45:困ったときはオカルトに
「さて、どうしようか?」
街中ではゆっくり出来なさそうだったので、適当に美味そうな食材を買って海岸にてBBQ。
「うーん。間違いなくあの侍ゴブリンが強いのはわかるけど・・・・アールで勝てなかったら現状で勝てるのいるのかな?」
「言っとくけど俺まだレベル21だぞ?俺よりレベル高くて強い奴ならたくさんいるだろう?」
ゴブリン狩りで多少のレベルアップはしたがまだまだ序盤のレベルだ。集団戦だとその範囲にいるゴブリン全部倒さないと戦闘終了扱いにならないんだよ。よって経験値も取得できない。だからまだこんなレベルだ。蓄積経験値はあるから戦闘さえすればもう少しレベルは上がると思うけど。
「アタシが知る限りだけどあの速度で攻撃できる人はアール以外には知らないかな。そもそも見えなかったし」
「だな、攻撃力は高くても腕落とされたら攻撃もクソもないし。まず『鋼牙ノ獣』とまともに戦えないと戦いにすらならねぇんじゃないか?」
『ふん。わかっているではないかキサマら。我の見立てでは奴の剣はこやつよりも速い。少なくとも今はだが』
「本気で言ってるの?だとしたら私たち詰みだよ?」
血涙雀より速い攻撃ができるプレイヤーがいないのか。そうなると確かに絶望的だな。少なくとも血涙雀よりまだ早い速度じゃないとあの剣には追いつけない。
「アールは何かないの?」
「血涙雀の精度をあげれ「「それはダメ!!その技使用禁止!!」」えぇ……」
「えぇ……じゃねーよ。腕使い捨ての技使っていいとかいうわけねーだろ」
「確かに使い捨てだけどあれが今一番速いんだぞ?」
速度だけで言えば速いのはあと2つあるけど、一つはまだ完成してないし、一つは制御できていないのでそもそも使えない。
「ならその二つの技ってどんな技?」
「・・・・俺今顔に出てたか?」
「細かいことは気にしない!ささ。アール隠さずにゲロっちゃお?」
女性がゲロとか言うんじゃない……まぁ話すだけならいいか。
「一つはさっき侍ゴブリンが使っていた『天雷雀』を発展させた技。『十六夜天雷』の強化状態を限界まで引き上げた技、『超越流派抜刀術:天津雀』、それがひとつ。もう一つは『エリシオン』『タウロス』『レオ』『サジット』『月渡』『月火』『十六夜天雷』『鏡雀』『桜奏呼吸』を合わせた奥義『超越流派十二宮抜刀術:天桜鳥』。どっちもまだ制御しきれてないから実戦では使えない。けど速度は推定でだが侍ゴブリンより速いはずだ」
「おっま……簡単に言うけどとんでもないこと言ってるよな」
「自覚はある。けど色々試した末で一番流れと相性がいい組み合わせなんだ」
完成してないから試す毎に怪我して大変だったけど。その修行のためだけに最初からやり始めて現実で二日間、一日目を繰り返すことになったけど。
「アール?『十六夜天雷』に関してなんだけどいい?」
「なんだ?」
「十六夜天雷に限った事じゃないんだけど『月光流』って衝撃貯めてから攻撃に出るでしょ?戦闘開始した直後の衝撃0の時はどうやってるの?」
「そもそも0の時があんまり無い。走るときに地面を”蹴る”から『白月』使えるし走って“動く”から『月黒』使える。走れば少し“浮いてから”着地で地面を“踏みしめる”から『月火』が使える。『桜奏呼吸』で技と衝撃強い動きには結構対応できるし生み出せるからそこまで大変じゃないし」
「ごめんアール。アタシ言ってることはわかるけど理解できない……」
まぁ自分で言ってても訳解らん。けど使えるのだから仕方ない。流石に復活した直後だと0だから何も使えないけど30秒もらえればエリシオンくらいまでは直ぐに使える。
「メス猫黙って。ならもう一つ。アールが言う強化状態の引き上げってどの程度?」
「普通に走って通常のエリシオンと同じくらいの速度で動ける感じ?」
「お前はどこの戦闘民族になるつもりだ!?」
「今はどこまで使えるの?」
「体が持つのは2秒だな、それ以上は持たん」
「まってアール!?2秒は使えるの!?」
「ゴリラもメス猫も黙って……アールが考える『天津雀』『天桜鳥』での天雷の発動時間は?」
「理想は10秒だな。少なくとも5秒は何とかしたい」
そうじゃないと現状では発動から抜刀までうまく繋がらない。
ああ見えて結構繊細な奥義なんだ。鏡雀。特に十六夜天雷使用すると少しの動きでも大ぶりに成りかねないので更に繊細になる。相手が動く相手、もしくは打ち合いになるなら尚の事。
「うーん……って考えるとあのスキル取ったほうがいいかも」
「何かあるんか?」
「うん。『AS:身体強化』ってスキル。レベル5で私たちのゲーム中でやってる動きができるようになるから大きいと思う。エクストラモードでも使えるのは私がさっきやって確かめたから大丈夫」
マジか。それは大きい。エクストラモードでも機能するスキルは是非とも欲しい。
「他にも『AS:天光進』とか『AS:活性化』とかあるからそのへん目指すのもいいかも。どっちも行動に関する強化スキルだから相性はいいよ?私で確認済み」
