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34:VS侍ゴブリン。二つの刃と結末

左手を切り落とされたアールだがまだ戦闘継続は可能。侍ゴブリンのカラクリを理解したアールはこの場で残された最後の可能性に全てをかける。



累計PV30000突破、ブックマーク数134・・・・

みなさんのおかげでここまでこれました。感謝感激雨あられです!(←古い?)


これからもよろしくお願いします



『・・・・・』



「よっ?さっきも会ったな侍ゴブリン」



仲良く同じタイミングで地面に着地した俺たち。街中に出現したゴブリンに驚き、住民たちは悲鳴を上げながらこのエリアから離れていく。プレイヤーたちも何が何だかわからず立ち尽くしてしまっている。



挨拶をと思い声をかけてみるがゴブリンは特に言葉を話さない。ただ視線はしっかりとこちらに向けてあり、それだけでこいつが何を考えているのかはよくわかった。



これは謝罪だ。こいつは謝罪をしている。先程はすまなかったと、そう訴えてきている。となるとさっきのゴブリンで死んだ時、こいつは一切命令していなかった訳か。



「戦いでは油断した奴が最初に死んでいく。さっきのは俺の油断が一番の敗因だ。謝罪の必要はないさ」



『・・・・・・』



『それでも・・・・』そういうように無言のままゴブリンは刀を鳴らす。するとどこから現れたのか見たことのないゴブリン達がぞろぞろと集まってきた。



全身甲冑で身を固めたゴブリンに、巨大な太刀を二本背負う巨体のゴブリン。通常よりも一回り小さいものの、その顔に戦いを生き抜いてきた事を主張する傷跡が多数あるゴブリンなど、多数のゴブリン達が侍ゴブリンの元へと集っていく。



そしてその中の一匹。3mはあろう大きさのゴブリンが促されたように俺の前にやってくる。その巨大な手には何かが握られており、それを地面へと置いた。



「ひぃっ!!?」



悲鳴はNPCだったかプレイヤーか、はたまた両方なのか。恐怖の悲鳴が噴水前に木霊した。置かれたのは白い光ではなく、赤い色の血を流して縦に両断されたゴブリンの死体。



持っている武器には人間のものと思われる目玉が刺さっており、表情は憎たらしいほど笑みを浮かべていた。このタイミングでこんなモノを差し出してくるということはそういうことだろう。



「・・・・俺を殺した奴か?」



『・・・・・』



大きく首を縦に振る巨大なゴブリン。こう近くで見るとオーガに近いだろう。つまりこれで筋は通させてもらったと言いたいのだろう。



「・・・わかった。この謝罪受け取ろう」



『・・・・・』



それを踏み潰し、差し出されたゴブリンの亡骸は地面にこびり着いた血液だけを残し、光となって消えていく。



見届けると巨体のゴブリンは侍ゴブリンの後方へと下がった。侍ゴブリンを筆頭に整列する彼らはまさに敵陣へと乗り込んできた将校のように感じる。



それも一匹一匹が激戦を戦い抜いてきた猛者のようなオーラをまとっている。今はこうして大人しくしているが、こいつらが戦い始めれば少なくともこの街は““終わる””



そう思うほどには彼らが持つ特有の雰囲気は相当なものだ。どこまでも猛者であることを隠し、道化のように““ただ装備を身につけた変わったゴブリンのようにしか見えない雰囲気””を醸し出している彼らの実力は・・・



それに気づかないプレイヤーはゴブリン達を包囲するように散らばり、合図があれば全員が飛びかかりそうな状態だ。



それこそ、先ほど普通のゴブリン達が初心者パーティーにしたように、数で押しつぶそうとしている。



「やめておいたほうがいい。お前らじゃ相手にならん」



「う・・・うるせぇ!!やってみないとわかんないだろ!!」



「噴水だって近くにある!!やられてもすぐに復活できる!!」



「たかがゴブリン相手だ!!数もこっちのほうが有利なんだ!!囲めば勝てr」



彼らの言葉は続かない。

質より量、量より質

様々な場面でどちらとも言えるありふれた言葉だ。そして今回は後者がそれに当たる。

いくら1が100集まったとしても、100を持つ1が5人でも10人でも集まればどちらが大きいかなんて考えるまでもない。



俺や侍ゴブリンほどじゃない。音速には程遠く、かろうじて刃がブレる程度の速度。

『鏡雀』の基礎の基礎。居合い切り。一歩前に出たゴブリン達は間合いに入ったプレイヤーたちを捕らえその首を落としたのだ。



それも、装備の間を縫うように刃を通し、装備を斬ることなく、柔らかい生身の部分だけを。



「な・・・・ななななな・・・何が起きてんだよぉぉおおコリャァアアア!!?!?!」



光となって消えていくプレイヤーたち。それは誰が言ったのだろうか?戸惑いの悲鳴が上がったのを皮切りに、ゴブリン達は考えなしに突撃し始めるプレイヤーたちを作業のように斬っていく。



