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52:剣聖としての考え

ようやくひと段落したので更新&感想返し再開です。

ちょっと修正してたら投稿遅れました。



振り下ろされた前ヒレの軌道は俺たち三人の首を刎ねるのは間違いなかった。しかもヒレを防げても突撃している巨体をモロに受ければ間違いなく冗談では済まないダメージは確実。



「『滅真剣ゾディア』」



ならどうするか、前に向かって突撃してくる力の向きを地面へと向けて止めればいい。ヒレが首を刎ねるより先に剣を振るい、触れたヒレを通して衝撃をウェルネスシールへと流し込む。



滅真剣ゾディア

衝撃が向かう方向を真下へと向けさせる技。大上段から大きく振り下ろし、相手を切り裂きながら体を地面に叩きつける月光滅流の基本技の一つ。



これが使えないとリアルハードモードの魔剣聖ルート月光流にて最初のボスで詰む。



結構な速度で突撃してくるよくゲームで出てくる典型的な猪型のモンスターがボスなんだが、これがまた硬い&速いで剣での攻撃がクソほどにも通らないのだ。



対抗策がこの技『滅真剣ゾディア』にて地面に固定し弱点である両前足の付け根を斬ること。



白月にて受け止めることは出来るのだが、それを見越してなのかどうなのか、止まった瞬間に頭を大きく振ってこちらを吹き飛ばしてくるのだ。慣れてくると別にどうとでもなるのだが、慣れてないとまず無理。



そもそも死角からの不意打ち(戦闘毎に現れるタイミングと場所が違う)で現れて、猛スピードで突撃してくるモンスター。割と理不尽。



あそこだけで何回死んだか分からないくらいには繰り返したんだよな。お陰で生き物の気配に敏感になれたからその点だけは感謝してる。



そんな訳でこの状況はその光景に似ているのだ。死角からの不意打ちと突撃。というかそのまんまなのだ。



『キュルィ!?』



喰らう側からすると急に重力が何倍にもなって地面に押し付けられるような感覚。ウェルネスシールもそれは例外ではなく、勢いがあった分なかなかに愛嬌のある潰れ方で地面に沈み込んだ。



「舌噛むなよ?『風瓶エリシオン』」



ポカーンと口を開いている二人を抱き抱えマー坊達がいる場所まで駆け抜け合流する。マー坊たちは見慣れた様子だが、シルト達からしたら何が起きたか理解できないようだった。当然といえば当然なんだけど。



「アールごめん!!」



タゲ取りをしていたレイレイが合流すると同時に頭を下げてくる。さっきまでは全くこちらを向いていなかったので順調だったのだろうけど何があったのだろうか。



まぁ今回は別にそこまで気にしていない。”視えていた”のもあるけど。



「気にすんな。”視えてた”から取り敢えず大丈夫だ」



「しっかしお前・・・あそこから対応するとかどんな神経してんの?」



伊達にフィールドの気配に気を配って戦ってねーよ。今回はシルト達の安全も確保しながらの戦いだし割と気が抜けない戦いだ。



ソロ、もしくはマー坊たちとのパーティーなら割と自由にやるけど今回はそうもいかないのだ。



「それはまた今度。そろそろ起きるぞ」



『ギュルイィィィィィ!!!!』



そんな話をする暇もなく、重力のような衝撃から解放されたウェルネスシールがこちらを向いた。

怒ってる怒ってる。尾をバタつかせヒレはむちゃくちゃに振り回している。地面に縫い付けられたから激怒してるって所か?



いやちょっと待って、なんか完全に俺のこと見てるよね?視線ばっちり俺のほう向いてるよね?



