67:また修行
タイトル通りです。
「超越流派抜刀術『天津雀』!!」
朝飯を済ませ、その日やることを全て終わらせてきた俺は現在、前に修行で使った岩場が思った以上に気にいったので、こうしてこの岩場に来ていた。
回復アイテムも前回以上に買い込み準備は万全。
さらに今回はシルトたちにレイレイが渡していたタグのエーテリア版を購入し即座に戻れるようにもした。お陰で所持金の半分が吹き飛んだけど必要経費なのでしょうがない。
今回やるのはギンが生み出した新しい『天匠流抜刀術『都燕』』の習得。そして天津雀を本当の意味で完成させることの二つ。
あの場では運良く成功したけど、感覚としてはまだ上を目指せそうだった。天雷の精度はまだ上げられそうだし、それに体も付いてこれそう。
さらに剣を振るう時の負荷も、両手を使用するという新しい天匠流抜刀術『都燕』のお陰で解決した。あとはそれを体に染み込ませてから、天津雀へと応用すること。
それを踏まえたうえでだが、現在の天津雀でも、まだ少し侍ゴブリンの後を追う形だと思う。
完成させた天津雀ならば間違いなく侍ゴブリンの首は取れる。これは確信を持って言える。だがもしも、奴も同じように修行をしてさらに速くなっていればその限りではない。
だからこうしてさらに上へと行くために修行に精を出しているわけだ。それに今回は奥義完成のための頼もしい見物者がいる。
「アタシ的にだけど、さっきの方が見えた雷がかっこよかった気がするかな」
「十六夜天雷の精度はさっきの方が強力だったってことか」
「かもね。同じような勢いで攻撃してるから衝撃は同じだと思うけど・・・」
レイレイである。元々ソロプレイヤーで盗賊系ジョブ。その中には高速で動くスキルや動きを的確に捉えるスキルが多くあるためこうして別の立場からの助言を貰う為に修行に付き合ってもらっている。
因みにギンはエーテリアで弟子どもをビシバシ指導中。マー坊は別のフレンドからの応援で現在別行動。リークはソロで行きたい所があるらしく同じく別行動。
なのでこの場にいるのは俺とレイレイ、そしてギルファーのみである。
「もう一回やってみるか。レイレイ頼む」
「オッケー!本気で行くからちゃんと受け止めてね?奥義『戦光麗擊』!!」
「『白月』」
ズガガガガッと地面を抉るような音が俺の体中から鳴り響く。
正確にはレイレイが以前貸そうとした“自称投げナイフ”2本、とレイレイ最強装備であるトンファー『戦神棍:恋花』が激しくぶつかり火花を散らしている。
とんでもない速度から繰り出される合計23発の打撃、一撃喰らえばお陀仏なのは間違いない。発動時間30秒が経過し、レイレイの姿が俺の正面に現れる。
「本当に凄すぎだよねアール。全部防ぐんだもん」
「”視える”から何とかなってるだけだ。あとこの短剣がすごく使いやすいのもある」
以前自称投げナイフだと言っていたこの武器。説明にはとんでもない事が書かれていたのである。
武器:短剣『投刀:抛』
攻撃力+154 特殊効果『妖刀』
所持者が装備し続ける限り、投げ捨てても、壊れても、真新しい状態で手元に現れ続ける奇妙な短剣。壊れたり、投げ捨てた物は手元に現れた物とは別の元となりそのままの状態で存在し続ける。
ただし所持者以外が、存在する刀を手に取れば、刀の毒が全身に回り命を落とす妖刀でもある。
怖すぎるし強すぎるだろこの小太刀モドキ。しかも妖刀とか書いてある。効果を見る限り、もしもあの時、ゴブリンアーチャー相手に投げナイフとして使っていたとする。
間違いなくあの時なら説明見てなさそうだから放置している可能性がある。そうなると放置されたそれを拾った初心者とか、何も知らない他のプレイヤーが触れようものなら即座にお陀仏だった可能性もある。
見知らぬところでPKとか後味悪すぎる。
