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81:剣聖の修行と新しい弟子②



イベント開始から早くもこちらでは一週間が経過した。エーテリア以外の街でも既に天匠流の師範たちが重い腰を上げており、それぞれの場所でプレイヤーたちへの指導を開始しているらしい。



修行の内容はギンが一番キツいようだけど、その分熟練度の上がり方も大きいらしい。それもあり、エーテリアは今でも結構な数のプレイヤーが居る。



「らっしゃい・・・おぉ小僧どもじゃねーか」



「久しぶり、ガンテツさん」



「こんにちは!!」



ルークには今日はオフだとメールを入れておき、久しぶりにリークたちと一緒に遊ぶことにした。目的はブレイドキャンサー。討伐方法は俺が後方支援でマー坊。レイレイ・リークが前衛。武器は刀か剣で挑む。要は天匠流獲得のための戦いだ。



もちろんギンとギルファーも同行しており、ギルファーには俺とギンの周りの雑魚の駆除。ギンには妖術にて前衛組の回復を頼んである。



「今日は珍しく店に出てるんですね」



「今日は嫁が友達と街に出てるんでな。たまには休ませるさ」



奥さんの休日ってことか。いい旦那さんだな。



「ところでお前さんも今日はそいつらと一緒なんだな」



「あぁ、今日は皆でカニ狩りだ。カニの身ぐるみ全部剥いでカニ鍋でもするつもりだ。ところでガンテツさん。ルーク前に刀買ったろ?」



ガンテツさんのところに寄ったの目的はそれだ。ルークが買った刀。どう考えてもあれを素直に振れるとは思えないし、それをガンテツさんが素直に売るとは思えない。



事の真相を確かめに来たのだ。もちろんルークのログイン状況は確認済み。



「ルークって確か・・・・アールが最近面倒見てる子供だっけ?」



「面倒っていうか修行だな。ちと色々あってな」



「ふーん」



自分で聞いてきながらちょっとムスっとしているリーク。言っとくけど男子だし子供だからな?流石にお前もその年齢の子供にまで嫉妬するなよ?



「おう!買ったな!ツケ払い終わったと思ったらまたツケさせて欲しいと言ってきた時はどうしたのかと思ったぞ。それがどうかしたのか?」



「変なこと聞くけど。ガンテツさんよくアイツにあの刀売ったな。ガンテツさんの性格なら絶対に売らないと思ったのに」



身の丈に合わない武器は何があろうとも売らない男だ。いくら俺の弟子だからって簡単に売るとは到底思えないんだよ。



「まぁな。最初は売るつもりはなかった。けどあんなに男を魅せられたんだ。つい売っちまった」



「男を見せた?そのルークって子、ガンテツおじさんが武器売ってもいいと思う何かをしたの?」



レイレイの質問は俺も気になる。確かにルーク頑張り屋で、負けず嫌いで文句はたらたらだけど頑張ってる奴だけど。



「言ったよ。ただ師匠のアールってバカには絶対に言うなって念押しされたけどな。おっといけね、師匠って言ったていうのも口止めされてたんだったな」



「アイツ・・・・・」



俺に師匠なんて一度も言ったことないくせに。人前では師匠とか呼びやがって全く。そっか、そんな風に思ってくれてるのか。嬉しいじゃねーか。



「おややー?アール泣いてんじゃんーか?」



「うっせゴリラ。お前らもニヤニヤすんな」



みんな揃ってニヤニヤするな。クソ。次の修行少しキツくしてやつから覚悟しろよルーク。



「そういう訳だ。俺は今何も言ってない。わかったか?」



「「「「はーい」」」」



『興味がない』



「わかってるよ。こんな小っ恥ずかしいこと誰がいうか」





















「マー坊!!そこから左回転来るぞ!!避けろ!!」



「マジかよ!?この状態で回るとか嘘だボッハッ!?」



場所は変わって流星海岸。カニを探すこと一時間。ようやく会えたガンドロックキャンサーを、とりあえず突然変異させてブレイドキャンサーにした後、予定通りの陣形での戦闘を開始した。



