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ゲームプランナーなので無理ゲーな異世界を大型アップデートします  作者: 浦和篤樹
第二章 アップデート『新たな試練と恩寵』
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53 女神様の恋愛相談室

熱も下がり、ようやく体調が戻ってきたので、更新再開します。

インフルエンザウィルスのみならず、別の菌まで胃と気管支に入ったようで、新年早々、ちょっと大変でした。


それと書き溜めていたストックが見る間に減ってきており、更新速度に執筆速度が追い付いていないので、申し訳ありませんが二日に一度の更新に変更させていただきます。

「とはいえなぁ……どうしたらいいんだろう?」

「なぜそのような話を私にするのです。まさかそのような愚痴を言うために、わざわざ疑似神界を創らせたのではないでしょうね。滅ぼしますよ」


 あの後、勢いに押された熱が落ち着いてきたところで……かなり厄介な事態になってしまったことに気付いて、考える時間が欲しくて、ユーリシスに頼んだわけだ。


「俺だって不本意だけど、他に相談出来る相手がいないんだよ」

「知ったことではありません」

 心底呆れた冷たい視線が、俺を突き放す。


「そんなこと言わずに、話を聞いてくれ」

「情けない声で愚痴を漏らしている暇があるのなら、お前がすべきと思うことで動くべきでしょう」

「だから、それがそう簡単にいかないから、こうして悩んでるんだよ」


 まず、一番に悩むのは倫理的な問題だ。

 ララルマは二十二歳って言うから、その問題のハードルは低いけど、出会って間もない、しかもあんなエロい身体の女の人と、よく知り合ってもいないうちに即恋愛だ結婚だなんて言い出したら、まるで身体が目当てみたいじゃないか。

 そう後ろ指を指されても言い返せないくらい、思わずぐらつきそうになる魅力的な身体が悩ましい。


 ティオルに至ってはまだ十六歳で、女子高生って年齢だ。

 それに手を出すとなると、青少年保護育成条例とか、色々まずいだろう。

 容姿も見た目より少し年下に見えるし、体付きだってそうだ。あの世界では胸が小さいのが一般的だから感覚が違うけど、まだ十分に成熟していない子に手を出すような罪悪感が半端ない。


 しかも、親御さんの許可を貰って旅に連れ出した、謂わば大人として責任ある立場で余所様の子を預かっている状況なんだ。

 それに手を出すのは、保護者としても、道義的にも、非常に問題だろう。


「第一、俺はあの世界の人々を救うって仕事を請って、それをこなしている真っ最中だろう? 謂わば、ティオルもララルマも、デバッグ要員として雇ったバイトみたいなもんだ。社員がバイトに手を出すみたいで、コンプライアンス的にもかなりまずい」


「我が師が仕事として依頼しましたが、神も私の世界も企業ではありません。なんのコンプライアンスがあると言うのです。それを言うのならば、お前は世界を救うまで一切の時間を業務時間として、プライベートな時間は存在しないとして行動するつもりですか? 仮に世界を救うのにお前が老人になるまで掛かったとして、その間、誰とも恋愛も結婚もせずに、凡ゆる言動と感情を仕事中だからと割り切るつもりですか? お前がそのつもりであれば、私は構いませんが」


