48:辻斬りが起こした悲劇
辻斬りで再びアザラシ狩りをしてしまう主人公。
皆さんに支えられてついに週間ジャンル別[VRゲーム]ランキング一位になりました。
ブックマークも一か月前から大きく飛躍し現在4000件
PVも100万突破・・・・・え?100万?嘘でしょ?
書き始めてちょうど1ヶ月。本当にこの二週間で天変地異でも起こったかのような事が起こりました。
皆さんの目に止まり読んで頂いたからこそ私史上最大の快挙を成し遂げることができました。本当にありがとうございます!
誤字報告や感想、そして応援してくれた皆さんにはもう感謝してもしきれません。私にできる恩返しは物語を書く事しかできませんが、それでもいいと思って下さるならばこれから先も是非読んでいただけますようどうぞよろしくお願いします。
それではどうぞご覧下さい。
「ひぃいいいいい!!!!腹いてぇェエエ!!!!」
「笑うんじゃねぇ」
二度目の巻き込み討伐にて倒した被害者のアザラシくんこと『兇波鋭豹』。
ちなみに俺はその全貌は愚か、顔すら一度も見たことがない。だって二回とも巻き込み事故で倒しちゃったわけだし・・・肉はかなり美味でした。
「大技使ってアザラシ辻斬りとかお前・・・ヤバイおもしれぇ!!!」
「お前も真っ二つに切ってやろうかゴリラこら」
「まぁこういうこともあるよ、うん」
レイレイの気使いが心に響く。いや普通ないよ。マジでない。斬撃飛ばして辻斬りとかないと思う。
「荒皮とか出てるしドロップ的には結構いいよ?」
「はぁぁぁ・・・死ぬかと思った。確かに荒皮は生け捕りかASの『剥ぎ取り』じゃないとかなり出にくいからレアアイテムだぞ?」
兇豹の荒皮
海を走る兇豹の体を覆う皮の中でも最も荒く鋭い部分。少し擦りつけるだけで皮膚を越え骨まで削るほどの鋭さである。
確かに説明はすごく強そう。少し擦るだけで骨まで削るとか普通ないレベル。これは確かに武器の強化とか装備の新調に使いそうな重要素材でありそうだ。今の装備を強化できるのかどうかはわからない所ではある。
「でも本当に出てこないね。カニ」
「もしかして誰か戦ってるとか?」
「ありえそうだな」
既に戦闘中であれば出てこないのも納得できる。確かひとつのエリアにレイドモンスターは一体のみ出現するとかなんとか。
「ちょっとまってね・・・・・・・・戦闘中ではないみたい。マップにもアタシの索敵範囲にもそれらしいのは見当たらないね」
レイレイのもつスキルには戦闘状態の敵を即座に特定するものがあるらしく、一度戦ったことがあるモンスターならば目印なくても気配でわかるらしい。スキルの詳細と入手方法は商売道具だから秘密だそうだ。
「メス猫の索敵範囲に入ってないなら間違いないか・・・・別のエリアに行ってみる?」
「それが良さそうだな。二人もいいか?」
「俺は構わねぇよ」
「アタシもいいよ」
そうと決まれば移動しようか。あ、そう言えば索敵範囲云々で思い出した。
「そう言えばなんだけどよ?ジョブのスキルってどうやって使うの?」
今までなんとなくでしか使ってなかったけど・・・・いや使ってたのか?もしかしてこの感覚なのかって思ったことはあったけど実際、俺の意思で使ったことってないんだよな。
「アール、初期設定でジョブ設定するときの説明見てないの?」
「え?そんなのあったの?」
「もぅ・・アールって意外とおっちょこちょいだよね。モード選択し終わってからジョブ選ぶときに一緒に使い方説明あったでしょ?それかサブジョブ取りにギルド行けば教えてくれたはずだよ?」
あぁなるほど。そういうことですね。エクストラ仕様はこんな所にもあった訳か。こん畜生め。
「俺エクストラモードでやってるからその説明見てない。あとジョブもギルドでとってないから教えてもらってないんだよ」
「・・・・・あぁ・・・お前そう言えばそういうジョブだったな・・・納得した。ならもしかしてASも使い方知らないのか?」
「おう知らん。ってか自動発動じゃないの?」
「ゴリラメス猫ちょっと予定変更。アールにその辺教えるよ」
こうして獲物探しの前に俺のためのスキル講座が開かれることになった。いい友人を持って何よりだよ。
だからその庇護欲を駆り立てられた目をやめろ!!
