64:プチ修羅場
新章突入
「ねぇアール?どういうこと?」
「アタシも教えて欲しいな。どゆこと?」
早速修羅場ったよ。あの後ギンを家まで送り届けてからログアウト。寝て起きて次の日の今日。朝一番でログインした俺と、俺に合わせてログインしたリークとレイレイ。
ってかいつの間に俺のログイン時間見張ってたのこの二人?まぁそれはいつものこととしてだ。
街で昨日のことを話そうとした矢先に『師匠!来たのじゃな!』と笑顔浮かべてギン登場。
自分たちが知らないうちに知らない女が来て二人の感情爆発という感じだ。
ギンは二人の阿修羅のような覇気に驚き現在俺の後ろに隠れてる。割と正しい判断だ。離れたらこいつらに殺られかねん。とりあえず説明終わるまではこのままで頼む。
「話すからとりあえず落ち着け。浮気じゃないから。あとリークもレイレイも聞いて欲しいことあったんだろ?」
「・・・・・・わかった」
「わかったよ。けどちゃんと説明してね。納得できなかったら怒るから」
怒るだけじゃすまなそうだけどな。
とりあえず落ち着いてくれたので昨日の説明。
三人がログアウトしてから俺が一人で修行してたことからギンが従者となるまで。一連の話を二人にちゃんと伝えるまでに三時間ほど使った。
いつもどおり言葉の間に『なんで』『どうして』が入ってくるからちゃんと説明。こうしたやり取りがあって三時間。二人とも納得してくれてこれでギンの安全は確保できたのである。
「「ううう・・・・怒られた・・・」」
「だろうな」
二人が聞いて欲しかったこと。アカウントのリアル情報把握に関してだった。ログアウトしたあと、運営からガッツリ忠告の通知が届いたようだ。ついでに親からも。
運営からはなんでも今回は相手が相手だったため厳重注意という形で終わらせるが今後同じようなことが”一般プレイヤー”相手に行われた場合、それ相応の対処を取るとのこと。
親からは『下手くそ』と怒られたようだ。
まぁ逆を言えばそういうことだろう。やるならもっと”上手くやれ”と親・運営共々から言われたってことだろう。
そしてつまりあのリュウオウのようなことをしている奴は、まだいるからそう言う奴相手には時と場合と場所をしっかり考えてやれと暗に言っているのは間違いない。
それでいいのか運営と言いたいところだけど、今回の相手であるリュウオウに関わるかは解らないけど、前にニュースで気になるものがあった。
なんでも大物政治家の息子がある事件の首謀者でそれを親が隠蔽していたらしい。怖いこともあるもんだなー
「んで?今後はどうすんの?」
「やるときはバレないようにする。あとアールに許可貰う」
「同じく」
「よしOK」
とりあえずこれでリミッターは付けることができた。二人が返事してくれたことで今後アカウント停止になるようなことは起きないだろうし、起こさせない。犯罪ダメ・絶対。
「なんとまぁ師匠の奥方お二人は随分と過激なのじゃのう」
「「奥方っ!?!」」
「ぬおっ!?」
ギン。それはNGワードだよ。ギンのセリフに食いついたふたりがずずいっとギンに顔を近づける。
「本当にそう見える!?」
「う・・・うむ。仲睦まじい夫婦のように妾は見えたのじゃが・・・・違うのかの?」
「聞いたかメス猫!!私と!アールが夫婦に見えたんだってさ!!」
「ふざけんな女狐!!二人って言ってるでしょうが!!捏造すんじゃないわよ!!」
煽る煽る。リークの勝ち誇ったような表情と憤慨するレイレイ。嫁二人は流石に俺はしないぞ?そんなに養える気がしない。
「あ、女狐ってレイレイが言ってるのはリークの事だからギンの事じゃないぞ?」
「な・・・・なんというか元気な奥が・・・・・なのじゃな」