「それは……」

 最後、言外に『そんなこと、とても可能とは思えませんが』という台詞が続く呆れの表情で見られて、言葉に詰まってしまう。


「そのような無理を通して失敗されては目も当てられません」

 確かにユーリシスとしては、こんなことで俺が失敗したらたまったもんじゃないだろうな。


 そう考えると、なんだか俺が難しく考えすぎてしまっているような……そんな気がしてきてしまう。

 確かに仕事として請け負いはしたけど、現状は会社勤めってわけじゃない。

 全てを業務中だからと割り切ってしまうと、ユーリシスの言う通り世界を救うまで、俺には遊びも恋愛も休息も許されないことになってしまう。

 いくら俺でも、さすがにそれはちょっとな……。


「あの二人が望んでいる以上、なんの問題があるというのですか。そもそも、仮にも神の位階を与えられた者の行為が、人の倫理観や法で裁かれるなどあり得ません」

「いや、神の理屈ならそうなのかも知れないけど、これは気持ちの問題だから」

「あの小娘に関しても、すでに十二歳を越えて成人しているのです。成人同士、合意の上で、誰から咎められると言うのですか」

「いや、あの世界じゃそうかも知れないけど、元の世界じゃまだ未成年だから犯罪だぞ?」


「私の世界で行われた行為が、お前の元の世界の人の法で裁かれるなど、なおあり得ません。たとえそれが、我が師が創造した世界の法であったとしてもです」

 確かにそれは、その通り……だな。


「私が元のお前の身体を複製した身体に魂を結びつけ転生させたために誤認しているようですが、お前はすでに一度死んで、その魂は私の世界で生まれ変わり新しい人生を送っているのです。すでに私の世界の住人となったお前が、前世の常識と法を持ち出して私の被造物たる者にそれを押しつけるなど、僭越を通り越し、私を前にして傲慢な行為と知りなさい」

「うっ、それは……」

 確かに、創造神を前にすればその通りかも。

 この倫理観の問題に関しては、どうやらユーリシスが正しい。


「でも、問題はそれだけじゃないんだ」

「他になんの問題があると言うのです」


「俺はこの仕事を成功させたら、その報酬に元の世界で生き返って、未完成のまま放り出してしまったプロジェクトを完遂させたい。元の世界に帰るつもりの俺が、あの世界の女の子に手を出すのってどうなんだって話だよ」

「ならば、手を出さずにきっぱりと断って諦めさせればいいでしょう」

「いや、それはそうなんだけど……」


 前世でも全くなかった、初めて女の子と恋愛、しかも一線を越えられるチャンスに、心がぐらついてしまっている。

 こういう中途半端な態度が一番悪いんだろうとは思うけど、きっぱり切り捨てられるほど、俺は恋愛も結婚も諦めてないんだ。

 出来れば、恋愛も結婚もしたい。


「そうしない、つまり憎からず思っているのであれば、好きに手を出せばいいでしょう。我が師の提示した報酬は、このまま私の世界で寿命尽きるまで好きに生きていいというものがあったはずです。しかもその場合、金も女も望むままにという内容だったのですから、手を出すことになんの問題があるのですか」

 それは甘い蜜の誘惑で、余計に心がぐらついてしまう。


「それが嫌なわけじゃないけど、あの世界で生き続けるって決めたわけじゃないのに、手を出すわけにはいかないだろう」

「では、好きに手を出すだけ出して、そのまま元の世界に戻ればいいでしょう。遊びで弄ぼうが、妊娠させようが、恨まれようが、最後に必ず縁が切れるのです。あの小娘達が元の世界までお前を追いかけ責任を取らせることなど不可能なのですから」

「それこそ無責任で大問題じゃないか! ユーリシスは俺にそんな真似されていいのか!?」


 冷たい、氷のような視線が俺を侮蔑してきた。


「いいわけがないでしょう。私の被造物たる者達にそのような不埒な真似をしたら、絶対に許しません。しかし、非常に不愉快なことに、今はお前の方が位階が高いのです。そのお前の行為を、私が裁くことは出来ません。安心しましたか?」

「いやだから、そんな無責任な真似はしないからな!?」


 ただ、ユーリシスのここまでの口ぶりからすると、どっちに手を出そうが、もっと言えば両方に手を出そうが、ちゃんと責任を取るなら構わない、って言っているよな?

 くっ……余計に悩むじゃないか!


