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55:エンカウント



あれからどれくらい経過しただろうか?空は暗いままなので夜なのは間違いないが、少しだけ明るくなっている気がする。



修行を開始したのがこちらの時間で夜7時頃。空は今うっすら明るいので四時くらいだろうか?思っていた以上に剣を振るっていたようだ。



そのお陰なのか多少乱雑に放っても腕がねじ切れたり吹っ飛んだりする事は少なくなった。怪我自体が無くなった訳ではないのでまだまだだが。



ギルファーが仕入れてきてくれた回復アイテムも今使っているもので最後だし俺の持分も既に0。一度町に戻って買い足してきたほうが良さそうだ。



「ギルファー起きろ。町に戻るぞ」



『ムゥ・・・・丁度腹も減ってきたところだ。よかろう。』



ギルファーを起こし洞窟の外に出る。人工的な明かりが一切無い海岸。うっすらと明るいもののまだ暗い夜。それを星の光が明るく照らし出し、何とも風情のある光景が出迎えてくれた。



キラキラ流れる流れ星に星が作り出す天の川。さすがは流星海岸と呼ばれるだけはある。これならデートスポットなりキャンプ地としては最高の場所だ。



今の時代、現実でこんなに綺麗な夜空を見るには相当色々探してさまざまな条件を満たさないと無理だろうな。



「こんな夜空を見るのがお前みたいな獣じゃなくて美人美女だったら最高だったんだけどなぁ」



『諦めよ。我は人化の能力は持ち合わせておらん』



「それは止めてくれ。それでもしお前が美女なんかになったらリークに殺されかねん」



『ククク、貴様が殺されるのか?』



女の怒りは恐ろしいんだよ。そんな馬鹿話をしながら町に向かって海岸を歩いていく。



途中ヤドカリやヒトデ、さっきリークが見て泣きベソかいてたウツボガニ何かもいたが、皆静かに寝静まっているようだ。



数匹起きていたがこちらに向かってくる様子はなく、静かにこちらを見ていただけだった。



モンスターも休む時は休む。こうしていると彼らもこの世界で生きているのだとよくわかる。



「見ろよギルファー。あのカニ珍しく帽子なんてかぶってるぞ?」



『ほぉ?面白いやつだな。人が作ったものを身に付けるモンスターなど珍しい』



「だよな・・・・・・・って!?おっま!?」



『む?ほほう?』



そんなのんびりしていたところに飛び込んできた光景はそれらを一気に吹き飛ばしてしまうものだった。ウツボガニが人らしき何かに襲いかかっている。



「ちぃ!!ギルファー行くぞっ!!」



『さて、美味いのだろうか?』











「いやはや・・・おかげで助かりました」



カニを蹴散らしなんとか助けられた男性は服がボロボロにされながらも五体満足であった。



「申し遅れました。私名前を刀気(とうき)と言います。こちらではあまり馴染みのない名前でしょうけどよろしくお願いします。あ、時代人ではありませんよ?よく間違えられるんですけどね?」



「刀気殿か、俺はアール。無事で良かったよ。コイツはギルファーって言って俺の・・・・・相棒兼ペット?」



『ペットは余計だ言い直せ』



「分かりました。アール殿にギルファー殿ですね。覚えました」



刀気と名乗った男性はボロボロの服から着物のような装備に着替えていた。名前からしておそらく東方からの旅人と言ったところだろうか?



そして腰に携えている刀はなかなかの業物のようでここの奴ら相手に遅れを取るとは思えないんだけど何かあったのだろうか?



