73:特殊サブシナリオ
副題:変態企業エクスゼウス②
「話を少々戻させてもらいますね。アール様が睡眠中、我々はその時間帯にプラネットクロニクルを遊んでいただいていた全てのプレイヤーへ臨時の特殊サブシナリオを発動させていただきました。それが『剣聖を救え』というサブシナリオです」
プレイヤーをメインキャストとした特殊なサブシナリオ。今回、俺が寝ている間に起きた物ってことか。
「内容を見せてもらう事は可能ですか?」
「もちろんです。それから過去にアール様と同じようにプレイヤーが主役となったクエストもご一緒にご覧下さい」
目の前に現れたウィンドウにはいくつかの特殊サブシナリオが表示されている。その中で中央に表示されている物が俺のクエストだろう。
特殊サブシナリオ『剣聖を救え』
時代人にして、古の伝承に名を残す存在、『剣聖』の生まれ変わり『アール』
彼は戦いの最中、第三者の手によって毒を受け倒れた。彼を救うためには世界各地に存在する『星層の花』『星層の欠片』『星層の果実』が必要だ。彼を救うために必要なものを彼に届けよう。
達成条件:星層の花・欠片・果実を可能な数集め、彼に届けること
失敗条件:5時間以上の時間が経過すること
報酬:30000D、UtS剣聖の加護
UtS:剣聖の加護
剣聖が認めた者のみが受け取ることができる加護。この加護がある者は更なる高みへと上ることができるだろう。
効果
Lv1:天匠流・月光流・桜花戦流の修業で得られる熟練度が増える。
Lv2:戦闘時、天匠流・月光流・桜花戦流で相手に与えるダメージが増加する。
Lv3:Lv1・Lv2の効果が上昇する。
Lv4:『称号:剣聖』を持つ者がいるフィールドでステータスがランダムで上昇する。
Lv5:『称号:剣聖』を持つ者が習得しているスキルを一つ自分が覚えたものとして使用できる。
LvMax:『称号:剣聖』を持つ者が同じフィールドにいる場合、ランダムで一つ奥義を使うことができる。
随分とまぁぶっ飛んだものを作ったものですね。しかも俺個人じゃなくて『称号:剣聖』を持つ者が近くに居る場合だから別に『称号:剣聖』さえあれば誰でも良いというわけだ。
Lv1・2・3の効果はまぁあればいいなくらいでいいとしてLv4・5・Maxはとんでもない効果だ。つまり簡単に言えば剣聖の量産可能って訳か。
他のプレイヤー主役のサブシナリオも見てみたがなかなか面白いのが揃っている。例えばルシオンと、このニコニーコって人主体のシナリオとか面白い。
特殊サブシナリオ『空を求めて』
大空に夢を探す時代人『ルシオン』。彼は今、空の新しい可能性を模索するために『天空への階段』を探している。その為には目印となる『空の道標』と呼ばれる特別な鉱石が必要だ。
夢を抱き、探し続ける彼を応援するために世界のどこかにある不思議な鉱石『空の道標』を探し出せ。
達成条件:どこかにある鉱石『空の道標』を可能な限り探し出し、ルシオンに届ける
失敗条件:一日が経過して『空の道標』が彼の元に届かなかった場合
報酬:50000D、AS:夢の力
AS:夢の力
夢を探し続ける者がもつ不思議な力。純粋な思いは人に幸運をもたらし、夢を追う人が持つ魅力は周りの人にも幸運を運ぶであろう。
効果
Lv1:特別な情報に気づきやすくなる。
Lv2:『空』『天』『夢』と名のつくスキル習得の為の熟練度が増えやすくなる。
Lv3:アイテム使用時の効果が上がる。レアドロップの確率が上がる。
Lv4:『称号:夢追い人』を持つ者が同じフィールドにいる場合、Lv1・2・3の効果が上昇する。
Lv5:『称号:夢追い人』を持つ者が同じフィールドにいる場合、アイテムを使用しても数が減らないことがある。
LvMax:戦闘中『称号:夢追い人』を持つ者が同じフィールドにいる場合、『AS:天光Lv5』を習得した状態になる。
特殊サブシナリオ『困っているなら助けよう!』
人助けが何よりも好きな時代人『ニコニーコ』。彼は今一人でまた、見知らぬ誰かを助けるために戦っている。そんな彼が今困っている。病気の妹さんのために必死に戦う青年を助けるべく、彼を罠に嵌めた悪徳商人を探し成敗しようとしているのだ。だが情報が何もない。彼を助けるべく皆で情報を集めるのだ。
達成条件:悪徳商人の情報を集め、彼の戦いを手助けする。
失敗条件:悪徳商人が罠にかけた青年を捕らえ奴隷にする。
報酬:100D、AS:優しい力
AS:優しい力
誰かを助けたい。誰かを救いたいと願う者が心に持つ優しくて強い力。簡単であるからこそ、持ち続けることが難しい力でもある。
効果
Lv1:NPCからの好感度が上がりやすい。
Lv2:NPC発生のサブシナリオが発生しやすくなる。
Lv3:戦闘中、庇う・守るなどの行動をすると、HPが大きく減少する代わりに、攻撃力と防御力が大幅に上昇する。
Lv4:『称号:ヒーロー』を持つ者が同じフィールドにいる場合、NPCが味方として参戦してくれる可能性が上がる。
Lv5:『称号:ヒーロー』を持つ者が同じフィールドにいる場合、『AS:復活Lv5』を習得した状態になる。(既に習得済みの場合はLvMaxになる)
LvMax:『称号:ヒーロー』を持つ者が同じフィールドにいる場合、攻撃力と防御力が上昇する。