「「「「いた」」」」
スキルの使い方、発動の仕方を教わること数分。試し打ちと試し発動を数回繰り返した後、目的のカニ探しに戻った。
いやぁしかし結構難しいもんだな。でもこれでようやく俺もまともな支援職としての立ち回りができる。出来るのか?俺何げに初めてだけど・・・
そんなこと考えながら捜索エリアを変えた途端にいやがったよカニ。しかも予想的中でどこかのパーティーが戦闘中。カニとの戦闘をしているパーティーは男女4人構成。
装備はエーテリアで売っていたオーシャンシザーの素材を使った装備一式とスティール装備でまとめた剣士と槍持ちの前衛二人、攪乱と援護を交互に行っている身軽そうな装備の奴が一人、後方で魔法攻撃と支援を行っている魔法職が一人となかなかパーティーバランスがいい。
見ればなかなかカニのHPを削っているようでカニの動きは鈍い。ハサミの動きもぎこちなくもうすぐ倒してしまうだろう。
パーティーとしての動きもよく、前衛二人が視線を集め、他二人が支援と妨害、援護というように見事に噛み合っている。初心者にしてはなかなかいい動きだ。素直にそう思う。
「あれは手出しするの申し訳ないな」
「そうだね。新人が頑張ってるのに横取りするのは好きじゃない」
「時間経過でまた出てくるし今回はあの子達に譲ってあげようか」
そういう訳で現在善戦している彼らにあのカニは譲り、カニの敵意がこちらに向く前に退散することにしよう。
とか思っていた矢先だ。戦闘中の彼らの様子が変だ。彼らだけじゃない。カニも様子がおかしい。俺たちにも不快な何かが頭の中に入ってくる。
なんというかこう・・・・キュルキュルとした何かが動く音が聞こえる感じ?そんな奴が直接脳内に・・・・
「うっわキモっ!?」
「ぅぅぅ・・・この感覚もしかしてアイツなの?でも現れる条件は・・・・あぁ、あったわ」
「レイレイなんか知ってるの?」
是非教えて欲しい。この『コイツ直接脳内にっ』を実際にやってくる正体が気になる。
俺の隣に『こいつ俺の考えを読んでいただと』をリアルでやってくる二人組がいるわけだけど。
「この気持ち悪い頭の中に響く音を広域に出せる奴は」
『キュルォォォォォォォ!!!!!』
説明が終わる前に音の発生源と思われるモンスターが雄叫びとともに海中から海上へと飛び出した。海上に飛び出したそいつは放物線を描くように落下し、弱っていたガンドロックキャンサーに鋭い牙を突き立て襲う。
バリバリと音を立ててその甲羅を噛み砕き、その中身を捕食していく。反撃しようとハサミを向けたガンドロックキャンサーだが、ハサミが敵へと届く前に腕ごと、刀のように鋭利に光る前ヒレでバッサリと切り落としてしまった。
逃げようにもがっしりと突き立てられた牙と、自分よりもはるかに大きな体にのしかかられており、辛うじて動く足と腕をパタパタと動かすがそれも虚しく、ぐったりと息を引き取った。
強襲したモンスターはそんなの気にも止めず、仕留めた獲物を味わうようにバリボリと音をさせながら食事を続けていく。
丸っこい頭で目はクリンとしており愛らしい。ずんぐりむっくりとした胴体には黒と灰色の縞々模様があり可愛らしい。だがその愛らしさの中に隠されている鋭く光る前ヒレと同じくらい鋭そうな尾ヒレ。
「アザラシじゃねーか」
そう。アザラシだ。それも体長5mは下らない巨大なアザラシ。もしかしてコイツがさっきまで俺が辻斬りしてた『兇波鋭豹』・・・・めんどくさいからやっぱり獰猛アザラシで。いや俺こんなデカイ奴辻斬りしてたの?
