50:『閑話』とあるプレイヤーの物語
予約投稿の間にぶち込みたかったので変な時間に投稿します。
いつも通り明日の朝にも一話投稿します。
六月二日 一部改稿しました。
これは励久がまだプラネットクロニクルの世界に来ていない頃の話。
ある一人のプレイヤーのお話。
「おぉ・・・」
目を開けば目の前に広がっているゲームの世界。何年か前に名作『剣聖物語』っていうゲームを発売した会社から発売された最新VRMMORPG『プラネットクロニクル』。
『ゲームはついにここまで来た』
ありきたりな宣伝だったけど、それに恥じないレベルの世界観とゲーム内で生きているNPC。架空の存在であるドワーフやエルフ、竜人と言った亜人種が生きているこの世界。
アバターとして作った俺のこの世界での体は、現実と全く違和感がなく、小説やアニメで流行っている異世界転生をしたような感じがすごい。他のゲームとはまた違う感覚に心が躍る。
「おやおや?もしかして新しい時代人かな?」
声をかけてきたのは小さな子供。よくRPGで出てくる町に住む少女というのが一番しっくりくる。
「そうだよ。何か用?」
「うん!お兄さんのジョブは何?剣士?」
「まだジョブはないんだ」
「え?そうなの?ならギルドに行こうよ!ギルドならジョブを習得できるんだよ!!」
「本当か?教えてくれてありがとう。行ってみるよ」
「それなら案内してあげる!!」
少女が俺の手を取りギルドに案内してくれた。少女は人ごみの中を縫うように歩いていき、俺は引っ張られながらそのあとに続く。
歩くこと数分。少女に連れられて到着したギルドには俺以外のプレイヤーが結構いた。大体皆同じような装備でいるし、それ以外にも少しやれば手に入りそうな装備で身を固めたプレイヤーもチラホラいる。
「あそこのカウンターでジョブをもらえるの!お兄さんならきっとかっこいいジョブになれるよ!!」
「ありがとう。またね」
「あっ・・うん、またね」
名残惜しそうに手を離す少女。俺はロリコンじゃないから君は守備範囲外だよ。そんな残念そうな目をされても困る。
少女から目を離し、教えてもらったカウンターへと進んでいく。あんまり人はいないからすぐに僕の番が来た。
「こんにちは。初めての方ですか?」
受付の女性はなかなか綺麗だ。金髪で耳が長い。ありきたりだけどエルフはこんなにも綺麗に見えるんだな。
「ここでジョブをもらえるって聞いたから来たんだけど」
「ジョブ習得ですね。こちらの水晶玉に手を当てて目を瞑ってください。そうすればジョブが貴方の元へ来てくれますよ」
「はい」
そういう設定なのか。はたまた本当にランダムなのか。ランダムだと狙いのジョブを当てるまでリセマラしないといけないのか。アカウント最初から作り直しって出来るのか?
言われた通り水晶に手を当てると意識だけが何処かに吹き飛んだ感覚がした。ただ目を瞑っただけのはずなのに、どこまでも続く水が足元に続く風景が見える場所に居た。そしていくつかの光の球体がふわふわと浮かんでいる。
黙っていても特に変化はない。試しに球体の一つに近づいてみた。すると球体から薄らと文字が浮かび上がった。
『剣士』
確かにそう書いてある。その他にも使えるスキルらしき文字とその説明。この球体がジョブなんだ。多分この球体に触れたらそれに対応したジョブが手に入るんだと思う。
ほかのゲームとはちょっと変わっているけど面白い仕様だ。ほかの球体も全部近づいて確認してみた。
『剣士』―――剣に関するスキルが多い
『槍使い』―――槍に関するスキルが多い
『盗賊』―――特殊スキル(盗賊)が多い
『魔法使い』―――魔法に関するスキルが多い
『呪文使い』―――呪文に関するスキルが多い
『神官』―――他者に癒しを与えるスキルが多い
『商人』―――商売に関するスキルが多い
『薬師』―――薬に関するスキルが多い
『弓兵』―――弓に関するスキルが多い
『拳士』―――格闘に関するスキルが多い
『狩人』―――狩りに関するスキルが多い
とりあえずこの辺にあった球体を全部見てみてざっくり纏めるとこんな感じ。最初になれるジョブは結構多い。
