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65:天匠流の修行

ついに修行開始。

しかし・・・・


昨日短編まがいの設定集更新してます。よかったらどうぞ

ちなみになんですが、この作品に後タグ二つつけられるんですけど、付けるとしたら皆さんなんだと思います?



「改めて見ると凄いのう・・・・」



台の上に立つ銀から漏れる驚きの声。埋め尽くさんばかりの人の量。そしてギンの姿が見えると全員がこちらを見据えてくる謎の圧迫感。ちょっと恐怖だ。



「こ・・・これを使って話せば聞こえるのじゃろうか・・・・『聞こえるかの』・・おぉ!!」



魔術マイクのような物に近づき声を出してみれば拡声器のように海岸に響くギンの声。



それを聞いた本人も驚き、集まった時代人もギンの声がよほど魅力的だったのだろう。少年少女のような瞳を向けていた。



「『師匠すごいのじゃ!!声がこんなんも大きく聞こえるぞ!!』」



「ギン。音拾ってるからそんな大きな声出さなくても大丈夫だって」



視線の質がガラリと変わった。嫉妬の視線が俺を貫くように集まってきた。美人だしケモ耳美女だから気持ちはわかるけどそこまで露骨にしなくても良くない?泣くよ?



「『うむ!では改めて・・・妾はギン。天匠流第14代目継承者の名を継ぐものじゃ。今日からお主らに我らが剣、天匠流を授ける為にこの場におる。皆の者その覚悟はあるのか?』」





オオオオオオオオオ!!!!!!





海岸に響き渡る声。男だけじゃなく女も結構いるみたいでそこまでむさ苦しいことはなかった。バカみたいに声デカくて驚いたけど。



「『うむ!返事は良いな!ならば早速始めるとするぞ。剣を持て』」



ギンの号令に合わせて集まった時代人がそれぞれの武器を構える。木刀や鍛冶屋で売ってた安い剣を持っている連中も見える。気合は十分だな。



問題はそうだな・・・・・・ここにいる奴らがこれからやるであろう修行に対して文句を言わないかどうかってところか。









「『まずはその場で素振り5000回じゃな。上から下に振り下ろすのじゃぞ?手は腰の下で止めるのじゃ。上半身はあまり動かさずまずは腕だけで振るうことを意識して行え。では始めよ』



意外と少ないな。1万はやると思ってたのに半分の5000回か。初めてだから少し易しめなのか。








ガヤガヤ・・・・







予想的中。案の定何言ってるのか理解できていない一同。半数程度は素直に聞いて始めている。剛リキ達とリークレイレイ。あと刀気の姿も見える。他にはそれなりに装備が整っている連中と初心者らしき時代人。あとはみんな何もせず困惑している。



「『ほれどうしたのじゃ?始めんか。時間は有限じゃぞ?』」



ほかの武術でもそうだが修行は基本的に地味だ。基礎が出来上がってない奴には技なんて教えないし使わせない。特に師弟関係であったり、教育者であれば尚更そうだ。



天匠流の場合の基礎修行はひたすら素振り。あと抜刀と納刀の練習。これに尽きる。鏡雀の修行はそのあとだ。



まずは己が使う武器を確実に己の物とする為の訓練から開始する。使う=物にするではない。己を知り、己が使う武器を知る。そして最も己と相性がいい武器を使いさらに修行を繰り返す。