試しに左右へ動いてみるとばっちり目が追いかけてきた。これ完全に俺にヘイト向いてる奴だよな。



「なんか・・・・アール狙いそうな感じなんだけど・・・」



レイレイ。俺もそう思う。大きく開かれたヒレを構えウェルネスシールは再び突撃の構えを取った。



「マー坊止めれるか!?」



「バカ抜かせ!突撃前なら行けるがあの速度で突っ込まれたら普通に無理!」



「全員散開!!」



マー坊たちは言う前に動いているがシルトたちは若干動くのが遅れた。同時に突っ込んでくるウェルネスシール。エリシオンで逃げるのは容易だが、そうすると動き遅れたシルトたちがヒレの餌食になってしまう。仕方ない。俺が受け持つか。



「マー坊。こっから全部使うぞ?」



「あいよ!!」



星読み人のスキルについてはここまでの戦闘であらかた理解した。あとは実戦にて色々と勉強していこう。



「月光真流奥義『十六夜天雷』」



天雷雀の完成度、そして天津雀完成のためには、この技の精度をさらに上げる必要がある。だから衝撃の開放はいつもの1.5倍、維持時間は目標3分。体にギスギスと刺が刺さるような感覚があるがこのくらいならまだ行ける。



「『滅真剣ゾディア』」



天雷にて強化された身体能力から放つゾディア。ウェルネスシールはそれを右ヒレで器用に受け止め左ヒレで俺を切り裂かんとしてくる。



けどそのヒレが俺を突き刺す前に、剣から流し込んだ衝撃が、ウェルネスシールが起こした突撃による衝撃の向きを再び地面へと変えられて先程と同じように、その巨体を地面へと沈み込ませた。



「攻撃チャンス到来だぞお前ら!!」



「流石だぜアール!!」



散ったマー坊たちが再び迫り攻撃を開始する。分厚い皮に覆われているがダメージは確かに通っているようで時たまに痛そうな悲鳴を上げている。



徐々に衝撃から解放されてきたのか体がゆっくりと持ち上がっていくウェルネスシール。それを只見ているつもりはない。



「『風瓶エリシオン』接続『滅真剣ゾディア』」



『キュィ!?』



後方へと跳び、再び前方へと跳んでその勢いをそのまま叩き込む。先ほどの突撃ほど大きな衝撃はないが、天雷状態でのエリシオンだから地面に沈めるには十分な衝撃だ。



代わりに足への負担が大きく、一歩間違えば片足が吹き飛ぶ可能性もあったが、今回は無事に成功したようだ。今の感覚は忘れないようにあとで練習だな。



再び地面へと縫い付けられたウェルネスシールは攻撃を回避することも防御することもできずひたすらに斬られ焼かれ、剥ぎ取られていく。



攻撃しながら剥ぎ取るとかレイレイかなり器用なことしてるなお前。しかも傷口になんか毒々しい何かを塗りこんでるし抜かりがない。



『ギュ・・・リィ・・!!?』



「しゃぁみたか!!アタシ特製の超即効性麻痺毒!!そのまま痺れてなさい!!」



塗りこんでいたのは麻痺毒のようで、突如ウェルネスシールの巨体が震えたと思えば痙攣を始めた。



「全員一旦下がって!!女狐殺っちゃいなさい!!」



「言われなくても!!我は血を求める。我は火を求める。我に歯向かうモノの悲鳴を求める!!赤き血潮で汝の身を焦がせ!!『ブラッディフレア』!!」



レイレイの呼びかけに応え一旦ウェルネスシールから距離を取る。その直後にリークの詠唱込みの魔術がウェルネスシールを襲う。リークを中心として展開された魔法陣からいくつもの火柱が上がる。



火柱は通常の炎よりも赤く、まるで人の血液のような色をした炎が轟々と燃え上がる。火柱はそのまま移動を開始して敵を取り囲みながら、やがてひとつの巨大な火柱へと姿を変えていった。熱が体力を奪い、炎がウェルネスシールの身を焼いていく。



