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ゲームプランナーなので無理ゲーな異世界を大型アップデートします  作者: 浦和篤樹
第一章 ゲームプランナーの異世界を救う仕事
10/120

10 情報収集(エルフの美少女)

 さて、次に話しかけるのはある意味で大本命、エルフのお姉さんだ!


「甘くて瑞々しくて美味しい果物はいかが?」

 まるで小鳥のさえずりのような、綺麗な可愛らしい声で、通りを歩く人達に声をかけている。

 金糸のような輝く金髪。透き通るような白い肌。長く大きなエルフ耳。小柄で華奢で、そこらのアイドルなんか足下にも及ばないくらいの、超美少女だ。


「こ、今日は、どれも美味しそうだね。どれがお勧めかな?」

「いらっしゃいませ。今日のお勧めはこのリンゴね。今朝届いたばかりだから甘くて瑞々しくて新鮮よ」

 と、リンゴに似た赤い果物を一個差し出してくる。

「この値段は……」

「どう、まだまだ安いでしょう? リンゴは北から入ってくるから、街道も比較的安全でまだ値上がりしてないの。でも、南から入ってくるパインは値上がりする一方だから、あまりお勧めは出来ないわ」


 と、エルフのお姉さんの目を向けた先を見ると、手の平サイズの小さなパイナップルに似た果物が。てっぺんから生えている草の先端が、少ししなびかけている。

 とはいえ、他にしなびていたり、痛みかけている果物はない。

 不景気な話が多い割に、果物類の流通はまだまだ大丈夫って感じなんだろうか。

 ただ、数は多いけど種類が少ないのが気になるな。リンゴとパイナップル、後は梨っぽいのとブドウっぽいのと、四種類だけなんて。それともこんなもんなんだろうか?


「じゃあ、それを貰おうかな」

 値札通り、三リグラをリグラ銅貨で支払って、差し出されたリンゴを受け取る。


 周りも普通にそうしてるから、俺もその場でかぶりついてみた。

 カシュッと小気味よい食感と、一口かじっただけで口の中に溢れ出す瑞々しい果汁。

 ただ、蜜はなくて、甘さはちょっと物足りないのが残念だ。


 よくよく考えてみれば、元の世界じゃ、穀物に野菜に果物に、さらには家畜ですら、みんな品種改良されて格段に美味しくなっているんだ。

 この時代、そういう事業を大々的にやってるとは思えないし、これは仕方のないことかも知れない。

 裏を返せば、時間とお金は掛かるけど、そういう事業をやればガッポリ稼げるかも知れないってことだ。多分、品種改良は神の御業でどうとでもなるだろうし。

 食糧事情を把握した後で、暇が出来たときに改めて考えてみよう。


「どう、甘くて美味しいでしょう?」

 自慢げに、目を輝かせて聞いてくるエルフのお姉さん。

 俺が『美味しい』って喜ぶのを疑ってない、純粋な瞳と笑顔だ。

 これは……さすがに俺も空気を読む。


「うん、すごく美味しいよ」

「でしょでしょ♪」

 くっ、破顔した超美少女エルフの破壊力ときたらもう!

 俺がまだ中高校生だったら、一発で惚れちゃってたに違いない。


「へえ、そんなに美味いってんなら、うちらにも一つ貰えないかい?」

 不意に、背後からドスの利いた女の声が聞こえてきて、慌てて振り返る。


「っ!?」

 そこには、四人の蛮族がいた。


 レザーアーマーって感じの小さな胸当てと腰当て。同じく革製のブーツと籠手。スカートとは到底呼べないぼろ布を腰に巻いているけど、身体で隠しているのはその程度だ。

 やっぱり肌の露出の方が圧倒的に多い。

 しかも、ボディービルダーも真っ青な全身筋肉の塊のような、胸もバストと言うより胸板と呼ぶのが相応しい女性達だ。


 身長より大きな両手斧を背負った、筋肉だるまみたいなドワーフの女性。

 俺より頭一つ分背が高く、両手斧を背負った野獣のような顔と傷だらけの身体の人間の女性。

 猪っぽい顔つきで、上向きの鼻と牙が印象的な、両手斧を背負った猪型獣人の女性。

 華奢の印象から程遠い細マッチョという、弓を背負い杖を手にしたエルフの女性。


 まさか、露店の超美少女エルフの美貌に嫉妬して、因縁を吹っかけてきたのか!?

 もし露店のエルフのお姉さんが乱暴されても、割って入ったところで守り切れる自信はないぞ!?


「キャー♪ 『ヘビーチャリオット』の皆さんですよね!?」

 思わず身構えた俺の後ろで、エルフのお姉さんが頬を染めて黄色い悲鳴を上げた。


「お姉ちゃん、うちらのことを知ってんのかい?」

「へへっ、あたいらもちったぁ名が売れてきたってことだね」

 人間の女性が威嚇してるのかって顔で笑い、猪型獣人の女性が野獣みたいな顔を崩して照れる。


「皆さんのおかげで私達の商売が回っているみたいなもんですから! あっ、よかったらリンゴ持って行って下さい。お代は結構です、応援してます!」

「そうかい、じゃあ遠慮なくいただこうかな……ガブッ、うん、美味いよ」

 エルフのお姉さん、嬉しそうで笑顔がとろけそうだ。


 でも良かった、ならず者が因縁を吹っかけてきたわけじゃなくて。


 リンゴをかじりながら去って行く四人組を見送ってから、エルフのお姉さんがうっとりと熱い溜息を漏らす。


「もしかして、知ってる人達?」

「はい。行商の護衛を専門に引き受けてくれる、『ヘビーチャリオット』って言う女性四人組の冒険者パーティーなんです」

 なるほど、それで『私達の商売が回っている』ね。

 しかし、ヘビーチャリオット……重戦車か、なるほどって納得の顔触れだったな。


「美女四人組ってことでも有名で、なんでも男性冒険者達から声をかけられまくっているらしいですよ」


 美女!? えっ、聞き間違いじゃなく、美女!?


「素敵ですよね……あんなに綺麗で逞しくて、そして強いだなんて。私も以前は鍛えてみたんですけど、全然で」

 苦笑しながら、エルフのお姉さんが力こぶを作る。

「あっ、こんな貧相な身体は他人様に見せるものじゃないですね、それに全然美人でもなんでもないし、恥ずかしい」

 照れ笑いしつつ、恥ずかしそうに朱に染まった頬を両手で隠す仕草は、思わず見とれて溜息が出るほど森の妖精の面目躍如って感じで、よっぽど美少女なんだけど?


 ここでサラッと『お姉さんの方が美人で素敵だよ』って言える甲斐性があれば、元の世界で彼女の一人くらい出来ていたかも知れない。

 まあ、とてもじゃないけど恥ずかしくて、そんな気障な台詞は言えないけど。


 それにしても、この世界の『美女の要件』って……。


 丁度いいから、エルフのお姉さんに少し冒険者について聞かせて貰った。

 どうやら普通に冒険者ギルドがあって、魔物討伐や隊商の護衛なんかの依頼も出されているらしい。

 加えて、軍や貴族の私兵なんかより、よっぽど精力的に働いているみたいだ。

 というよりも、一般市民は軍より冒険者の方を頼っている印象を受けた。

 大国でこれなら、小国ともなるとどういう状況なのやら……。


「話を聞かせてくれてありがとう、また来るよ」

「ええ、是非また買いに来て下さいね」

 笑顔で手を振るエルフのお姉さん。

 ああ、眼福だった。


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