奥方は危険だと判断してくれたようでなによりだ。下手に調子に乗らせると暴走するから大変だ。
「とりあえずお前ら喧嘩するなよ。ギンとも仲良くしてくれ」
「うん。それにしても探してた天匠流の継承者がまさか狐っ娘だなんてね」
リークはピコピコと動く耳を凝視して顔を近づける。恥ずかしかったのか少し後ろに下がろうとしたが、その進路を塞ぐようにレイレイが立っていた。
「なんとぉ!?」
「すっごいよ!尻尾モフモフする!!可愛い!!」
「かわっ!?止めるのじゃ!恥ずかしいのじゃ!!」
「「可愛い」」
「し・・・師匠助けてくれんかの!!」
捕まりモフモフされ始めるギン。これ以上すると二人を切りかねんので早く止めよう。
首根っこを掴んでギンから二人を離して解放する。可愛いと連呼されて恥ずかしかったのか顔は真っ赤だ。
『ククク!面白いことになっているな狐』
「煩いのじゃ」
ギンの顔が元に戻るまで、このまま宿で過ごすのだった。
「おぉ・・・すごい人の数だなおい」
ギンが落ち着き、リークとレイレイも大分平常通りに戻ったのでギンに続くように街から続く海岸へと足を運んだ。
するともう人の量が凄かった。情報はすぐに広まり、あれから二日目となる今日。天匠流習得のために彼らは集まったのだろう。
新規も熟練も関係なく集まる人の数は俺が最初にニルスフィアで見た光景とよく似ていた。
「思っていたよりも集まっておるの・・・これは骨が折れそうじゃ」
本当に大変そうだ。これを一人一人見ていくとなればギン一人では無理だ。けどそうしてしまったのもギンだから責任を持って対応しないといけない。
大変そうだったら俺も少し手を貸してやろう。
「おう!待ってたぜギン師匠!」
人ごみを掻き分けてやってきたのは剛リキだった。その手には前に持っていた杖ではなく、剣が握られておりいつでも来いというようで準備万端だった。
「それにしても凄い量じゃの・・・・妾の声が届かんのうこれでは」
「そう思ってほら、あそこ見えるか?」
「む?」
指さした方向には海岸に立てたれた木製の演説台。そして魔術陣が描かれたマイクのような物。なるほど。あれなら声は届きそうだ。
「あそこで話せばいいのかの?」
「おうよ!頼んだぜギン師匠!」
「ちと恥ずかしいのう・・・・師匠、付いてきてくれんかの?」
「はいはい。リークとレイレイはここでやってくれ。流石にあそこに四人も五人も乗るわけにはいかんからよ」
見た感じ乗れて三人程度だが、そうなると二人は間違いなく喧嘩する。ここは悪いけどここで待っててもらうのが一番いい。
「わかった。私はここでやってるからまた後でね。ギンも頑張って」
「うんうん。アタシもここで頑張るよ。ギン!ファイトだよ!」
やけに素直に返事してくれたことに驚きを隠せない。多分・・・・いや間違いなく奥方と呼ばれたからギンに対しての評価と立ち位置は自分の障害にはならないと判断したんだろう。俺としては素直で大変嬉しい。
「おいおい新人。随分とまぁ美人に好かれてるじゃねーか」
横腹をつついてくる剛リキ。確かに美人だし綺麗だし、料理も美味い。けど三人とも武器持ったら怖いからね?
ギンは家に送るまでのカニ戦でめちゃくちゃ強かったし、血が嫌いだから出さないような攻撃するし。かなりエゲつない攻撃だった。
目潰しに関節曲げ、血が出ないと分かれば即座に『都燕』と『鏡雀』で一刀両断。ギルファーに迫る勢いで強かった。
「あはは・・・・・まぁ色々あったから」
「モテる男は辛いってか?いい事じゃねーか」
喧嘩になったら勝てる気がしないけどな。物理的にじゃなくて精神的な意味で。




