58:ブレイドキャンサー戦、その行方
今週最初の更新です。
『ギギギギィ』
「おっとっ!?」
連続して振るわれる両腕の爪。
もはや爪ではなく鎌のようにも感じるそれを大きく振り回し、周囲にいた他のモンスターもろとも切り裂いていく。
かなりの切れ味を誇っているようだが変わる前とは大きく違うとところも見える。
爪の動かし方が先程とは違うのだ。関節を覆う刃の影響なのか、先ほどのように腕を曲げて小細工してくるようなことがなくなった。
はたまた小細工不要と思うほどに己に自信があるのかどちらかだ。もし前者なら動きは単調で読みやすいのだが、代わりに腕そのものが刃になったので下手に近づけない。後者だとすると下手な接近は命取りとなる。
隙を見て剣を振るうがコイツはうまい具合に鍔迫り合いに持ち込まれてしまい、なかなか攻撃がヒットしない。
「そこっ!『鏡雀』!」
『ギギィ』
だが流石に『鏡雀』の速度には追いつけないようで、放てば確実にダメージは取れる。天匠流だけだと少しだけ時間はかかるが倒せないことはなさそうだ。
―――――『星読み』『魔闘士の誓い』『魔闘士の祈り』効果時間終了
「『星読み』開始『祈り』と『誓い』をこの胸に」
丁度効果時間が切れたので再び発動。MPに関しては『祈り』発動中に25回攻撃できればスキル三つ分回収できる。それを後押しするように装備ボーナスによる二重攻撃がそれを加速する。
さらに『魔闘士』のスキル発動中だと、俺の攻撃すべてが『スキルによる攻撃』扱いにしてくれるので実質13回攻撃すれば十分に回収できる。
やっぱり相性がいいぞこの装備。
星読みの効果で空から降りてきたのは紫と金色の光。残念ながら大きく戦闘面での強化は得られなかったが、まぁいいさ。それよりもだ。
「オイコラギルファー!!雑魚来てんじゃねーか!!」
『それくらい自分で対処しろ』
コイツ遊んでやがるな畜生め。寄ってくるウツボガニを切り裂き魔闘士の効果が発動。こちらはスキル発動しているのを感覚として感じることはなかった。
でも感じないだけで問題なく発動しているようで与えられるダメージは確実に増えている。多分だけど。
「シィッ!!」
取り囲むように接近するカニどもを切り裂けばその隙を突いてブレイドキャンサーが二振りの鎌を横薙ぎに交差させるように振るってくる。後ろに下がる余裕もなく『エリシオン』での回避は間に合わない。
なら鎌と鎌の間を縫うように体の軸を回して回避。
そのまま自分を切ってくれないかと儚い願いを込めて離れていく爪を蹴り飛ばしてみるが、そんな上手いことは起こらない。
逆にコイツは交差し自分の前でクロスした爪を今度はそのまま鎌を戻すように攻撃してくる。今度は今のような回避が出来ないように面を押し付けるような形に変えた素晴らしい仕様でだ。
考えたじゃないかカニ野郎。
だが、さっきの蹴り飛ばしたお陰で距離は稼げた。その為後方に下がれば余裕で回避できあいたァ!?
「このクソヒトデこの野郎!!」
下がった場所からちょうどヒトデが湧いて出てきたせいで足にヒトデの頭(?)がヒット。しかも地味に深く踵に刺さった。
ムカついたのでヒトデを持ち上げて手裏剣のようにブレイドキャンサーへと投げつけてやる。
「名づけてヒトデ手裏剣ってか!!」
『そのままだな』
『ギギィ』
哀れ。ヒトデよ。回転して進むヒトデはカニの爪で引き裂かれその命を散らしてしまった。しかし実は今の踵の傷はかなり痛い。
痛覚的な意味じゃなくて戦闘状態的な意味でだ。痛覚としても結構痛いけどさ。ちょうど今回復アイテム切らしてるから踵の傷回復できねぇんだよ。
となると最終手段もとい、他流派での足を用いた攻撃、特にこいつに有効打となりそうな『星波ピスケス』系統の奥義はなかなか厳しいか。出来ないこともないが使うなら確実に勝てるタイミングでないとそのまま反撃を食らってこっちが負けかねない。
『ところで貴様、我のスキルがあればどこを叩いてもダメージを与えられるはずだが?』
ギルファー討伐の際に手に入れた常時防御貫通の激強スキル『UtS:鋼』。起動しておけば多分もっと早くこいつを倒せるだろう。
それ以前に多分変異する前に片付いていただろう。そんな俺TUEEスキルで無双してゲームをするつもりは今はないので常時OFF。
それにあれに頼ってたらそれこそ侍ゴブリンには勝てない。
「アホか、あんなもん使ってたら腕が鈍るだろうが!OFFに決まってるだろぉぶねぇ!?」
今度はみじん切りにでもする気なのか連続の叩きつけ攻撃。剣で捌いて右へ避けつつ鎌のような爪に一閃。綺麗に決まったがやはり硬い殻にはじかれてしまう。
だけど音を聞いて気づいた。こいつの爪は確かに硬いがさっきよりは刃が通っている音がする。先程までは甲高い金属音だったけど、今はそれに比べると少し鈍い音がする。一点集中攻撃の成果が出始めてるか。
「ギルファー!!押し切るぞ!!雑魚これ以上近づけたらしばらく飯抜きだ!!」
『そう言って実際に抜けた試しがあったか?』
口に出すことが重要なんだよこのアホ犬!!