だがそんな妖刀だがレイレイ曰く既に自分の所持品として自覚”させた”らしく、レイレイの命令には絶対服従らしい。『こいつ生きてるの?』と疑問を投げつけると『黙らせた』とのこと。怖すぎる。
『アタシ使わないからアールに使って欲しい』と修行の最中押し切られこうして受け取ったのだ。
そのお陰で壊れるのを気にせず攻撃を受け続けられるのだ。
実は、修行を始めた時は、以前ガンテツさんに打ち直してもらった新人の剣でやろうとしたのだが、限定奥義を二発止めた途端に粉砕してしまったのだ。その後の攻撃を篭手で受け止めたんだが。
何とかなるのはなったけど、剣が壊れたように、この勢いで篭手まで壊れるのは流石に嫌だったので、レイレイの言葉に甘えて自称投げナイフこと『投刀・抛』を受け取り修行のために使っている。
受け取った最初は体を蝕むような感覚があったのだが、それを拒むのではなく、受け入れると体に馴染んだ。流石に元々レイレイの持ち物なので代わりはしなかった。
ともかく、そういう訳で割とすんなり扱えたのだ。レイレイはそれを見て『やっぱりアールなら使えると思った』とのこと。使えなかったらどうするつもりだったのだろうか。
話がそれた。
無事に衝撃を蓄積できたので、抛を太ももにつけた鞘に戻し、腰に携えた双子星の剣へと手を伸ばす。
呼吸を整えてコンディションを調整し技のイメージを思い浮かべる。そしてその動きを思い描きそれを現実へと投影する。
「超越流派抜刀術『天津雀』」
剣を振るう時間は一秒にも満たない。されど剣が鞘と目標を往復する回数と切り裂き殴打する回数は時間には比例しない。
砂は巻き上がることすら忘れ、ただ深々と無数の斬撃痕を表す。
「それ!そっちの方が凄かった!!」
「この感覚か、確かにちょっとキツいけど動きはこっちの方がいいな」
「強いて言うなら腕の動きがもう少し小さくできればかっこいいと思う」
「格好良いは別にして確かにその方が速く動けるか・・・・物は試しか」
因みに。なぜレイレイが光速レベルの剣筋や俺の動きを見れているかというとスキルを動体視力に全フリした構成にしているらしい。
今更だけどスキルを発動できる数は限りがあるらしい。全部のせでよく言う『俺TUEE』ができない仕様らしい。
発動可能ASはレベルに関係なく20個まで。UtSは確認できていないけど俺が所持する12個のUtSは全部発動可能だから多分15~20個くらいだと思う。だから合計最大40個程度のスキルが選択できるわけだ。
レイレイは普段、攻撃と高速移動、あとアイテム回収や隠密行動にスキルを振っているらしいけど今回は動体視力に全フリしている。なので見えるらしい。
確かだけど今レイレイもエクストラモードでやってるとか言ってたはずなんだけど・・・・俺が言うのもなんだけどスキルありだったとしても光速見えるのすごくない?
「それ、光速でスキルなしで剣振れる励久が言えるセリフじゃないよね」
「こら。リアルネーム」
「あっ!?ごめんアール!!本当にごめんなさい!!」
「誰も居なさそうだからいいけど・・・・気をつけてくれよマジで」
たまに俺もリアルネームで呼びそうになるから仕方ないといえば仕方ないけど。
「ほんとにゴメン!!謝るから!!もうしないように気をつけるから嫌いにならないで!!お願い!!アタシが出来ることなら何でもするからお願い嫌いにならないで!!ヤなの!!アールにだけは嫌われたくないの!!お願い!!嫌いにならないで!!」
「よしよし落ち着けって。こんなことで嫌いにはならないから安心しろって」
「ううう・・・・ひぐっ・・・・・!!」
「泣くな泣くな。」
「ひぐぅ・・・・・・うん・・・」
これは修行どころじゃなさそうだ。
泣いちゃいました。
実はここに後につながる重要な(?)何かがあります。
えぇそうです。私あの作品大好きです。わかる方にはわかりますよね。多分。
怒られませんよね?