『ギュルィィィィィ!!!!』



「見たか!!これがアタシと女狐の連携攻撃よ!!」



「毒塗っただけじゃない。別に詠唱破棄ですぐ撃てるからいらないわよ」



「詠唱あったほうが強いでしょ!!」



「・・・・・・まぁね」



この二人やっぱり色々啀み合うけど、歯車が噛み合うと仲いいんだよな。いつもながら思うけど。

轟々と燃え上がる火柱。多分これでかなりHPは持って行けただろうな。逆にこれで無傷だと恐ろしすぎる。



『GGGGGGGGGGGGGGGGGG』



突然火柱の中から聞こえた雄叫び。先程までとは全く違う恐ろしい叫びがフィールドを揺らした。

雄叫びを上げた本人、ウェルネスシールは火柱を切り裂くように体を動かし己を焼く業火から抜け出した。



体は火傷が酷く、特徴的だったストライプは無残に焼け爛れている。この攻撃が奴の感情を激しく動かしたんだろう。



眼は瞳孔が開き、表情からは可愛らしい面影が消え去った。獰猛な捕食者としてのウェルネスシールがその姿を現したのだ。



そんなウェルネスシールを見た俺たち側だが、少し変化があった。俺含めマー坊達四人は特に変化なし。雄叫びは確かに恐ろしかったがこんなことでビビっている訳にはいかない。



変化したのはシルトたちだ。ウェルネスシールの怒りの表情と声に震えており、腰が引けている。膝は震えており、今こうして立って武器を構えているが、何かキッカケがあれば逃げ出してしまいたいと思っている。



そう言わんばかりの恐怖が顔に浮かび上がっている。これ以上の戦いはまだ彼らには難しいかな。



だが頭に血が上ったウェルネスシールにはそんな事情は通用しない。今にも突っ込んできそうな雰囲気だ。



「レイレイ。少しアイツ黙らせること出来るか?」



「任せて・・・・『影編み』」



レイレイがその場で足踏みをすると影がウェルネスシールへと伸びていく。伸びた影はそのままウェルネスシールを捉えた。叫びをあげながら動こうとするが全く動かない。



「よし成功!MP続く限り行けるからいくらでも止めてられるから任せてね」



『ギュルィィイイイ!!?』



「メス猫アンタこういう時の成功率良いわよね」



「助かる。なるべくすぐに済ませるよ。さて、シルト、ランジ、ハリア、リリカ。お前らこっから先はリークと一緒に後方支援頼む」



これで安心して話ができる。話は戻すが、戦闘において、武器を振るうだけが戦いじゃない。周囲警戒やアイテムでのアシストも立派な戦闘だ。シルトたちにはその方向で戦ってもらおう。



「で・・でもアールさん!!僕たちまだ・・・!!」



それではダメだと意地を張るように、シルト達は武器を構える。その体は震えており、表情も硬い。恐怖が全身を覆ってしまっている状態だ。



「無理するな。勇敢と無謀は履き違えちゃダメなんだぞ?」



「で・・・・でも」



今の彼らは勇敢ではなく無謀。この状態で戦えば死にに行くことと同義だ。プレイヤーとしてそうしたいのなら止めはしないが、そうではないはずだ。



「大丈夫だ。今は無理でも次は出来る。だから今お前たちが知った恐怖を忘れるな」



「恐怖を・・忘れない・・・・?」



「そうだ。恐怖は忘れてはいけない。でも支配されてもいけない。大切なのは恐怖を自分の力に変えることだ」



剣聖物語をやっていると、勝てない敵や怖すぎるイベントに遭遇することがあった。リアルハードのアフターストーリーは、リアルハードモードでしか遊べなかったので、他のルートで出来た他難易度にて情報を得るということが出来なかった。



最初から自分が経験して手に入れた情報なしで全部手探りのままリアルハードモードを攻略していくのだ。



その中にはもちろん見るのも恐ろしい敵が登場した。恐怖が体中を駆け巡り動きを封じてくる。現実で言うところの金縛りに近い感覚だ。



だが、そうなってしまえば待っているのは死。そしてそこまでクリアしたすべての努力が水の泡と化すリアルハードモードの理不尽さという名の恐怖。何度心を折られそうになったかわからない。



「ど・・・・・どういうことですか?」



「『あの時の恐怖と比べたらこのくらい』みたいな感じだな。その体験を自分の意志の力に変えるんだ。今お前らが体感した恐怖を忘れるな。今は無理でもいい。でも必ず超えてみせるという意志を持ち続けろ。いつかそれがお前たちの力に変わり、恐怖を乗り越えられるはずだ」



