60:勝敗を決める彼女の天匠流と彼の天匠流
ついに決着。
皆さんに支えられて遂に累計PV200万突破です!!
本当にありがとうございます。これからも頑張ります!!
「刀気にギン!?どうしてここに!?」
和服姿の刀気とギン。この場に来ることはないと思っていた彼らは、戦場に来たとは思えない格好をした彼らは高々と告げる。
「それはもちろん戦うためです!!お師匠直伝の剣!見ててください!!行ってきますお師匠!!」
戦いに来た。そう宣言した刀気は自信満々で勢い良くカニへと駆けていく。対するギンはそれを見守りつつゆっくりと歩いてくる。
カニの視線はまだ彼らに向いていない。一撃入れるのは絶好のタイミングだ。
「行きます!!天匠流抜刀術『鏡雀』!!」
『ギギィ?』
速度としては速いが、剣の動きとしてはまだまだだ。ガギンと音を立てて弾かれた刀気の剣。そして触れられた事でその接近に気づいたカニがそれを振り払おうと大きく爪を振り上げた。
「テメェら守れ!!怪我させたら承知しねぇぞ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
それを阻止したのは剛リキ率いるクラン『剛戟』の盾持ちメンバー達。刀気の前で盾を展開し爪が刀気の体を引き裂くのを防ぐ。
その隙を逃さず残りのメンバーが再び攻撃を開始するとカニは再び彼らへと視線を移す。
守られた刀気はというと疑問があるようで首をかしげて自分の剣を見ていた。
「あれー?」
「『あれー?』じゃないこの馬鹿野郎が!!お前死ぬ気か!!」
「おぉわっ!?ビックリした!!あ、助けてくれてありがとうございます」
拳骨を落としそうな勢いで迫った剛リキが即座に回復魔術を発動させる。
「んなこたァどうでもいい!!お前さっき『天匠流』って言ったよな!?」
「あ、はい!!天匠流を絶賛修行中の刀気といいます!!それでこちらがぁいたっ!!?」
自己紹介と師匠であるギンを紹介しようとした刀気の頭に落ちたのはギンが持つ太刀の鞘。なかなかいい音がしたからかなり痛そうだ。
「馬鹿弟子がっ!!勢いよく行くものだから自信ありだと思えば全然ダメではないか!!」
怒るよなそりゃぁ。下手すれば今の一撃で死んでたまであるし。俺も直ぐに動けるように構えたくらいだし。
激怒するギンは拳骨を交えて修行不足の刀気を叱る。けどなぜか刀気は嬉しそうだ。こいつそういう趣味?
「何を笑っておる馬鹿弟子!!」
「いたたた・・・だってお師匠のそんな顔久しぶりに見ましたから」
満面の笑みで嬉しそうにする刀気。その笑顔に毒気を抜かれたギンが呆れるように肩を落とす。そして鬼のような形相を作ると馬鹿弟子こと刀気に雷が落ちる。
「こんの・・・馬鹿弟子めが・・!!終わったら修行を最初からやり直しじゃぞ!!」
「はい!!」
「コヤツは本当に・・・・そちらの。スマンの、話の腰を折ってしもうた」
「いやそれは構わねぇ。聞きたいことは色々あるがお前らもあの化けカニと戦いに来た戦力として考えていいのか?」
剛リキは強めの口調で彼らの問う。彼らがNPCであることは彼も理解しているだろうしさっき刀気にいった言葉から彼は死ぬ可能性もある。それでも戦えるのかと告げているのだ。
「決まっておる。その為にここに来たのじゃ。馬鹿弟子は見学じゃ。この戦いを見ておれ」
「はいお師匠!!」
「俺の近くで見てろやバカ野郎。そうすりゃ特等席で戦い見せてやるよ」
「ならお言葉に甘えます!!いいですよねお師匠!!」
見ていろと言われて素直に返事をする刀気。そして彼らがこの戦いのキーパーソンになり得ると即座に判断した剛リキは刀気を守るために盾持ちの数人を彼の近くへと配置した。
「かまわぬ。お主よ。後で聞きたいことを答えてやる代わりにそこの馬鹿弟子を頼むぞ」
刀気に返事を返し、剛リキの言葉からなにか聞きたいのだと悟った彼女は、そのまま彼に刀気を任せ、ゆっくりとカニへと向けて歩みを進めていく。
「ギン殿。あなたは」
「ギンでよい。さきほどはそう呼んだであろう」
びっくりしてそう言えば呼び捨てにしていた。けどギンがそれでいいならいいか。
「ならギン。どうするつもりだ?」
「決まっておろう?奴を斬る。それだけじゃ」
言うのは簡単だろう。だがどうやって斬る?俺はまだそのかけらを掴んだだけで答えには行き着いていない。
いくらイベント戦でもそう簡単にダメージを与えることができるとは思えない。それも天匠流抜刀術でだとすればなおさらだ。だが、彼女の目には決意がある。俺はそう感じる。強い決意が。
