82:剣聖の修行と新しい弟子③
ルーク合流
「おっす」
「なんで人が増えてるんだよ!!」
「見学したいんだってよ」
見学者その一
「気にしないでいいよ」
子供に負けるのは悔しいので普段どんなことをやっているのか見てみたくなったリーク。
「お気になさらずにー」
見学者その二。同じ理由&ちょっと気になることがあるとのことでレイレイ。
「・・・・・」
その三。マー坊。理由はリークと同じ。因みに三人にはルークの言動と態度に関して口出しも態度に出すのも禁止した。
ギルファーはいつもいるのでカウントはなし、ギンは昨日のが堪えたようで、奥の方で修行中。
実はリーク達にはルークが犯人であることはまだ話していない。従者の二人にも口止めをしてある。
もう少し詳しい話を聞いてから協力を仰ぎたいし、今はどんな形であれ俺の弟子だ。手出しさせるわけには行かない。
そんな訳で珍しく人が多い岩場だがやることは変わらない。最初はグダグダ文句を言っていたけど、無駄だと諦めたのか、適当に枝を拾う。
「目隠し早くちょうだい!!」
「はいはい。なんだいつもより大人しいじゃないか」
「うっさ・・・・うるさい!!」
ははーん?さてはほかの人の前ではいつもみたいに威張れないんだな?可愛いところもあるじゃないか。
「ほら、つけてやるからこい」
「じ・・・自分でつける!!」
「いいから早く来い。いつも付けてやってるだろ?」
「うるさい!!今日から自分でつけるの!!」
恥ずかしがっちゃってまぁ。ちなみにこの後、巻くのに悪戦苦闘していたのでつけてやるといつもの罵倒が飛び出した。
三時間経過。200の壁はまだまだ簡単には越えられない。
「178・・・・179・・・・・180・・・!!!」
でも、枝の振り方はだいぶ綺麗になってきた。無駄な力も減ってきたし折れることはほとんどない。形もまだまだ歪だが、最初に比べれば全然違う。上半身のブレは減り、腕だけで上手に枝を振れている。
「197・・198・・・199・・・・200!!」
「砂行くぞー」
「っ!!」
手に持つ砂を、なぎ払うようにルークへと飛ばす。放射状に飛んでいく砂に対し、ルークは前に飛ぶように走り出す。身を低くしてできるだけ砂がかからないように全力疾走だ。
撒き散らした砂が全て地面に落ち、止まったルークは肩で息をしている。
「当たったか?」
最近は自己申告をたまにさせるようにしている。当たったかどうかは見えているが、自覚が有ると、無いとでは結構違う。
「・・・・・・・あたった・・・」
「素直でよろしい。休憩するか」
奥からギンも戻ってルークの修行見ていたし。みんな揃ってる。
「ケーキ買ってきてるから好きなの食っていいぞ?」
「ケー!!!・・・・・!?い・・いらない!!ケーキは子どもが食べるものだもん!!」
周りに人いるからって遠慮しなくていいのに。恥ずかしがり屋なんだからもう。
「なら一緒に食うか。俺と一緒に食うなら恥ずかしくないだろ?」
「は・・・・恥ずかしくないよばーか!!でもどうしてもって言うなら食ってやるよばーか!!」
ズンズンズシンと音が付けられそうな歩き方をしながら俺のところまで来て座った。手拭いを渡すと、ルークは乱暴に受け取りながらもしっかりと手を拭いた。
「何食べる?」
「・・・・・・いちご」
「いちごな。それと“目隠し外していいぞ”」
「・・・・・ふん」
首に目隠しをぶら下げて皿を受け取るルーク。いつもはがっつくのに今日は恥ずかしいのかちまちま食べている。
「お前ら何食う?たい焼きと和菓子も買ってきてるけど?」
エーテリアって結構色々あるんだよな。古今東西いろんな食物が海をわたってくるから食物は選り取りみどり。いい場所あったらクランホームはエーテリアで良いかもしれない。
ちなみにルークの大好物はケーキなので他のお菓子には目もくれない。
「のう師匠よ?一ついいかの?」
「どうした?」
「聞きたいのじゃが小僧はいつも“この感じで修行と休憩をしておる”のか?」
まぁ第三者が見たら流石に気づくか。前にギンが見たときは、まだこの状態にはなっていなかったから驚いただろうな。
「そうだよ」
「「「「っ!?」」」」
『ククク・・・これはとんでもないな』
「・・・・・・・何?」
自分のことをなにか言われて機嫌が悪そうだ。いつも悪いけど、それ以上に機嫌が悪い。でも人見知りだってバッチリわかってるからな?
