78:謝罪と食べ歩き
たまには日常(?)回
「いやはや、パーティー戦って言ったのに一人でばっかり戦ってて悪かったな」
結局38周もしてしまった。こんなに体を動かしたのは久しぶりだ。そのせいでついやり過ぎてしまった。
「いやいや!!楽しかったっス!!おかげでスキルも手に入りましたし!!」
「えぇ。もしよかったらまたパーティーを組みましょう。その時こそは肩を並べて戦いたいです」
二人はこのあと再び攻略中のダンジョンに戻るそうだ。お目当てのスキルも手に入ったようで良かった。あとパーティーを組んでいたので俺とギンの師範代スキルが発動し多少だが『UtS:天匠流』の習得ポイントが入ったと喜んでいた。
「ではみなさん!!また会いましょう!!」
こうして彼らは帰還タグを使ってニルスフィアへと帰っていった。話してみるとなかなか面白い人たちだったのでまた逢いたい。
「んじゃ、俺らも帰るか」
「そうだね。私は一旦ログアウトかな。今日お母さんに手伝いお願いされてるから」
「あれ?女狐あんたも?アタシもお父さんから手伝い頼まれてるの」
「・・・・・・え?お前ら二人もなの?」
「「「・・・・・・」」」
あーはいはい。そっち系のお仕事のお手伝いですね。こいつら本当にまだ学生なんだろうかと思う。
「それならさっさと戻ろうか。遅れたらまずいだろ」
「「「うん/えぇ/おう」」」
さて、どうしようか。
ログアウトするのを見届けてからどうしようか考えている。残念なことに俺は今日一日フリー。ちょっと体に影響が出る事件はあったけどリアルハードでも似たような経験はあったし。寝て起きて元気だったらそれでいい。
じゃぁ修行するかと言われるとそれもなんか違う。それに・・・
「・・・・・・・」
隣にいるギンが許してくれなさそうだ。因みにギンもフリー。なので今日一日は俺と行動するそうだ。刀気は良いのかと聞けば、元々毎月一回の修行。
住んでいる場所が遠いらしい。来る前には手紙を書くそうなのでそれに合わせれば良いそうだ。
そう考えるとよくその一ヶ月に一度のタイミングに刀気に会えたよな俺。あの時みんなと一緒にログアウトしてたらアウトだったじゃないか。地味に幸運値あげといたのが幸いしたとか?
「・・・・・美味いもの廻りでもするか?」
『良いではないか。貴様もたまにはいい考えをする』
「食事は体を作る基本じゃしの。いいのではないか?」
なんだかんだ色々食べているがじっくり屋台巡りとかしたことない。金については周回したこともあり十分。
アイテムを買う分をよけたとしても食事の合計金額を当てる番組で2回ビリになっても払えるくらいにはある。おみや代まで乗せられると無理だけど。ともかく決まりだ。
「うし!なら食い歩きしようか!」
「おぉ!!この蒲鉾旨いぞ!?」
『普通だな』
「妾は少々合わぬ。店主。これは何の魚じゃ?」
「コイツはワームシャークの練り物です!」
「「ワームシャークっ!??!!」」
『普通だな』
「身はふっくらしてるし、塩気がちょうどいいな」
『小さくて食った気がせん』
「妾は好きじゃぞ?」
「お気に召しましたか?コーラルフィッシュの塩焼きです」
「美味い。あと四つくれ」
「まさか寿司まであるとは・・・・」
『この酢というのが気に入らん』
「これじゃから獣は、酢の甘さがわからんとはまだまだじゃの」
『貴様も獣だろうが』
「天ぷらエビでっかっ!!」
「これあたしが朝海でとった羽海老なの!!美味しい?」
『これくらいが食べ応えがあって良いな』
「ちと大きすぎて食べにくいの・・・これで良いか」
「すごーい!!あっという間に小さく切れちゃった!!」
「こんなところで使うのか天匠流」
「刺身じゃ!」
『年寄りがはしゃぐな』
「黙るのじゃ!」
「味的にはサーモンに近いな」
「クロメザメのお刺身はお口に合いましたか」
「「また鮫かっ!!」」
『食べにくい・・・』
「甲羅からとってやるから待ってろ」
「んんー!!美味じゃ!!甲羅焼きとはまた何とも良いではないか!!」
「だなぁ。こいつ味も美味かったんだな。オーシャンシザー」
「こいつも食えるのか・・・・」
「妾も食べたことはないの」
『見た目より旨いのだぞ?』
「でもなぁ・・・」
「のじゃ・・・・」
「「ヒトデの姿焼き・・・・」」
『いいから食え、食べず嫌いどもめ』
「「・・・・・・・美味いじゃないか・・・!!!」」