イベントを終えた後なのでサブシナリオやプレイヤーへのアナウンスは流れず、こうして俺たちだけで戦っているわけだ。



アドバイスを受けながら立ち回る三人だが、流石に使い慣れない武器だとやりにくいのかちょくちょくダメージを受けている。



そしてこいつだが、参加プレイヤーの数だけ攻撃力が上がるタイプのレイドモンスターのようでマー坊達も無視できないダメージを負う。



現に満タンだったマー坊のHPは6割まで減少している。俺の星読み人としてのバフをかけた状態でこれだから普通に喰らえば相当でかい。



リークとレイレイは元々盗賊職で速い動きにはなれているらしく今のところノーダメージ。でも決定打となる攻撃はまだうまくいっていない。



「大丈夫かの?『狐癒火(きつねいやしび)』」



緑色の炎がマー坊をやさしく包み込み、体の傷を治していく。ギンの妖術が便利すぎてすごい。流石九尾だけはある。



「ちぃ!!このカニの回転攻撃うざい!!なんで急に逆回転するのよ!!?」



「しかも不規則なのがめんどくさいっ!!!!!!メス猫合わせて!!」」



「うっさい!!あんたが合わせなさいよ女狐!!」



『ギギギ』



「「邪魔すんな/しないで!!『鏡雀』!!」」



いや、タイミングバッチリだから。



カニの大きく開いた腕の付け根を狙うように放たれた『鏡雀』は速度こそ、まだまだだけど、狙いは的確だった。2羽の雀が関節の間を縫うように飛びその柔らかい身を切り裂いた。



ちなみにエクストラでスキル発動出来るのは色々試した結果、ちゃんと条件さえ整えば発動できることがわかった。



例えば鏡雀なんかは一番わかりやすい。鞘から抜く瞬間に体の余分な力を全部抜いた状態で抜刀。これでスキル発動の条件クリア。



あとはそのまま抜刀すれば鏡雀の完成。残念ながら鞘に戻す動きは出来ずに自傷したので二人共諦めた。



まぁともかく、ちゃんとスキル発動のモーションを手動で行い、自分で強くスキルを意識すればスキルはちゃんと発動できる。



今更感強いけどわかったのでよし。そんな鏡雀をモロに受けた関節は、力が入らずに、腕がだらんと下がる。満足に動かせないようだ。



「今だ!!一気に仕留める!!逃げられないように足に攻撃を集中させろ!!」



「「「「おう/うん/えぇ/うむ!!!」」」」



ちなみに俺はオフにした。自分でやった方が早いし。でも師範代のスキルはバッチリ発動したので良かった。




















「これで沈め!!『鏡雀』!!」



『ギギギ・・・・・』



マー坊の放った一撃が、最後の命をつなぐ線を断ち切り、カニはついに地面へと沈んだ。




――――レイドモンスター『ブレイドキャンサー』を撃破しました

――――素材:刀蟹の爪×1、刀蟹の甲羅×2、刀蟹の体液×1を獲得

――――レベルアップ!『アール』レベル30になりました。

――――SP15入手

――――魔術使用により『UtS:星の魔術回路Lv2』にポイントが蓄積。

特殊ボーナス『星読み』『彗星』『流星』発動により獲得ポイント2倍。

――――師範代Lv1の効果発動。バトル参加プレイヤーが『UtS:天匠流』『UtS:月光流』『UtS:桜華戦流』習得のためのスキルポイントを獲得





「おつかれさん」



「いやぁ・・・疲れた。マジで疲れた。久しぶりに疲れたわ」



「だらしないわねゴリラ。アタシと女狐を見習いなさいよ」



「それには同意する。ゴリラのくせに体力なさすぎよ」



ラストを決めたマー坊が砂浜に倒れこむように横になる。確かに三人の中では一番動きが少なかったマー坊が一番疲れているのも確かにちょっと情けない。



「いやいや慣れない武器使ってそこまで動けるお前らがやばいんだって」



「そう?ちゃんとギンちゃんの所で修行してればこれくらいはできるわよ?武器振る時だけでも違うの。ね?女狐」



「うん。ちょっと武器は重いけどいつも通り動ければ結構動く」



「当然じゃ。そうなれるように稽古を付けとるからの!」



そう言えばマー坊はまだギンの修行を受けたことがない気がする。確かちょうどその時他に増援に行くとかなんとか言ってたし。その話をするとふたりは納得。ギンはちょっと寂しそうだった。