武器に関しても得意武器はあるけど、別に武器に縛りはないみたいなので斧で剣士というのも出来るみたい。
ジョブは専用スキルを使うための物だということみたいだ。何にしよう。
無難なのは剣士だけど、狩人もスキル構成的には楽しそう。魔法使いは特にほかのゲームと変わらないけど、呪文使いは新鮮。スキルも面白いしこれは有力候補。
他にも神官で物理特化にして遊ぶのも楽しそうだし、戦闘職ではなさそうな『薬師』『商人』で遊んでみるのも楽しそうだ。
けどもう少し探索してみよう。無駄に広い空間だからちょっと探してみたら別の何かがあるかもしれない。ゲームで探索は醍醐味だ。
しばらく歩いてみるとやっぱりあった。それも七つ。名前的にはとても強そうだ。触れても選ばなければ運べることがわかったので七つともさっきの球体が密集していた場所まで運んだ。
『双剣士』―――双剣に関するスキルが多い
『魔法剣士』―――魔法剣に関するスキルが多い
『盾戦士』―――盾に関するスキルが多い
『侍』―――刀に関するスキルが多い
『忍』―――特殊スキル(忍)が多い
『学士』―――特殊スキル(分析など)が多い
『奇術師』―――特殊スキル(奇術)が多い
あとで見つけたこの7つのジョブは他のジョブとは違ってかなり個性的だ。特に奇術師。モンスターに変身するとか面白い。
学士は相手のステータスを下げて、下げた分自分に加えるという専用スキルがすごく面白そう。攻撃スキル少なかったけど。
そろそろ選ぼう。いい加減ほかの人に迷惑かけるかも知れないから。最初に見つけたジョブは全部除外。これは後でもなんとか出来そうだし。
双剣士とか侍とかは絶対に強そうだけどインパクトに欠けるから無し。そうなると残りは『忍』『学士』『奇術師』だけど・・・・・・どうしよう。迷う。
こんな時は適当に三つ配置してから、目を閉じて指を前に向けてそのままくるくるその場で回転して・・・・・・これだ。
『学士』
まぁなんとかなるか。攻撃スキル少ないのは頑張って攻撃すればなんとかなるし。
『学士』の球体に手をかけると選択肢が表示される。
「ジョブ『学士』習得」
口に出せば球体は強く光り輝き俺の体の中にゆっくりと入り込んでくる。ふわふわした感じが少しするとアナウンスが聞こえた。
――――ジョブ『学士』を習得
――――ジョブ『学士』がメインジョブへ設定されました。
無事にゲット。これでジョブも手に入ったから準備はできた。
けど何時まで経っても元いた場所に戻らない。変に思ったので数少ないシステムウィンドウを開いてみるけど特に変わりはないし、ヘルプを探してみてもそれらしきものはない。
もしかしてバグ?GMコールしてみよう。
――――GMコール受諾。自動返答にて回答します。
――――サブジョブを選択してください。その後元いた場所に戻ります。
そっか、サブジョブも貰えるんだ。なら今度は攻撃系のジョブを貰おう。魔法剣士が一番相性が良さそう。
そう思ってそっちの方へ顔を向けると、集めたはずの他六つの球体は無くなっていて、無限に続いていた空間もいつの間にか生えた木々に囲まれており、小学校の体育館程度までしかない空間に変わっていた。
あの七つのジョブをどれか取れば他のジョブはまた別の機会ってことか。残っているのは最初からあったジョブのみ。
なら相性良さそうな『呪文使い』にしよう。スキル構成的には近距離戦闘も出来そうだしなんとかなる・・・・・と思う。
「・・・はっ!?」
「無事にジョブを取得されたみたいですね」
サブジョブを取った瞬間、また意識がどこかに飛ばされる感覚の後、最初のカウンターの前で俺は手を翳したままだった。
「ごめんなさい。時間かかりましたよね」
「いいえ?この水晶特殊なアイテムで、あなたが感じていた時間は現実の時間とは違う時間軸を進んでいるんです。だからまだあなたが手を翳して4秒くらいしか経ってませんよ?」
すごい。ゲーム内は現実世界とは違い時間加速があるけど、まさかゲーム内で別の時間軸に飛ばされるとは思わなかった。『ゲームはここまで来た』っていう売り文句は伊達じゃなかったんだ。
