24:エーテリアにて
無事に街についたアール一行。
その目的は一体?
第二の街、『海と共に生きる街エーテリア』
船による貿易が盛んで街の大きさもニルスフィアと同じ規模を誇っている。中央通りには他の街や大陸から運ばれてきた特産品や珍しい装備の数々がいくつも並べられた店が数多くあり、観光地としても賑わっているようだ。
ちなみにだが、試し切りで巻き込んで倒したモンスターだが。マー坊いわく、今は特に気にしなくていいとのことだった。
けどブツブツとリークが言っていたのが妙に気になる。後々トラブルにならないと良いのだが、どうなることやら。
それは今は置いておくとして、だ。この辺りは新鮮な魚介類を扱うエリアのようで見たことあるような魚が多数並べられていた。
「どう?ニルスフィアとはまた違う活気があるでしょ?」
「こりゃ確かにすごいな・・・・お?あの魚アオブダイに似てるな」
「「アオブダイ?」」
「住んでる場所とかによってはフグ以上の毒持ってる危険な魚なんだけど、食うと中々美味いんだこれが。おすすめは刺身だ」
「ならあれも食べられる?」
「店に並んでるんだから食えるだろうきっと」
「ならアール。あの魚は?」
「どれ・・・おぉ?カサゴみたいなやつだな。煮付けがうまい」
「ねぇねぇアール!あの気持ちわるいのは?」
「カジカに似てるな。美味いぞ?きっと」
「流石漁師の孫だね」
「まぁな。でもリーク。あんまり現実の情報出さないでくれよ?」
「うん」
海街ということもあり見たことあるような無いような、似ている魚が結構多く店に鎮座している。そういえばこっちでもちゃんと捌ければ魚も食えるんだったな。気が向いたら買って食うのもありだろう。
それもそうだが俺たちがこの街に来た目的を忘れるわけには行かない。俺たちがこの街に来たのは普通に進むための他に、クラン結成のためにこの街に来たのだ。結局あのあと三人に俺の方から頼む形でクラン結成をすることになった。
俺が習得した『UtS:師範代』。どうやらこのスキルは俺が持つスキルを他者へ習得させるためのスキルで間違いなさそうだ。
教えられるスキルは今のところ『月光流』『天匠流』の二つだけだが、おそらくこの二つだけでも喉から手が出るほど欲しいスキルだろう。
初期レベルではまだまだ実戦レベルではないにしろ『鏡雀』と『白月』が使えるというのはデカイ。特に白月が使えれば今難航していると言っていたクリスタルゴーレム相手なら一撃で倒すことも可能だろう。
それが広まれば面倒事になるのは確定。変な考えを持つ奴なら俺を無理やり取り込もうとか、チートだなんだの言っていらん噂を流されるとかのことが起こりかねない。
それを何とかするには一番手っ取り早いのがさっさと情報全部ぶちまけるか、後ろ盾となってくれる大型クランに取り入るかのどっちかだ。
けどどちらも却下。
そもそも最近のゲームはすぐに攻略法だとか、必勝法だとかに頼りすぎだ。だから楽できるようになるUtSの存在を含む情報は簡単に言うつもりはない。
大手クランに入ることだが俺はそもそもプラクロで剣聖ロールを既に始めたので誰かの下について動くのは却下。そうなると選択肢としては変な輩を完全無視か、自分でコネを作ること。
都合よくリーク・レイレイ・マー坊はそのコネを持つというかコネそのもののトップ集団の一角。さらに『鋼牙の傷』と自分たちのプレイスタイル的にクランに入る気はなかったのでソロである。
その三人から直々にクランを作ろうと話が上がったので遠慮なくそのコネを利用させてもらうことにした。
クラン結成のために訪れたエーテリアのギルドは、ニルスフィアのギルドとは外観は大きく異なり、舟屋のような作りの建物だった。
ギルドの中に入ればそこはニルスフィアと変わりなく、クエストを探すプレイヤーにクエストを依頼する現地人、なにかを探しているNPCの旅人らしき姿をした男性などがいた。
「クラン結成は受付カウンターで出来るから早く行こ?」
「女狐・・・なに当たり前のように腕組んでるのよっ」
「恋人同士なんだからこのくらいは当たり前でしょ。そっちこそ私の彼氏の手を握ってるんじゃないわよメス猫っ」
「喧嘩するなよお前ら」
「「はい」」
「アールお前こっちでもそのポジション確定だな」
「お前サブにして面倒事押し付けてやるつもりだから覚悟しろ」
「おうおう上等だ。それくらいの負担は喜んで受け持ってやるよ、リーダー」
「「えぇ・・ゴリラがサブリーダー?」」
「お前らどっちかサブにするって言ったら絶対にアール関係優先するだろ。あとその席巡って絶対しょっちゅう喧嘩するだろうから妥当な判断だと思うぞ?」
「「ゴリラのくせに正論言わないで/よ」」
「一応アールの任命なんだけどアールの否定か?」
「「ゴリラに任せる/せた」」
