83:新しい修行
実地訓練
「ルーク。今日から修行の内容を少し変えるぞ」
「はぁ!!?どうしてさ!!?」
次の日、参加者はリークとルーク、見学はギルファー。ギンは街で稽古中。レイレイとマー坊はギンの街修行に参加するため、ギンと一緒に街へ向かった。リークは現在一生懸命俺の元で修行中。
素振り1万回を枝でやってもらっている。砂回避込の奴は一時休憩。まずは枝を折らないでどれだけ速く振れるかを修行中だ。
ルークは今までと変わらずに枝&砂回避の修行をやっていたんだけど、変な慣れが出来かけてるから少し思考を変えよう。
「そろそろ次の段階に移ってもいいと思ったからだよ。頑張ってるし大分避けられるようになってきただろ?」
「でも500回以上行った事ないぞ!!?」
まぁそれを正直に言えばヘソを曲げるのでいい感じになるように褒める。調子に乗ったらしめるけど。
「まぁそれはまたおいおいやっていこうか。リーク。場所移動するから付いて来てくれ」
「6584・・・わかった」
ところで今更だけどルークとリークって一文字違いだよな。
「はいこれ」
「・・・・・なにこれ」
場所は変わりヤドカリがよく出る海岸まで移動。枝の代わりにルークに渡したのはガンテツさんに特別に作ってもらった刀。
刃はボロボロで硬いものを斬ればすぐに折れるだろう鈍らぐあい。いい仕事をしてくれる。
ちなみにお願いしに行ったらすごく嫌そうな顔をしていた。すまない。これもルークの修行のためだったんです。
「これでオーシャンシザー五匹倒してこい。一時間以内」
「馬鹿だとは思ってたけど馬鹿だなバーカ!!こんなので倒せるか!!」
武器:刀『鈍ら刀』
攻撃力+2
手抜きで打たれた刀。硬いものは切れず、すぐに折れてしまうだろう。買い換えることをおすすめする。
「まぁ頑張れや。手本は見せてやるから」
「・・・・・バカに出来るならやるからいいもんバーカ!!」
プンプン怒りながら手近なカニに向かっていくルーク。
「おっと少し待て。えぇっとどこだっけ・・・これか」
「なんだ・・・・っ!?!?!?!??!」
――――プレイヤー『ルーク』へパーティーへの参加要請を送りました。
「えっ!?ばっおま・・・だって!?」
面白い顔してる。何が起きたかわからないって感じだ。鯉みたいに口をパクパクしてる。
「どうした?早く入ってこい。じゃないと師範代のスキル効果受けられないだろ?」
「っ!!!!い・・・今入ってやるから待ってろバカ!!」
――――プレイヤー『ルーク』がパーティーに参加しました。
――――パーティー数『3/8』従者『1/4』
たまには目に見えるご褒美あってもいいだろう。ギンいわく、ギンの修行には一度も参加してないみたいだし。
「それじゃぁ目標はヤドカリことオーシャンシザー五匹の討伐だ。パーティー組んでるからフィールドからでない限りはこっちでカウントできる。やばそうだったら逃げていい。連絡くれれば飛んでいくから安心しろ。質問あるか?」
「な・・・ないよバーカ!!行ってくるから待ってろ!!」
まずは一番近くにいたヤドカリをターゲットにしたようだ。他の個体とも距離はあるしヒトデの気配もない。選ぶ敵としては最高だろう。
「うりゃぁ!!」
声を上げて飛びかかるのはアウト。んでもって背中から奇襲って意味ではいいけど、硬い殻狙いなのも減点。それと武器が武器だし。
「はうっ!?」
根元からポッキリ折れてそのままルークのおでこにグサリ。結構痛かったようでその場でオデコを押さえてしゃがんでしまった。あのままだと早速一落ちしそうだな。
「『風瓶エリシオン』」
「ひぎっ!?」
後ろにバックアタックを仕掛けてきたヤドカリ。硬い殻がルークを襲う前にルークを救出。元いた場所に戻ってきた。
ルークは目を白黒させながらオデコを押さえている。ヤドカリもいたはずの何かを見失い困惑している。しかしまぁ鈍らとはいえこんなに簡単に折っちゃってまぁ。
「はいルーク。今の悪かったところは?」
「・・・・・・考えなしの攻撃・・・」
「ハイ正解。ご褒美に新しい鈍ら刀をやろう」
こんなこともあろうかと合計20本用意した。全部使い切るまでに一匹でも倒してくれると俺は嬉しい。
一本の価格、特別料金で2000D。結構高いんだぞ技術料。プロが鈍らを意図して作るのはそれだけ難しいってことだ。
出した鈍らを渡し、折れたものを回収する。戦いの中で壊したから流石に戻しても復元はしないか。そのままポーションを取り出してルークの顔にかけてやる。
「つめたっ!?」
「手本見る気になったか?」
「無理に決まってるだろっ!?こんなぼろぼろな剣で勝てるか!?」