「あいつは『兇波鋭豹』の上位個体、海辺で出てくるレイドモンスターの中では強敵の部類に入るアザラシ型モンスター。結構レア枠のレイドモンスター『ウェイネスシール』だよ」
「上位個体とな?」
「うん。多分アールの辻斬りで仲間を殺されたから報復のために来たんだと思う」
え?あれ俺のせいで出てきたの?ってことは俺が間接的に頑張っていた彼らの邪魔をした感じ?
食事を終えたウェイネスシールが次にターゲットにしたのはやはり一番近くにいた彼ら新人パーティーだった・・・・って考えてる場合じゃねぇ!!
「マー坊前衛レイレイ援護!俺とリークは後方!!吹き飛ばしてからその陣形で片付ける!!」
「おうよ!!」
「了解、女狐あんたアタシ狙ったら承知しないわよ」
「アールと同じポジションだから今回に限りちゃんと支援してやるから感謝しなさいメス猫」
「『魔進瓶ドラゴニックエリシオン』!!」
助けるためだから縛りは一時解放!!クラウチングスタートの要領で飛び出し一気に距離を詰める。その牙が彼らに降りかかる前に彼らの前に出て、そのまま下顎めがけて拳を叩き込む。速度に反応できなかった獰猛アザラシもといその上位個体『ウェイネスシール』は大きく仰け反り一瞬怯む。
「超越月光流十二宮奥義『星波刑リブルピスケス』弐式!!!」
そのまま回し蹴りを頭に叩き込みその巨体を揺らす。通常の『リブルピスケス』はその場で脳内のみを揺らすことで動きを封じるが、相手を吹き飛ばしその衝撃で脳内を揺らし動きを封じるのが『弐式リブルピスケス』だ。
そもそも『星波刑リブルピスケス』は蹴りで相手の脳内へと衝撃を叩き込み、外ではなく内側に力の方向が向いた衝撃にて脳を揺らす奥義である。その衝撃の向きを脳を通過点として遥か後方へと突き抜けながら脳を揺らすのがこの弐式。
わかりやすく言うと爆発実験などでよくある対象の物を何かで覆い隠し、外に被害が出ない状態が通常の技。
爆発で周囲に影響を及ぼすのが弐式ということだ。
その衝撃を受けた『ウェルネスシール』は大きくのけぞっていたこともあり、そのまま後方へと吹き飛んでいく。
吹っ飛ばすことを優先した弐式なのでダメージはそう多くはないがとりあえず時間は稼げる。この隙に彼らとの話をつける。
「悪い!!お前らの邪魔するつもりはなかったが事情が事情でな!すまんが共闘させてもらえるか!?」
まずは謝罪。獲物横取りとか人によってはブチギレ案件である。視線を外すことは自殺行為なので流石に無理だったが果たしてどんな反応が返ってくることやら。
「あ、あの時の恩人さん!!」
お?この声聞き覚えがある。確か前に森でゴブリンから助けた奴か?よく見れば装備は変わってるけどあの時のパーティーだ。そうか、無事に街に着いて装備を新調したようで何よりだ。
「よく覚えてたな。でも本当にすまん。邪魔しちまった」
「アールこの子達と知り合い?」
「大森林にゴブリン大量発生した時に助けたんだ。覚えてるとは思ってなかったけど」
「私も知り合いだぞメス猫。私と!!アールの!!知り合いだぞメス猫ォ?」
「うっざ!!女狐ウッザッ!!!」
早速マウント取りに行くリークと取られるレイレイ。この二人はどんな時でも平常運転ですねはい。取っ組み合いさえしなかったらとりあえず別にいい。
「助けてもらったのに・・・・忘れる・・・恩知らずじゃ・・・ないです」
