仕上がっているのもポイントが高い。


「その様子なら、十分期待に応えられたみたいだな」

 職人の顔で笑うシャルスが手を差し出してきたんで、しっかりと握手する。

 その俺を見る目が、妙に生温かく感じるのは、いったいなんなんだろうな?


「ミネハルさん~、ありがとうございますぅ!」

 ララルマも俺の両手をしっかりと握り締め、ブンブン上下に振って大はしゃぎだ。

 これまで存在しなかった下着だから、ララルマにとって下着って意識が薄いんだろうけど、上だけとはいえ下着姿で至近距離に来られたら、理性をフル動員して視線を逸らさないと凝視してしまいそうで非常に不味い。


 ただ、視線を逸らした先が不味かった。

 着替えに使った隣の部屋のドアの隙間から、こっそり顔を出してこっちの様子を窺っていたティオルとバッチリ目が合ってしまう。


「えっと、その……着けました」

 迷い、躊躇った末、顔を赤らめながら怖ず怖ずとティオルがこっちの部屋へ戻ってくる。

 ティオルも下は普段通りだけど、上はスポブラ一枚だった。


「どう……ですか? 変じゃない、ですか?」

 よく見えるようにって配慮なのか、恥ずかしげに腕を後ろに回すティオル。


「あ、ああ、大丈夫。変じゃない、似合ってるよ」

 ティオルの胸は、ララルマとは比べるべくもなく小さい。

 この世界では恐らく理想的なサイズと思われる程、その脹らみはすごく控え目だ。

 だからというか、なんというか……それはそれで非常に目のやり場に困る。小柄で実際の年齢より少し幼く見えるのも、余計に不味い。

 だから視界の端に留めるくらいで直視しないように、視線を斜め上に逸らしておく。


「それで、着け心地とか動きとか、大丈夫か?」

「慣れないから、ちょっと変な感じです……着ける意味があるのか分からないですけど……邪魔にはならない、かも? ただ、その……あたし、そこまで大きくないですよ?」

 駄肉仲間に認定されたとでも勘違いしたのかな?


「ティオルも女の子だし、サイズに関係なく戦うなら着ておいた方がいいと思う。多分、少しは動きが違うと思うから」

「そうなんですか? その……分かりました、ミネハルさんがそう言うなら、きっとそうなんですよね。ありがとうございます」

 良かった、受け取って貰えて。


 と言うか、だ……。


 この状況、ララルマに対しても大概だけど、女子高生くらいのお年頃のティオルに、ブラを贈って、着けてるところを見せて貰って、着け心地を聞いて……って、普通に事案なんじゃないか!?


「と、取りあえず二人とも問題ないようなら、そろそろ上着を着てくれ」

「は、はい」

「はぁいぃ♪」


 ティオルは多少は下着って意識を持ってくれているようだけど、ララルマはやっぱり下着って意識を全然持ってくれてないな。

 ともかく上着を着てくれて、ようやくまともに二人へ視線を戻せた。


 咳払いして気を取り直してから、ララルマに向き直る。

「ルーシャからも完成したって連絡が届いてるんで、これから取りに行こう。胸当ても装備してから改めて感想を聞かせてくれ」



 というわけで、ちょっと変わった趣味の革鎧職人、ルーシャの工房へと移動する。


「アタシの胸でも入りますぅ! しかもさっきよりもっと揺れないですぅ!」

 ララルマは胸当てを付けると、同じく跳んで回って身体を揺すって腕を振り回して、さらに大はしゃぎだった。


「そりゃあその大事なおっきなおっぱいを守るためだからね、あたしゃ頑張ったよ。近年まれに見る傑作だわ」

 うんうんと頷きながら、胸当てが付けられたララルマの巨乳を、愛しい我が子でも見るように、温かな眼差しで見つめるルーシャ。

 やっぱり、ちょっと独特の嗜好をお持ちのようだ。


 でも、なめし革を何枚も立体的に貼り合わせて、曲線に沿って保持して守るその形状とデザインは実に見事だ。腕は確かだったってことだろう。

 ただ、なめし革が幾重にも重なっている分、巨乳がさらに一回り大きく見えて、そのせり出し具合はハッチが開いてミサイルが飛んで行きそうな程だ。


「これなら胸の駄肉に振り回されるのをぉ、全然考えないで戦えますぅ! これでアタシぃ、もう『魔物に襲われたら真っ先に逃げ遅れて食い殺されるタイプ』とかぁ、『餌になって逃げる時間を稼いでくれるタイプ』とかってぇ、馬鹿にされないですよねぇ!?」

「ああ、もちろんだ」

 これまでのコンプレックスのせいなんだろう、笑顔の中にうっすら涙を浮かべているララルマ。


「こんな立派な胸当てを作ってくれてぇ、ありがとうございますルーシャさん~。シャルスさんもぉ」

「駄肉の新時代の幕開けだね。そんな仕事に関われて、あたしゃ嬉しいよ」

「ああ、そこまで喜んで貰えたら、職人冥利に尽きるってもんだ。もう駄肉になんか負けんなよ」


 シャルスとルーシャの手を取り感激するララルマと、一緒に感激を分かち合う二人に、提案するように軽く手を挙げる。

「せっかくなんだから、その駄肉って呼んで卑下するのはもう止めにしないか?」


「えっとぉ? じゃあなんて呼ぶんですかぁ?」


「背が高い人や低い人がいるように、胸が大きな人や小さな人がいる、ただそれだけの話だろう? 駄肉だなんて蔑んだり卑屈になったりする時代は、今この時を以て終わりを告げたんだ。これからは大きかろうと胸を張り、ただ大きな胸って意味で『巨乳』って呼べばいい」


「『巨乳』……ですかぁ……」

「ほうほう『巨乳』ねえ……」


 真剣な表情になって吟味するララルマとルーシャを見て、はたと我に返る。

 感激しながらも、いつまでも駄肉だと自分を卑下するララルマが不憫で、ついいいこと言ったみたいな雰囲気を醸し出してしまったけど……俺は真面目な顔をして、いったい何を言ってるんだろうな?