「ハンバーグか・・・最初の蒲鉾思い出すな・・・」
「最初は素材を聞いた時、ちと食べる気が失せてしもうたの」
『なら先に聞けばいい。人間。これは何を使っている?』
「これはたまに取れる兇波鋭豹の肉を使ったものです。美味しいですよ」
「「6個くれ!!」」
『現金な奴らめ』
「へぇ!魚の解体ショーまでやってるのか・・・・いい手付きだ」
「なかなかの腕を持っておる」
「ありがとうございます!!いつも腕を磨いてますので!!」
『我としてはそのまま食いたいのだがな』
「「天匠流に興味はないか/の?」」
「え?天井?」
『キサマらが見ているのはそこなのか』
「「マグロだぁ/じゃぁ!!」」
『我はこの味は好かん』
「まだまだだなアホ犬。この味がわからんとは」
「所詮は犬じゃな」
『キサマらケンカを売っているのか?』
「イカそうめんか。動いてるからめちゃくちゃ新鮮だな」
『味は普通だが噛み応えがあって美味いな』
「わ・・・妾は遠慮しておくのじゃ・・・生のニュルニュルは嫌いなのじゃ」
「そうか・・・美味いのに」
『弟子が師匠を悲しませるのか?狐』
「むぅぅぅぅ!!女は度胸じゃ!!あむ!!」
ウニャァァァァ!!!!!!!
「美味いのじゃ!!いい蛸を使っておるの!こっちのイカリングとやらも美味である!」
「生じゃなければ食えるのな」
『おかわりだ』
「おまえは食うの早いよ。熱くなかったのか?」
『うむ。やはりこの大きさを食うのが一番良い』
「自分の三倍はある鮫を頭から食う狼。コイツの腹どうなってるの?」
「師匠はよくこんな相手を手懐けたの」
「まぁ色々あってな」
『おい、もう一匹用意しろ』
「「食い過ぎだ/じゃ」」
『我はまだ食える』
「いやー!!食ったわ!!」
「師匠よ。椅子で横になるのは良くないぞ?頭も痛いじゃろ?妾が膝を貸すのじゃ」
『人間の作る物はやはりうまいな』
食べ歩くこと二時間程度。散在するように食い歩いて満足した俺たちはベンチに腰掛けて休んでいた。俺はギンの膝枕で極楽だ。
「ありがとなギン。重くないか?」
「この程度赤子を乗せるようなものじゃ。ゆっくりせい」
「なら遠慮なく」
「ふふ・・・」
「・・どした?急に頭なんて撫ではじめて」
「すまぬの。なぜかこうしたくなったのじゃ。迷惑かの?」
「いや?役得だから続けていいぞ?」
『これは後であの女どもに報告だな。面白いものが見れそうだ』
「っ!!?」
「ギン。気にすんな。流石にあいつらも・・・・・・・・いやアウトか?」
アウト臭いなぁ・・・・・・あいつらこういう時の勘はすごく鋭いし。名残惜しいがギンの膝から起き上がりベンチに座る。座ってみると改めて満腹感がすごい。
結構食べたから財布は少し軽くなったけどこれだけ満足できたら充分な対価だろう。
嫌なこともあったけどいい事もあった。今日はそんな一日で終われそうだ。
「明日からまた頑張るか」
「そうじゃな。師匠は明日の修行には参加するのかの?」
「今の所は予定もないからな多分参加だよ」
「そうかそうか。なら妾も気合いが入るというものじゃ!」
桜の花がギンの後ろでクルクル回っている気がする。そんなに喜んでもらえると俺も嬉しくなる。
『・・・・・・・・おい、キサマら気づいているだろうな』
「はぁ・・・・・犬っころが声に出すということは相当じゃな」
「気付かないふりしてたいんだけど・・・・・」
はいはい。ちゃんとしますよ。立ち上がり抛を手に取ってそいつが隠れている木へと向ける。
「おい、さっきから付いてきてる奴。さっさと出て来い」
「・・・・・・・」
「はぁ・・・・出てこないならその木ごと叩き切るぞ?はいいーち!」
「わわわわわ!!!!出ます!!出ますから切らないでください!!!」
全く。脅されて出てくるなら最初から出てこいっての。
木陰から出てきたのは小学生くらいの身長で装備はまだ初期装備。武器はどこでも売っているアイアンソードの少年だった。表情は怯えており、このまま話すのは無理そうだ。
脅しのために取り出した抛を収め少年に近づく。
するとびくついて固まってしまったので、視線を少年に合わせるようにしゃがみ込む。
「何か用か?」
「えと!!あの!!僕!!!!!!」
「落ち着け。ほら、深呼吸して。はい吸って」
「スゥー!!」
「吐いてー」
「はぁー!!」
何回か深呼吸をさせてようやく落ち着いた少年。こんなに脅すつもりはなかったんだけど驚かしすぎただろうか?
