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71:VS忍者ゴブリン

第一ラウンド開始



「・・・・・ちっ」



初撃を狙い突撃とともに振り下ろした斧で放ったヴェルバランスだが、体を捉えたと思えば既にその場にはおらず、代わりに残された丸太を斬り割っていた。



「師匠!!」



「油断するなよお前ら!!こいつ相当強い」



悔しいけどいるのはわかるがどこにいるのか気配が全く掴めない。周囲の気配を探るがやつの気配と思われるものを感じることができない。



「忍者って言うだけのこと実力はあるのか・・・・だったら・・・!!!」



斧をポーチに収め携えた剣に手をかける。



いくら気配を消そうが攻撃のためには必ず姿を見せるか、何かしらの動きはしないといけないはず。そこ目掛けてカウンターを叩き込む。単純だがこの場では一番わかりやすい。



「・・・・・・・・・・・・」



息を沈め、目を閉じる。腰を深く落とし即座に剣を抜ける体勢へと移行する。ギルファーとギンの位置はしっかりと”視える”。それ以外の気配を探り、予測する。



砂の音、足音一つ聞き逃さずに、やつが動いた瞬間を切り裂く。



「・・・・・・・っ!!ちぃ!!」



三方向から飛来するいくつもの投擲物。やむ得ず剣を抜きそれらを叩き落とす。それは忍者がよく使うクナイだった。名前的に手裏剣かクナイは使うかもと思ってはいたが早速使ってくるとは。



今確かに動いた何かがあった。だがそれを捉える前に忍者ゴブリンは再び気配を消した。



コイツは一筋縄じゃ勝てなさそうだ。



『流石に対応してみせるか』



その声は気持ち悪く響いた、俺たちがいる空間そのものから聞こえてくる。声を反響させるのではなく、空間を振動させて声を出している。厄介すぎるだろうがっ。



「ギルファー!!油断するな!!ギン!!自分の身を守ることに専念しろ!!」



こうなれば他に気を回す余裕が今はない。悪いが自分の身は可能な限り自分で守ってもらいたい。



『ふん。珍しく本気ではないか』



「うっせ」



「師匠、こちらは気にせんで良い」



「助かる」



まぁ俺よりも強い二人だ。死ぬことはないだろうけど、万が一の可能性がないとも言い切れない。



こんな化物ゴブリンよくイベントでだそうと思ったな運営!苦情来ても知らねーぞ!?



「またかっ!?」



『考え事をする余裕が有るか』



再び投げられたクナイを叩き落とし投げた張本人を探す。しかし気配が”拡散”して消えてしまう。



・・・・・拡散して消える?もしかして・・・・・



ちょっと確かめてみるか。再び飛んでくるであろうクナイに注意しつつ気配を探る。やっぱり全く感じ取れない。



そして、俺の呼吸するタイミングをずらす様に飛んでくるクナイの連続投擲。一瞬感じ取れる奴の気配。クナイの飛んできた方向と、感じ取れた気配の場所から考えれば・・・・あそこかっ!!



「『初月雀』3羽!!」



斬撃を飛ばしクナイもろとも奴がいるであろう空間めがけて切り裂く。しかし



『なるほど、なかなかいい手を考える。だが無意味だ』



クナイ以外は切れることなく、地面に落ちる金属音のみが空間に木霊する。また命中せず。だが気配が消える瞬間の感覚ははっきりとわかった。



気配は消えたのではなく”拡散”して消えた。最初は偶然かと思ったが二度三度と同じように気配が消えていけば馬鹿でも分かる。



拡散して気配を殺すのが忍者ゴブリンの気配が感じ取れないカラクリ。忍者は忍んで敵を殺すとはよく言うが、こんな方法で気配を消す事が出来るのは、オレが知る中ではたった一つ。



「桜奏呼吸とか卑怯エゲツないなっ!?」



『桜華戦蘭流』においては存在感を大きくすることで相手の気を引く為の技能。そして『桜華殲滅流』では大きくするだけでなく、逆に存在感を薄くし、最終的には拡散するように消していくことで相手の感覚と精神を揺さぶる技能。桜華戦流すべての基礎『桜奏呼吸』。こいつが使ってるのは多分これだ。自分で使うから嫌ってほど分かる。



侍ゴブリンといいどうしてこう流派の技が使えるのかねぇ本当に!



『我が秘術の名をわずか二回で見破るか』



「はっ!!生憎俺も使える呼吸法でな!!」



だがその練度は俺よりも上だ。相変わらずこんな化物ゴブリンに仕立てやがってよ。エクスゼウスはとんでもないなオイ!