「ねぇゴリラ。今からギンちゃんにお願いして稽古付けてもらえば?ねぇギンちゃん。いいかな?」



レイレイが名案だと言わんばかりのことを言っている。確かに悪くないかもな。



「妾は構わぬが・・・そうじゃ!折角なら師匠に皆の稽古をつけてもらうのはどうじゃ?」



「え?おれ?」



「うむ!妾も弟子じゃが師匠に稽古をつけてもらったことがないのじゃ。この機会に是非つけてはくれぬか?」



「確かに良いかも!アールの修行とか凄そうだし!」



「私もお願いしたい。アール、ダメ?」



「俺は稽古つけてくれるなら誰でも助かる」



まぁあんまり自信はないけどルークもついてこれてるし、なんとかなるか。




















二時間後。そんなわけでもはやお気に入りとかしている岩場に来ている。



「「「「キツすぎない/かのっ!!?!?!?!?」」」」



「口より手を動かせー」



目標は10000回素振り。50回毎に砂かけをして、砂が当たればやり直し。投げ方はルークよりもかなり厳しめ。二時間を超えたがギンも200回から先は超えていない。



「はい50。砂行くぞー」



「っ!?」



「おわっ!?」



「ひゃっ!?」



「・・・・!!」



「ギン以外全員当たり、ギンは動きはいいけど枝に余計な力がかかりすぎだ。多分次同じ動きしたら折れるぞ」



白月や月黒の動きが出来るなら完璧だけど、まだ使えないだろうし応用も無理だろう。とりあえずは体の動かし方と力のかけ方で覚えるしかない。



「師匠厳しすぎんかのっ!?妾が見た小僧の稽古とは明らかに違うのじゃが!?」



「当たり前だろ。ルークの稽古はルークのための基礎稽古だぞ?実戦経験多いお前らはお前ら用の稽古にするに決まってるだろ」



経験もスキルも違うんだし。



「アール!!ちょっと休憩!!」



・・・・・まぁ二時間たったし良いか。いきなり飛ばしすぎた感じも若干あるし。



「そうすっか。目隠し外していいぞ」



みんな地面にぺたりと座り込んで息を荒げている。最初はこんなもんか。なんか少し前のルークもこんな感じだったっけ。



「おっま・・・・こんな修行してたの?」



「俺の場合は砂投げてくれる人いないから上に巻き上げてるけど」



「師匠・・・・どれくらいの量なのじゃ?」



「こんくらい」



とりあえず両手で持てる量限界まで持ってみんなに見せる。するとちょっと目が怪しんだ。



あ、もしかして俺もできないと思ったな?ギンの目線が『もしかして』とか思った目をしている。んじゃ、手本見せようかね。



「なんなら見せてやろうか?」



「いいのかの!?是非お願いするのじゃ!!」



適当に取り出したタオルで目隠しをする。枝は・・・・ちょうど良さそうな奴発見。



ちょい細いけどまぁいっか。



「アタシとしては目隠ししたまま枝を拾えるアールに驚きを隠せないんだけど」



「まぁ慣れだな。ギン、砂かけ頼む。10回に一回で頼む。暇ならお前らも砂かけ参加していいぞ」



するとイヤラシい笑みを浮かべたような気配がした。ははぁん?なるほど。俺をハメようってか?バレないようにコッソリ動いて俺を囲むように位置を変えた四人。ギンはそれを悟られないようにずっと話したり尻尾を振って砂を巻き上げているようだ。



「行くのじゃよ師匠。少しでも当たったらやり直しじゃぞ?」



「はいはい」



それじゃぁ始めようか。



10っ!



「なんとぉ!?!」



「はぁっ!!?」



「えぇ!?」



「うっそ・・・・でしょ・・・?」



やったことは簡単。某忍者漫画で出てくる柔術を忍者パワーではなくて、風で代用した感じ。名前忘れたんだけど・・・・確か八卦掌なんちゃらだったはず。



10回目を振り下ろした瞬間に再び振り上げる。俺を目とした小型の竜巻をイメージしてもらえばわかりやすい。渦巻くように風を切り振り上げることで風は内側から外側へと向かう。それによって俺にかかるはずの砂は全部吹き飛んだというわけだ。



この答えにたどり着くまで三ヶ月かかった。アフターストーリーはマジで地獄レベル。出来るようになったらとんでもないけど、それまでがマジで鬼。



その後も俺に砂を意地でも当てようとタイミングをずらしたり、位置を変えたりしてかけてくるけど、タイミングをずらすなら普通によけられるし、位置が変わるなら砂の当たらない箇所はできるから避けやすかった。



かれこれ1000回目に突入したとき、ようやく諦めたのかヘナヘナと座り込んでしまった。



「ほらどうした?かけないのか?」



「ギ・・・ギブ。私アールに砂かけられる気がしないんだけど・・・」



そりゃそうだろリーク。俺だって単なるロールプレイで五代目名乗ってるわけじゃないし。簡単にかけられたら立場無いだろ?



「というかなんでお前俺らの位置把握できんの?スキル?」



「それはないのじゃ、師匠のスキルは見せてもらったのじゃがそれに関するスキルはなかった。全て師匠の実力なのじゃ」



気配察知は基本だったからな。暗殺とか闇討ちとか、視覚妨害とかやってくる敵いたし。



「まぁ竜巻起こすのはやり過ぎたかもしれんけどこれが天匠流の修行だよ」



「なんであれだけ動いて枝が今も折れてないのか不思議でしょうがないんだけど。素振りも結構いい音出してたのに」



「力の入れ方だよ。あと経験。これだけやれるようになればどんな状態からでも鏡雀は使えるよ」



それじゃぁまた頑張っていこうか。



「再開するぞー」



「「「「は・・・はーい・・・」」」」



休んでたはずなのに余計に疲れていた。南無三。






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― 新着の感想 ―
[一言] スキルに頼る部分がないからこれリアルでも出来るってマジ? 別作品にあった「現実も電脳世界でした」パターンって言われた方がまだ信じられるレベルで怖いねぇ... ...待て、開発の人は「私達もク…
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