「『巨乳』いいですねぇ、それなら言ってて全然悲しくないですぅ」

「うんうん、いいね『巨乳』。おっきなおっぱいに対する愛とリスペクトを感じるいい言葉だと思うわ」

 愛とリスペクトがあるかどうかはともかく、お気に召してくれたようで何よりだ。


 ただ、ユーリシスの冷ややかな視線がチクチク突き刺さってくるけど。

 その目は『お前はいったい私の世界で何を広めているのですか』と言わんばかりだ。


 いやはや、全く以てその通りで。


 ともあれ、これでララルマが自分に自信を持てるようになってくれれば、俺も雰囲気に流されておかしなことを口走った甲斐があるよ。


「ミネハル君、あたしゃあんたが気に入った! またなんかあったらいつでも相談に来なさい、なんでも作ってあげるわよ!」

 バン!

 と、思い切り背中を叩かれる。

 しかも、ルーシャと一緒にもう一人。


「オレもだ。ミネハル、あんたの頼みならどんな無理難題だって請ってやる」

 何故かシャルスまで、やけにいい笑顔でサムズアップしてくる。


「なんたって、オレらは仲間だからな」

「そうだよ、あたしらは仲間だ」

 なんだか知らないうちに、シャルスとルーシャに仲間認定されてるわけだけど……いったいなんの仲間だ?


「ミネハルさん~、アタシどれだけ戦えるようになったかぁ、確かめてみたいですぅ」

「そうだな。じゃあ実戦に出る前に、冒険者ギルドの裏の広場で試してみようか」

「はいぃ♪」


 と、その前に。

 代金を払うついでに、シャルスに追加注文しておくのを忘れない。


「じゃあシャルス、ルーシャ、ありがとう。またよろしく頼むよ」



◆◆◆



 シャルスとルーシャが峰晴達を見送った後、足早にフランがやってくる。


「シャルスの家に行ったら、こっちに来てるって聞いたんだけど、どうやら入れ違いになったようだね」

「ああ、丁度ミネハル達が帰ったところだ」

「そいつは残念だ。ミネハルには是非礼を言いたかったんだが」

 フランが胸元に手を当てて、残念そうに微笑む。


「この『すぽぶら』は実際大したもんだよ。槌を振るうたびに、この駄肉が揺れて邪魔くさかったんだが、まったく揺れなくなって仕事が捗るったらないね」


「そうか、そいつはよかった。技術はタダで広めて構わないって言うし、他に胸の大きさで悩んでる女の子がいたら、是非格安で作ってやってくれって言われてるからな。『すとれっち素材』ならどれだけ金貨を積んでも欲しがる奴は山ほどいるだろうに。商会を作って独占販売すれば一財産築けるのは確実だ。なのに自分の儲けよりも、胸の大きさで悩んでる女の子の助けになる方が大事なんだってよ。実際、大した男だぜミネハルは」


「同じ駄肉趣味でもルーシャとは随分違うんだね、ミネハルは」

「いやぁ~、まったくだね」

 悪びれもせず笑ったルーシャは、悪戯っぽく笑いながらスポブラに包まれたフランの巨乳を鷲掴みにする。


「な、何するんだい!?」

 コンプレックスの駄肉を触られたくなくて身をよじるフランに、ルーシャは胸を張りなとその背を叩いて伸ばさせた。


「ミネハル君が言うには、もう駄肉だなんて蔑んで呼ぶ必要はないらしいわよ。これからはただの大きな胸、『巨乳』って呼べばいいってさ」


 フランはその言葉に驚き目を丸くする。

 自分の駄肉に、駄肉以外の、侮蔑や卑下の含まれない呼び方があるなど、思いも寄らなかったからだ。


「ところでシャルス、最後にミネハル君がまたなんか頼んでたみたいじゃない? 今度は何を頼まれたの?」

「ああ、着替え用に追加で『すぽぶら』数着と、これだ」

 シャルスは峰晴に託された、新たな依頼品のラフスケッチと設計図の描かれた羊皮紙を恭しく広げた。


「「こっ、これは!?」」


 フランとルーシャが同時に上げた驚きの声に、シャルスは楽しげにニヤリと笑う。


「戦闘用じゃない、普段着で着飾る用の『ぶらじゃー』と、戦闘用普段用の兼用で使える『ひっぷあっぷがーどる』って女性用下着らしいぜ」

「……ミネハル君は神か!? 駄肉を美しく見せる下着だなんて……その発想はいったいどこから出てくるんだろうね、あたしゃ脱帽だわ」



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