80:剣聖の修行と新しい弟子
弟子(嫌われている)ルーク君の修行風景
「はいやり直し」
「ちょっと待ってよ!!こんなの出来るわけないじゃん!!」
「文句は聞かない。さっさと続きやれ」
「クソ!!」
時間は既に五時間が過ぎている。途中休みを挟みながらやっているけど、200から先を数えたことはまだない。
運良く100回目の砂かけを避けることはできるけどそんなことは二回も続かない。正確には続けさせてないんだけど。
「適当にやるなよ?ちゃんと真っ直ぐ枝を振れ、あと上半身もあんまり動かすな」
「クソ!!何なんだよ!!」
最初は素直にハイハイいってやってたけど途中から俺が嫌いだということを隠すことなく暴言を吐き始めた。けど自分から言い始めた以上引くに引けないらしく嫌々続けている。
「55・・・56・・・・57・・!!」
ちょっと力を込めて振ったせいで枝が折れた。
「ストップ。枝折れたから最初からやり直し。新しい枝やるから止まれ」
「クソ!!何なんだよもう!!!」
文句は言うし罵倒もすごいけど素直に言うことは聞いてやっている。根性あるな。
更に二時間後
「うわっぷ!!」
「はい残念。やり直し・・・・・と言いたいけど、ルークも遊べる時間限られてるだろ?今日は終わりだ」
「うっさい!!まだ10時間はやれるからやらせろ!!!」
ってことは向こうでもある程度の時間はあるってことか。本人もそう言ってるしならいいか。
「なら続き始めようか。今度から動きが変だったらマイナス10回するからな」
「なんでだよ!!?」
それだけ元気があればいけるだろ?
10時間後
「199・・・・あっ!?」
「枝折れたな。残念、やり直し」
「いいじゃんか!!一回くらいおまけしろよ!!」
「なら避けろよ?いくぞ?」
「絶対避けてわぱっ!?」
「はい残念。どっちにしてもやり直しだが、10時間たったぞ?どうする?」
「帰る!!!」
なんだかんだやること18時間。残念ながら200の壁は越えられなかったものの、投げ出さずにやりきったルーク。時間だと教えると頭からタオルを引き抜いてズカズカと帰っていく。
そう言えば忘れるところだった。フレンド申請っと・・・
「っ!!!!!」
「申請送ったから承認してくれ・・・・って返事はやいな」
「うっさいばーか!!」
「俺はここで待ってるから、一人で来られなかったらメールしてくれ」
「一人で来れるよバーカ!!!」
今日だけで何回目のバーカだろうか。元気だなルーク。
「それからな?」
「なんだよ!!?」
「目の前、モンスター」
「はぁ!?お前そういうことはy・・・」
まぁ初期装備じゃ一撃だろうな。
『ギギギ』
「久しぶりだな。ブレイドキャンサー。どうしていきなりそれなのかは知らんけど」
こちらの時間で二日後。現実ではまだ一日経過していない。一旦戻って洗濯とかしたついでにテレビ見てたけど最近人気子役が学業に集中するために休業するらしい。
他にも医療の現場にも新しい技術が取り入れられて髄膜炎検査とかで取る髄液が今まで以上に取りやすくなったとか。あれ前に検査したけどむちゃくちゃ痛い。腰に針刺すとかできれば二度としたくない。
あと有名女優が結婚するそうだ。付き合い始めて三ヶ月のスピード婚だが、旦那さんになる芸能人がめちゃくちゃいい人だ。付き合う前にある番組で共演したから、改めてその番組を見てみると尊みがヤバイ。
あと男装が似合う女優ナンバーワン選手権で一位になった女優が今度映画で主演をやるらしい。アニメ原作の実写映画化だからどうなるかわからないけど、この女優なんでも有名劇団からもスカウトがあった経験あるらしく、演技力は高いらしい。上映したら唯と一緒に見に行ってもいいかも知れない。
あと特集で地域の行列ができる飲食店を紹介していた。俺好みの美味そうなケーキ店が紹介されてたので今度買いに行こう。
