85:本心
オーシャンシザー五匹撃破のお祝い
「はいカンパーイ」
「乾杯」
「かんぱい」
町に戻りルークの初ヤドカリ撃破記念ということで、露店巡りをすることにした。最初はとりあえず飲み物で乾杯。
流石にルークが居る前で酒を飲むのは申し訳なかったから俺も今回はブドウジュースだ。飲むと回復できる。
ルークは照れくさそうにチビチビとジュースを飲んでおり、リークはそれが可愛らしく見えるのか頭に手を伸ばす。でもビクッと驚いたルークが俺を影にするように離れてしまい、リークは残念そうだ。
「怖がらなくてもいいだろ?リーク優しいぞ?」
「・・・・前に怖いこと言ってたし・・・」
ガーンと効果音が聞こえそうな感じでショックを受けてるリーク。それを言われたら自業自得としか言えない。
すまんリーク。諦めてくれ。などと思いながらルークの頭を撫ででやる。ちょっと嫌そうだけど珍しく受け入れてくれた。
『そこの女は駄目でもアールはいいのだな小僧』
「っ!!!・・・・・・う・・・・うっさいばーか」
恥ずかしそうに顔を逸らしつつも離れようとはしないルーク。なんというか手のかかる弟感がすごい。
「ほらリークも落ち込むなって。これから仲良くなってけばルークだって逃げなくなるって。なぁルーク?」
「怖い人は嫌いだ・・・・・バーカ」
「・・・・私、優しい人になる」
頑張れ。とりあえずレイレイとの喧嘩減らせばいいんじゃないか?無くすのは多分無理だろうし。それかルークに慣れさせる。自分に被害ないとわかれば気にしなくなるだろうし。
「さて、何食べる?寿司?」
「「うん!!マグロ食べたい!!」」
息ピッタリかよ。お互いに顔を合わせるリークとルーク。前も同じこと言ったけど名前似てるよなこの二人。
「ルーク君マグロ好きなの?」
「うん・・・世界一好き・・・お姉さんも?」
「大好き。魚の中では愛してる」
がっしりと握手を交わしてる二人。さっきまでの流れどこいった。その後は一瞬で仲良くなった二人がマグロについて語りだし、買ってきた寿司を食べ尽くすまで続いたのである。頭は撫でられていた。マグロパワー恐るべし。
「美味しかったね」
「うん!!」
『味は気に入らんがまぁ腹は満たせた』
馬鹿デカイマグロ二匹まるごと食ったくせに味が気に入らないとか納得いかない。現に二人はジト目でギルファーを見ている。
「まぁそれは追々話すとしてだ。ルーク。戦ってみてどうだった?」
「ん・・・まぁ・・・その・・・・うん・・・・強くなれてた・・・・と思う」
「自信持っていいよルーク。君は強い。私が保証するから」
「リーク姉ちゃん褒められるのは嬉しいけど・・・・僕はその・・・・し・・・し・・・」
お?もしかしてこれはもしかするか?
「し・・・ししょうに・・・褒められたうわっぷっ!?!?」
あぁくそう!!可愛いなこいつ!!弟いたらこんな感じなんだろうなぁ!!
ツンツンしてた時はどうなるのかわからなかったけど、こうして今でも頑張ってるのを見てるともう感極まって感情が抑えられん!!
「あぁー!!もう!!可愛いなお前ってやつは!!よーしよし!!流石だよ弟子!よくやった!!頑張ったな!!」
「や・・やっぱり今のなし!!!放せバカァァ!!!!」
名残惜しいがルークを放す。いいな弟。兄貴と姉貴と妹はいるけど弟はいなかった。弟分はいたけどこんな感じではなかったから新鮮さがすごい。
今ならウザかった姉貴の気持ちが分かる。弟良いわ。ツンデレの弟っていいな。破壊力がヤバイ。
「何なんだよお前ホント!!わかんない!!」
「ハッハッハッ」
「笑って誤魔化すな!」
「アール?」
ゾゾォとした寒気が体中に走った。見ればリークの顔がとんでもないことに。やっべ。興奮しすぎた。少し落ち着こう。落ち着くとリークの顔は元に戻っていた。一瞬マジで死を覚悟したぞ。
「まぁ色々脱線しかけたけど、今お前がやってる修行にはちゃんと意味があるわけだからこれからも頑張れよ?」
「わかってるよ・・・・・バカ・・・師匠・・・・聞いてもいい?」
バカ師匠ときたか。けど今まさに馬鹿やったから言われても仕方ないな。
「なんでも聞いてくれ。答えてやるから」
「・・・・どうして僕を鍛えてくれたの?僕バカ師匠毒殺した犯人なのに」
「っ!?」
リークが驚き動こうとしたが、直ぐに動きを止めた。俺の反応を見て俺は知っていると判断したんだろう。
「僕・・・・バカ師匠に恨まれても可笑しくないし、名前晒されても文句言えないと思うし。それですっごく苦しい思いしたって聞いたし」
「まぁ、苦しかったしムカついたよ。正直なところな?」
忍者との戦いに横槍を入れられたのは本当に悔しかったしムカついた。けどもう過去形だ。今はそんなんでもない。
「でもそうなったのは俺の油断だ。お前に気づかなかった俺のな。他にも気をつけていればお前に気づいただろうし、毒だって喰らわなかった。ああなって当然だったんだよ」
「そ・・・そんな訳ない!!僕が邪魔しなかったらあのゴブリン倒せたじゃないか!!」
それは否定しない。多分勝てた。ドラゴニックエリシオンの打ち合いなら負ける気がしない。二方向の衝撃も、それが届く前に本体をぶっ飛ばせば勝てる。けどな。