『なるほど・・・だがわかったところで対応できねば意味がない』



「ごもっともだよ!!」



再び放たれるクナイを叩き落とし反撃するために気配を探すが全くわからない。相変わらず敵に回すとトンでもないな桜華戦流ってやつは。



忍者ゴブリンの言う通りカラクリがわかったところで対応できなければ意味がない。そして桜奏呼吸は自分のペースにさえ持ち込んでしまえば簡単には破られない。呼吸が乱れることも、ましてや気配が大きくなることもない。



相手にするには最悪の流派だ。だけど、ネタがわかれば攻略法もある。実際に消えたのではなく気配を感じないだけで間違いなくその辺にいる。桜華戦流は最悪ではあるが無敵ではない。唯一の弱点がある。



「ギン!!お前の妖術でこのあたり一帯に突風を起こせるか!?」



「可能じゃ!」



「なら頼む!!」



「心得た!」



『そう来るか・・・だがそうはさせん』



風の動きでどこに何があるか判断できる。いくら気配が消せようが、体が消えるわけじゃない。体がある以上風が当たれば風の動きは変わる。桜奏呼吸唯一の弱点はそれだ。



そして風の動きが変わるということは感じていた動きに変化が生じる。その変わった動きの大本を辿ればそこに忍者ゴブリンがいる。



風がほとんど吹かないからこの場では奴のほうが有利だ。気配が全く動かないんだから。でも風が吹けば気配ではなく風の動きから場所は逆探知ができる。つまり気配が分からずとも場所はある程度特定できるんだ。それが分かっている忍者ゴブリンが取る行動は一択。風を発生させないこと。つまり風を生み出す存在から消しに来る。



「そこぉ!!」



『うぐっ!?』



それも確実に消すために直接攻撃しに来るはずだと読んだ。あとは少しでも気配を”視ること”さえできればこちらのものだ。



剣と小太刀がぶつかり火花を散らす。ギンの頭上から強襲したゴブリンは、ギンを抱き抱えるように場所を入れ替えた俺の剣とかち合う。



「吹っ飛べ!」



踏ん張れる俺と踏ん張る物に接していないゴブリン。勢いは小太刀もろとも忍者ゴブリンを吹き飛ばし、岩へとその身を叩きつけた。



「妖しの風よ、吹き荒べ『妖仙風』」



抱き抱えられたまま唱えられた風の妖術が、時を同じくして無風だった岩場を強風で包み込む。なかなかいい速度の風だ。



「師匠よ。これで良いかの?」



「最高だ。ところで怪我してないか?」



「大丈夫じゃ。師匠が守ってくれたからの」



「弟子守るのは師匠の役目だしな」



「うむうむ!」



ギンの体を放し、忍者ゴブリンを叩きつけた岩へと足を進める。もちろんそこに姿はなく、その代わりに丸太が一つ砕けていた。



「さてどうする!忍者ゴブリン!この風じゃ桜奏呼吸は意味ねーぞ!」



しつこい様だが、気配が消えようとも存在が消えたわけじゃない。実在する以上自然現象の影響を受けないで済むわけはない。逆にそれすら対応されたらこちらに打つ手はない。



気配を探すのではなく、今度は風の中動く物体を感じ取ればいい。砂が舞うが忍者の質量が変わることがない限りは間違わない。



じっと身を潜めていても風はその全てを教えてくれる。例えば、風で僅かに靡く布の音とかな!



「『初月雀』!!」



『くっ!!』



斬撃が風を切り裂きながら岩を断つ。斬撃がその奥にいる何かを切り裂く一瞬前に忍者ゴブリンは動き何とか回避した。けむり玉で姿を眩ませてつつ気配を再び消して隠れるが、もはやそれは通じない。



「『初月雀』3羽!」



『やはり無理かっ!』



一度動いてしまえばあとは気配ではなく風が生み出す振動の動きを”視れば”いい。剣から飛び立つ3羽の雀が岩を粉々に切り裂き、再び敵の姿を俺の前にあらわにする。忍者ゴブリンはそのまま姿を消すことなく、俺の正面となる位置に足を下ろした。



「降参するのか?もし投降するなら悪いようにはしないが?」



『否、もはやこの方法では己は貴様に勝てぬと判断したまで。ならば戦い方を変える』



お互いにダメージはない。だが状況的には俺のほうが有利だ。戦い方を変えるとは言うが、忍者のように忍んで戦う方法は既に俺には効かない。



「へぇ・・・まだ奥の手でもあるようだな。それで俺に勝てると?」



連続でクナイを飛ばしてこようが、忍者特有の速度で切り込んでこようが全部対応してみせる。そのままその首をもらう。



『我がもう一つの秘技、御見せしよう』



「っ!?お前それは・・・!!?」



ちょっと待てお前っ!?それまで使えるのかよ!?いや、侍ゴブリンが天雷雀を使ったことを考えれば不思議じゃない。だけどマジで言ってるのかよ・・・!!!