そんなニュースを見てからまたログイン。そして海岸で来るのを待っていたのだが、一向に来ないのだ。
「・・・・・・・」
「モンスターに勝てないし道わからないしで迷子になっちゃったと?」
「うっさいばーか!!」
気になり始めた時に丁度『迎えに来い』とだけ書いたメールが届き、街に戻ればあからさまに機嫌が悪いルークが噴水にいた。
「流石に初期装備じゃここの敵は・・・装備買う金あるか?」
「うっさいばーか!!」
ないのね。まぁ弟子の面倒を見るのも師匠の役目か。
「んじゃ買いに行くぞ」
「お前のお金で買った装備なんていらな・・・担ぐなばかぁ!!!!」
動きを重視したウルフレザー装備一式、お値段延15000Dでした。ガンテツさんが俺の弟子だということで、ルークのツケで買わせて貰えたので、ルークも素直に買った。
『弟子じゃない!!』
うるさくしつこいガンテツさんに啖呵は切るが勝てずに撃沈。ガランさんのアップルパイをうまそうに食べてた時は年相応の子供だった。
「見るなばーか!!」
はいはい。
因みにこのあとまた10時間続けたけど200の壁は越えられなかった。そのままイジケテ不貞寝したときの表情はなかなか子供らしくて可愛らしかった。
一時間ほどで目覚めたルークはどうやら寝顔を見られたのが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして帰っていった。
「ほれ、そんなんではすぐに枝が折れてしまうぞ?もっと丁寧に振らんか」
「・・・・・・55・・56・・・・57・・・・!!!」
「そんなんじゃ折れるぞ?」
「うっさいばーか!!」
修行三日目。今日は街でギンと合流したようで一緒に来た。本人曰く『わかってた!!ただ僕の前をコイツが歩いてただけだバーカ!!』だそうだ。
ギンに話を聞くとちょいちょい危なっかしくて手助けしていたけど、お礼は愚か一言も喋らなかったそうだ。ギンがちょっとシュンとしてたのはなかなか可愛らしかった。
「79・・・80・・・あっ!!?」
「だから言ったじゃろう。折れると」
「・・・・・・・ん!!」
ギンはガン無視。”俺が居る方向に手を出して”枝を求めてきた。
「はいはい、ルークマン新しい枝よー」
「うっさいばーか!!僕アンマンマンじゃない!!」
今日も200の壁まで来ることができた。201はまだ遠い。昨日に引き続き一時間ほどふて寝していった。『マクラ!!』と元気に不機嫌そうな顔で俺の膝を要求したのはなかなか可愛らしい。
ちなみにギンが貸してやるといった時は相変わらず無視。がっかりしていたギンの顔もかなり可愛らしかった。
「・・・!!!!!」
「仕方ないって、流石にお前じゃまだガンドロックキャンサー相手にソロは無理だ」
「うっさい!!あいつが出なかったら一人で行けたんだからな!!」
「わかってるって」
四日目。運悪くガンドロックキャンサーとエンカウントしてしまい進めなくなったルーク。『ふざけるな!!』とだけ書いたメールが届いたと思えばそんなことになっていた。因みにギンは街で稽古中。
「機嫌直せって。街で好きなもの買ってやるから」
「うっさいばーか!!お寿司しか食べてやらないからな!!!」
この食べ盛りめ
「寿司な?わかった。その前にまず目隠しなしで素振り1000回いってみようか。その後いつも通り目隠しありで」
「なんで変な修行増えてるんだァ!!!?!?!?」
お寿司奢る代金替わりです。
「ぜぇ・・・・・ぜぇ・・・・・ぜぇ・・・・・・!!」
「お?何げに一人で来たの初めてか?」
五日目。ボロボロで息も上がってるけどはじめて一人で岩場までたどり着いたルーク。
ズカズカといつもの場所に立つと地面に座り込んだ。
「休憩させろバーカ!!」
「いいよ」
「なんでだ・・・・いいの?」
面食らったように放けてしまったルーク。どうせダメだとか言われると思ったんだろう?