「それは『かもしれない』だ。戦いに絶対はない。俺だってダメージは受けてた。何かの拍子で倒れて負けてたかもしれない。全部可能性の話なんだよ」
「でも・・でもだって!!」
「けどそのお陰でいろんな人と繋がった。何よりお前に会えたんだ。俺としてはいい経験でいい出会いだったよ」
あんなに沢山の人が俺のために動いてくれたのは嬉しかった。まだ始めたばかりだけど、それでも俺のために動いてくれた。報酬目当てだろうとなんだろうと関係ない。
動いてくれた。そして知り合いができた。俺が得たものは目には見えないそういうものだ。
「それに毒で倒れなかったらお前に、ルークに会えなかった。お前が俺を嫌っていても、嫌々だったかもしれないけど。俺はルークが俺の弟子になってくれて嬉しかったんだぞ?」
理由はどうあれ自首してきたルークに会えた。あれ以上性格がひん曲がる前に出会えた。嫌々でも俺に付いてきた。今ではバカ師匠なんて呼んでくれるようにもなった。
俺の修行が間違いじゃないと教えてくれた。俺の10年は無駄じゃなかったと教えてくれた。
「でも・・・でぼぼく・・!!!!ざいじょばだまぞうとじてだんだ!!!ぢーどとかふぜいどかじでるっでいばれだがら!!!!ぞのじょうごとがつがんでやろうどじでだんだ!!じゃばどがじでやろうどがおぼっでだんだ!!!」
俺のこと嫌いって言ってたし騙そうと考えるのは仕方ない。しかもチート使ってるって吹き込まれてるなら尚更警戒するし、証拠掴んでアカBANしようとしたって不思議じゃない。
ゲームの邪魔しようって考えても不思議じゃない。実際邪魔したわけだし、成功もしてる。やろうと思えば二回目三回目の邪魔もできたし、毒だって盛れた。
結構油断してるところ見せてたし、ギンとギルファーにもルークがそういうことしても放置しろって話をしていた。でもルークはそんなことしなかった。
「でもお前、そんなことしなかったろ?ならいいんだよ。思ったとしても実行しなかった。今日まで口にすら出さなかった。ならいいじゃないか」
誰だって恨みとか人の好き嫌いはある。ルークにとってはそれが俺だっただけだ。けどルークの善性がそれをさせなかった。口が悪かったのがせめてもの悪だったんだろう。
「だがらぎらわれようどしだんだ!!ぎらわれだらぼぐのごとぎらいになっでばなれでぐれるどおもっだから!!ぞうじだらぼぐもずぎがってでぎるっでおぼっだがら!!なのにずっどやざじぐで!!だずげでぐれで!!でじっでいっでぐれでうれじがったんだ!!!」
「そっか・・・それは残念だったな。口悪くても、嫌そうでも、頑張ってる姿がルークの本心だってわかってたからな。見捨てないし、嫌いにならないよ。確かに確かにお前のおかげでいろんなことがあった。もちろんいい事ばかりではなかったけど、それでも、悪いこと以上の良い事が沢山あった。だからいいんだルーク。俺はお前を許してるし、感謝してる。俺のところに来てくれて。謝ってくれて、弟子になってくれてありがとうルーク」
「ば・・・・ばがじじょうのぐぜにばがぁぁぁ!!!!!」
「よしよし」
泣きじゃくるルークを抱きしめて泣きたいだけ泣かせる。いざ言葉にしてみると恥ずかしいけど、俺の本心だ。今の俺が心の底から思ってる本心だ。ちゃんと伝えるならここしかないと思った。
忍者戦はもうないかもしれない。でもこの出会いと経験は、もっとないだろう。どちらを取るかなんて決まってる。
「だから気にするな・・・って言ってもお前は気にするよな?」
泣きたいだけ泣かせて、落ち着いたルークにそう聞くと、首を縦に振って答えた。
「うん」
「だから今決めた。お前がアイツ倒せ」
「うん・・・・はへ?」
「お前があの忍者ゴブリン倒せ。俺の代わりにな。そうしたら忍者倒したルークの師匠である俺は忍者よりも強いことになるだろ?」
モノは考え方だ。あの忍者は自分では倒せず、味方でなければ倒せないモンスター。だからあの時の毒は必然。リベンジは俺が育てた弟子が戦い勝利。いいなこの流れ。
「ま・・・待ってよ!?僕があのゴブリン倒すの!?無理!!見えないし見つけられないし絶対気づいたら殺られてるよ!?」
「それはこの前までのお前だ。今のお前なら勝てるよ。もちろん俺もギンもギルファーも、リークも呼んでお前のアシストをする。その上でお前が倒せ。倒すって約束してくれたらスキルじゃ使えない、”俺の奥義”を教えてやるよ」
「!!!!」
俺アレンジ版の鏡雀なら誰でも使えるようになるだろう。スキルの方が強いって言われるかもしれないけどカッコよさは保証する。
それに弟子に技を教えるっていうのはなかなか熱い展開だろ?
ルークも俺の言葉に色々考えることがあるみたいで黙り込む。一分ほど考えたあと、顔を上げて返事を返してくれた。
「僕があのゴブリンを倒す!!バカ師匠の代わりに絶対に倒す!!」
ルークが抱えていた全部吐き出しました。その上でアールは弟子であると肯定。
自分の全部を受け止めてくれたアールに対してルークは少しだけ素直になりました。
そしてアールがルークに求めていたレベルがクソ高い件について・・・
それをやるって言ったルークも相当である。