変わったスキルだけど効果はなかなかに面白い。他にもチーザー紫のレイドバトル要請にゴーレの指定モンスターの討伐など、プレイヤーが困っていることを解決してくれるようなサブイベントばかりだ。
一部ユーザーへの贔屓にも感じないこともないが、称号から見るにかなりの時間と愛情を持ってゲームをプレイしている人であることはわかる。
「また今回ASの上位スキルUtSの実装に伴いましてこれらサブシナリオで得たASは全てUtSへと変更されます。もちろん一部ユーザーから不満の声も上がっていますが、気になさらないでください。我々は、我々の作ったものを愛してくれる方に感謝をしているだけですので」
「分かりました」
流石エクスゼウス。この辺は『何か問題でも?』と平然としてやり遂げるからすごい。逆に考えれば口は悪かったけどチーザー紫もすごくいい人なんだろう。ギルファーが嫌ってるけど。
「キーパーソンのプレイヤーに関しては今回アール様への報酬と同じように集めたアイテムや情報がそのまま報酬となります。予告なしで突然始めているのでまた機会があればアール様も是非他の方の『サブシナリオ』に参加してくださいませ」
「分かりました。詳しく教えてくれてありがとうございます。ところで今回俺が手に入れたアイテムの用途はなんなんですか?」
「はい。ドラゴンゾンビハザードの毒を無効化するアイテム作成のための素材となります。また、名前の通り特別なシナリオに関連するアイテムでもあります」
マジでか。名前的にまさかとは思ったけどマジでか。しばらくは大事にもっておこう。
「いろいろとありがとうございました。それともしよかったらテーブルの上の物全部食べてってもいいですか?」
「いいえ我が社の失態ですのでアール様はお気になさらないでください。テーブルの上の物を全て食べ終わりましたら元の場所へと意識を戻しますので、どうぞごゆっくりお召し上がりください」
一口だけじゃ正直物足りなかったんだ。ここはご好意に甘えて食べさせてもらおう。
「それと、ここからはプライベートな話なのですが・・・・よろしいですか?」
「え?えぇ、構いませんが・・・・」
「そ・・そうですか!では!我々が生み出した月光流・天匠流・桜花戦流についてのお話を是非聞かせてくれませんか!!」
さっきまでのビジネススタイルは何処へやら、好きなものを語る一人の人に代わっていたのであった。
「・・・・・っ!」
いかんいかん。気が付けばかなりの長話になってしまった。途中から人数増えてったけどそれでいいのかエクスゼウス・・・・・・いいんだろうなぁ・・・・・。
それに今後実装する新スキルや新流派の参考にさせて欲しいとまで言われてしまった。参考になるのか微妙なところだけど、俺に関しての問い合わせが結構あったらしい。
エクスゼウスとしては問い合わせ自体の対応はいいが、流派に関しては是非取り入れていきたいとのこと。特に天津雀とピスケス系統の技がお気に入りらしい人が土下座する勢いでお願いしてくるものだから驚いた。
そこまでしなくてもいいし、寧ろ俺みたいに強い奴が出てくるなら願ってもないことだ。そんな奴らと戦えばもっと強くなれるはずだし、俺の方からお願いすると集まった方々が子供のようにはしゃいで喜んでくれた。
でも、一線は超えない程度に作っていくと話していたので完全再現はないだろう。嬉しいような悲しいような何とも言えない。
そんな話をしているとあっという間に時間が過ぎていき、こうして戻ってきたわけだ。
「それじゃぁ改めて僕は行くよ。またねアールくん。今度は一緒に闘おう」
ルシオンがそう言ってるってことは、本当に時間が経過していなかったのか。すごいなエクスゼウスの超絶技術。
「おう。またなー」
すげぇ、本当に全く時間が経ってない。マジ物のオーバーテクノロジーじゃないかよ。やっぱり変態か。
ルシオンが帰ると他のプレイヤーもみんな一言ずつ言ってから戻っていった。残ったのはいつもの三人と従者二人、あとガンテツさん、それから・・・誰?
筋肉マッチョマンで、わかりやすく言うなら某漫画で出てくる力を継承する個性をもち、因縁の相手をぶっ飛ばしたヒーローの髪を、黒に染めた感じの人。
装備もそれに似せているのかマントが似合うスーツ姿で身を包んでいる。
「君が今プラクロで一番有名になってるアールくんだね!初めまして!私はニコニーコ!趣味は人助け!嫌いなことは曲がったこと!!好きな言葉は『毎日善行!』よろしくな!」
喋り方まで似せてくるとはすごい。ファンなのかな?
「初めまして。その噂のアールです。今回は助けてくれてありがとうございます」
「気にしなくていいさ!!いいことをするのは私の趣味だからね!!」
「失礼かもしれませんが・・・時間経過で縮むんですか?」
「いやいや!流石にそれは無理だったよ!出来たら面白そうだったんだけどね!!」
出来たらやったんですね。
―――ニコニーコからフレンド依頼が届きました。承認しますか?
もちろん。承認っと。ポチっとな。
「ありがとう!これで私たちは友人だ!ではまた会おう友よ!!」
がっしりと握手を交わした後ニコニーコもなぜか全力疾走で走っていった。リスペクトの仕方が細かい。