「いいよ?疲れた時にやっても意味なし、一旦休んでから始めようか」
「・・・・・・優しいとこもあるのかよばーか・・・」
「休み明けに素振り2000回やってからいつものな?」
「やっぱりバーカ!!!増えてるじゃん!!!」
「ゆっくり休めよ?その後うんっと疲れるから」
「鬼バカぁあああ!!!!!!」
200の壁に現在ぶつかっているルークの嘆きである。俺の膝を枕にして寝るのが最近のトレンドらしい。また二時間ほど寝ていった。
「お?」
「遅いぞばーか!!」
用事があったので一度ログアウトして次の日、メールを見ると『バーカ!!!!』とだけ書いたメールが一通。街にはいなかったのでいつもの岩場に行けば、俺からは指示も出していないのに自主連で素振りをしていた。
「なんだ自主練してたのか?偉いじゃないか」
「うっさいばーか!!いないなら帰るとかメールしろばーか!!」
「悪かったよ。その代わりだけど・・・ほら」
「あっ!!?ケーキだぁ!!!!!!」
店で売っていた美味そうなケーキを買ってきた。待たせたみたいだしこれくらいの事はするさ。
「全部食べていいの!!?」
目を輝かせている。やっぱり子供はケーキとかオヤツ好きだよな。俺は今でも甘いものは大好きだ。
「いいよ。お前のために買ってきたんだから」
「はぁぁ・・・!!!!いただきます!!!」
どれから食べようか迷っている。全部お前のだから好きなように食べていいぞ。
「はぁぁ・・・・!!!っ!!?見るなばかぁ!!!」
「ハッハッハッ」
「あたしんちのお父さんみたいな笑い方して誤魔化すなバーカ!!」
よく知ってるな。結構古いぞ?そう言えば再放送もあったんだっけか?忘れたけど映画とかも新しいのあった気がする。超能力に目覚めたとか何とか。
「食い終わったら素振り2200からのいつものやつな」
「地味に増やすなばーか!!!」
最近コイツの『ばーか』が照れ隠しにしか聞こえなくなってきた。なんだかんだ今日、”200”を越えた。そして二時間寝ていった。最近寝ている時に頭を撫ぜてやると気持ちよさそうにしている。
猫かな?
「・・・・・!!!!」
ルークはその場で地団駄踏んでいる。まぁ、気持ちはわかる。
「前も言ったけどあれは仕方ない」
『ギギギ』
再び行く手を阻むガンドロックキャンサー。エンカウント率高くない?実は隠れてみてたけど、ルークは果敢に挑んでいった。再戦すること7回。いい加減泣きそうだったので奥からきたぞ感だして合流した。
救援メールを送らなかったのは多分自分で行けることを証明したいとかそんな感じだと思う。最近は自分でだけで来ていたから結構自信あったんだろう。
『ギギギ』
「とりあえず弟子虐めた罪は重いぞ?」
「っ!!?!?!?!弟子って言うなぁ!!!!」
『ギギギ』
「超越流派抜刀術『天津雀』」
戦うこと五分。甲羅から何から全部、バラっバラに切り裂いてやった。因みにパーティー申請はしてないので天匠流の習得はダメです。
あと、今日は珍しく『ばーか』が聞こえなかった。怯えたのか?でも今日は200の壁は越えられなかった。そしていつものふて寝。最近ただのお昼寝になってきている気がする。別にいいけど。
「おいバカ!!」
「第一声がそれかよ」
「みろ!!」
「見ろってなに・・・・おぉ・・!!」
岩場に現れるやいなや、前日聞こえなかった罵倒が飛んできた。手に持っていたのは新しい武器。確かガンテツさんのところで売っている刀だ。鞘にガンテツさんが自分の作品につけている紋章が見える。
「どうしたんだ?それ?」
「装備のお金全部払い終わったからまた何回もお金払うからってお願いして買った!!」
自分で武器を選んで買うとは・・いい傾向じゃないか。でも・・・
「でかくない?」
「うっさい!!僕がこれが良かったの!!!」
ルークの身長はあって150cm。持っている刀は持ち手も合わせれば90cmはある。
大きさ的には俺が使うようなサイズだ。
「因みに手で持ったまま抜けるのか?」
「・・・・・・・」
グヌヌと頑張って抜いたが、なかなか難しそうだ。別の抜き方を教えてやってもいいけど、ルークは頑なに鏡雀の構えで抜こうとしていた。しゃーない。
「ほらガンテツさんの所いって鞘加工してもらいに行くぞ。お前でも抜けるようにするくらいあの人ならできるだろ」
「っ!!!い・・・いやだ!!先に修行する!!!あのおじさんの所には僕ひとりで行くからいいんだばーか!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・・!!!!」
「はぁ・・・ちゃんといけよ?」
「わ・・・わかってるばーか!!」
今日、ルークは200の壁を越えた。お昼寝も3時間を超えていた。