「・・・・・なら見せてくれ。今に続く天匠流抜刀術の真価を」
「無論じゃ」
ギンが持つのは背中に背負う太刀。刀身はギンと同じくらいの長さがありおおよそ150から160くらいだろう。
刀に手をかけてギンはゆっくりとカニに向かって歩いて行く。カニもそれに気づき、先程まで相手にしていた彼らを回転による攻撃で吹き飛ばした。
爪で吹き飛ばしたというよりはその風圧で吹き飛ばしたというべきだろう。彼らは風圧に耐え切れず尻餅を搗く形で陣形に穴を空けてしまった。
カニはその穴を縫うように己の道を作りギンへと一気に距離を詰める。その凶悪な両爪を振り上げながら接近と同時に切り裂くつもりなのだろう。
万が一に備えて俺はすぐに駆けつけることができるように『エリシオン』発動のために衝撃を足元へと集めておく。
「久しいの化け蟹よ。あの時は逃がしたが今日は仕留めるぞ?」
『ギギィ!』
ついに爪の射程範囲にギンの体が入った。両爪が上から大きく彼女へと振り下ろされる。
「天匠流抜刀術『都燕』」
それは聞いたことがない技の名だった。
そして見たことのない構え方だった。
通常抜刀術、一般的なところで言う居合い切りの構えは腰に差した刀や剣を鞘から利き手で刃を抜いて放つのが普通。
その後鞘に戻す戻さないは流派や状況によるが、基本的に天匠流抜刀術と言えば鞘に戻すのが通常である。
対して今ギンが行ったのはその全てに当てはまらない。
背中に携えた刀を両手で持ち、一気に抜刀してそのまま両手で叩き切り地面ごと切り裂き刀は自分の左斜め下腰位置で停止している。
そして最大の特徴。ギンの刀の持ち方と最終的な刃の向きからこれは”峰打ち”なのだ。
刃を敵に向けず峰で打つことで敵を無力化する。それが峰打ち。場合によっては刃で斬られるよりもひどい状態になり、いっそ刃で斬って貰った方が楽に死ねることもある。
それが峰打ちだ。なので殺傷力が無いわけではないが刃に比べてばそこまで大きくない。だが・・・
『ギィィィィィ!!!!』
カニ・・・・『ブレイドキャンサー』がこれを受けたとき、確かに見えた。峰打ちで片方の爪を文字通り叩き切ったのだ。断面が若干荒れているものの確かに切った。
そして斬られた『ブレイドキャンサー』は大きく体を後ろへと下げてその痛みで苦しんでいる。
「す・・・すげぇ・・・」
それは誰の言葉だったかわからない。だが確かなのは今の一撃でイベントは達成され残るは爪をへし折られたカニの討伐のみであること。
「今だお前ら!!一気に畳んじまえ!!」
「「「「「「「「「「おっしゃァァ!!!!」」」」」」」」」」
最大の武器を失ったカニに成すすべはない。放っておけばあとは彼らが仕留めるだろう。イベントを超えた今、無効化され続けたダメージは再び通るようになり、彼らほどの実力者であれば倒すことは容易だろう。
でもそんなことは今はいい。彼女が放った一閃。その動きと構え、それを見た瞬間。今の俺に足りなかった最後のピースが提示されたのだ。
「そうか・・・これだったんだな・・・・・・・・ギン!!」
「っ!!?・・・・な・・・・なんじゃ五代目よ?」
声に驚き何かを恐るように顔をこわばらせたギン。別に怒ったつもりは無い。むしろ感謝しかない。
「ありがとう。アンタの剣が俺に答えをくれた」
「っ!!?わ・・・妾の剣が・・・五代目の答えじゃと・・・!?」
驚くことじゃない。天匠流に完成はない。常に進化と歩みを進める剣。それが天匠流。俺の師匠であるジジイがいつも言っていた言葉だ。
だからこそ俺は超越流派抜刀術なんて馬鹿げた発想の奥義をひたすらに研究し、磨き上げてここにいる。
そしてそんな奥義の答えをくれるのは、何も師匠や技だけではない。
弟子の些細な言葉や町の住民方の感想。そして敵との戦いで見つけた新しい可能性。その全てが次の段階への道を教えてくれる。
ギンが見せてくれた新しい天匠流の形。それは俺が見つけられなかった『天津雀』完成のための最後のピースだと思った。
「そうだ。これが俺の求めていた答えだ。それを見せてくれたアナタに、新たな天匠流を見つけてくれたことに対して感謝する。ありがとう」
「わ・・妾の剣が・・・・天匠流であると・・・・認めてくれた・・・・!!」
「だから俺も魅せよう。答えをくれたアナタに感謝と敬意を込めて。俺の天匠流を」
『ギィ・・・・ギィィイイイ・・・・・・・!!』