「こちらをどうぞ。ギルドカードです。ギルドカードについてですが・・・」
このあと、ギルドカードの説明と依頼に関すること、他に戦闘のイロハを教えてもらった。早速フィールドに出て何かと戦おう。
結論だけ言う。無理ゲーだった。
まずフィールドに出てからだけどひたすらに大変だった。ジョブを探しているときは全く疲れなかったのに、フィールドを歩いているとすごく疲れた。
ゲームでまでどうしてこんなに疲れないといけないのか訳がわからない。
次に武器。剣を持っているけど剣が重い。一二回振ったらもう限界だった。こんなもの持てるかっ!って感じ。
スキルに関しても本当に無理だった。なんか詠唱があるんだけどそれを覚えないと全く発動しない。暗記とか嫌いなのにどうしてゲームでまでそんなことをさせるのか訳がわからない。
そしてなによりだ。戦闘がクソオブクソ。
こっちは必死に武器振ったり、呪文唱えてるのに相手、今回はよくいるゴブリンだったけど本当にクソ。
棍棒を軽々と振って殴ってくる。攻撃は簡単によけられてしまうから全く当たらない。
しかもとんでもなく痛い。本当に死んでしまうかと思うくらい痛くて辛かった。
怖くて逃げようとしても体が動かなくてそのままなぶり殺しにされた。
ゲームだってわかっていたけどこんなにも怖いなんて聞いてない。こんなにも疲れるなんて聞いてない。
最初からエキスパートとかノーマルとか選べば良かった。
『俺なら出来る』とか調子乗ってエクストラモード選んだけどマジで無理。
こんなバカモード作るとかバカじゃないの。馬鹿だから作ったのか。納得。
即座にログアウトからの再ログイン。
モード選択はエクストラからエキスパートに変更。
『モード変更をしてもよろしいですか?』
当たり前だ。こんなクソモードやっていられるか。俺はゲームがしたいのにこんな現実まがいなモードなんて二度とゴメンだ。
『エクストラモードから変更した場合、一部のスキルやアイテム、ジョブなどが失われる可能性がありますがよろしいですか?』
知るかそんなもん!!
『条件:エクストラモードでのプレイ時間5時間以上・・・・達成』
『条件:エクストラモードにて一度瀕死になる・・・・・・・達成』
『条件:エクストラモードにて敵を倒す・・・・・・・・・未達成』
『条件:エクストラモードにてレベル5以上・・・・・・・未達成』
『条件:エクストラモードにて対人戦を行う・・・・・・・未達成』
『条件:ジョブスキルのレベルを2以上に上げる・・・・・未達成』
『上記の条件達成からジョブ『学士』の引き継ぎ条件を達成しました。それ以外のすべては引継ぎされません』
それでいいよ!こんな難易度二度とゴメンなんだ!これくらいのデメリットは受けてやる!!
なんかよくわからないけど『学士』のジョブだけは引き継げた。改めて降り立った世界で俺はもう一度フィールドに出ようと思った。
するともう最初から大興奮の嵐だった!
町に戻ってときに感じる体の感覚からまず違う。体が軽いのなんの。さっき重かった剣も余裕で振れるくらいに力もあるし、呪文も頭の中に全部浮かび上がるからスラスラ唱えられる!
再戦闘してみたけどさっきとは比べ物にならないくらい動けるから最高!苦戦していたゴブリンにも余裕の勝利!こうなったらもう止まらなかった。
この後、ずっとモンスター討伐と依頼をやってしまった。レベルは上がったし装備も初心者装備から卒業。
スキルもレベルが上がったし新しいスキルも手に入れた。
ありきたりだけど感覚が他のVRゲームと全く違う。本当に自分の体がここにあるみたいな感覚が別次元のレベルで感じられる。
プラネットクロニクル最高。
目標はジョブ選択の時に見つけた多分レアジョブだと思われる残り7つのジョブを入手だ。ここから俺の冒険が始まるんだ。
ちなみに今後このプレイヤーの出番は予定されておりません。
副タイトル『もしもエクストラモード選択後、すぐにジョブを取りに行っていたら』