「落ち着いたか?」
「は・・・はい・・・」
まだ多少震えているがこのままずっとこうしてても埒があかない、俺から切り出そう。
「俺はアールだ。君名前は?」
「ぼ・・・僕はルークです・・・・・初めまして」
「初めましてルーク。どうしてさっきから俺たちを尾行してたんだ?」
「それは・・・!!!!その・・・!!!!!」
「怒らないから落ち着け。もう一回深呼吸しようか」
反応を見ると子供のアバターをした大人とは思えない。本当に子供みたいだ。となると見た目通り小学生なのか?
「な・・・何回もごめんなさい」
「いいよ、気にするな。もう話せるか?」
「っ!!そ・・・それはっ!!」
まだ無理か。
「ギン。これでジュースでも買ってきてくれるか?甘いやつ。俺の分も頼む」
「しょうがないの。すぐに戻るのじゃ」
1000Dを渡すとギンが飲みものを買うために席を立った。ルークにはそこに座ってもらい話してくれるまで待つとしよう。
椅子まで連れて行くと素直にルークは座ってくれた。
『・・・・おい貴様』
「ひぃっ!!」
随分とドスの効いた声でギルファーがルークを睨みつけた。何やってるこのアホ犬。
「おいアホ犬。子供驚かすな」
『・・・・まぁいい。始めるならあの狐が戻ってからだ』
「妾がなんじゃ犬。見ておったぞ。大人げないの」
「おかえりギン。ジュースありがとう。ほら、飲め」
「い・・・・いただきます・・・・・」
せっかく落ち着いてきたのにギルファーのせいでまた怯えちゃったじゃないか。こいつ余計なことしやがって。ジュースをチビチビと飲むルーク。
『戻ったなら話早い。貴様からアールを殺した毒の匂いがするのはなぜだろうな?』
「ぶはっ!??!」
「ハァ!!?」
ちょっ!?俺が死んだ時の毒!?お前いきなり何を!?
「っ!?!!?」
ルークは直後ジュースを投げ捨てて逃げ出した。
「逃がさぬぞ小僧」
「ひぎぃっ!?」
聞いたことがない怒気を孕んだ声を上げるギンと、同時に宙に浮かび上がるルーク。ギンの妖術だろう。念力のようなもので捉えられた。ルークのこの反応、マジでか?
「童子といえど妾の師を殺したのじゃ。それで目の前に現れるとは・・・・死ぬ覚悟は出来ておるか?」
『くだらん問答は必要ない。さっさと始末しろ狐』
「ぐぁがぁ・・・・・!!!」
「ってちょい待て!!お前ら!!落ち着け!!」
ぎりぎりと絞まるルークの首を見て流石に止めた。このままだと街中でPKすることになるし、本当にルークが犯人とは言い切れないだろ!?
ギンを静止させ、ギルファーが手出ししないようにルークを抱き抱える。ギンは納得がいかなそうだが首を絞めていた力を緩め、ギルファーも手出しはしない雰囲気に戻ってくれた。
「お前ら結論急ぎすぎだ。あの時の毒が風に乗ってコイツの服についた可能性だってあるだろうが」
『・・・・だがそれにしては臭いが強い』
「妾はそこまで鼻は良くないがその小僧が何かを隠しておるのは分かるぞ」
「だからってここまで・・・」
―――カラン
「「「『・・・・・・』」」」
ルークのポケットから落ちたのは禍々しい色の液体が入った瓶が2本。空ではあるが同じ物が入っていたと思われる瓶が一本。え?マジでこの子供が俺を殺した犯人なの?
ゆっくりと顔を向けると今にも泣きそうな顔をしながらルークは口を開いた。
「ご・・・・・ごめんんさいぃぃぃぃいぃいい!!!!!!!!!!!!!!」
けっこう息が合う師弟コンビ
そして下手人登場。




