2投目 どうやらここは異世界のようじゃのう
〜前回のあらすじ〜
漁介は、秘密の釣り場で釣りをするべく釣り場に向かうと、砂浜や海の様子がいつもと違っていた。不思議に思いつつもいつものように釣りをすることにした漁介。しかし、釣れた魚は、なんと頭が透明な不思議な魚だった。さすがにおかしいと思った漁介が持ち物を確認すると、ラジオも携帯も繋がらない…
自分の身に何が起きているのか確認するべく、漁介が茂みの外へ出ると、そこは漁介の見知らぬ場所だったのである。
「…どうやら本当に俺のおった島とは別の場所のようじゃのぅ…」
漁介は外の様子を確認するとそう呟きながらガックリと肩を落とした。
止めていたはずの自転車は見つからないし、島の北部は家が何軒か建っていたはずなのに一面の草原になっているし、遠くの方に見覚えのない森がある。ここに来るまでに通ってきた道路すら見当たらない。そのうえ草原をよく見てみると、見たことも無い植物が生えている。
「もしかすると…ここは地球ですらないかもしれんのう…」
目の前の非現実的な光景に途方に暮れかけていた漁介の脳裏に、ある言葉がよぎった。
「迷ったら行動じゃぞ、漁介よ」
漁介に釣りや素潜りを教え、海の知識と楽しさを教えてくれた島のじいちゃんの言葉だった。
「…迷ったら行動、か…ほうじゃのう、迷っとってもしょうがないか」
じいちゃんの言葉を思い出した漁介は、近くを散策してみることにした。なにしろ何も知らない場所であるため、情報は多いに越したことはない。
まずは目の前に広がる草原から調べてみる。一面の緑の中にぽつぽつと色鮮やかな花のようなものが点在している。漁介の近くに生えていたものを観察してみることにした。
「おお、綺麗な花じゃのお…」
薄いピンク色の長細い花弁が幾重にも重なり、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。茎と葉の部分は、色こそ緑色だが向こうが見えてしまうほどに透き通っていた。海のこと以外はてんで知らない漁介でも分かるほどに、その姿は異様だった。
漁介がしばらく散策していると、近くの草むらからガサガサッ、と音がした。
「ん? 何か今音がしたのう…」
漁介が音がした方へ振り返ると、
シャアアアアア!!!!
そこには、こちらを威嚇する小さな動物の姿があった。
「ん…? なんじゃあれは…ウサギか?」
その動物は見た目はウサギそのものであったが、よく見ると目が赤く、前歯が鋭く尖っている。アレに噛まれたらひとたまりもないだろう。
シャアッ!!!
「うおッ!?」
その動物は、ひと鳴きした後に漁介に向かって飛びかかってきた。漁介はすんでのところでなんとか躱し、危険を感じた漁介は茂みに向かって走った。
「うおおおおお!!!!」
アレに噛まれればそのまま殺されてしまうかもしれない。もしかすると毒を持っているかもしれない。とにかくあの得体の知れないモノに噛まれてしまうのは危険だ。漁介は死の恐怖と戦いながら必死に走った。後ろから追ってきている感覚を感じながら懸命に走って茂みを駆け抜けて、最初にいた砂浜に飛び込んだ。
「はァ、はァ、はァ…!」
息切れしながら砂浜に倒れ込む。周りに動物の気配は無い。どうやらなんとか巻けたようだ。
漁介は、自分の速く大きな鼓動に自らの生を感じ安堵しながら、この世界は地球にはいない化け物の棲む弱肉強食の異世界なのだと、はっきりと理解したのであった。