まぁ普通に考えたらその通りだ。相手は固くてこちらは脆い。ぶつけるだけで簡単に折れてしまうだろう。
抱えていたルークを下ろし、また別の刀を取り出して鞘から抜く。見事なボロボロ感。
「このゲームのすごい所はなんだかわかるか?」
「なんだよ急に・・・・・現実みたいなところ?」
「そこだよ。そしてそれは俺たちやNPCだけじゃなくてモンスターにも適用されてるんだ」
モンスターも痛みを感じるし、弱点が存在している。意識せず守っているところに、余程自信があるのかある部分を全面的に押し出して戦うモンスターだっている。
この前のクラゲは最たるものだった。何気なくふよふよ浮いているだけに見えたが、動きを”視れば”弱点があることは明らかだった。
事実後半からはその部分を重点的に狙うことでほぼ一撃で倒せた。体力オバケといえど弱点への攻撃には弱かったのだ。
「どんな生物だろうと弱点は存在する。長所は短所に変わることもある。思わぬところが弱点の可能性だってあるんだよ」
「・・・・・・で?」
「オーシャンシザーの場合はあの殻の内側だ。外面に出ている体よりも柔らかい」
こちらに気づいたオーシャンシザーがやってくる。ハサミを鳴らしながら俺目掛けて近寄ってくる。
「まず動きを見ろ。どこを起点に動いているのかを把握しろ」
向けられたハサミを回避して横へ、追撃というようにハサミを振り回してくる。これは少し後ろに下がり攻撃範囲から外れる。
「そして次に弱点を探せ、見つからないなら柔らかそうなところを見つけろ」
体を動かし再び俺を正面に捉えるヤドカリ、四本の脚を動かして俺に迫り再びハサミを向けてくるので蹴り飛ばして対応。
「相手の攻撃を刀で受けようとはするな。刀は刃をぶつけて斬り合うための武器じゃない。相手の肉を斬るための武器だ。相手の攻撃なんて刃で受けたらすぐに刃こぼれする」
もう一方の小さめのハサミを開き、今度は切るように振るってくるのでこれは後ろに跳んで回避。お互いに体勢を立て直して、共に相手へと迫っていく。
「動きを見て、起点を把握して、弱点か柔らかいところを見つけたらそこに刃を突き立てろ」
ヤドカリが繰り出したハサミによる攻撃を、俺の歩幅を少しずらすことでタイミングをずらし空振りさせた。ガラ空きになったハサミと他の足が伸びている付け根の部分。そのわずか数センチ程度の隙間に抜いた刀の刃を押し込む。
「っ!?」
「力任せじゃダメだ。枝を振っているように刀を振り下ろせ。力強く、素早く、余計な力なくしっかりと。あの動きを今度は身体全体でやるんだ。それと同じように今度は突き立てろ」
根元まで突き刺さる刃。ちょうど殻の奥から”コツン”と音が聞こえたので、奥まで差し込めたみたいだ。その痛みで苦しむオーシャンシザーは俺に目掛けて乱暴にハサミを振り下ろす。
「そして抜くときは刃に余計な力をかけないように、でも素早く。斬りつつ後ろに下がりながら引き抜け」
流石に当たりたくないので、刃を体から抉るように抜きながら後ろに下がる。抜いた傷からは体液が溢れ出し、背負う殻の隙間からもドクドクと液体が溢れ出す。
「あ・・・・」
ルークが呆けた声を出したとき、背負う殻から溢れ出る液体で隠していた腹が、ゆっくりと表に顔を出してきた。
見えた瞬間、一気に距離を詰めてその腹目掛けて刀を抜いて振り下ろす。ヤドカリも迎撃しようとしていたが、刺された痛みから体が上手く動かせない。
両断するように切り裂いた腹からはヤドカリの臓器と思われるものと、光る体液が溢れ出した。ヤドカリはそのままぐったりと体を沈め、光となって消えていった。
――――オーシャンシザーを撃破しました
――――134D入手
――――『UtS:師範代Lv1』のスキル発動。パーティーメンバーに『UtS:天匠流』習得の為のスキルポイントを配布。
実は『UtS:師範代』のスキル。習得させるスキルの選択が可能だったのだ。やっぱりちゃんと時間がある時には効果の確認とか色々調べておくのが大切だ。特に弟子持ったんなら尚の事しっかりしないと。
「こんな感じだ。ルーク。質問は?」
「・・・・・・僕にも・・・・できるの?」
不安そうな顔をするルーク。
「心配しなくても大丈夫だよ。お前には出来る。すぐには無理かもしれないけど、今のお前なら出来ると思ったからこれを選んだんだ。失敗を恐れないでやってみな」
「っ!!!!!うん!!!」
「よし、なら頑張れ・・・・・・いつもこれくらい素直なら可愛げあるのにな」
「っ!!!!!う・・・うっさいばーか!!!」
どんな武器だろうと使い方一つで業物を越えるんだよ。Byアール
それはバカ師匠だけだろバーカ!!Byルーク