首・両肩・心臓

装備の間を縫うように的確に差し込まれる刃に為す術もなくプレイヤーたちは光となって消えていく。



一分経たないくらいだろうか、ようやく自分たちとの実力差がわかったようでプレイヤーの波は収まり、全員一定以上の距離をおいて静観し始める。



プレイヤーたちの行動を確認すると、彼らは武器を収め、ゴブリン達は静かに侍ゴブリンの後ろに着く。



皆が静観を決めた中、一人だけまだ武器を構えている男がいる。先ほどギルドでうるさかった中年の傭兵男性だ。状況は判断できても、一度手を付けた武器から手が離れないのはおそらくつまらないプライドからだろう。



「やめとけおっさん。死に急ぐことないと思うぞ?」



「う・・・うるせぇ餓鬼が!!俺様h「黙れ・・・私がお前を始末するぞゴミカスが・・・!!!」・・・ヒィイイイ!!?」



駆けつけたリークが男の首筋に短剣を突きつけ黙らせた。さらにその横から方天戟とナイフが追加された。



「あ?このおっさんがさっきの話の奴か?」



「へぇ?お酒臭いくせに偉そうだね。もう飲めないように喉引き裂いてあげようか?」



リークから話を聞いたんだろう。隠すつもりのない怒気を表に出しそれぞれが武器を構えている。殺すつもりはないだろうけどあれは一生のトラウマになるのは間違いない。



それは無意識の自己防衛だったんだろう。傭兵の男は白目を剥き、泡を吹きながらその場で気絶した。気絶を確認すると三人は、もう興味なさげにその体を蹴飛ばした。



「アール援護すr「いらない」・・・わかった」



「ちょっ!?アンタ何言って・・・・・もう、その目で訴えてくるんじゃないわよ女狐」



「アール・・・勝てるのか?」



「わからん。けど負けるつもりはねぇ」



無言で頷いてくれたマー坊に感謝し再び向き直る。先ほどのように何者かが不意打ちで俺を葬ることはないようだ。



「おいおいおい・・・・・なんだあのゴブリンは・・・・!?」



ガンテツさんも広場にやってきた。手には戦うために持ってきたと思われる刀を一本持っていた。それに続くようにプレイヤーとNPC、戦うために決起したであろう住民たちが集まってくる。それでもゴブリン達は彼らが襲いかかってくるまでは動かず、静観している。



「ど・・・どうなってるんで・・・・ば・・・爆発の人の左手がっ!!?」



少し遅れて来たギルドのお兄さん。俺の左手を見るやいなや悲鳴をあげそうな表情で俺を見た。



「お兄さん。アンタから言ってくれ。死にたくなかったら手を出すな。近づくな。そうしなければ少なくともこいつらは攻撃してこない」



「わ・・・わかった!!みんな死にたくなければこれ以上あのゴブリンたちに近づかないで!!」



仕事が早くて助かる。そしてこの状況で俺の事を信じてくれるのもありがたい。言われて気づいたが切り落とされて左手首から無かったんだったな。



思い出してみると遅れてやってきた激痛が襲いかかってくる。でも耐えられない訳じゃない。そう考えればこれは逆にちょうどいいかも知れない。痛みが更に増えてもそこまで気にならなそうだ。



そしてガンテツさんが持っているのは刀。なんてベストタイミングなんだろう。



「ガンテツさん。頼みがある。その刀貸してくれ」



「ボンクラ!お前こんな時に何言ってやがる!?」



「頼む」



「・・・・・・・」



余計な言葉は必要ない。勝つために今できることを全部やる。俺の思いは伝わったのか、はたまた別の何かがあるのかはわからない。けど持っていた刀をガンテツさんは無言のまま俺に投げ渡してくれた。



鞘を地面に落としてその刃を見ればこの刀がかなりの業物であることは直ぐにわかった。何度も何度も磨き上げ、鍛え上げられた刀だ。この重量感と輝きがそれを物語っている。



「ありがとう。見届けてくれ。これが““今””の俺に出来る究極の一閃だ」


「アール?それってどういう・・」



ザシュッ・・・・!!