「でも!もしこれ以上に怖いこととかあったらどうするんですかっ?!」



「その時はまた同じさ。同じように繰り返せばいい。恐怖を知って、それを忘れずに乗り越える意志を持ち続けて力に変える」



「でも!!それ以上に怖いものが出たら!!」



考えすぎだ。でも悪くない。そう思ってしまうのは仕方ないし可能性はゼロじゃない。むしろ多いだろう。けど、それだけの経験を積んだ時、自分には変化がないと思うのか?そんなことはない。


「その頃にはきっとお前は強くなってるよ。勇敢と無謀の意味を理解して、勇敢な行動がとれる一人の人間にな」



「でも・・・でも・・・・!!」



「一人じゃ無理だって言いたそうな顔してるな?」



「・・・っ」



自分ができるようにならなくちゃ、一人で頑張らないとダメなんだと言いたげな顔をしている。シルトだけじゃない。彼ら4人全員がそんな顔をしているのだ。



「ならみんなで乗り越えろ。一人が無理なら二人で、二人が無理なら三人でも四人でもいい。ひとりじゃないと駄目な理由なんて無いんだよ。大切なのは乗り越えることができたかどうかだ。方法は一つじゃない。人の数だけそこにたどり着くための道があるんだよ」



自分だけで解決できることなんて思った以上に少ないのだ。全部皆で解決していこうとしてはいけないが、逆に1人じゃないとダメな理由もないのだ。



「・・・・・・・僕も・・・・アールさんみたいになれますか?」



「なれるさ。俺だって怖い思いもしたし死んじまうくらい泣いたこともある。その度に乗り越えて今の俺があるんだ。諦めなければいつかなれるよ」



強敵の強さと恐怖を駆り立てる恐ろしい攻撃や言動。なによりもリアルハードモードでの敗北=データ消失の恐怖。



最初こそ嫌な思いをするけど、続けていくうちに負けないための戦い方と、死なないための技能を身に付けるための努力に変わっている。やり直しが利かないからこそ今を全力で生きる。



どんなに無様でも最後に笑えるならどんな困難にだって人は立ち向かえるんだ。



「・・・・僕!なります!アールさんみたいな人に!絶対!!でも今は無理です!だから助けてください!!」



「よく言った。あとは任せろ」



「お願いします!!みんなもいい?」



「リーダーが决めたんなら俺はいいぜ!今は無理でもいつか勝つ!かっこいいな!!」



「そっか・・・一人で抱え込む義務なんて無かったんだ・・・・うん。大丈夫。ありがとう」



「うん・・・・・怖いこと・・・・乗り越えるようになりたいから・・・・」



ちゃんと伝えられて良かった。あくまで俺の人生論(剣聖物語)での話だからあんまりうまく伝えられる自信はなかったんだけど、彼らには伝えることができたようだ。



「なんか如何にも剣聖って感じだねアール。ちょっとあの子達に嫉妬しちゃうなぁ」



そう言ってくれるリークもどこか嬉しそうだ。ちょっと照れくさい。



「さて!アールが剣聖決めた訳だけど、陣形どうする?俺は前衛希望」



先程まではレイレイがタゲ取り、遊撃マー坊、後衛俺&リークだった。第二回戦にこれから突入するわけだけどどうする?そんなもん決まってるだろ?



「俺が前に出る。啖呵切って後ろに下がっちゃカッコ悪いからな」



「りょーかい。ならタゲ取り任せる。まぁ尤も、取らなくてもお前に向いてるけどよ」



「アタシが遊撃に入るね。回復は任せて」



「私はそのままだけど、次からは攻撃に全振りするからタイミング合わせて避けて」



俺とマー坊が前衛、レイレイが遊撃、リークとシルト達が後衛として陣形を再編成。



ウェルネスシール。覚悟しろよ?ここからの戦いはさっきまでとは違うぞ?





久しぶりの剣聖ロール(無自覚)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここ数話ウェイネスシールとウェルネスシールが入り混じってる [一言] 久しぶりに読み直していますけどやはり面白いですね。
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