いつもならケーキ食べるとき俺から離れるのに、今日は俺でほかの奴らから隠れるように座ってるし。
「『ルーク頑張ってる』って褒めてるんだよみんな。俺も頑張ってくれて嬉しいぞ?」
「頭撫でるな!!」
あれま。この状況だしいけると思ったんだけどダメか。払いのけられた腕を寂しく思いつつもたい焼きを頬張る。生クリーム餡子はやっぱりうまい。
「ねぇアール。休憩終わったら私も参加していい?」
「アタシもやる。いいでしょ?」
「俺も参加したいんだけどいいか?」
闘志に火が付いたか。まぁ年下にこれだけ魅せられたらやる気出るわな。
「ルーク。あのお姉ちゃんたちも一緒にやりたいんだって。いいか?」
「・・・・・・・・・僕が何言っても聞いてくれないくせに」
「そんなことないぞ?嫌なら悪いけどあいつらには我慢してもらうぞ?」
いつにもまして大人しい。内弁慶か。そんなところも最近は愛らしく感じるくらいには可愛い奴だ。やんちゃな弟って感じだな。
「・・・・・・・・・・・・・・僕が100回やったらゼッタイ来るならいい」
「わかった。約束する。ルークの近くで見てるから。それでいいか?」
「・・・・うっさいばーか」
プイと顔を背けて残りのケーキに手を伸ばす。箱ごと渡してやると、嬉しそうに一瞬頬を緩ませるが、すぐにまた強ばらせて、フルーツケーキだけとって食べ始める。
「愛弟子ルークがやっていいってよ。そっちの方使ってくれ。100回素振りしたら呼んでくれ」
「愛弟子って言うな!!バーカ!!」
休憩の後、延べ6時間。ギン含めた5人揃って砂をかぶる羽目になったのは言うまでもないだろう。
ルークがやっているのはいつも変わらない。たまに始める前に素振り1000回くらいやらせるけどそれ以降は目隠し枝素振りと砂回避だけ。
けど変わったのは100回目の砂回避は既に成功率9割を超えているし、200回目もあと少しで成功率が3割に届くだろう。
だいぶ”視力以外の五感で動ける”ようになってきた。あと気配も分かるようになってきたみたいで、数メートル程度なら離れていても声だけで俺の場所が分かるようだ。
砂掛けは、ルークには正面ではなく、毎回別方向から掛けている。ルークはそれをかける前の俺の声から場所をだいたい判断して、砂の動きを予想して動き始めている。
サッカーのPKに似ている。相手の視線ではボールの向かう方向はわからない。かと言って蹴られてから動いては間に合わない。だから飛んでくる場所に予測を立てて動くのだ。
サッカー詳しくないから嘘言ってるかもしれないけど、ともかくそんな感じ。
更にルークは失敗するたびに1からやり直しているが、一日平均回数は10000を軽く超えている。
毎回息が上がってはいるがそれでも絶対にやめずに続けている。
多い時は20000回に届く勢いだ。
毎回それだけやっているのだ。俺が言うと変な話だが、ゲームの中とは言えその集中力は尋常ではない。それだけのことをやっているんだ。
少しは自信持ってもいいぞルーク。
言ったら調子乗りそうだから絶対に言わないけど
後輩の姿にやる気を見せる先人たち