「え?待ちなさいよ女狐。あんたエクストラでやってるの?」
「当然でしょ?アールがやってて私がやらない理由が存在すると思ってるの?」
「アタシも結構重い自覚はあるけどあんたは相当よね……」
「そういうメス猫はどうなのよ?」
「昨日あのあとソロでクリスタルゴーレム相手に練習してきたんだからばっちりよ」
「ちっ、あそこソロで潜れる速度があるアンタが羨ましいわ。私は火山がソロだと限界よ」
「俺としてはアールがそうだからってやってるお前ら二人とも大して変わらねーよ」
「「ゴリラには無理でも乙女に出来ない事はないのよ」」
「あ、はい」
リークのくれた情報はかなり有り難い。さらっと言ったけどクリスタルゴーレム相手に練習して動けるようになったレイレイもとんでもないと思う。
「ありがたい話助かるよ。それとエクストラモードやってくれる奴が増えるのは嬉しい。出来たらこれからも続けてくれや」
「「勿論/だよ」」
話は少し逸れたけど今後の動きとしてはスキル取って二つの新奥義完成させる事。
そしてもう一つ。俺だけが侍ゴブリンに対応できればいい話ではない。あいつ以外のゴブリン。イベント告知によれば侍ゴブリン以外にも他に6体、アレレベルのゴブリンがいる。
そして大々的に公言された『天匠流』の存在。
俺以外のプレイヤー、つまりリークやレイレイ達以外、俺と行動してない奴らが『天匠流』を手に入れるために必要な『師範』探し。
『天匠流』を俺は独占するつもりはないし、気に入った奴がいれば俺が直接稽古をつけてやることも吝かではない。
一応ゲーム中とは言え『剣聖物語』『プラネットクロニクル』双方で師範の資格は与えられているのだ。そういう事で善は急げだ。最後の残り一本の肉串を頬張り立ち上がる。
「ご馳走様でしたっと……さて行くか」
「ご馳走様……行くって何処に?」
「まずは何処かにいる師範探しからだ。イベント限定なら探さない理由はない」
「確かにそうだけど……どこにいるか知ってるの?」
「しらん。けどこういう時は」
「「「こういう時は?」」」
「オカルト頼みだよ」
「あらこんにちは!この前のお兄ちゃんじゃない!!」
「おばちゃん久しぶり。ニルスフェアは大丈夫そうだね」
「もう全然平気だったよ。時代人が皆で街を守ってくれたんだ。もう感謝しかないよ!!そうだお兄ちゃん串食べるかい?」
「ならこいつらの分も含めて種類おまかせで四つ買うよ」
「はいはい毎度!一緒の女の子別嬪さんだねぇ……あたしが若い頃そっくりだ!!」
「おばちゃんは今の方が人受け良さそうだけどな?」
「そうかい?はいお待たせ。卵串オマケで入れといたからお食べよ」
「ありがとう。これお代」
「またおいでねー!!」
森を抜けて戻ってきましたニルスフェア。レベルが上がると街と街をテレポートできるアイテムの入手イベントを受けられるようになるらしいがそれまでは徒歩移動が主体となる。食後の運動も兼ねて四人でこうして森を抜けてきたわけだ。
ボスはちなみに復活しておりまた倒さないといけなかったのだが、今度は四人で一気に終わらせたので10秒と掛からなかった。
そのあとの雑魚モンスターも特に苦戦などもなく、途中、初心者狩りの悪質プレイヤーらしき連中が初心者相手に戦闘していたのでついでに片付けてきた。勿論相手には見られていないと思う。
それはどうでもいいとして、こうして戻ってきたのには理由がある。
目的は決まっていても目印がない。なら目印の目印になるモノを教えてもらおうと言うことで俺の始まりの場所に戻ってきたというわけだ。
「ほれ美味いぞ」
「さっき串食べたばっかりじゃねーかよ……卵美味っ」
「ゴリラのくせに卵から食べるんだね。お肉も美味しいね」
「これアスパラみたいで美味しい!!」
露店と開いていた懐かしのおばちゃんとも再会し、また串を食べながら、街の奥、目的地へと歩いて行く。少し歩けばすぐに見えてくる水晶の看板。到着だ。
「こんにちわー」
「おや?これはこれはアール君じゃないかな?」
「こんにちはアール君。元気そうで何よりです」
出迎えてくれたのは占い師プラレアさんとプレシアの姉妹。今日は二人とも揃っているようだ。水晶の前にいるのはプレシアさんと隣で何か編み物をしているプラレアさん。
「おやや?これはもしかしてWデートって奴かい?隅に置けないねぇアール君」
「「ゴリラとデートとか死んでも嫌です」」
「おや、違ったのかい?」
「こらプラレア。お客さん何ですからそういうこと言わないで。ごめんなさいね?」
前と変わらずマイペースなプラレアさんは悪そうにニシシと笑っている。
「アール、ここって……占い?」
「そ、占い」
困ったときの占い師ってな。ゲームだとよくあるだろ?冒険のヒントをくれる人的な立場の人だ。せっかく知り合いなんだ。こういう時は頼りにさせてもらおう。