「お師匠!!この感覚!!」
「わかっておる。出おったの」
小島にて修行する弟子とそれを見守る師匠。彼らの体を揺らす風が因縁のある相手が出現したことを知らせる。
「行きましょうお師匠!!このチャンスを逃すわけにはいきません!!」
「・・・・・・・」
「あいつにダメージを与えられたのはお師匠だけじゃないですか!!」
今度こそ因縁の相手を倒さんと意気込む弟子を片目に、師匠と呼ばれた銀の尻尾を持つ女性の表情は硬い。
「・・・・・弟子よ。妾は確かに継承者でありあの化け蟹めに傷を負わせた。じゃが妾は・・・」
「私にはお師匠に酷いこと言ったお師匠のお師匠がどんな人なのか知りません!!でも私にとってはお師匠が天匠流のお師匠なんです!!」
彼女の心の闇。それは彼女の剣を否定されたこと。彼女が見つけた新しい可能性を否定されたことに対する恐れだった。
それを一度聞いたことのある弟子はそんなことはないと声を上げてその否定を否定する。例え誰がなんと言おうとも彼の師匠は彼女だけなのだ。
「・・・・じゃがお主も会ったじゃろ?最強と呼ばれた五代目継承者。あの者が妾の剣を見た時・・・・もし否定されてしまえば妾は・・・・」
それ以上に彼女は自身の前に現れた歴代最強と呼ばれた五代目継承者に己の剣を見せるのが恐ろしかった。
自身の弟子や彼女の元にいた師範代よりも更に高みにいる存在。かつてその剣で世界を救った剣聖。そんな彼に己の剣を否定されることが恐ろしかった。
故に彼女は彼の願いを断ったのだ。一度否定された剣。それを生み出した自身にはもう表舞台に立つ資格などない。
いいや、立ちたくないというべきだろう。彼女の心の闇は深かった。例え継承者と呼ばれようとも、師匠と呼ばれ慕われようとも、そう簡単に闇が晴れる事はない。
「そんなこと言ったら私があの人を斬ります!!」
だが、その闇を晴らすことができるのは何も己だけではない。
「なっ!?何を言っておる馬鹿者!!お主に勝てる相手ではないぞ!?」
彼の実力では技の一つも使うことなく、剣聖は彼を切り裂けるだろう。可能性があるとすればそれは師匠である彼女の剣のみ。
「それでもです!!お師匠を馬鹿にされて黙っている弟子はいません!!それに私はお師匠の剣はすごく綺麗でかっこいい剣なんだって胸を張って言ってやります!!」
「っ!!」
だがそれでも、彼は己の師匠を馬鹿にされることだけは許さない。なんの取り柄もなかった彼に、自分の道すら見失っていた彼を拾い上げてくれたのは彼女なのだ。
「・・・・・・ふっ、妾もチョロくなってしもうたの。こんな言葉で絆されるとは」
「!!!!お師匠!!」
こんな簡単な言葉だ。単純すぎる言葉だ。
それが時に深く根付く闇を晴らす時もある。今がまさにその時だった。
「支度せい馬鹿弟子。あの化け蟹めを討伐に往くぞ」
「はいお師匠!!!」
「第14代目天匠流後継者ギン。この剣で妾の敵を粉砕する」
小さな島で剣を振るう弟子とその師匠。過去に傷を持つ彼女が振るう剣が長き歴史の影からついに表舞台へと舞い戻る。
後に彼女の一番弟子である彼はこう語った。
『あの人がそんなこと言う人には思えませんでしたから私は胸を張って言えたんです。だってあの人の剣は師匠と似てる気がしたから』
「クラマス!!」
「わーってるよ!!おらお前ら支度しろ!!サブイベ来てんぞ!!」
「「「「アイアイサ!!」」」」
エーテリアにホームを構えるひとつのクランがマスターである大男の掛け声で動き出す。彼らの目的は新しく発生した新イベント攻略と、イベントにて実装が発表された新スキル『UtS:天匠流』。
二日前に映像で見たあの戦い。そしてスキルを使用することなく使用された『天匠流』の技。彼らはそれを今度は自分たちの力に変えるべく発表と同時に動いていた。
「剣聖だが何だか知らんが、俺らの力だって負けちゃいねぇ。こういう時こそ俺らのクランの力って奴を見せてやらねぇとな」
「もしかして喧嘩売るんですか?」
戦闘準備をしていた一人の構成員が男の独り言を聞いていた。
「んなわけねーだろ。そんなつまらん事して楽しめるゲームじゃねーよ。やるなら競う方が楽しいに決まってらぁ」
「なら勝負っすか!!」
勝負。彼らはこのゲームで数多くの『勝負』して楽しんでいるクラン。結果はその時によるが彼らはその過程を楽しむために集まったクランなのだ。勝負事となれば燃え上がらなわけがない。
「当然だ!!あの剣聖とか言う奴よりも先にゴブリンぶっ殺してやるのが俺らの目的だ!!わかったらさっさと支度しろ!!」
荒々しく動き回る彼らとの邂逅はそう遠くはない。
戦闘開始からどれだけ経過しただろうか。ひたすら同じところを切りつけているのだが一向に爪は切れない。それは疎か何かダメージを受けている様子が途中から感じないんだけど気のせい?