「まったく、このような無駄な行為に付き合わされて非常に迷惑です」

「こっちは真剣に悩んでるんだ、無駄ってことはないだろう?」

「他者との関係で悩んでいるのでしょう。ならば、お前一人がこの疑似神界で何億年悩もうが、関係に進展も後退も一切の変化が生じないのですから、結論に変化が出るわけがないでしょう。それを無駄と言わずになんと言うのです」

「うぐっ……」

 反論の余地がないくらい正論だ……。


「よもや、本気でそのような無駄にこの私を使ったのではないでしょうね」

 これはもう、本当にあの二人が言っていたように、二人を見て考えて、時間をかけて結論を出すしかなさそうだ。

 二人の好意に甘えるようで情けないけど、確かに今どれだけ悩んでも結論は出そうにない。


 ピシャッと頬を叩いて、浮ついた気持ちと、恥ずかしいくらいピンク色だった頭の中を、仕事モードへと切り替える。


「悪かった。ここからは切り替えていく。ユーリシスに相談があるって伝えたよな」

 輪をかけて不愉快そうな顔になったユーリシスに、今度は仕事の話だから一切の遠慮なしに切り出す。


「スポブラの作り方って分かるか? 出来れば伸縮性がある生地で、激しく戦闘をしても形を保持してくれる性能があるとありがたいんだけど」

「あの駄肉猫のために、そこまでする必要があるとは思えませんが」

「駄肉猫って……自分の被造物によくそんな言い方出来るな?」

 もうちょっと呼び方どうにかならなかったんだろうか。


「どうせお前のことです、スポブラがあればあの駄肉猫が戦えて、他に駄肉を持つ者達が後に続き戦力増強になる、などと言い出すのでしょう」

「おおっ、よく分かったな」

「あの小娘の時は一定の成果が見込めましたが、あの駄肉猫ではそのような成果が上がるとは思えません。労力の無駄です」


 随分ときっぱりと言い切るな。

 かなり懐疑的みたいだ。


「ティオルとララルマ、そのコンセプトにどちらも違いはないと思うけど」

「そもそも、戦えない程の駄肉を抱えている者達が、まず稀なのです。全体から見れば例外にも等しいごく少数の者を対象にしたところで、その中からどれほどの戦力が出てくると言うのです」

「あっ、なるほど、それは確かに……」


 ララルマ程の巨乳の女の人は、この王都でさえ他に目にしたことがない。

 そうでなくても、せいぜいB止まりなんだ。

 確かに、かなり限定的かも知れないな。


「でも、全くゼロでもなければ無意味でもないだろう? 成果の多少に関わらず、ララルマみたいに戦いたいのに戦えない人がいる問題を解決する方こそ、主眼に置いて考えるべきじゃないか?」

「それを主眼に置くことを否定はしませんが、どうせするのであれば、より成果の上がる要素を優先し労力を割くべきでしょう」

「逆だな。それもするし、これもする。決められた予算があってそれをどう配分するかって話じゃないんだ。文字通りリソースは無限に用意できるんだから、マイナス要素がなければ思い付いた策は全部やればいい」


 ユーリシスが呆れと諦めの溜息を吐く。

「そこまでしたところで、あの駄肉猫の身体能力では、望むほどの宣伝効果が得られる戦力になるとは思えませんが」

「それは…………俺がなんとか考えるよ」


 知り合って、仲間になりたいって言ってくれた以上、見捨てるなんてあり得ない。

 それに、自分でもチョロいって思うけど、あんな風に好意を示されたら、多少なりとも情が移ってしまう。


「というわけで次だけど、あの世界でどんな素材を使えば仕様を満たすスポブラが作れるか、実験と検証を行いたい。それから目的のスポブラが完成したと仮定して、取りあえず今は元の世界のスポブラを創造して代用するけど、それを身に着けたララルマの複製を創造して、色々な武器を持たせて魔物の複製と戦わせて両手斧以外の適性を調べたい。適性が分かったら、次はその武器の新スキルの開発だ」

 ユーリシスが眉間に深い皺を刻むと、盛大な溜息を漏らした。



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