忍者ゴブリンがした行動はクラウチングスタートの構え。そして周囲を吹く風が後ろに下げた足を避けるように吹いていく。



確実にあれだろうっ!!?なんでも対応してみせるとは言ったがこれは正直予想外すぎるっ!!?そう思った一瞬、脚を避けていた風の動きが膨れ上がった。



「ちっ!!『白月』!!」



これでは多分防ぎきれない。だがこのタイミングではこれしか手がないっ!一瞬の動揺が生んだこの隙。忍者と名乗るこのゴブリンが逃すわけはないわなっ!!



『秘術接続:風瓶魔進』



再び衝突した俺の剣と小太刀。数メートルという距離は意味を成さず、俺たちは剣で打ち合っていた。状況的には先程ギンを守るために戦った時と同じだ。違いは忍者ゴブリンが踏ん張るための地面に接しているということ。


忍者ゴブリンの突撃による風が、妖術による風を吹き飛ばす。



かち上げるように下から振るわれた忍者ゴブリンの小太刀。それは受け止めた。かなりギリギリだったが。でもこれだけじゃなかったのだ。下から来る衝撃は止められただけで、前進する衝撃を止められたわけではなかった。



ありえないわけじゃない。侍ゴブリンは俺よりも精度の高い天雷雀を習得していた。ならこの忍者ゴブリンが進化した奥義を使っても何ら不思議じゃない。




「がはっ!!」



残った前進する衝撃と共に忍者ゴブリンの頭が俺の肺を圧迫し、そのまま後方へと俺を吹き飛ばした。



「師匠!!」



『貴様っ!!』



運良く吹き飛んだのはギンとギルファーのいる場所。ギンが駆け寄り、ギルファーが俺を守るように飛び出すのが見える。砂浜だったのが幸いして叩きつけられたダメージはそう大きくない。



さらに大半の衝撃は小太刀に込めていたのか、前進する衝撃も少しは受け止められたようで、吹き飛んだ割に体へのダメージ自体は少ない。思考がしっかりしているのが何よりの証拠だ。



だがHPとしてのダメージは相当大きく、スキル復活が発動し俺のHPは残り1だろう。あの技はそういう技だ。使ってる俺が誰よりもわかっている。



思考も回るし肋骨が折れた感覚はないが、打撲による痛みはデカイ。でもまだ戦える。死ぬほど痛いけどな畜生!!



「うぐぁぁぁ・・・・!!」



「師匠!!しっかりせい!!今回復を・・!!」



体に回復の為のポーションが掛けられ痛みが和らぐ。痛みが和らいだことで失った酸素を取り込むべく肺が大きく動き始める。



「ハァ・・・ハァ・・・!!!!悪い。助かった」



「いいのじゃ・・・無事で良かった・・・・・!!」



呼吸が落ち着き目線を変えると、そこではギルファーと忍者ゴブリンが高速戦闘を開始していた。若干だが、ギルファーの方が遅い。



だが忍者の攻撃は全てギルファーの毛皮を貫通することはなかった。



『なかなか速いではないかっ!!』



『貴公は硬いな。攻撃が通らぬ』



ギルファーの攻撃は当たらない。忍者ゴブリンの攻撃は効かない。



「ギルファー下がれ!俺がやる!」



『む?起き上がったか。次は無様を晒すなよ!』



尻尾で大きくなぎ払い、忍者ゴブリンを怯ませるとギルファーは元いたギンの後ろへと戻ってきた。入れ替わるように俺が再び前に出る。




「まさか『魔進タウロス』と『風瓶エリシオン』使うとは予想できなかったわ」



高速移動の『風瓶エリシオン』



防御貫通の突撃『魔進タウロス』



知らないはずがない。エリシオンはよく使う技だし、タウロスもでかい相手と戦う時には一番頼りになる奥義だ。一度見れば分かる。さらに言えば構えた時点で分かる。



『なるほど。この秘技も貴様は知っているのか』



「同じこと出来るからな」



そう言いながら奴がとった構えとは少し違う構え。『ドラグエリシオン』の構えを取る。



二方向の衝撃を同時に使えるのは完全に予想外だったけど、俺の新しい課題が見つかったから今後の参考にさせてもらう。



『これが決着となるだろうな』



「わかってるじゃないか」



互いに同じような技を使って衝突したとき、負けるのはその衝撃を多く食らった方。防御無視の攻撃だから喰らえばお陀仏。二度目はない。



「超越月光流十二宮奥義」



『秘術接続』



勝負は一瞬。判断が早いほうがか・・・・・っ!!?



「がはっ!!?」



『むっ!?これは・・・まさか毒っ!!?』




グァ・・・・イギィィィ・・・グァ・・・・ガァァァァァァッァァァァァッァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!



「師匠っ!?何をっ?!?!」



『貴様何を考えてr』




思考が・・・・おがざれ・・・・・アッガァ・・・・・








ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





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突然苦しみ出すアール。一体何が起きたのか。

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