「天匠流抜刀術『鏡雀』5羽!!」
カニの攻撃の隙を見つけては五回連続の居合い切りを叩き込む行動は彼此六回目になった。怯んだりはしているけどやっぱり爪は壊れないしダメージもぉわっ!?
『ギギギィィ』
「んな攻撃までしてくんのかよっ!!」
斜め上からの斬り払いからの爪をそのまま真横に向けてその場で一回転。今の回転攻撃を初見で爪二本でやられてたら流石にダメージは免れなかった。
これ絶対二本でやってくるパターンもあるだろ。気を付けよぉぉぉおおお!?!??!?!
「てめぇはドラグーンかドランザーにでも憧れてんのかっ!?」
右一回転の爪攻撃が終わった途端にその反動を感じさせることなく左一回転。しかもこちらに接近しながら両爪を大きく横に開くようにしてグルグル回るカニ。お前は逆回転機構積んだGTかコラっ!!
ちなみに俺はドランザー派。あ?知らない?調べてみろすごくカッコイイから。
「別に”視えてる”から対処は出来るけどなぁ!!」
いくら回転しようが所詮はその程度だ。分身するわけでもないし問題ない。ただ驚いただけだし。嘘じゃねーし!
とは言え修行のために天匠流一本でやってる訳だから受け止めは無理。立体機動も足痛めてるから無理。回転終わるまで回避が一番賢いけど。
「そんなことしてたら笑われるわなぁ!!行くぞカニ助!!」
やる事は一つ!突撃あるのみ!!接近する爪を視てタイミングを計る。いい速度で回転しながら突っ込んでくる爪の動き、そして本体の体の使い方から目を離さず、その時に合わせて剣に手を添える。
3・・・・2・・・・・1・・・・・ここだっ!!
『ギギィイ!?』
やったことは単純明快、爪を避けるでもへし折るでもない。爪に飛び乗ること。確かに爪は鋸のように鋭いが爪の腹にあたる部分までがそうではない。ならそこに飛び乗れる!
着地は成功。このまま一気に距離を詰める。残念なことに俺を迎え撃たんと反対側の爪を伸ばすがその爪が俺に届く前に俺は攻撃を終える。
「鏡すずめぇっととっ!?」
だがコイツも考えたようだ。回転を急停止させて大きく体をのけぞらせた。なるほど。慣性を使って俺を吹き飛ばそうとした訳か。
「悪いな!!この程度で吹き飛ばされるほどヤワな鍛え方はしてねーんだよっ!!」
慣性の法則だろうがなんだろうが体が感じるのは”衝撃”だ。踏ん張るのは確かにキツイがせっかくのチャンスを不意にするんならこの程度の痛み屁でもない。
衝撃が貯められたこのチャンス、修行の成果を試すには最高のシュチューションだ!
「修行の成果テメェで試す!!超越流派抜刀術『天津雀』!!」
『ギギィ!!』
さっきの『鏡雀』5羽が五回の抜刀なら、今の天津雀で出来る俺の限界は一度の抜刀で4回斬る、それを4回の計16回攻撃。
今までは天雷の出力のコントロールが難しく全く使うことができなかった。先ほどなんとかコツをつかみなんとか実戦使用できるくらいには仕上がった。完成はまだ先だけど。
速度や動きに関してはまだ難有りで、失敗すると腕が吹き飛ぶがあとは数をこなして改善し慣れていくしかない。
狙うのは変わらず爪の一角。鋸のような爪の切断を狙い連撃を叩き込む!
『ギギィ』
「チィィ!!」
腕が引きちぎれそうな痛みがあるが今回は無事に成功・・・・いいや失敗か。回復できないこととまだ完成していないことから来る不安。それで天雷の状態をヒヨった。
それでも結構な速度は出せるがこんなものじゃ足りない。
そしてだ。確かに技としては失敗はしたものの、攻撃自体は成功している。なのにこれだけ切りつけても、カニの傷が一向に深くならない。しかもダメージも全くなさそうにピンピンしてやがる。
これ以上爪の上にいると反撃を貰いそうなので天雷維持のまま止めから飛び降り距離を取る。その後即座に天雷状態解除。
しかしこれだけやってもダメージ皆無とか・・・・これもしかしてイベント戦か?
因みにですが、今まで出たスキルとか技(ゲーム内のみ)とか興味ある方いますかね?
もしいましたら感想でもなんでもいいので教えてください。