ゆっくりと前へと進みカニとの距離を詰める。戦闘中のカニは次から次へと傷を負っていくが、まだまだ戦えるとばかりに残った爪を振るい時代人をなぎ払っていく。
そして俺と目があった。俺が敵であるとわかっているからこそ、カニは視線があった瞬間に今度こそ俺を切り裂かんとその爪を振るう。
失敗とか成功とかどうなるかなんて今はどうでもいい。
「超越流派抜刀術『天津雀』ッ!!」
彼女の天匠流を魅せてもらった。彼女に答えをもらった。ならば俺も、俺の剣を魅せなければ剣聖は名乗れない。
俺に足りなかった最後のピース。天津雀最大の欠点。
天雷状態最大出力での抜刀では俺の腕が抜刀の速度に耐え切れずどうしてもセーブしてしまったこと。
セーブしないと吹き飛んでしまい、その後の戦いに大きな支障が及ぶこと。
その対策は簡単だったのだ。”片手で耐えられないならば両手で行えば”よかった。抜刀術という事に凝り固まり片手でなければいけないと思い込んでいた。
そんなことない。両手だろうと片手だろうと、天匠流抜刀術が追い求めるのは究極を超える抜刀術。
己が写描く形、その速度を超えることが求めるもの。そこに決められた答えなど存在しないのだ。
そう考えれば俺もまだまだ甘かったようだ。俺の長年に渡る修行と技の研究の中、凝り固まった考えは、その後に続く者から、それではいけないと教えてもらった。
最後のピースがぴたりと収まり、天雷最大出力状態で繰り出される天雷雀を超えた必殺の抜刀術『天津雀』。未完成のままだったこの技がようやく完成した瞬間であった。
速度はついに音速から光速の領域へと踏み出し、刃は無数に飛び回り敵を切り裂く。
両手持ちと片手持ち。一瞬の持ち替えにより、腕に集中していた負担が緩和されて腕を傷つけることなく剣を振るえる。
そしてそれは腕だけでなく、彼女に見せてもらった新しい天匠流を見た俺の体が雄叫びをあげながら限界を超越した瞬間でもあった。
同時に攻撃の方法。刃だけではなく峰すら攻撃の起点として使えること。
ギンが見せてくれた『都燕』はただの力任せではなく、剣の進入角度と切り裂く速度、そして相手の動きすべてを捉えた上で放たれた一撃であった。それを『天津雀』にも取り入れる。
刃と峰での攻撃を繰り返し納刀、再び抜刀での攻撃。
多少納刀の速度は落ちるがそれでも体にかかる負担も、相手に与えるダメージも、そして剣を振るう速度までも、先程までの『天津雀』とは全く異なる次元で放つことができる。
天界に住む雀が、ブレイドキャンサーの体を切り裂いていく。
右爪を切り裂き、腕を叩き折る。左腕を切断し甲羅を殴打する。その足をへし折り、切断してその自由を奪う。
「う・・・うそだろ・・・・・っ!?」
「お・・・・・・お・・おおおおおおおお師匠っ!??!?!?!?!?!!?」
「これが・・・最強と呼ばれた五代目の実力・・・・っ!!」
刃と峰、そして音速を超えたことで風も刃と変わり敵を切り裂く。わずか一秒、されど一秒。5秒10秒必要だと思っていた天雷の最大出力と攻撃時間が、こんな形で短縮できるなんて思ってもみなかった。
戦闘時間一時間越えである。ブレイドキャンサーとの死闘に決着を付け、その命を刈り取ったのである。
―――――特殊変異レイドモンスター『ブレイドキャンサー』撃破
―――――強制サブシナリオ『刀蟹』完了
―――――素材。刀蟹の爪×2・刀蟹の甲羅×1・刀蟹の爪刃×2入手
―――――レベルアップ!『アール』レベル26になりました。
―――――SP15入手
―――――UtS:天匠流Lv3からLv4にアップ
「俺の勝ちだ」
光となって消えていくブレイドキャンサーの表情すら、何が起きたかわからないと訴えているような気がした。
完成した『天津雀』がブレイドキャンサーの体を切り裂く。
ブレイドキャンサー:特殊サブバトルイベント発生条件
①:残りHP60%以下までに体の一点への攻撃回数20回以上。達成しない場合はそのまま討伐可能。しかし②以下のイベントがは発生しない。
②:残りHP40%以下で剣での打撃攻撃成功。
③:②達成しない限りダメージ無効。その後④発動までダメージ無効
④:14代目継承者とその弟子が戦場へ登場。その後弟子はすぐに戦闘開始。その後重傷を負う。弟子の重傷を回避すると⑤発生。回避できなかった場合は継承者が退場し討伐可能。
⑤:14代目継承者の奥義で片方の爪が破壊。同時にHP15%まで減少。討伐可能。