気の弱そうな魔法職の少女は途切れながらもはっきりそう言ってくれる。他の三人も首を大きく縦に振ってくれるのでちょっと感動。
「自己紹介まだでした!!僕はシルリ・・・じゃなくてシルトです!!」
「俺ランジ!!よろしく!!」
「ハリアです。あの時はありがとうございました」
「・・・リリカです・・・・こんにちは」
剣士がシルト、槍持ちがランジ、レイレイの装備に似たような作りだから多分盗賊のハリアに、魔法使いのリリカだな。
よし覚えた。まだ吹き飛んだアザラシが起き上がる様子はない。もう少し時間はありそうだ。それならこっちの自己紹介も簡単に済まさせてもらおう。
「時間ないから手早くするぞ。アールだ。前衛後衛遊撃なんでも来いだが今回はとりあえず後衛だ」
「リーク。共闘よろしく。魔術師」
「レイレイだよ。遊撃担当」
「マー坊だ。臨時パーティーだけどよろしく頼むわ。見た目通り前衛だ」
『キュルルルォォォォォ!!!』
丁度ウェイネスシールが復活し、そのクリッとした眼はこちらを敵として捉え、可愛らしい顔には似つかない牙と前ヒレを使い大きく威嚇してくる。
―――特殊レイドモンスター『ウェイネスシールLv76』との戦闘を開始します
―――参加者 8/8人
―――パーティー1:アールLv24 リークLv98 レイレイLv94 俺はマー坊Lv99
―――パーティー2:シルトLv18 ランジLv22 ハリアLv19 リリカLv20
「ちょっと待てや!!レベル高すぎんだろ!!?」
これどう見ても初心者がいるエリアで出てきていいレイドモンスターのレベルじゃねーぞ!?どうなってるんだおい!!?レア枠だとしてももう少し加減してくれないかな!?
「「「あ、ごめん。犯人俺/私/アタシだ」」」
まさかここでも合計レベル参照かよっ!?しかもシルト達逃がすにも戦闘参加確定したみたいだしどうしようもないじゃないかコレ!?
「えっと・・・・すまん」
正直これは戦犯すぎて謝るしかない。これで怒られても文句言えないわコレ。マジですまん。普通に怒られても何も言い返せない。しかも元凶俺だし。
「気にしないでください。多分僕らだけじゃあのモンスターにすぐやられちゃいましたから」
「そうそう!寧ろ兄ちゃん達が来てくれたから今もこうして生きてるんだしな!!」
「足手纏いにならないように頑張ります!!」
「負けない・・・です・・」
あかん・・・・・この子達心が広い・・お兄さん嬉しくて泣きそう。これは絶対に負けられない。必ず全員で勝つ。
「わかった。私支援に全振りするからアンタ達は安心して突っ込んでいいよ」
リークが武器を持ち替え構える。
「ヘイトは私が持っていく。ハリアちゃん近づかず離れすぎない程度でついてきて」
レイレイは両手にアイテムを持ち突撃姿勢で構える。
「攻撃は全部捌くからお前らは安心して戦え」
マー坊も方天戟をウェイネスシールへと向ける。
『キュルォオォォォ!!!!』
叫び声が戦闘開始の合図となり、俺たちのまともなレイド戦は始まった。
辻斬りしすぎて怒り狂ったボス降臨。臨時パーティーにて撃退するために彼らは即席フォーメーションで対抗する。
そして今まで自動発動以外のASをまともに発動していなかった主人公。
つまり初戦番人戦は・・・・・・はい合掌です。