『人間。何があった?』



「いやぁお恥ずかしながら私少々ハラが減ってしまいまして・・・・夕餉の用意を始めようとしたら後ろからこう・・・ガツンとやられちゃいまして」



つまり油断してボコボコにされてたってことね。それに関しては俺があまり人のことを言えないのでノーコメント。



「そうだ!もしお二人もよろしければ一緒にどうですか?美味しい肉があるのです!」



「『肉とな?/か?』」



「はい!美味しいのでぜひお礼に食べていってください!」



そういう事なら遠慮なく頂こう。丁度腹も減ってきたところだったし丁度いい。ギルファーも問題ないようで尻尾を動かして今か今かと待っている。



「えぇっと・・・ありました!これですこれ!この肉が美味しいんですよぉ!」



「『おぉ・・・!!!』」



なんともまぁ美味そうな霜降り肉じゃないか。テレビでしか見たことないような霜降り肉を前にこれだけで涎が止まらん。やっぱり善行はこういう素晴らしい出来事に遭遇できるから最高だ。



刀気はその肉をぶつ切りにして串に刺し、焚き火でゆっくり焼いていく。火に炙られて地面に落ちる油は透明で美しく、また食欲をそそる香ばしい匂いを届けてくれる



そしてなによりも肉が焼ける音が堪らん。早く食べたい。



『人間まだか?我はもう待てんぞ?』



「ちょっと待ってくださいね・・・・はい!この瞬間です!!どうぞ召し上がれ!!」



「お・・・おおぉ・・・!!!!では、いただきます」



受け取った肉は溢れんばかりの肉汁が滴る。いざがぶりと一口。表面はきっちりと火が通っているが中はレアで肉本来の味が口の中いっぱいに広がっていく。



噛めば噛むほど旨みが増していきここに白米があればいくらでも食べられそうだ。



「その頬がゆるんだ表情を見れば分かります。美味しいでしょ?」



「美味いどころじゃない最高だよ。あぁ・・・米が欲しい」



『おかわりだ。まだあるだろう?』



「もちろんです。ささ、どうぞ。それじゃ私もいただきます。」



本当に美味い。これを一週間だろうが二週間だろうが食べろと言われたら余裕で食べることができるくらいには美味い。味覚を完全再現してくれたことに感謝しかないよ。エクスゼウスありがとう。



「そう言えば刀気殿。この肉は一体?」



「はい!森で見かけた野生の牛から頂いたものです。生きている彼らには申し訳ありませんでしたがこれも生きるため。全てありがたく頂戴して感謝しなかれば」



牛?このゲーム牛もいるのか。今度見かけたら一匹討伐してみようか。解体系のASは持ってないから普通の作業で上手く出来るのかは解らないけどぜひ試してみよう。



「もぐもぐ・・・そう言えばお二方はどうしてここへ?」



「修行でな。ちょっと倒したい相手がいて技の鍛錬をしてたんだ。コイツは付き添い」



「倒したい相手ですか。それはどのような?」



「抜刀術を使うゴブリンだ。これが相当強くてな。今のままだと勝てないんだよ」



天雷の維持については今回の修行とウェルネスシール戦での戦いの中でなんとかなる。ただ問題は腕が速度と体の強化に追いつけないことだ。



修業中にはっきりとわかったが、『天雷雀』では侍ゴブリンには追いつけないだろう。



『天雷雀』は今回の修行でかなり目指していた場所まで持っていくことができた。だからこそこれでは勝てないと悟ったのだ。



速度で勝つには更に上の速度、『天津雀』を完成させるしかない。だが『天津雀』はまだまだ完成が見えない。どうしても右腕が限界を迎えてしまい速度が出ないのだ。



「ふむふむ・・・抜刀術・・・お二方!もし宜しければ私が会いにいく方のもとへ一緒に行きませんか?必ずお役に立てるはずです!」



刀気がここにいる理由。なんでも師匠に会いにいくらしい。その師匠に会いにいく途中でカニに襲われていたということだ。



「いいのか?」



渡りに船とはこのことだ。どんな剣の師匠かは分からないが何かきっかけをもらえるかも知れない。



「はい!あの方も人が多い方が重い腰を上げてくれるかもしれませんし!」



「それなら是非ご一緒させてもらうよ。何か勝つための手がかりを得られるかもしれないし」



こうして俺は刀気とともに、彼の師匠に会いにいくことにした。道中の敵は俺が全て修行も兼ねて『天雷雀』で叩き切っていこう。




―――アールのパーティーにNPC『刀気』が参加しました。

―――サブシナリオ『護衛:刀気』開始します。





・・・・・あれ?そう言えばこの状況何か聞き覚えがあるような・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、占いだ。




修行で占いのことを忘れていたアールです。

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