「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」



人々の悲鳴が広場を再び駆け巡る。今度は誰かのではなく、そこに居合わせた全員の悲鳴だっただろう。広場が震えるほど大きく上がる悲鳴。



侍ゴブリンの後ろに控える彼らも驚いたのか一歩後ろに下がった。けど対峙している侍ゴブリンだけは反応せず、ただただ静観している。



やったことは『血涙雀』の準備。俺は受け取った刀を(左腕)に収めたのだ。そういえばこっちで使うのは二度目で人前で使うのは初めてか。



「待たせたな侍ゴブリン。勝負と行こう」



『・・・・・・・』



互いに一歩前へ、二歩、三歩進み、必殺の間合いへと互いの急所を入れた。目の前で起きている非常識な現実を前に、そこに集っていた全ての生命体が言葉を失う。



悲鳴をあげていた奴も、発狂しそうになっていた奴も、全員言葉を失いこれから先に起こる結果を目にするだろう。



先程とは違う。一度のみの斬り合い。





風が止み。





空気が落ちる。





生物の呼吸のみがあたりを包み込み・・・・そして・・・・・





「超越天匠流抜刀術・・・・」




互いの刃が敵を斬るために放たれる。




『・・・・・!!!』



「『血涙雀』!!!」







これほど単純な音で言い表せる一瞬の斬り合い。風を切り、空気を裂いて、音をかき消し、光となる。光速の刃が交差して勝負は決した。

















「あぁ・・・・クソ・・・負けだ・・・」



『・・・・・・・・』



ずり落ちる俺の両肩。打ち上げられてそのまま落ちて来たのは根元からへし折られた刀の刃。地面に刺さり、この勝負の結末を物語る。



奴の抜刀の速さと連続して行っていた居合い切りの正体、それは使う一瞬の強化で光速の刃を生み出す『流派超越抜刀術『天雷雀』』。



そう、丁度さっき俺が使った奥義。



それをこのゴブリンは連続使用ができないという俺が抱える欠点なく、連続して使える。それが森で俺に刃を防がれてもリークを切り裂けたことの正体。



こいつは一瞬じゃなく一回、刀を抜いてその速度で切り裂いていた。正しく刃を交えて戦えばそれは確信に変わった。



なるほど、幅広く技を組み合わせる俺と違い、こいつは天雷雀のみに特化した抜刀。欠点なく使えるのは当然だ。修行の内容が違いすぎるんだ。



『・・・・・・・・マケ・・チガウ・・・・』



「あ?」



『・・・・・・・ミ・・・ゴト・・・アー・・・ル・・』



ゴブリンが持ち上げたのは己の左腕。縦に裂けた腕が俺の刃が届いていたことを教えてくれた。



『・・・・・・・・ツギ・・ハ・・・カツ・・・・』



侍ゴブリンは踵を返し、仲間たちと共に森の方へと歩いていく。彼らが歩む先にいた人間は自然と彼らに道を開けていた。



















『ゴブリンの大量発生は止まらない。彼らは大群を武器として人々の領域へと侵略を開始する。はずだった。されど彼らの侵略はある時間を迎えると止まった。全てのゴブリン達を束ねる七体の猛者。その一角、侍ゴブリンがその侵略に待ったを掛けたからだ』



『彼らは一度力を蓄えるために、正しく人の力を理解した侍の言葉を聞いて其々の住処に帰還した。だが彼らは再び現れる。近いうちに』



『時代人よ。時代を動かす時が来た。ゴブリンから人々を守り、星の歴史に名を刻め』



『蘇らせよ。伝承に残る『剣聖』が残した奥義。究極を求める刃『天匠流』。『剣聖』が次代へ伝えたその力を世界へ示せ』






『ゴブリンの一定数撃破及びゴブリン特殊個体への一定ダメージ量蓄積の条件を達成』


『ワールドシナリオ及び新イベント『剣聖の遺産と子鬼たちの侵略』を開始します』


『勝利条件:ゴブリン七体の猛者全員の討伐』


『敗北条件:いずれかの街がゴブリンによって制圧される』


『イベント期間:どちらかの条件が満たされるまで』


『特殊:フィールドのどこかに『天匠流』を継承した人物が出現。彼らがもつ特別な技能によって『UtS:天匠流』を習得可能』






UtS:天匠流

究極を超えるため、終わりのない剣の道を極め続けた伝説の流派。音を超えて光をも切り裂く。



未熟者:天匠流の技が使える『鏡雀(未)』


Lv1:高速の動きが見えるようになる。使える技が増える


Lv2:高速の動きに対応できる。音速の動きが見える


Lv3:音速の抜刀術が使える。使える技が増える。


Lv4:光速の動きが見える


Lv5:使える技が増える


LvMax:光速の抜刀術が使える。





プラネットクロニクルの世界は今日、次の時代へと進み始める。



ゴブリンイベント発動条件


① 各ギルドで発生するゴブリン討伐依頼イベントにて、いずれかのギルドでの特殊行動達成

② ゴブリン大量発生後、全フィールド累計ゴブリン討伐数10000匹以上

③ ゴブリン特殊個体の体一部欠損もしくは損傷(部位への一定ダメージ蓄積)

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