ちょろすぎだろ。俺が言うのもなんだがもう少し意見とか文句とかあってもいいんだぞ?お前ら俺より上位陣で有名人に名を連ねるプレイヤーなんだし。そもそも利用する気満々で頼んだんだし。
「いいの。私はアールと一緒ならそれで十分」
「アタシも同じ。アールのスキル目当てっていうのも正直あるから気にしないで」
「ま、そういうこと。もし何かあったら全部黙らせてやるから安心しろや」
当たり前のように読心術を使うんじゃない。こういう所があるから油断も隙もあったものじゃない。リークは恋人として好きだし、レイレイは一友人で幼馴染としては好きだから一緒にいることは楽しいからいいんだけどな。
マー坊?コイツとはもう腐れ縁でいて当たり前みたいな感じだ。むしろいないと面倒事を一人で解決しなくちゃならないからいないと困る。
「そんなことよりアール、カウンター空いてるよ」
腕組みながら可愛い動きしやがってこんにゃろう。現実と似てる顔つきでキャラメイクしてるからドキッとするじゃねぇか。レイレイ、そんな親の敵を見るような目で見てやるな。調子にのるから。
「いらっしゃいませ・・・・リア充の爆発をご希望ですか?」
「さらっと毒吐かんでくれませんかね?」
「失礼。自分そういうのを見ると爆発しろと言わずにはいられないので速やかに爆発してください」
随分毒舌な職員だ。露骨な不機嫌オーラがまたなんとも個性的だ。
「・・・・・クランの結成をしたいんですが?」
「男一人に女二人とか・・・・ケッ!!」
「おーい、俺もいるんですけど?」
『我もいる』
「モンスターは人間に含みませんので」
「よし君表に出ようか。脳天握りつぶしてやる」
「マー坊ステイだ。話が進まん。お前らも一旦離れてくれ」
若干ギルド内の寂しい男連中からの悲痛な視線が背中をチクチク刺してくるが無視だ無視。それにしても当たり前のようにギルファーが街中を歩いていたが誰も疑問に思わなかったのだろうか?特にプレイヤーなら疑問に思ってもおかしくないと思うんだが?
「ちっ」
「とりあえずクラン結成お願いしてもいいですか?」
「はいもちろん。ギルド職員としてのお仕事はキッチリやりますので。爆発してくれませんか?」
もう当たり前のように毒を吐くのは個性だな。嫌いじゃないけどめんどくさい。職員の男性はカウンターから用紙を取り出した。するとエクストラモードでは珍しくウィンドウが表示された。
「そちらにクランネームとクランマスター、それとサブマスターにクラン構成員を記入してください。拠点があればそちらもお願いします。ついでに爆発してください」
「はいはい爆発以外は了解しましたっと・・・・・お前ら、クラン名はこっちで決めていいか?」
「「「いいよ/ぞ」」」
「なら・・・・はいよ。これで頼む」
「はい、確認しますね・・・・クランネーム『剣星』、クランマスター『アール』、サブマスター『俺はマー坊』、クラン構成員『リーク』『レイレイ』・・・はい、確認しました。そちらの犬っころはペットですか?一応名前の記入をお願いします」
『きs「ブドウやるから黙ってろ」・・・・うむ。美味い』
「はい。『ギルファー』・・・・犬のくせにイカした名前してますね。爆裂してくれないかな」
爆裂はしないけど帯電はするぞ。絶対に阻止するけど。
ちなみにクランネームは『プラネットクロニクル』と『剣聖物語』から一文字ずつもらいラテン語訳したものだ。
厨二病での経験もこういう時は便利だ。スパッと出てくるから調べなくていい。しかもゲーム内だからこういうちょっと恥ずかしいことをやっても奇妙な目で見られることは少ないからいい。
「はい。問題ありません。これよりあなた方はクラン『剣星』として活動することになりました。今後も末永くリア充爆発しながらギルドを利用してください」
それもはや呪ってないか?とは思ったものの自分から地雷を踏むつもりもないのでスルー。
「教えて欲しいんだがこの街で有名な鍛冶師はどこかにいないだろうか?」
ギルファー戦で使った新人の剣。最初にもらった武器なので強くはないが生憎一度手に入れた武器はそう簡単に手放すつもりはない。ぶっ壊しはするけど。
なので強化できるなら強化しておこうと思うのだ。うまくいけば刀が手に入るかもしれないし。
「それでしたら丁度いい依頼がありますよ。ぜひ受けて爆発しろ」
差し出されたのは一枚の依頼書。内容は『俺の作品に相応しい奴に会いたい』だそうだ。報酬は依頼主の打った剣の提供。そういえばプラクロ始めてクエスト受けるの初めてだな。
とか思っていると再びウィンドウが現れた。
『サブシナリオ:『鍛冶師からの挑戦状』を開始しますか?』
サブシナリオだったか。特別受けない理由もないし三人に目線を向けると首を縦に振ってくれた。
「それで頼む」
『サブシナリオ:『鍛冶師からの挑戦状』が開始されました』
始めて一般的なシナリオが始まります。