それが終われば、なれない武器や使いにくい武器を使用して再び基礎修行。



そう。地味なのだ。敵と実際に戦う実戦修行はそれが全て済んでから。それにしたってかなり地味なのだ。



「『何をしておる。はよう始めんか』」



「あのぉ・・・・」



「『なんじゃ』」



最前列にいた時代人がおずおずと手を挙げる。見た所初心者装備だ。新規だろうか。



「もっとこう・・・修行!って感じのことやらないんですか?」



「『戯け!これがそうじゃ!!』」





ガヤガヤ





まぁそう思っても仕方ないよな。とは言えそう簡単に習得できるなら苦労はしない。一日二日で習得できるなら俺も苦労はしていない。



ちなみに『剣聖物語』の修行でも難易度関係なく全く同じだった。唯一違ったのは行う回数と過ごし方くらいだった。



半日は修行。半日はフィールドに出てモンスターとの戦いや街での依頼を受けてその解決の為に街中を奔走。



終われば寝る前に朝の半分の修行をして終わり。天匠流が他の流派に比べて少し人気がなかったのはこの辺りが大きい気がする。



けど毎日ちゃんとやれば日に日に結果として現れるので苦痛ではない。流石に三日以上はちゃんとやらないと出てこないけど。



多分、今ちゃんとやっているのはそれを一度経験したことがあるプレイヤーなのだろう。もしくはなんでもやってみるチャレンジャー。



「『やる気がないのなら去れ。妾はやる気のない者を見てやるほど優しくはないぞ』」



気がない者を引き止めるほど継承者は優しくない。下手くそでもやる気があるなら最後まで教示する。センスがあってもやる気がない者、邪魔な者は容赦なく叩き出す。



他の修行者に迷惑だからな。当たり前だろう。



「『これから先の修行で文句がある者がいるなら去れ。返答は聞かぬ。やる気がない者も去るが良い』」



「な・・・・・・なんだよ!!どうしてゲームでこんなことする必要があるんだよ!!」



先ほどのプレイヤーが声を上げるがギンは答えない。それに同調する様に他のプレイヤーからも声が上がり始めるがギンは何も返さない。



「巫山戯やがって!!」



「・・・・ふん」



逆上したプレイヤーが数人こちらに向かって歩いてくる。ギンはそれを横目で見ると鼻で笑い目線を離した。教える価値なし。そう判断したのだろう。



これがもし金を受け取っているなら話は別だが、ギンは好意でこの場に来ている。やる気がない者や、自分勝手な都合を押し付ける奴の面倒を見る必要はない。



迫る彼らに道を開けるように人の波が割れていく。真面目に修行を開始していた時代人はそれを見て止めようとするがそれをギンが静止する。



「『よい。阿呆共の相手をして修行を止める必要はない。お主らは続けよ』」



ギンは背負う刀に手をかける。殺しはしないだろうけど適当にあしらう訳にもいかないだろう。



台から降りたギンは迫る彼らに最後の通告を告げる。



「最後じゃ。やる気があるなら戻れ。ないならば去れ」



「継承者だかなんだか知らないけど舐めたこと言ってんじゃねーぞ!!」



武器を構え彼らが迫ってくる。それを呆れるように俺も、そしてギンも見ているに違いない。



「なら排除するかの。他の者に迷惑じゃ『都燕』」



忘れるな。ギンは確かにNPCだ。時代人のように死んでも生き返らないし、レベルが上がり強くもならない。だがギンは俺の跡を継ぐ天匠流14代目継承者なのだ。



いくらレベルの差があろうとも、強敵だろうとも。見えない速度の剣に対応できなければ敵にはなれない。



「ゴッ!?」



「イギッ!?」



「カハッ!?」



「その程度の実力で妾に歯向かおうとはの・・・小童が」



天匠流抜刀術『都燕』



音速で放たれる峰打ちをくらった彼らはくの字に曲がり、装備を破壊されながら吹き飛ばされていく。斬るのではなく割る。殴打する。故にどれだけ硬い鎧を身に纏おうともその衝撃を受けた人体が耐えられるとは限らないのだ。



たった一撃で沈むプレイヤー達を見た者たちは何が起きたのか理解できていない。理解できているのはそう・・・・



「おぉ・・・!!!すげぇ!!あれが新技『都燕』!!」



「かっこいいじゃない!!私頑張る!!」



「やべぇ・・全然見えなかった・・・・!!!かっこいい・・!!!」



ゲームであろうとも努力を惜しまない者、天匠流を愛する者。そして憧れる者。彼らは修行がどんなものであろうともそれを身に付けるために必死で修行に励むだろう。



吹き飛ばしたのはなかなかに装備が整っていたプレイヤー達。彼らの他にも迫ってきていた奴らはいたが、吹き飛ぶ光景を見て歩みを止める。



台に戻ってきたギンは高らかに告げる。



「『何度でも言う。やる気がない者は去れ。他の者に迷惑じゃ。そこの伸びた連中はそうじゃの・・・そこのお主。どこかへ捨ててこい。邪魔じゃ』」



「は・・・・はいぃ!!」



ギンが指名したのは最初に疑問をぶつけたプレイヤー。ギンの強さに驚き怯え、素直に言う事を聞く彼。

誰もいない場所まで運んだのを確認するとギンは再開せよとただ一言告げて彼らを見る。



この結果最初に集まった全体の約3割はこのまま修行を受けることなく去っていき、残り7割は修行に取り組んでいった。


若干名不真面目そうにやっていたのがいたが、彼らはギンの攻撃をモロに受けて頭を抱え、そのあとは真面目に修行をしていた。























「『これまでじゃ。今日のところはこれで終わりじゃ。次もこの調子でやるのじゃぞ。解散じゃ』」





―――ありがとうございました!!!





素振り5000回・抜刀5000回・納刀5000回。それが今日の修行の内容だ。エキスパートモードといえど流石に皆疲れたのかその場に沈むように腰を下ろした。



見ているだけでは暇だったので途中から俺も参戦していたのだが、『師匠がやるなら妾もやるかの』と言ってギンも一緒にやっていた。



それが効果的だったのだろう。ギンが描く美しい剣筋が彼らの意欲を高揚させた。疲れているにも拘わらず声をあげながら剣を振るう彼らはなかなかカッコよかった。



次回もこの調子で全員来るといいのだが果たしてどうなるだろうか。



「お・・・・お疲れアール・・・・」



「おう。おつかれさん」



ヨタヨタと近づいてきたリーク、レイレイはもうヘトヘトのようで大の字になって寝転がっている。額には汗がビッショリだ。



「よ・・・よく平気そうな顔してるね・・・・・・私もう疲れた・・・・・」



「俺はよくやってるからな。体が慣れてるんだよ」



「さすが師匠じゃ。通常の半分以下では息すら上がらんか」



「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「は・・・半分以下っ?!?!?!!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



ほらやっぱり驚いた。一部覚悟してた連中も絶望を超えて思わず苦笑い。これはしょうがない。



「皆が慣れてきたら少しずつ回数を増やすからの。覚悟しておれよ?」



声すら出ないのだ。今回だけでもこんなに大変だったのにこれ以上がある。それを素直に受け止めて次回以降も参加するのは何人いることやら。



「ちなみに師匠はいつもどれくらいやるのじゃ?」



「俺か?その時によるけど多分一万二万はやってるんじゃないか?」



今日一番の絶句があったのは俺の発言だったことを此処に記す。





どんなものであろうとも簡単に手に入るものはありません。


そしてプレイヤーが見とれていた剣筋はギンだけでなく、アールの剣筋にも目を奪われていました。

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